GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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お久しぶりです。お待たせしてしまって申し訳ありません。


42、俺とメリーの箱舟会議

「ゼルダ、今日の依頼はなんだ?」

 

「ヴァジュラとマグマ適応型グボロ・グボロ、ですね」

 

「うわ、面倒くさい。俺パスで」

 

「そうは問屋が、基あたしが卸さないわよ」

 

「ぶべっ!」

 

 早朝から早速鳩尾にお見舞いされるなんて、俺も馬鹿なやつだぜ……。

 今日の依頼は第一部隊との合同だ。二人だけになった第一部隊は今他の部隊から借りられたりすることの方が多かった。

 その分第一部隊の依頼が他部隊に回される事もあったんだけどな。

 で、今回は俺とメリーが第一部隊に借りられる、という形で第一部隊の依頼を手伝うこととなった。

 今は三人でエントランスでブリーフィング中である。何故かソーマはこの場にいない。

 

「じゃあ夏にヴァジュラの気を引かせて先に三人でグボロ堕天を叩きましょう」

 

「え、なんで俺一人なの!?」

 

「囮、ですか。……夏さん、頼めますか?」

 

「なんでさり気なくゼルダは賛同しちゃってるわけ!?」

 

 こんなの絶対おかしいよ! というかメリーが提案した時点で俺の運命終わってるようなもんじゃねえか。

 そしてゼルダ。否定してくれよ! 俺の死亡フラグの建設を手伝わないでくれよ!

 この場にソーマがいてくれたら少しは否定してくれるかもしれないのに……。なんでいないんだよ、あいつはー!

 

「ソーマはどこにいるんだよ」

 

「サカキ博士の研究室ではないでしょうか」

 

「え? あんな変態の巣窟に何の用があるわけ?」

 

「知ってるか、メリー。それってかなり失礼だぞ」

 

「あたしは事実を述べただけじゃないの。……病室も同じようなもんね」

 

「ああ、一条さん……」

 

 すいません、一条さん。俺にはメリーの言葉を否定するための材料がありません……。でも遠巻きに見てたって言ってる時点でアウトだよ。

 心の中で一条さんに謝りつつも昨日は危なかったなと思い出してみる。うん、あれはゼルダが危なかった。……何したかったんだろ、一条さん。

 

「で、ソーマは何の用があって変態の巣窟に?」

 

「もうその呼び方止めようよ、メリー……」

 

「最近入り浸ってるんですよ。私もソーマさんも」

 

「悪いことは言わないわ、ゼルダ。今すぐ止めなさい」

 

「お前の中のサカキ博士に対する評価低すぎだろ!」

 

「気持ち悪いんだもの、あの目。……見透かされてるみたいで」

 

 メリーが心底嫌そうに呟く。最後の方は聞き取れなかったけど。そうか、目が嫌なのか。まあ、あの品定めするような目は俺もちょっとね……。

 前に頼みごとを頼まれた時、不本意ながらもドアップで顔を見たことを思い出した。あれは怖かった。トラウマものだよ。

 

「さ、とっとと行きましょ。もうすぐ出撃時間だから直にソーマも来るでしょ」

 

「そうですね、先に準備しましょう」

 

「あ、作戦はさっきので決まりなんだ……」

 

 二人は無言の肯定を残して去って行きました。

 ……ふふ……。俺、今日は生きて帰ってこれるかな……。いや、生きよう。生きてかないと意味ないじゃないか。

 

 

――――――――――

 

 

 俺に向かって一直線に飛んできた雷球をステップを使って軽く避ける。

 避けることは想定済みだったのか避けた俺に対して突っ込んできたヴァジュラをステップで避けつつ神機で斬りつける。苦しげなヴァジュラの声が漏れた。

 

「ちっくしょう、皆恨むからな、藁人形生成してやるからな」

 

 絶賛孤立中で対ヴァジュラ中の夏です。なんて理不尽。ちょっと洒落にならない状況が俺の身に起こっているんですが。

 結局ソーマもメリーの案に反対してくれなくてヴァジュラを引きつけることになったんだよ。向こうは三人でグボロ堕天を叩きに行ってる。

 はあ、早く来てくれないだろうかね。あの三人は実力者だからきっとすぐに終わるとは思うんだけどさ。

 

「まあ大型を相手に出来るってのはありがたいよ。でも、理不尽だ……」

 

 これがヴァジュラ単体で俺一人での依頼だったら仕方ない、ってことになる。

 でも今回は複数だ。しかも四人。その振り分けで一人になってしまった俺の悲しみを分かってくれる人は果たして何人いるだろうか。

 できれば一人でも多く俺の悲しみを理解してくれる人がいることを願うよ。……なんでだろう、泣きたくなってきた。

 

「これくらい一人で倒せってか?」

 

 確かに今までメリーにはたくさんしごいてきてもらいましたよ。ええ、そりゃ死にそうなくらいたくさん訓練と言う名のリンチを食らいましたよ。

 でもだからっていきなりこれはないだろ。狼の群れに放り投げられた羊の気分だよ、まったく。

 まあやるからには頑張るよ。頑張るけど不安しかないんだが。

 ため息を吐いてからヴァジュラを見据える。うー、怖え。ウロヴォロスも怖いけどアラガミってみんな怖いよ。

 

「っと」

 

 ヴァジュラの体当たりをステップで回避、後反撃。さっきから俺って攻めてないな。だから長引くんだね、うん。

 積極的に攻撃してみようか、と考えたところで悪寒が全身を駆け巡ったので全速力でヴァジュラから逃避。

 

「吹っ飛べ!!」

 

 瞬間、これでもかというくらいの弾丸がヴァジュラを襲いました。……あっぶねえ、逃げてなかったら確実に巻き込まれてたよ、あの軌道は。

 どうやらグボロ堕天のほうは片付いたらしく、メリーとゼルダが二人でヴァジュラに射撃していた。ちょ、ゼルダも共犯かよ。

 その後ろからソーマが神機を担いで歩いてきた。あれか、メリーに手出し禁止とか言われてんだな。いや、もしかしたらゼルダかもしれないな。

 

「ふふっ、ふふふふふ。肉片なんて残らないくらい撃ってあげるわ!」

 

「いや、さすがに残しましょうよ。捕喰が出来ませんよ?」

 

「別にいいでしょ。素材は要らないし、コアは破壊すればいいし」

 

「私たちの責務にはコア回収もあるんですが……」

 

「たまにはいいじゃない、たまには!」

 

「あいつ自分のことしか考えてねえぞ!」

 

 メリーの自己中心的な性格はどうにかならないのかね!? ああいうのがいるから神機使いのイメージが下がるんだよ……。

 そもそもコア回収は非常に大切なことだ。メリーから見れば下級かもしれないけど、ヴァジュラだって十分脅威。

 そのヴァジュラのコアがもしかしたら新しい神機使いのコアになるかもしれないとかいろいろあるのに。あー、もう本当に考えないやつだな!

 ヴァジュラはあまりにも乱射されたせいか既に倒れ伏している。途中で逃亡を試みたがゼルダのスタングレネードにことごとく邪魔されてた。怖い。

 

「あっはははは! 機嫌がいいわ!」

 

「ストーップ! お前、さすがにその辺にしとけ!」

 

「……何よ、夏のくせに生意気ね」

 

「くせにってなんだ、くせにって」

 

「あーあ、興ざめね。いいわ、今日は終わり」

 

 ん、珍しくメリーのほうから引いたな。抗議したら俺が撃たれるかなー、とか思ってたんだけど大丈夫だったか。

 いつもと違うメリーに首を傾げながらも俺は素材回収のためにヴァジュラを捕喰した。

 

 

――――――――――

 

 

 依頼後、エントランスにて。

 今日は大分疲れた。なんか、ソーマも疲れた顔してたしな。メリーと関わると疲れない日はない。これは俺の中ではすでに常識である。

 

「……夏って、箱舟、乗るの?」

 

「……え」

 

 冷やしカレードリンクの缶に手を伸ばした俺に向かって、正面に座っていたメリーはそう聞いてきた。

 なんでそう聞いてきたのかは分からなかったけど、驚いた。缶はもう開けていたから危うくそのまま倒して中身を溢すところだった。

 とりあえず平静を装う。メリー曰く「汚い笑み」を浮かべて。

 

「その笑顔浮かべてる時点で乗るって言ってるようなもんよ」

 

「あー、やっちまったか」

 

「やっちまってるわよ。あんたって嘘つけないタイプよねえ」

 

 してやったり、と言う様に悪戯っ子が浮かべるような笑顔を向けてくるメリー。

 俺は嘘をつけないんじゃなくてお前の前だと嘘がつけなくなるんだよ……。言おうとしたけどやめた。絶対調子に乗る。目に見えてる。

 代わりにため息を吐きだした。自分を落ち着ける意味もあるけど、単純に自分って馬鹿らしいなって意味の方が強い。

 

「そう言うお前は乗らないみたいだが?」

 

「ええ。あたしは死神がヒトの形をしているようなものだから」

 

「自分のことをそんな低評価するの、よくないと思うぞ?」

 

「低評価じゃないわよ。それに自意識過剰よりはマシ」

 

「……はあ」

 

 こいつの脳内を理解するのはやっぱりまだ無理だ。何を考えているのか考えてもさっぱり分からない。

 死神がヒトの形をしたのがメリーって……。いや、俺にとっちゃ死神も同然だけども、自分で言うのってどうなんだ?

 普通にしていればメリーだってそこらへんにいる女子となんら変わりがないんだ。そんなふうに言わなくたって別にいいと思うんだが。

 

「ていうか、それを言うなら神機使いがそういうもんだろ?」

 

「違う。あんたとあたしじゃ到底違うわ」

 

「あー、もう訳分かんねえ! 話変えよう! この話はやめだ!」

 

 俺には難しい話は基本的に無理なんだ! それを面白がってるのかゼルダも時々そういう系の話を振ってくるしさあ……。酷いよ、まったく。

 がしがしと頭を乱暴に掻いて悲鳴を上げるとメリーが驚いたように目を見開いたが、馬鹿馬鹿しいと言う様に俺を鼻で笑った。ええー?

 

「馬鹿夏って本当に馬鹿ね。だから馬鹿夏ってつけられるのよ」

 

「つけたのはお前だろうが。あと使ってるのもお前だけだから」

 

「ば・か・な・つ。四文字って語呂が良くない?」

 

「なに『あたしって天才じゃない?』みたいなドヤ顔してんだよ」

 

「えっ、なんで分かったの?」

 

「お前の今の顔にありありと書いてあったわ! 隠す気ねえだろ!」

 

 そう言って、ふと違和感を感じて俺は首を傾げた。俺の様子がおかしかったのかメリーもきょとんとしていた。

 「馬鹿夏」ってつけたの、メリーだったっけ? 確かに最近はメリーしか俺のことをそうやっては呼ばないけど。

 最初に俺のことを「馬鹿夏」って呼んだのはメリーじゃなかった気がする。……誰だったかな。うーん。

 

「……あ。で、箱舟の話だけどさ。お前、カード真っ二つにしなかった?」

 

「したわよ? なんでそんな当たり前の話するわけ?」

 

「え? お前の中でカードは真っ二つにするものになってるの?」

 

「さっきも言ったでしょ。あたしは乗らないって言った、でも渡された」

 

「えーっと、つまり」

 

「渡されたんだからあたしのもの。どうしようと勝手、でしょ?」

 

「んー、まあ……。はい」

 

 こいつの言ってることはどこまで本気なんだろうな。いや、カードの件は本気で言ってるんだろうけど。

 でもまさかこいつ、カードを真っ二つにするのが常識だと思ってるなんて……。

 少し前にはカードを鍵として利用している場所もあったって言うのにな。こいつに渡したら鍵が壊されそうだ。

 

「相変わらず無茶な理論振りかざすな、メリーは」

 

「それがあたしよ!」

 

「そんなことで胸を張られてもな」

 

「む。いいじゃないの、そんなことでも」

 

「へいへい……」

 

 とにかく、メリーは箱舟には乗らない、っと。こいつは決めたらそのまま突き通していくようなやつだからな。多分、変えないだろう。

 ……こうなったら、実行するしかないな。あいつが何を言おうと知ったことか。これはあくまで俺の我儘にすぎないんだから。

 俺は少し先のことを思って顔に影を落とした。

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