GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
「ゼルダー。……おーい、ゼルダー!」
エントランスでゼルダを見かけ、思わず呼んでしまった。
しかしゼルダは止まらずに歩いていく。なにこれ、シカト?
二回も呼んでいるのに止まってくれないなんて……。
こうなったら三回目を呼ぶしかないかと思った時、
「はい、なんでしょうか?」
ようやくゼルダが振り返ってくれた。
良かった。メリーみたいに無視しているのかと思った。
「ゼルダの神機、不調って聞いたんだけど大丈夫か?」
そう、俺がゼルダを引き留めた理由は正しくこれだった。
昨日リッカさんが「最近ゼルダさんの神機、特に盾のジョイント部分がおかしいんだよね」とこぼしていたのを聞いたのだ。
どうやら最近忙しさを理由にメンテナンスをろくにしていなかったらしいのだ。まああんな事件もあった後だしね、忙しいって言うのも分かるけど。
「リッカさんに注意されましたが、特に昨日の任務でも問題はありませんでしたよ?」
「本当か? 無理するなよ?」
「私は無理なんて、」
「してるよ。そうやって抱え込むのはゼルダの悪い癖だ」
言って、軽くペシッと額を叩いてやる。
ゼルダは周りに相談せずに危険に突っ込む癖があるからなあ……。いつのまにか重たいものを抱え込んでいた、なんて冗談じゃない。
周りにはたくさん仲間ってものがあるんだから、相談してくれたっていいのにそれをしようとしない。相談したら迷惑になる、とでも思っているんだろうか。
「本当に大丈夫ですって」
「……本当か?」
「なんで今日はそんなにしつこいんですか?」
「俺はゼルダのためを思ってだな……」
「おはよう、夏。朝からストーカー?」
そんな俺の言葉を遮る輩が一人。そこで遮るかよ。というか誰がストーカーだ、誰が。遮った人物は勿論、メリー。タイミングが悪い奴め。
「誰がストーカーだよ」
「夏」
「違うからねっ!?」
「え、夏さんストーカーなんですか? それが本当なら寄らないでください……」
「ゼルダ。メリーの言葉が嘘って分かってやってるでしょ」
「はい。それが何か?」
「お願いだからそういうの本当に止めて!」
最近ゼルダがメリーの悪乗りに影響され始めたのが酷く悲しいです。
俺の敵が段々と増えていくとか……。精神崩壊しそうだよ、したくないけど。
結局俺に味方なんていなかったんだ……、と凹んでいると「そういえば、」とゼルダが話題を切り出す。
あれ、俺は放置な感じですか。
「近々、新人さんが来るらしいですよ」
「へえ、新人、ねえ?」
「人手が増えるのはありがたいことじゃないか」
メリーが面倒そうに呟いていたが、この際無視。
メリーって自分以外は全部面倒くさいって思ってるんじゃないかな。
……本当にそう思ってそう。考えるのを止める。
「とりあえず、ゼルダ。今受けてる依頼は俺たちが消化しとくから休みなよ」
「えぇっ!? 駄目ですよ、そんな迷惑かけられませんし……」
「ゼルダの為ならあたしも賛成ね。サカキ博士の任務は面倒だし」
「一応長期だからそっちは大丈夫だろ」
まあ内容を見る限り早期解決が好ましいけど、な。
最近は出没率が減ったとかでしばらくは出てこないかもと言うのがサカキ博士の見解らしい。今行くとしたら痕跡を間近で見に行くくらいだろうな。
一方のゼルダは視線をキョロキョロと泳がせていた。たまには頼ってくれてもいいのにな。
「あ、ゼルダさん。すみませんがこちらの任務をお願いできますか?」
そんな時、ゼルダにヒバリちゃんの声がかかった。追加の依頼か?
「あ、はーい! ……すみません、お願いしますね」
ゼルダは申し訳なさそうにそう言ってから依頼を受けるためにヒバリちゃんの元へ走って行った。……あれ、これって意味がないような。
――――――――――
「……ということがあったんだ」
「知ってるわよ、あたしだって隣で見てたんだから」
煉獄の地下街にて。しばらく聞いていなかった、カンカンという虚しい音が広いそこに響き渡る。ああ、ちゃんと依頼の内容見ておけばよかったな、とは思うけどゼルダの力になりたかったし。
音を聞けば何のアラガミと戦っているか分かると思うけど、シユウ種だ。セクメト、というアラガミらしい。
このセクメトの攻撃がいちいち厭らしいんだよね。ちょっとでも攻撃を食らえばスタンになって追撃を食らうし、威力が大きいし。
それに何よりシユウ種だからさ。俺の攻撃、全く通らないんだよね!今はヴェノム状態にするために攻撃をするしか俺に貢献できることは無いのですよ。
あ、そういえば新しく剣パーツを作りました!
トラヴィアータって言って、これまたサリエル系統のやつなんだけどね。スキルとしてヴェノム大がついてくるんだからとってもお得だと思うんだよ。
「もうちょっと内容は見なさいよね……」
「役に立ちたかったんだよ。最近のゼルダ、無理してるみたいだから」
「否定はしないし、その意見には賛成よ。でもでしゃばりすぎるとあんたが死ぬわよ」
「うん、この依頼もメリーがいなかったら死んでたと思う」
シユウ種の依頼の時にメリーがいてくれると本当に助かる。
現にセクメトに与えられたダメージの九割はメリーによる攻撃のものだ。……俺もなんか神機を作ったほうがいいかなあ。いつまでも迷惑かけてられないし。
「ま、あたしもこいつ相手は少し辛いかもね」
「ん? どうしてだ?」
「スキルのせいよ。“剣の達人”っていうね」
剣の達人。確か、剣攻撃が通りやすい部位では威力を上げ、通りにくい部位では威力を下げるスキルか。持ち主の立ち回りが相当上手くないと使いこなせそうにないスキルだな。俺には無理だ。
俺の神機で今役に立ってくれそうなスキルは“ヴェノム大”と“状態異常攻撃↑”くらいか。ヴェノム大のおかげでヴェノムになるのが早くなるのはありがたいな。
「ちっ、もう面倒くさい。一気に決めるわ!」
メリーは吐き捨てるようにそう言うと、強引にセクメトを捕喰した。最近、副作用のこととか気にしなくなってきているような気がするな……。
あれ、そう言えば副作用の効果を最近見ていないな。
「死になさいっ!」
「わあ、強引」
かなり強引な方法だった。メリーがセクメトを真っ二つにしたのだ。ロングブレードなのに、よくもまあそんなことをしようと思うね……。どんだけ早く終わらせたかったんだよ、と心の中だけでツッコんでおく。
神機で倒れたセクメトのコアを回収する。良かった、コアにダメージはないな。
「お疲れ、上出来じゃない?」
「あー、今日はなんか働いてない感じがする」
「相性が最悪だからでしょ。夏も役に立つときあるから大丈夫よ」
「メリーがフォローしてくれた……!?」
「何よ。だって最初に会った時と比べたら大分成長したじゃない?」
メリーが俺を評価してくれた……!? 今日は地震でも起こるんだろうか。と思っていたら頭を叩かれた。なんで考えてること分かるんだよ。
それにしても、俺って成長してるんだろうか? 自分のことって分からないな。メリーの攻撃を避けるために回避に関しては向上したかもしれないけど。
メリーの攻撃にもアラガミの攻撃にも当たりにくくなってきた気がするしね。
「今まで言われたことなかったから素直に嬉しいな」
「その調子で一人でウロヴォロス倒せるようにして頂戴」
「は!? 無理無理! 無理に決まってんだろ!?」
「大丈夫、あんたなら軽くいけるわよ」
「“逝ける”の間違いじゃないのか!?」
「そうかもね」
「コラァ!」
結局酷い所は変わらなかった。なんだ、いつも通りじゃないですか。驚き損だ。
しばらく談笑してから俺たちはアナグラに帰還した。
と、それだけで終わりではなかった。
「はあ!? ゼルダの意識がない!?」
「どういうことよ、それ!」
「うぐ……。メ……さん、いぎ……でぎな……」
「あ、ああ。悪いわね」
コウタの言葉を受けてメリーがコウタの首から手を放した。お前、いつの間に……。
咳き込んでしまって喋れないコウタの代わりにアリサが口を開いた。
「一応、先程目は覚ましました」
「よ、よかった……」
「ったく、何したらそんなことが起こるのよ」
「「……」」
「なんで二人揃って黙るんだ?」
特に気まずそうにコウタは俺たちから視線を逸らしていた。
そのことにメリーは気付くと、コウタの胸ぐらをつかんでグイッと持ち上げた。どこにそんな力が。「タンマタンマ!」とコウタはストップをかけると素直に依頼でのことを話し始めた。
どうやら第一部隊は新種のアラガミ、ハンニバルの討伐に赴いていたらしい。しかし討伐してコアを抜いたにも拘らずハンニバルは再び動き出したのだとか。それなんてバケモノ?
今までそんな前例はなかったし誰も動くとは思っていなかったため、コウタもすっかり油断していたようだ。不意を突かれてハンニバルに攻撃されそうになったコウタをゼルダが盾を展開して庇った、ところまでは良かった。
朝、リッカさんに聞いた通り、ゼルダの神機はメンテナンスをしていなかったために不調だった。しかもおかしいと言っていたのは“盾のジョイント部分”。そう、盾、なのだ。ハンニバルの攻撃に盾が耐え切れずゼルダは弾き飛ばされ、神機も故障。その際に意識を失ったとか。
……不運が重なったって事か。
「神機の修理もありますから、どちらにせよ安静らしいです」
「休む時間が出来たとは言えこんな形だとなあ……」
「仕方ないわね。第一部隊のリーダーがいない分、あたしたちが頑張らないと」
ちなみに面会のことだが、俺とメリーは拒絶されました。まあ妥当な判断だと思うよ。
今行ったらメリーのお説教だろうし、俺が行ったらメリーはついてくるだろうし。
どうせ明日になったらメリーは強行突破するだろうがね! こいつは強引なやつですから。
「後でたっぷり説教しなきゃね……!」
「ほどほどにな」
怒り状態のメリーを横目に、俺はゼルダに合掌した。