GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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04、山みたいなアイツ

うー、寝起きの頭にエントランスの騒音がガンガン響き渡るー……。たぶんいつも通りの騒がしさなんだろうけど、今日ばかりはちょっと勘弁してほしい。寝起きが悪いだけでこんなにも違う景色に見えるものなんだね……。

 昨日は帰って来てからもついついゼルダと話し込んじゃったからなあ。ゼルダは大丈夫かな、俺のせいで睡眠不足になってないかな。もし睡眠不足になっちゃったなら後で謝りに行かないと。

 

「ふあ……依頼行かないと……」

 

 正直に言えばもう一眠りしたいところだけど、そんなことは鬼教官ツバキさんが許してくれない。俺だって地獄の特訓はごめんだよ……。仕事は仕事、プライベートはプライベート。分別? というか、切り替えが大事なんだって言ってた。

 あ、今盗み聞きした情報によると、エントランスが騒がしいのはウロヴォロスのコアを回収できたかららしい。お前は山の進化系か、と言いたいくらいのあの巨体。俊敏かつ殺傷力の高い触手。そんなウロヴォロスは討伐できるなんてすごいなあ。俺はターミナルの画像でしか見たことないよ。

 

「それにしても、……第七部隊、ね」

 

 第七部隊。今回ウロヴォロスを討伐した部隊だ。だけど誰が討伐したかは少し考えればすぐに分かる。支部長から大きな仕事を任されるのはソーマかリンドウさんくらいだ。今回はリンドウさんかな、経験的な意味で。

 というかたぶん単騎……だよね。あのウロヴォロスを単騎でとか、リンドウさんの強さは半端じゃないなあ。カッコいい先輩がいるとやる気が上がるよね。

 まあ俺は今日も今日とて雑魚三体衆なんだろうけど。

 

「ヒバリちゃん。今日の俺の依頼は何?」

 

「今日は偵察任務ですね」

 

「……偵察……。いつもの雑用か」

 

「要するに残党探しですね」

 

 偵察はド級大型アラガミ(さっき言ってたウロヴォロスとか)の討伐後とか、大型アラガミの群集討伐後とかによく出される依頼だ。ド級大型アラガミの気配を感じて近くに来たアラガミの報告や、討ち損じた大型アラガミの討伐が目的だ。たまにアラガミ反応がしばらく見られていない地域を調査するための偵察もあったりする。

 今回はウロヴォロスが出現していた嘆きの平原での偵察らしい。アラガミを見つけた場合は出来る限り討伐してほしい、ということだった。簡単に言えば無理はしないで、とのこと。

 

「まあ、俺はいつも通りやるだけか」

 

 偵察なら何回か経験がある。半分くらいは逃げ帰った記憶があるから、もうプライドとかあんまりないよ。作戦は命大事に、だぞ。命あってこそのこの職業だしね。

 アイテムはいつもと同じで構わないな。特に持っていくものもないだろう。

 

「さてと、早速出発しようかね」

 

 

――――――――――

 

 

「……アイテム、何持ってたっけ」

 

 嘆きの平原に到着し、周囲警戒のためにうろつき始めて数十分後。

 俺はアラガミに見つからなさそうな崩壊寸前の家屋に隠れてアイテムポーチの中を確認していた。

スタングレネード、回復錠、回復錠改、回復球、回復柱、ホールドトラップ。うむ、いつも通りだ。やはり、ここはスタングレネードを上手く活用するべきか……。

 

「いやあ、それでももうちょっと持ってくるべきだったかなあ」

 

 あんまりアイテムの種類に詳しくないんだけどね、と自嘲した笑みをこぼしたとき、ズシンと地面が揺れた。驚いて身体を縮ませる。まだ死にたくない。

 ただの偵察だったはずなのに。俺の人生ここまでなんだろうか。こんなところでゲームオーバーなんて……俺の人生短かったな。そう思っていると、またズシンと揺れる。さっきより近い。もしかしてこっちの存在に気付いてるんじゃないかこれ。

 

「通り過ぎろ……、通り過ぎっ……!?」

 

 気のせいだろうか。今、メリメリッて、嫌な音が上から聞こえたような。

 

 

 ま さ か 。

 

 

 嫌な考えが頭をよぎり、いやいやまさかそんな、と否定しつつそっと頭上を窺った、次の瞬間。メリメリと音を立てて天井が崩落してきました。

 

「うわああああ!?」

 

 老朽化していようとさすがに頭にぶつかれば危ないので、頭を丸めて手で覆い必死にダメージがいかないようにする。その代わり背中に思いきり瓦礫がぶつかってくる。ぶつかる場所が変わろうと痛いものは痛いのだ。頑張って、俺の背骨。お前なら耐えられる、これくらいなら問題ない!

 そんな俺の事情なんか知らないとでも言うように壁が俺を押しつぶすように内側に向かって倒れてきた。ずさんな工事しすぎ! もうちょっと耐久力ないのかよ!

 

「いった……。これ、帰ってもいいよね……?」

 

 結構な量が俺の上に積もってしまった。俺一人なら通り抜けられそうな雰囲気ではあるけれど、神機は通れそうにないので頑張って俺の上にある瓦礫をどかすことにする。時間をかけて神機使いになることで得た力を惜しみなく使い、なんとか脱出に成功した。空気が美味しい。

 アラガミがいるってことは分かったし、ヒバリちゃんに連絡して帰ろう。あれは俺の手におえるようなアラガミじゃない。まともに立ち向かったら、それこそ死亡しそうだ。大型アラガミと戦いたいとは確かに思ったけど、あれはスケールが違う。

 

「よし、帰ろう」

 

 連絡は……後ででいいか。あのアラ髪がまだ周囲にいるかもしれないし、ひとまず待機地点まで逃げ切って安全を確保して、それから連絡しよう。

 

「っ、」

 

 何か、悪寒のようなものが背中を駆け抜けたのはその時だった。

 危ない、逃げなければならない。そういった漠然としたものだけが俺の頭の中に浮かび、ほとんど無意識のうちにステップを踏んでその場を離れる。

 そして一拍遅れて、仕組まれたかのように先程まで俺のいた場所にトゲのように尖った触手が地面から飛び出した。

 

「……マジかあ」

 

 日出 夏、人生最大のピンチかもしれません。

 俺はその場で振り返って後ろにいた巨大なアラガミ――ウロヴォロスを見上げた。

 

 

 なんでこんなところにウロヴォロスがいるんだ。

 ウロヴォロスはついさっき、この場所で第七部隊が討伐したばっかりのはずだろ。こんなに短い間隔でド級大型アラガミで出現して堪るか、ってんだ。ターミナルでしか見たことがないのに小津しろって言うんだよ。下手したら逃げる事すらもままならないっていうのに。

 

「見逃してくれたら嬉しいんだけど、なっと」

 

 俺を焼き尽くそうとウロヴォロスの複眼から放たれた高熱のビームを、地面を転がることで回避した。うわあ、地面が熱のせいで抉れたんだけど……。威力強すぎない?

 反撃の文字はとっくに選択肢から除外した。どれだけ無様になっても構わない。今は逃げることが大事だ。武勇伝を遺す必要なんかない。実力以上の相手に挑むことは勇気がある行動ではない、現状が見えていないだけの無謀な行為に過ぎないのだ。

 

「さて、どうやって逃げるか……。うおっ!?」

 

 俺の目の前で閃光が弾け、目に激痛が走った。

 ウロヴォロスってスタングレネードみたいな攻撃手段も持ってるのかよ……!? 痛みは引いたものの、目の前が真っ白に染まってしまいどこに何があるのかさっぱり掴めない。完全に目がいかれてしまったようだ。時間をかけて慣らしていくしかないが、生憎そんな時間もない。

 俺と対峙ているアラガミはあのウロヴォロス。格上の相手なのだから。

 

「いってえ!」

 

 とにかく集中してそれらしい気配をステップで回避することに専念していたのだが、右足に触手が当たってしまったらしい。深くはないが、切ったようだ。

 あまり傷付いて体力消耗はできない。特に足は逃げ切るためには傷付けたくない。これ以上、ダメージを受けるのは嫌だな。と、そこで薄らと景色が見え始めてきた。まだぼんやりしていることに変わりはないが、少しでも見ることが出来れば問題ない。

 

「スタングレネード……!」

 

 アイテムポーチにしまっていたスタングレネードをウロヴォロスに投げつけ、すぐさま自分の視界は潰されないように目を瞑り顔を逸らす。パッとスタングレネードが炸裂し、ウロヴォロスは視界を一時的に封じられたせいか触手をめちゃくちゃに振り回していた。こ、こわ……。

 っと、怖がっている時間もない。さっさとこの場から逃げることにしよう。念のためアイテムポーチの中に突っ込んだ右手を引き抜き、残り三個のスタングレネードを左手で掴んでおく。できればさっきの一階だけで逃げたいところだけど、果たしてどうなることやら。

 

 

――――――――――

 

 

「ヒバリちゃん、ただいま……」

 

「ご無事で何よりです……」

 

 服がボロボロだから無事ってわけでもないんだけど。それでも五体満足で帰ってこれただけ、いいんだろう。もしかしたら右足持っていかれてたかもしれないわけだしね。

 しかし報告書、どう書いたものか。まさかウロヴォロスと遭遇するなんて思ってもいなかったし。あそこで他のアラガミに会わなかったのは幸いだけど、あのウロヴォロスが食べちゃった可能性もあるのか……。

 

「ウロヴォロス発見、とだけ書くか」

 

 報告書を書く前にウロヴォロスの大きさについて調べてみたけど、考えたらメジャーとか持っていったわけじゃないからあのウロヴォロスが普通のサイズかどうか計測できていないんだな、と気付いた。いちいち計測して戦ってなんかいられないけどさ。たぶん普通のサイズだろ。大きかったけど、あれは普通サイズのはずだ、そうしよう。

 ウロヴォロスの詳細――と言っても、それほど書くことはないのだけれど――を報告書に記入し、最後に俺の名前を指定の欄に書いてからヒバリちゃんに提出する。ヒバリちゃんは素早く報告書に目を滑らせてから俺に微笑んでくれた。あっ、今ちょっとときめいた。

 

「お疲れ様でした。今回の報酬です」

 

「わあ、割に合わない」

 

「偵察任務ですからね。仕方ないですよ……」

 

 ヒバリちゃんに渡された報酬金を確認して、少しがっかりした。偵察だけどさ、こういう時くらいボーナスみたいなのないのかな。それは討伐しないとないって事なのかな。

 それにここで愚痴を言っても俺の報酬が変わるわけじゃないので、大人しく口を閉ざした。だけどこのままだとお金が少なすぎるのも事実なんだよな。服を着替えて、違う依頼に行こうかな。今日は雑魚三体衆でもいいよ。

 

「ヒバリちゃん、俺が行けそうな依頼探しといてくれる?」

 

「はい。分かりました」

 

 ため息をついてから俺は自分の部屋のある階に行くためにエレベーターに乗り込んだ。自室で着替えてくるのが先だ。この前新しくしたばっかりだったんだけどな、これ。一応、スペアはいくつか作ってあるから問題ないけどさ。

 目指せ金欠脱出。俺の明日はこれからだ。

 

 

 

 それから数時間後、エントランスのソファには疲れ果てた顔で眠る男がいたとか。

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