GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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48、多忙

『力が欲しくはないか?』

 

 囁くは魔に憑りつかれし者。

 

 

――――――――――

 

 

「い、今ので何度目だ……?」

 

「多分、五か六……。さすがに疲れるわね」

 

 俺たちは今、エントランスのソファでぐったりとしていた。

 第一部隊のリーダー、ゼルダが抜けたところの埋め合わせを手伝っているのだ。

 埋め合わせをするのはいいけど、勿論俺たちにも元から入っている依頼もあるわけで。

 故に今日の仕事量はいつもの二倍なのだ。

 

 しかもその依頼内容が鬼畜なんだよな。

 セクメトとかのシユウ種がやたらといるんだよ。これって俺を殺しに来てるよね。

 あ、でもアイテールが出てきてくれたことが唯一の救いだったかもしれない。

 一応俺の神機を強化するための素材になるからね。

 

「夏さん、メリーさん! 次の任務をお願いできますか?」

 

「えぇー、面倒くさいわ……」

 

「ハンニバルのコア摘出の任務なんですけど……」

 

「行きましょう」

 

「切り替え早っ!?」

 

 さすがメリー。新種と戦闘するのがそんなに楽しみなのか、目を爛々と輝かせている。

 俺としてはもう勘弁してもらいたいんだけどね……。もう身体バッキバキだよ。

 まだ十八なんだけど、年寄りの気分だぜ。あぁー、口からため息しか出てこないよ。

 

「何ボサッとしてんのよ! さっさと行くわよ!」

 

「あ、俺もなの?」

 

「当たり前じゃない。今までパートナーとしてやってきたでしょ?」

 

「あー、うん。確かにやってきたけども」

 

「ならあんたが来るのも当然でしょ。技術も積みなさい」

 

「へいへい」

 

 でも正直に言ってしまえば、ハンニバルとは戦いたくないんだよなあ。

 だって、コアを抜きましたー、ハイ終了ー、ってできないんだよ? どうせやるならそこで終わりたい。

 上の見解だとハンニバルはコアを再生するらしいから、それも確かめに行くらしい。

 つまりできたらコアをたくさん取って来てねー、という依頼らしい。

 ……面倒くせええええ! とっても面倒くせええええ。

 最低でも五個だってー、やってられるかあ!

 

「ちくしょう、なんでこんなに鬼畜なことに……」

 

 ちょっと前まではアーク計画とアラガミ惨殺で仕事量が少し減ったって言うのに、いきなり増えやがった。

 そんなにいきなり増えたら身体がついていけなくて潰れちゃうよ。

 ふっ、下っ端はいつだって辛い世の中を生きているのさ……。

 

「……とりあえず、行くか」

 

 いつの間にかメリーはエレベーターに乗り込んで行ってしまった。

 俺? 置いてかれたに決まってるじゃないか。何を当たり前のことを。

 俺は今日何度目かのため息をついてエレベーターに乗り込んでいった。

 

 

――――――――――

 

 

 今、何戦目だろうな……。ちなみに数えるのは二戦目から止めた。

 早すぎる? ハンニバルが強いから二戦目から後は数え忘れたんだよ。

 まあコアの数を数えたら分かることだけどな。

 

「あぁー、疲れるっ!」

 

「メリーが行くって言ったんだろ。俺は反対したぞ」

 

「あら、夏の反対意見なんて聞いてないけど」

 

「いや言ったよ? 俺の心の中で」

 

「それじゃ聞けるわけないじゃない」

 

「いつものことを考えたら、てっきり読んでるかと」

 

 なんでこういう時に限って読んでくれないんだろう。いつもはプライバシー関係ないのに。

 ため息を吐きながら俺は手元の神機を見る。意思を持っているように見えるそれはもぐもぐと口を動かして捕喰中だ。一通り動き終わってから引き寄せて確認するときちんとコアがあることが分かった。うん、成功。

 

「どう? 捕喰、ちゃんとできた?」

 

「バッチリ。それにしても疲れたー」

 

「そうねえ。明日はボイコットしようかしら」

 

「さすがにそれは勘弁してくれ」

 

「冗談よ、安心して。明日もちゃんとアラガミを刺殺するから」

 

「せめて仕事って言ってくれよ。事実だけどさ」

 

 確かに剣で倒してるから語弊ではないのかもしれないけどさ。言い方ってものがあるじゃないか。あとやっぱり女が言う言葉じゃない気がするんだよ。もうちょっとオブラートに包めないかな。

 どうにかしてちゃんと女らしくならないもんかな。せめてお洒落とか……うん、余計なお世話だな。そういうのに目覚めるときは勝手に目覚めるだろ。

 

「なんかすごい怠いわ……」

 

「ん、珍しいな。お前がそこまで怠いなんて」

 

「最近身体にいらない力がかかりやすいのよね。無駄に体力を消費しちゃうわ」

 

「へえ。……そういえば、前の眠気はもういいのか?」

 

 少し前、アーク計画よりも前の時、やたらとメリーが眠りたがっていたことを思いだす。討伐依頼などの間は問題なかったけど、特異点捜索などのときは地面に横になって寝てしまうこともあった。

 メリーには似合わない、随分と無防備な行動は今でも覚えている。いまだに原因は分からないが。

 

「ええ、今ではちゃんと睡眠時間を採ってるおかげか問題ないわ」

 

「ならいいんだけど……」

 

「……あら、心配してくれたの?」

 

 メリーから向けられた、純粋な好意の笑顔。思わずさっと地面に顔を逸らしてしまう。

 だ、だだだって! ふ、不意打ちと変わりないじゃないか。その、すごく可愛かったんだから……。「ん?」とメリーが俺の様子に気付いて、顔を近付けてきた。うっ、分かっててやってるな!?

 

「何よ何よー。顔が赤いわよー?」

 

「う、煩いな。気のせいじゃないのか?」

 

「案外初心なのねー。そこそこ顔が良いからそこら辺の女子を落としてるかと思ってたわ」

 

「お前の中の俺の認識は何なの?」

 

 俺が女の子を落としてるとか、何をどう見たらそうなるんだよ。

 俺は年齢=彼女いない歴なんだからな。いい出会いがないんだよ。何故か俺の周りはトラブルメイカーばかり集まってくるんだ。メリーとかいい例だな。

 

「ふふ、いじり甲斐があるわね!」

 

「満面の笑みで言われましても」

 

「何? それともいつものように暴力で虐めてくださいって?」

 

「いやいやいや! 一言もそんなこと言ってないからね!?」

 

 何ですか、その不思議な解釈の仕方は。どうやったらできるんだよ。少なくとも俺にはできない。

 はー、メリーにいい雰囲気にされたのにメリーにいい雰囲気をぶち壊されたよ。さっきまでの俺の態度が凄く馬鹿みたいに感じるじゃないか。なんか損した気分。

 

「はあ、それにしても疲れたわ」

 

「確かに。今日は仕事しすぎたぜ」

 

 ちらりとメリーに視線を向ける。俺はこいつを頑張り屋だと思うんだ。

 メリーは確かに強い。俺以上の力を持っているが、それでも女という性別を変えることはできない。

 俺が弱いからというのもあるかもしれないけど、男の俺がへばっているのだから女であるメリーが疲れていないわけが無い、と思う。

 そうだな……、としばらくの間思考して、一つの考えを導き出す。

 

「今度、休暇でもとって旅行するか?」

 

「は?」

 

「バカンスだよ、バカンス。たまにはゆっくりのんびりしようぜ」

 

 あ、いやでも俺たちだとそれは難しいか? ということは日帰りか、依頼のついでに行くことになるな……。でも旅行とか言ってみたいよなあ。ちょっと前までは飛行機に乗って世界中行けたらしいし。今のこの世の中を考えてみたら信じられない光景だよな。

 

「んー、旅行……。そうねえ……」

 

「どっか行きたいところとかあるか?」

 

「……どうせなら、綺麗な夕日が観たいわね」

 

「……ぶっ、それなら贖罪の街だな! あそこ以外に夕日が綺麗な場所は知らないぞ!」

 

 依頼後に見るあの夕日以外、俺は綺麗に見られる場所を知らない。ある意味神機使いの特権だと思う。人が減り、明かりが消えた贖罪の街では夜もいい。アラガミは怖いけど、満天の星空を眺めることが出来るからだ。あー、そんなこと言ってたら行きたくなってきた。サカキ博士の件もあるし、今度行くか。

 

「とにかく帰りましょ」

 

「ああ、そうだな」

 

 連戦の後だったというのに、身体が少し軽かった。

 

 

――――――――――

 

 

 ただいまメリーの部屋。もう依頼はないらしいのでメリーの部屋にお邪魔してゆっくりしている。よく飲めるなあ、そう思いながらメリーの手元を見る。メリーが今飲んでいるのはコーヒー。もちろんブラックだ。

 なんで飲めるんだ、そんな苦いもの。俺には全く理解できない。ちなみに俺は冷やしカレードリンクを飲んでいます。

 

「よく飲めるわね、そんな摩訶不思議な飲み物」

 

「オイ待て、その言い方だと俺の舌も摩訶不思議に聞こえるぞ」

 

「違うの?」

 

「違うよ!」

 

 お前の舌もどうなんだ、と言いたかったが言うのは止めておいた。

 ただでさえ疲れているっていうのにこれ以上疲れさせられたら嫌だからな。あと言ったら絶対殴られる気がしたから。痛いの嫌い。

 それにメリーも疲れていると思うしな。俺のツッコむ気力もないし。

 

「明日、休暇取りたいな……」

 

「そうね、ちょっと給料が割に合わないわ」

 

「メリーが金について文句を言うなんて珍しいな」

 

「あら、夏程じゃないわよ」

 

「そうだろうね」

 

 こいつはまた痛い所を突いてきやがって……。

 俺の金欠問題は未だに解決していない。きっと一生解決しないんだ。お金を貯めておいてもいつの間にかなくなってるんだよね。そしたらいつの間にか知らない物が倉庫に入ってるんだよね……。

 ……俺、何してるんだろう。

 

「あたしはもう寝るわよー。ほら、出て行った出て行った」

 

「へいへい。明日もよろしくなー」

 

「明日も死なないようにねー」

 

「……頑張ります」

 

 あっけらかんと言い放ったメリーの言葉を背に、俺はメリーの部屋を後にした。

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