GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
あの番外編を除いたら今年初めての投稿になります。
では、スタートです。
「はっ? 別行動?」
「ええ、本日は個別の任務となっていますね」
「ふーん」
現在、エントランス。依頼を受けようとヒバリちゃんのいるところまで行っての会話。
久しぶりにきた気がする。メリーと別行動の依頼。
突然のことに俺は驚いたけどメリーはどうでもよさそうだ。うん、君強いからね。
そうそう、昨日睡眠不足で倒れたメリーだけど一日寝たら治ったみたいだ。
まだ寝不足なのは変わりないみたいだけど……。
「じゃああたしは一人で捜索か。面倒ねえ」
「俺は何の依頼だ?」
「偵察任務ですね。鎮魂の廃寺に向かってもらいます」
「うわ、俺の方が面倒そうだ」
こういう依頼も久しぶりだなあ。最近は雑用なんてやってなかったからなんだか懐かしさすら感じてくるよ。
ちょっと遠い目になってたらいつの間にか隣にメリーはいなかった。相変わらずの神出鬼没。もう尊敬の意すら抱いてくるよ。
とりあえず俺に依頼を選ぶほどの位はないし、この依頼を受けるしかないか。
俺は簡単にヒバリちゃんから依頼を受けると出撃するためにエレベーターに乗り込んでいった。今日は面倒な日になりそうだなあ。
――――――――――
やってきました鎮魂の廃寺。
いつだって止むことのない雪を視界に入れて、俺は目の前にいる三人に視線を向けた。
「あー、えっと、よろしくな?」
「……ふん」
「こちらこそよろしく頼むわね」
「ねーねー、早く行こうよー!」
なんだかごちゃごちゃそうに見えるこの三人。実はいつも行動しているグループのメンバーなんだとか。意外だ。
今日の偵察依頼は俺だけじゃないらしく、他に男一人女二人の計三人の旧型がついている。いつも新型が隣にいたから少し違和感を感じる光景ではあるな。
それにしてもなんか男が俺に対して明らかな嫌悪を示しているんだけど。俺、初対面なんだけどな。いきなり嫌われちゃったよ。
「お、俺の名前は日出 n」
「名乗んなくてもいい。お前は有名だからな」
「……え、えーと、そっちの名前は?」
「はあ? なんでお前に名乗らなきゃならないんだよ」
本当なんで俺はこんなに嫌われているのかな!? 心当たりの欠片もないんだけど。
内心流れる冷や汗を感じつつ、俺は思った。
――今日は俺にとっての厄日だ、と。
さて、いきなりだが早速と言った感じで俺は三人組とはぐれてしまいました。というか置いていかれたと言った方が正しいな。泣きそうだ。
一人でトボトボと歩いているよ。ハハハ、なんだろう挫けそうだ。
さすがにこの仕打ちは酷いよな? 持っている神機の盾の部分を撫でながら心の中で神機に向かって問いかける。
来るんじゃなかったなー……。まだメリーにモルターをぶつけられる方がマシだ。あっちは慣れちゃったからもう今ではそうでもない。
「俺が何したって言うんだよ……」
あれ、目の前がなんだか霞んできた。なんでだろうね、ハハハ。
どうしようかな。もうこのまま最初の位置に戻って三人を待ってようかな。これ以上俺がここにいたらオウガテイルに殺される気がする。
それほど今俺には集中力がないんだよ。誰か助けてよ。
『ガアアアアアァァァッッッ!!!』
「あっ?」
……俺の予想が正しかったらさ。今、とんでもないことが起こってる気がするんだ。
今の咆哮ってどう聞いてもアラガミのものだよね。しかも結構ヤバイ奴だよね、絶対。
聞いたことない声だったから新種なのかな。え、新種? それって俺の明日の保証あるの?
しかもなんか激しい攻防の音がするしさあ。あの三人組絶対戦ってるよ。俺ら偵察部隊なんだからそのまま帰ろうよ、面倒くさいなー。
まあ今やるべきことは一つだよね。
「加勢しなきゃだよな」
ここで加勢しなかったらただの鬼畜だよね。仲間見捨てるとか、そういうことは俺にはできないよ。
と言うわけで早速戦闘が行われている場所へ向かってみる。もちろん速足でね。歩いてる場合じゃないから。
三人組が交戦していたのは、見たことがないアラガミだった。形はヴァジュラのような四足歩行。だけどその顔は女性の様であり、全体的な色は青系統だった。こんな寒い所にいるんだから、氷に特化している奴だろうか。
とにかく、交戦するだけ無駄だ。こいつはどう見たって強い。あくまで俺たちは偵察だ。ここで起こった出来事、つまりこの新種のことを帰って報告しなければならない。アラガミの攻撃パターンなども見極められたらいいんだけど、そこまで欲張ってはいられない。
「おい、撤退するぞ!」
「誰が撤退なんざするかよ! レアなんだぞ!?」
「っざけんな! 命の方が大事だろ!」
近接型の俺に酷い男――まあ仮にAとしておく――を説得する。
とりあえず呼びづらいからここで呼び名を決めておこう。近接型のクール女をB、遠距離型の明るい女をCとしておこう。
「女は男連れて引けっ! ……いや、俺を引きずるんじゃなくて向こうな!」
撤退命令出したら何故か俺が引きずられました。うん、確かに俺の言い方が悪かったよ。悪かったけど取り乱さないで! お願いだからさ!
まあちょっとシリアス展開ぶち壊しなのもあったけどなんとかBとCにAを引きずって撤退してもらった。もちろんアラガミが三人組を追っていかないようにスタングレネードを使用するのも忘れない。うん、なんかいいことした気分だ。
「て訳で、俺の相手してくれるか?」
問いかけたら咆哮で返してくれました。なんでか分からないけどちょっとうるっときた。返事、返事してくれたよ……! まあお礼は出来ないから戦わない? 流れがおかしいことは分かってるけどね。それ以外俺がやることは無いよ。
今回の戦闘はあくまで撤退が目的だ。俺があのアラガミに勝てるとは思えないし、思わない。まあ退かせることが出来ればよし。
んじゃま、さっさと始めますかね。
「それそれそれそれそれそれっ!!」
必殺、影分身! ……は出来ないからとにかく高速で動いてアラガミを斬り裂いていく。ショートの最大の利点を生かした攻撃だよ。
余所見しながら、ってわけじゃないけど。メリーの特訓なかなか生きてるんじゃないかな、これ。あの地獄のレーザー避け。今から考えればいい感じに動体視力とか瞬発力上がったんじゃないかな。俺には分からないけどさー。
「よっし、ヴェノムは効くな」
さっきよりも行動が鈍ってきているから恐らくヴェノムになったと見ていいだろうな。なんかすごい達成感があるんだけど。ヴェノム小でもなかなかいけるもんだ。
そのまま攻撃の手を止めずに斬り裂き続ける。ちょっと楽しくなってきた俺はメリーに感化されていると見ていいんだろうかね?
「……ん?」
急にアラガミがピタリと動きを止めた。え、何? またなんか来るかもしれないの?
気にしないことにして攻撃をし続けることにする。何か行動を起こして来たらどうしようか。今からビクビクだよ。
と、考えていると突然アラガミが踵を返した。
「っ、マズイ!」
慌ててスタングレネードを投げつけるも時すでに遅し。一瞬の閃光の後、俺の視界にアラガミはいなかった。おいおい、マジかよ……。
急にアラガミが目の前の得物を無視してどこかへ行くなんてことはあり得ないことだけど……。まあ体力の回復なら敵前逃亡もあり得ることだ。
でも今回は絶対それじゃない。アラガミが向かっていった先には間違いなく三人組がいる。本当、なんで急に……!?
「くっそ……、間に合え!!」
今度、メリーに脚力の特訓もしてもらおう。今決めた。
着いた時はもう遅かった。
あともう少しで安全地帯に着くというところで三人組は先程のアラガミと戦闘していた。うっわ、最悪すぎるよ。
囮を作ろうにも多分アラガミは動いてくれないだろうしな……。
「撤退! 撤退しろ!」
「さっきからてめえは何様だ! 命令ばっかすんじゃねえよ!」
「黙れ! 命を大事にしないやつなんて足手まといだっつーの!」
「喧嘩してる場合じゃないわ!」
「総員撤退です! 撤退しましょう!」
女子の二人にメリーとゼルダを見てしまった俺は相当参っているのだろうか。
一喝されてから普段あまり使うことのない頭をフルで回転させる。
今俺がすべきことは味方の撤退だ。だが囮は使えないし、スタングレネードで稼げる距離でもないだろう。まあ使ったほうがいいだろうが。
「ちょっとの時間稼ぎにはなるよな、っと!」
三個目のスタングレネード。残り一つだが、問題はないだろう。
三人組と俺は間にアラガミを挟んで分断されている。一本の細道だから回り込んでいる時間はない。
アラガミがスタンしている今のうちにあっちに行かないと……。
『ガアッ!』
「なっ!?」
アラガミの横を通ろうとした瞬間、アラガミがジャンプする。えっ、なんで? と疑問に思ったのはほんの一秒程度に過ぎなかった。
俺がアラガミの真横に来た時と丁度同じ時、アラガミが着地する。そして着地したアラガミを中心として地面から飛び出すように出現する氷柱。
咄嗟の判断で盾を展開し氷柱の攻撃を受け止めるが氷柱が消えてくれない。の、残らないでもらいたい。壁と氷柱に挟まれて動けなくなったんだが。
「う、ぐっ! 抜けない!」
絶妙な氷柱の配置だ。完全に囲まれてるよ。ジャンプを活用したら抜け出せるかな。抜け出せるといいんだけど……、というか抜け出さなかったら困る。
氷柱が刺さらないように注意しながら手を置いて、勢いをつけて氷柱から脱出する。こんなこともあるんだな。
気を取り直して三人組の方へと視線を向ける。
「ぐわああああ!?」
「しまった!」
俺の邪魔をしてきた氷柱よりも小さい氷柱が五、六発連続してアラガミから発射される。狙いはAだ。
着地してからそのまま前のめりになりそうになる姿勢を生かして前へ踏み出すも、氷柱の方がスピードが速かった。
まるで引き寄せられていくようにAに突き刺さる氷柱。スローモーションのように崩れるAと舞う赤。
「ああああああ!!」
こんなの絶対嘘だ。嘘に決まっている。
目の前が真っ白になり、思考できなくなる。思考できなくとも身体は「生きたい」と生存本能のままに動いていく。
本当に不注意ではあるが、アラガミなど既に眼中にはなかった。
――――――――――
そこから先のことは覚えていない。
ただ無我夢中に動いたんだろうな、ということは疲労具合から分かった。
アイテムポーチに入っているスタングレネードが一つも残っていなかったから、多分残っていたものを使って逃げ切ったんだと思う。
あの後、俺が担いで持って帰って来たらしいAは病室にいた。かなりの重傷らしい。
そしてBとCも傷を負っていたようで同様に病室にいる。二人の傷はAと違い、軽めの傷なので生死に問題はないそうだ。
「……夏」
「……おう、メリーか」
「ちょっとトラブルがあったって聞いてね」
病室の外、壁に凭れかかって目を閉じていた俺にメリーから声がかかった。今まで心を落ち着かせようと瞑想っぽいものをしていたわけだが、まあどうでもいいだろう。
メリーに声をかけられて、少しほっとしている自分がいることに気付き自嘲した。本当、こんなんだから頼りないんだよな。
「で、容態の方は?」
「二人が軽め、一人がかなり危険だ」
「一応生きて帰ってきたわけね」
「……どうだろうな」
目だけを動かして病室に向ける。さっきから心臓が煩すぎる。一秒が一時間にも感じる。こんなことは初めてだ。
俺たちの間に会話が無くなり、また目を閉じて瞑想をしようかと考えたとき病室の扉が控えめな音を立てて開いた。出てきたのは最近会ったばかりの一条さんだった。なんだか見知った顔だと安心感がある。おばさんが出てきても安心感はなさそうだけど。
「あ、あのっ、あいつは!?」
「……」
「い、一条さん? どうしたんですか」
「……夏くん」
「なんで即答してくれないんですか、なんで大丈夫だって言ってくれないんですか」
「落ち着いて。……落ち着いて聞いて下さい」
ゆっくりと、諭すように俺に告げてくる一条さんを見て俺の中に嫌な予感が過ぎる。すぐにその嫌な予感を否定する。そんなことがあってたまるか。絶対、絶対にそんなことはあっちゃいけないんだ。
自分で見ている風景が遠くから見ている光景のように、夢を見ているかのようにぼんやりと霞んでくる。出先と違って泣いているわけじゃない。
一条さんが少し迷ったように目を泳がせてから、口を開いた。
「刺さり所が悪かったようで。……お亡くなりに、なりました」
足から力が抜け、目の前が真っ暗になった。
そして不思議なことに、胸の奥が温かくなるのをどうしてか感じた。
▽夏 は 新しい 固有スキル を 手に入れた