GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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47、ゼルダの暴挙

「ゼルダ、あんた自分のことをちゃんと考えてるの!?」

 

「もっ、勿論です」

 

「……嘘はつかない方が身のためよ……?」

 

「ひぃっ!」

 

「コラ、メリー。その手を下ろせ」

 

「あんたは黙ってなさい」

 

「ぎゃふん!」

 

 ただいま、ゼルダの部屋にて。

 安静は安静でも病室にいるほどじゃないからゼルダは部屋で休むことになった。そのせいでメリーに押しかけられてるんだけどね……。

 俺は不安になったから念のために同行した。メリー一人にはさせられない。それにしても今日も酷い奴だ。バキッ、って嫌な音が鳩尾から聞こえたんだけど。……俺の肋骨、無事だよな?

 

「神機使いは身体こそが資本なのよ、分かってるの!?」

 

「そ、それくらい分かってるに決まって、」

 

「嘘つくんじゃないっ」

 

「あいてっ」

 

 メリーがゼルダの頭に拳骨をお見舞いした。ただし、音はポカッという可愛らしいもの。あれ、俺の食らっているものと威力が違うような気がするんだけど。なんだこの差別。俺にだって優しくしてくれよ。

 最近メリーの拳に耐性がつき始めちゃったんだよ、俺の鳩尾……。

 いや、今はどうでもいいな。それよりも時間の方が問題だ。

 

「メリー」

 

「あ゛ぁ?」

 

「そっ、そろそろ依頼の時間……」

 

「……え? あ、本当ね」

 

 よかったああああ、メリーの怒りが収まったああああ。

 でも最初の返答の言葉が結構ドスが利いてて怖かったです。というか声が男みたいにかなり低音だったんだけど。知ってます? 女性って生態的に低音って出にくいんですよ。

 まあ出る人もいるにはいるけど……。あ、そういう類の人? そっか、そうだったか。

 

「いい、ゼルダ。今日は絶対安静にしてなさいよ」

 

「わ、分かってます!」

 

「何があってもこの部屋から出ないこと」

 

「はいっ、よっぽどのことがない限り出ません!」

 

「いや、マジで出るなよ?」

 

 不思議だ。ゼルダが言うとフラグにしか感じられねえ。……本物のフラグじゃないよな? 決してそういうのじゃないよな? 少し心配になりながらも、オレたちはゼルダの部屋を後にした。

 なんか見ておかないとすぐに無理しそうで怖いな。何もないことを祈るしかないか。

 

 

――――――――――

 

 

 いやあ、今日も蒸し暑いね! さすがにマグマは伊達じゃないね!

 暑いのに冷や汗を流しまくってる俺はなんなんだろうね!というか後ろが怖くて振り返れないんだけど誰か助けてください。

 

「……夏……?」

 

「ハイィ!」

 

 メリーの低音ボイスを聞いた俺は大袈裟に肩を跳ねた後、ぎこちないながらも振り返った。そこにいたのは街中ですれ違ったら(色んな意味で)百人中百人が振り返るのではないかと言う笑みを張り付けたメリーだった。

 あはは、笑顔って貼り付けるものじゃないと思うよ、メリーさん。怖いから止めてくれないかな。無理? そっか、残念。

 

「なんで今日もセクメトなのかしらねえ……?」

 

「いや、ヒバリちゃんに頼まれちゃって」

 

「よく言ったわね、今すぐマグマに放ってあげるわ」

 

「ちょっ、まっ! 足掴むな足、ってなんで持ち上げられるの!?」

 

 あと右足だけ掴んでるせいで俺の股関節が悲鳴を上げている! 折れる!

 必死になって説得をして五分。ようやく俺はメリーから解放された。ヤバイ。何がヤバイって右の股関節が運動してないのにヤバイ。折れてはないけど、運動したらバッキーンって逝っちゃいそうな雰囲気がある。

 このまま帰れたり……はしないですよねー。そうですよねー。ついでに今日の俺は遺体で帰らないことを願おうか! なりそうで怖いな、おい。

 

「まあいいわ、あたしは頭を狙えばいいんだし」

 

「俺の存在価値はヴェノムだけだな」

 

「そうね」

 

「ストレート!! ちょっとは否定してほしかった!」

 

「どこを否定しろって言うのよ?」

 

「ヒデェ……」

 

 俺は 精神的 ダメージ を 負った 。 効果 は 抜群 だ !

 ……ああ、もう。なんだかな。こんなことが日常に組み込まれてるから嫌になる。

 そのままボロクソ言われながら歩いているとセクメトに遭遇。ごめん、戦ってあげるほど気力が残ってない。戦闘に参加しないと味方から殺されるから参加するけどね。

 

「やっぱつらいな……」

 

「早くヴェノムにしなさいよ!」

 

「分かってるって」

 

 俺だってカンカンっていう弾かれ音に耐えながら必死に攻撃してるんだよ。俺の努力を是非とも察してくれ。スキルのおかげで最近は大分早くヴェノムになるようになってきたけどね。強化した甲斐があったよ。

 一方のメリーはと言うと……。おい、モルターの構えを取るんじゃないよ。慌てて離れると放たれる銃撃。怖い。というか、モルターってあんまり攻撃力がない気がするんだよね。銃身自体にはあるかもしれないけどさ。

 なんでそんな弾を持ってきてるんだろう。……俺を吹っ飛ばすためとか? あり得るな。

 

「所詮はアラガミね、弱いわ!」

 

「何でそんなに余裕そうに……」

 

「あたしは実力があるのよ」

 

「よく言うよ」

 

 俺への誤射率がめちゃくちゃ高いくせに。最近は俺が事前に察知して避けてるから低いけどね! それにしてもメリーがモルターを使ってるからセクメトに近付けない。俺はあの爆撃に巻き込まれたくはない。

 しかもメリーはoアンプルを持ってきているのか、割と長時間モルターを撃ち続けている。もうちょっと味方への被害とか考えてもらえませんかね?

 仕方ない。あのモルターが止んだら俺も加勢するか。それまで遠くから眺めてよっと。

 

「……ん?」

 

 ぼんやりとメリーとセクメトを眺めているとズボンのポケットが振動していることに気付いた。

 この位置に入っているのは……、携帯か。振動の長さからして電話か。依頼中だって言うのに誰からだ? 取り出して表示された名前を見てみると『オペレータ』の文字。……ヒバリちゃん?

 

「もしもし。どうしたの、ヒバリちゃん」

 

『あっ、夏さん! 今すぐアナグラへ帰投してください!』

 

「……どうしたの、そんなに焦って」

 

 いつもとは違う慌てた声のヒバリちゃん。何があったのかは分からないけど、なんかヤバそうだ。非常事態って言うのは分かるな。

 

『アナグラにアラガミが侵入しました! 今アナグラには非戦闘員しかいないんです!』

 

 俺の周囲の温度が下がった気がした。落としそうになった携帯に慌てて力を込めて握る。アラガミが侵入してきたって? あのアナグラに? どういうことだよ。

 ヒバリちゃんの言葉が嘘とは思えない。でも嘘であってほしい状況。……早く帰らないといけない。混乱した頭で出た答えはただそれだけだった。

 

「了解、すぐ帰る。……メリー! 一分で終わらせるぞ!」

 

「はあ? どうしてよ、馬鹿夏!」

 

「緊急事態だ。さっさと帰るぞ!」

 

「……何があったのよ?」

 

 俺が受け答えしている間、ずっと戦闘してくれていたメリーに心の中で感謝しながら状況を説明した。メリーは俺が説明している間もセクメトから一切目を離すことがなかった。

 説明が終わった時、メリーは「分かった」と頷いてセクメトを喰い千切った。

 ちらりとこちらに向けられたメリーの目は紅かった。

 

「すぐ終わらせるわ、手伝いなさい」

 

「言われなくともやってやるさ」

 

 猛攻を仕掛けはじめたメリーを手伝ってやるために、俺はセクメトに狙いをつけて走って行った。

 

 

――――――――――

 

 

 病室にて。

 

「本当に、懲りないのね」

 

「だ、だって、リッカさんが危なかったんですよ」

 

「ええ、人の命がかかっていたことは認めるわ。それを助けたゼルダは偉いわよ」

 

「だからって他人の神機を使うか!? 下手すりゃ死んでるぞ、馬鹿!」

 

 さすがに今回の説教には参戦させてもらうことにした。当然の権利だ、仲間が死にかけたんだからな。

 俺たちが戻った時にはすべてが終わっていた。ちなみに同じ頃にタツミさんたちも帰ってきた。いったいどういうことなのか。ヒバリちゃんに聞いてみたところリッカさんの方が詳しいらしいので、リッカさんに俺たちは事情を聞いた。

 

 結果、俺たち大憤慨。

 俺たちが怒るのは当たり前だろう。だって、アラガミを仕留めたのはゼルダだったんだから。

 しかしみなさんはお忘れではないだろうか。今現在ゼルダの神機は故障中のために使用不可能だという事実を。そう、本来ならゼルダがアラガミを倒せるはずがないのだ。得物である神機が使えないのだから。

 だがそこで終わるゼルダじゃなかった。ゼルダはなんと、他人の神機であるリンドウさんの神機を手に取って戦ったのだ。馬鹿げているにも程がある。普通だったらそこでオラクル細胞に捕喰されるのがオチだ。

 今ゼルダが生きているのは奇跡に近いのだ。

 

「で、でも私一人じゃなかったんですよ」

 

「幻覚でも見てたのか?」

 

「違いますっ、本当に……」

 

「さっさと休みなさい! あんたには休養が必要よ!」

 

「メリーの意見に賛成だ。今はゆっくり休め。な?」

 

「……はい……」

 

 しょんぼりとゼルダは項垂れた。今回ばかりはゼルダが悪い。

 まったく、ゼルダはどうして自分の身のことは考えないかね? 少しは考えてほしい。周りにいる俺たちはすごく見ていて怖いんだ。ここにいるやつらは仲間なんだ。その仲間が消えてしまうのは、俺は絶対に嫌だ。

 それにしても俺はただでさえメリーのことで悩まされているって言うのに、これ以上悩みの種を増やさないでくれ……。もういっぱいいっぱいだよ。頭が痛い。

 

「あたしたちは帰るわ」

 

「早く前線に戻りたいなら大人しく寝てろよ?」

 

「分かりました。休みます……」

 

「それでよし。帰るわよ、夏」

 

「はいよ。……じゃあな、ゼルダ」

 

 二度あることは三度あるって言うけど、仏の顔も三度までだ。次似たようなことがあったらメリーが暴走するに違いない。三度目がないんだけど、とため息を吐く俺の耳に「誰も話を聞いてくれないなんて、どうしたらいいんでしょう、レンさん……」とゼルダの声が聞こえた気がした。

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