GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
最後の方に別視点描写あり。
そろそろラストにも近いです。
では、スタートです。
「なあ、なんでいきなり出先なんだ?」
「夏がコウタの案に便乗したからじゃない?」
俺とメリーは今、出先だった。ちなみに討伐対象はクアドリガ堕天。
確かに俺はコウタの案に乗った。コウタの案とは外部居住区外周の対アラガミ装甲を強化するため新種のアラガミの偏食因子採って来ようぜ! というもの。
俺も外部居住区にはお世話になった人とかがいたからすぐにその案に同意した。無論、手伝うということも。
だが。
「俺、あの後の記憶がないんだけど」
「そりゃ、あたしが頭に鈍器ぶつけて連れてきたからね」
「お前はどこの殺人犯だよ!?」
危うく俺は昇天しかけていたということか……。かなり危ないラインまで歩いてしまっていたようだ。戻ってこれてよかった。
というかそもそもどこにも気絶させてまで連れてくる理由がないと思うんだが。
俺はコウタの案に同意したんだから自分の足でくるという覚悟があった。
更に言ってしまえば今回は特に俺がトラウマになりそうなアラガミというわけでもない。
つまり俺が殴られる理由はどこにもないわけだ。
「……八つ当たりしたかっただけ?」
「寝不足なのよ」
「嘘つけ! 当て付けじゃないか!」
そしてメリーは否定しなかったという。否定してよ! 俺が悲しくなるだろ!
へこみながら歩いているとちょうどクアドリガ堕天登場。ちょうどいいや、八つ当たりさせてくれないか?
……うん、理不尽なのは俺が一番分かってるよ。でもね、どうしようもないんだ。人なんだから、そういうことがあって当然だろ?
メリーは俺の方を見て悪い笑みを見せた後、クアドリガ堕天に突っ込んでいった。手が出るのが早いなあ。俺もメリーに続いて走り込む。俺に向かってミサイルが飛んでくるけど、そんなものに俺は当たらない。爆風に耐えつつなんとか走る。
俺に構ってるのもいいけど俺よりお転婆な女の子がいること、忘れないでくれよ?
「死ねえ!」
「ヴェノム斬りっ!」
素早い動きで前面装甲を傷つけるメリー。俺は勝手に技名をつけてミサイルポッドを結合崩壊させようと跳ぶ。技名あったほうがかっこいいだろ?
毎回毎回ジャンプをするためさすがに足が疲れてくるがそんなのは気にしない。めりが前面崩壊させるまでここしか俺は斬れない。他の場所固すぎて。
「ははっ、脆いのよ!」
「うわっ、痛そう……」
メリーの猛攻のおかげで前面装甲が結合崩壊。
メリーの目が完全に悪魔になってる。狂気的なまでの高笑いしちゃってるし。お前はどこのホラーゲームの住人だよ。さすがに可哀想に見えてきたからクアドリガ堕天に合掌しておいた。ご愁傷様です。
いつもと変わらない姿に安堵し、しかしその女性にふさわしくない行動にため息を吐きつつ俺はミサイルポッドに剣を立てた。
目の前で良い音を立ててミサイルポッドが砕けた。結合崩壊のようだ。
「やるじゃない!」
「お褒めに預かり光栄です」
「夏は執事に向いてそうね」
どこか他人行儀に返して地面に着地。うーん、色々と面倒そうだから執事は勘弁。
既にメリーは壊れた前面装甲を斬り裂いてダメージを与えることに専念している。俺は何かやることあるかな。捕喰をしてから横からクアドリガ堕天を斬っていく。どうやら前はメリーのテリトリーみたいだからね。ここくらいしかないかなー、と。
「おりゃあ!!」
「ちょっと待って、それ女の子が出す声じゃないよメリー!?」
こいつの暴走は俺には止められない。……身を持って止めてくれ、クアドリガ堕天よ。
クアドリガ堕天の咆哮が泣き声に聞こえた気がした。
――――――――――
エントランスにて。
今ここには俺とメリーとゼルダとコウタとタツミさんとブレンダンさんが集まっていた。うーん、多いね。
実は今回の依頼はそもそも外部居住区にアラガミが侵入したことから始まったんだよね。
この場にタツミさんとブレンダンさんがいる理由はつまりそれ。さっきまで外部居住区で頑張っていたようだ。ご苦労様です。
「お疲れ様。そっちはどうだったの、タツミ」
「なんとか持ちこたえられたぜ」
「お前さんがたが持って帰ってきてくれた偏食因子のおかげでな」
「……まあ何人か犠牲が出ちまったんだがな」
そのことを思いだしたのか暗い顔になったタツミさん。こ、ここは俺が盛り上げないと……! でもネタがない! 何もできないです、ごめんなさい。
どうすればいいんだろうと悩んでいると「そっか……、ごめん」とコウタが自分が悪かったみたいな言葉を口にした。うわあああ、空気が暗い。
「仕方ないわよ。あたしたちだって出来ることとできないことがあるわ」
「ああ、気にするなよ。お前たちはよく頑張ったさ」
「E26エリア方面だったから家屋が集中していたという理由もあるしな」
「っ、E26!?」
メリーが他人をフォローしている……! なんでだろう、俺はいますごく感動している。
謎の感動をしていた俺はコウタの大声によって現実へと引き戻された。うおっ、ビックリした。
タツミさんの発言を聞いたコウタは即座に行動を起こした。誰の言葉も聞き入れないという感じでエレベーターへと乗り込んでいった。
どこに向かったかは分からないけど……。まあ行先なんて自室ぐらいしかないようなもんだけどさ。
「……そういえば、あいつの実家はE26だったか」
「あー、迂闊に言うべきじゃなかったな」
「全くよ。何してんのよ、タツミ」
「私、コウタさんの様子見てきますね!」
タツミさんはメリーの言葉に言い返さずに頬を掻いていた。悪いことをしたと思っているんだと思う。
ゼルダの行動は早かった。すぐに次のエレベーターに乗ってコウタの後を追っていった。リーダーって大変だなあ。
「夏はそこじゃないの?」
「ああ、またちょっと違うとこ」
「そう、良かったわね」
メリーが心配して言ってくれたのはありがたいけど、正直俺は今そこに気が回らない。
同じ外部居住区に家族を持つ者としてコウタのことが心配だった。
ここと違って外部居住区はいつアラガミが侵入してくるか分からない。神機使いという仕事とは別の意味で死と隣り合わせだ。
……まあこのご時世、絶対安全な場所なんてどこにもないんだけどな。
エイジス島はまた話が変わってくるんだろうけど。早く完成してくれないかな。
「大丈夫かな、コウタ」
「この職業をこなせてるんだから、そこまで柔じゃないさ」
「コウタだってただの馬鹿じゃないって事よ」
「そう、だな。信じることも大切だよな」
ブレンダンさんとメリーの言葉を聞きながら、それでも不安が拭いきれず俺はただエレベーターを見つめていた。
――――――――――
ゼルダはエレベーターの扉が開いた瞬間に飛び出し、コウタの部屋の前に立った。
コンコンコン、と三回遠慮がちに叩けば「……どうぞ」とコウタのいつもより少し弱弱しい声が部屋の中から聞こえてきた。
その言葉を聞いてゼルダは部屋の中に入った。
「……大丈夫ですか、コウタさん」
コウタは入口に入ってすぐのソファに座っていた。
どこか先程よりも緊張が取れた様子のコウタに内心で安堵しつつ、ゼルダは出来るだけ優しい口調で言葉を口にした。
コウタはゆっくりと顔を上げるとどこか疲れたように顔を緩めた。
「母さんたちは、無事だったよ」
「本当ですか! 良かったです!」
まるで自分のことのように喜ぶゼルダを見て、コウタはふっと笑いを溢す。
こんな風に仲間である自分たちのことを親身になって考えてくれるゼルダのことがコウタは好きだった。
それはあくまで仲間としての意味だということをコウタは理解していた。それはソーマやアリサ、サクヤだって同じだろうとも。
時に仲間に気を配りすぎて自分の身を捨てるような行動に出るゼルダが堪らなく怖い、というのは第一部隊隊員の全員の心情であろう。
「早いとこエイジス島を完成させてもらわなくちゃな」
「そうですね……。あとどれくらいなんでしょうか」
ゼルダは考える。ただひたすらに人類の未来を思い、目の前にいる仲間の心情を思い考える。
だからゼルダは気付かなかった。気付くことができなかったのだ。
「……守れるなら、どんなことだってやってやるさ」
顔を伏せて小さく呟いた、コウタのその覚悟を聞き取ることが出来なかったのだ。
「ん。コウタさん、何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」
ゼルダは知らない。この決意が、後にどのような結末へ導いていくのかも。
そして覚悟を決めたコウタ自身でさえも、今は知らない。……今は。