GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
『アッハハハハ!! 光栄に思えよ? お前は偉大なるこの俺の踏み台になれるのだからなあ!』
そうして男と自分は、堕ちた。
――――――――――
どうも、珍しくメリーに叩き起こされなかった夏です。
なんかいつもやられていることをやられないと急に不安に感じるよね。……いや、あれが良いってわけじゃないけど。
「メリー。……ありゃ、開いてるよ」
どういうことか、メリーの自室の鍵がかかっていない。
あいつにしてはやけに不用心だなー。とりあえず中に入る。
……ん? メリーはまだ布団の中なのか。早起きのあいつにしては珍しい。
しかもうなされてるしさあ。大丈夫か?
「うぅ、ぐ……」
「おいおい、大丈夫なのかよ、これ……」
結構うなされてるみたいだ。額に汗が浮かんでいる。
とりあえず持っていたハンカチでその汗を拭きとってやろうと近づける。
「っ、夏!」
「はいいいい!!」
と、メリーがいきなり起き上がってきた。しかも俺の名前を呼んで。
すみませんでしたああああ!! 俺って何か悪いことしたっけ!? あわあわと慌てる中、俺はじりじりと手を使って後ずさる。なんで手でかって? 腰が抜けたのさ。……そこ、かっこ悪いとか言うな。
「……夏?」
「お、おはよう、メリー! いい天気だね!」
「……たった今、ハンニバルに刺し殺されてなかった?」
「なんで勝手に俺を殺しちゃってるのかな!?」
そうか、俺ってそんなにメリーに嫌われていたのか……。割とショック。
なかなかいい感じのコンビだったと思ったんだけどなあ、嫌われていたのか。俺の心が結合崩壊! ……こんなこと言えるならまだ意外と平気かもしれないな。
「今日の任務、ハンニバルだったわよね?」
「え、あ、うん。昨日と同じ」
「じゃああたし一人で行くからあんたそこら辺にいなさいな」
「そこら辺って何!?」
「煩いわね。言外で邪魔だからついてくんなって言ってるのよ」
「おおぅ、マジですか……」
というわけで、改めて、夏です!
え? あの後どうなったって? いつも通り理不尽にボコボコにされたんだよ、言わせんな恥ずかしい。
さて、エントランスに出たらようやく復帰したらしいゼルダを見かけました。
「なあ、悪くない話だろ?」
「はあ……」
ただし他にもいましたがね。
カレルじゃないか。なんか久しぶりに見た気がする。それにしてもこの光景を見て状況が理解できてしまう俺は何なんだ……。
大方、カレルが金のいい依頼を見つけたんだけど一人じゃ辛いから近くにいたゼルダを捕まえたってとこだな。復帰したばっかりなのに無理させるんじゃないよ。
「俺もいれてくれよ、その依頼」
「あ? ……なんだ夏か」
「なんだってなんだよ」
「おはようございます、夏さん」
「おはよう。元気みたいで何よりだよ」
人当たりの良い笑顔を浮かべるゼルダを見て少しホッとした元気そうだな。
それからカレルの方へ視線を向けて……訝しげに俺の方を見ているカレルに気付いた。ん? なんだ、どうしたっていうんだ。
「お前、いつもメリーと一緒だろう? あいつはどうしたんだ」
「メリー? 置いてかれたよ」
なんで置いて行かれたんだろうな? 二人の方が多少楽なのに。
邪魔だからって、いつも一緒だったんだから俺を置いて行く理由にはならないんだけど……。俺を連れて行ってくれてもよかったのにな。
「んで、その依頼は何なんだ?」
カレルが持っていた依頼書を見せてもらい、討伐対象の欄を確認する。
特に文句を言ってこないところを見ると同行者は誰でもいいのかもしれない。まあゼルダを解放する気はなさそうだけどな。
「ウロヴォロス、堕天……だと……?」
「はい。私としては復帰にちょうどいい任務だと思いまして」
「よし、それなら五分後に出撃するぞ。準備しておけ」
ちょっ、えぇ、マジですか!?
ただのウロヴォロスでさえもつらいのに、その上位版ともいうべきウロヴォロス堕天が相手ですか!? どうしよう、これって絶対殺しに来てるよね。首突っ込むんじゃなかった。
でもゼルダだけを同行させたら負担かかりそうだしなあ。……うう、俺が涙をのむか。
「……決定事項かー」
気付けば周りにゼルダとカレルが見当たらない。準備しに行ったようだ。
うーん、この場にメリーがいてくれたら少しは楽になりそうだったのになー。相手はウロヴォロス堕天だから絶対行くっていうだろうしな。
はあ、なんでこういう時に限っていないんだあいつは。
「俺も支度しますかね」
とりあえず死なないように頑張ろう、うん。
――――――――――
さて、現在エイジス島。
……えっ、なんでエイジス島なのかって? 知らないよ、ウロヴォロス堕天がいたのがここだからでしょ。なんかノヴァの触手がどうたらって周りは言ってた気がするな。うろ覚えだけど。
最近その触手のせいで色々と大変らしいよ。……うん、色々と。
「今思ったんだけど」
「あん?」
「ヴェノム要員って二人もいらなくないか?」
あんまりカレルと依頼に行く機会がなかったから全然気づかなかったけど、ヴェノム要員としてダブってるんだよね!
うーん、俺の唯一の特技がまさかかぶっていたとは。なんか悲しい。あと気のせいかウロヴォロス堕天がなんかあんまりヴェノムになってくれない気がするんだけど……、うん気のせいだよね。
「あとさ、もう一人連れてくるっていう考えはなかったの?」
「そうしたらもっと報酬減るだろう。お前で限界だ」
「何その俺がお荷物みたいな発言。結構聞き捨てならない」
「あぁ? 俺は本当のことを言ったんだろうが」
「あーもうっ! どっちもお荷物ですから早く加勢してくださいっ!」
「「酷い!!」」
ゼルダってさ、メリーと違って本心から毒舌を吐くから殺傷力大きいんだよね。
そっか、俺ってばお荷物なんだ。……ははは。おかしいな、目から汗が……。というかこんなのとばっちりだ! 俺が何でこんなに巻き込まれるみたいな形で弄られなきゃいかん。
ゼルダに言われたから本当に俺の心が結合崩壊しそうなんだけど。俺の心に言葉と言う名の刃物が刺さってるぜ……。
「はぁ、面倒だ。あとどれくらいか、分かるか?」
「倒せばいいんだよ、倒せば」
「どうでしょうかねぇ……」
ゼルダからの口撃を避けるために話題を上げる。ゼルダの口撃がやんだ。
うんうん、疲れたときは手抜きが一番だよね! ……おかしいな、寒気がする。
「お前ら手ぇ緩めてないで攻撃しろよ!」
結果、ウロヴォロス堕天に一番攻撃をしているのは遠距離のカレルというおかしなことになった。そんでもってカレルが一番ウロヴォロス堕天に狙われることになった。
いつまでも長い間それを避け続けることが出来るわけではなく、ついに吹っ飛ばされカレルはダウンした。ゼルダは慌ててカレルにリンクエイドしに行く。
とりあえず二人でリンクエイドしに行っても意味ないから俺は攻撃し続けるか。
「お前を無理にでも連れてきた意味がなくなったじゃねえか!!」
「意味って?」
「囮に決まってるだろう。チッ、こんなことなら連れてくるんじゃなかった……」
「俺は報酬目当てじゃないぞ。ゼルダに負担がありすぎたらまた病室送りだろう?」
「なら、お前の報酬はなしでも構わないんだろうな」
「それとこれは話が別だろ。俺だって金欠なんだし」
「それだと俺が金欠みたいに聞こえるだろう! 違うからな!」
「てーつーだーってー!!」
あ、いけない、今度はゼルダに攻撃が!
案の定、ゼルダがウロヴォロス堕天に撥ねられてダウンした。うあああ、ごめんよゼルダ!
「ご、ごめん、ゼルダ!!」
「……酷いです……」
「ああああ! ごめん! だから泣かないで!」
ゼルダが泣き止んだのは、頑張ってカレルが一人でウロヴォロス堕天を討伐した頃だった。
……うん、なんかごめんよ。
――――――――――
「……あたしも行きたかった」
エントランスのいつものソファにて。
向かい合うようにして座っているメリーは頬をぷくっとさせてそう言った。
本性を知らなかったら落ちてるな、俺。
「仕方ないだろー? お前が勝手に行っちゃったんだから」
「うぅー、夏だけズルいわよ」
「いや、そう言われてもな。……お前に置いてかれて俺も寂しかったんだからなー」
俺もぷくっと頬を膨らませる。
置いてかれるってさ、なんだか蔑ろにされてるみたいで嫌なんだよな。あの時の、友達がいなかった頃の寂しさを思い出しちゃうから、一人は嫌いだ。
それでも時々一人になりたい時もあるんだから不思議なもんだよな。
「あんた、今のわざと?」
「頬のこと? 一応、メリーへの仕返しで」
「あたしじゃなかったら落ちてるわよ」
にやにやとからかうような目線を送ってくるメリー。
別にそういう目的があってやったわけじゃないんだけど。でも俺って基本的にモテないからそういうお世辞はいいよ。
友達ができるようになって初めてのバレンタインデーは女子からミノムシ貰ったからね、俺。「好きでしょ?」だってさ。あの頃は虫が好きだったから素直に喜んだけどさ。
……今から思うと、俺って何をやっているんだろうなあ。
「あ、そう言えばヒバリさんからメールきたのよ」
「へえ? 珍しいこともあるもんだな」
「あんたにも届いてるはずよ。見てみたら?」
メリーにそう促されて俺はターミナルまで移動し、メールボックスを開いた。
えーっと、何々? ……サカキ博士からの依頼だと。何する気だあの人。明日の十五時から十八時までの三時間の間、断水します。トイレが使用不可になるので気を付けてください……。
いや、本当に何をする気なんだよ、あの人……。
「どうせ碌でもないものなんだろうな」
「でも最近あの辺り、ちょっと甘い匂いがするのよね」
「えっ? ラボラトリ区画にお前が行くとは思えないんだけど」
「あたしも応急手当くらいは学ぼうと思ってね」
「ふーん」
なんだ、意外と真面目なやつだな。
しかし甘い匂いか……。甘い匂いに俺は良い記憶がないんだけど。まああれは甘ったるい臭いだったけどね。そのおかげで俺は甘いものがちょっと苦手になりました。
代わりに冷やしカレードリンクがますます好きになったよ。美味いよね、あれ。
「……マジ何したいんだろうな、あの人」
「さあね。おかしなことだったらあたしが潰すから問題ないわよ」
「笑顔で言われると逆に怖いんですけど」
まあ、とりあえずは様子見で行こうかな。
サカキ博士の妙な行動に不思議に思いつつも、俺はそう結論付けた。