GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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51、シユウ堕天

『大丈夫か!? おいっ、しっかりしろ!』

 

 最後に聞こえた声は誰のものだっただろうか。

 

 

――――――――――

 

 

 今日も一日が始まりました、おはようございます。

 さて、ただいま俺はエントランスに来ております。

 

「なあ、カレルのも手伝ったんだろ?」

 

「そうですけど……」

 

「なら俺のだって手伝ってくれていいだろ」

 

 昨日と同じような光景を今日も見かけました。

 今日はシュンかあ。また第三部隊かあ。……面倒くさそうだなあ。

 遠巻きでその光景を眺めている俺をメリーが小突いた。行くよって事ですね。

 あ、今日はメリーも一緒だよ。今日は自分から起きてくれました。

 

「……あ、おはようございます、夏さん、メリーさん」

 

「「おはよう、ゼルダ」」

 

「何さり気なく無視してんだよ」

 

 おっと、さり気なく無視する形になってしまったらしい。

 悪い悪いと謝りつつシュンが持っていた依頼書を取りあげて内容を確認する。

 

「……シユウの残党探し?」

 

「そ。昨日大量発生した奴をなんとか殲滅したんだが、その居残りがいるかどうかを探して来いってやつ」

 

「実際にシユウ堕天が目撃されているそうです」

 

「へえ、面白そうね」

 

 なんで、なんで二日連続で俺の苦手なアラガミが来るんだ……!

 これってどう考えても俺に対する嫌がらせだ。誰の嫌がらせかは知らないけど。

 だって昨日は俺のトラウマ怪獣ウロヴォロスで、今日は俺の神機が通らないカンカン怪獣シユウだよ?

 このコンボは酷い。俺は天から死ねとでも言われているんだろうか。

 

「今日は俺パ……」

 

「あたしたちもそれを手伝わせてもらうわよ」

 

「なんで!? 俺は今断ろうとしたのに!」

 

「あたしは正直シュンはどうでもいいのよ。ゼルダが心配なの」

 

「正直だな……。気持ちは分かるけど俺は……」

 

「隊長命令よ、な・つ?」

 

「ちっくしょー!!」

 

 どうしてこんなやつが俺の隊長なんだー!?

 

 

――――――――――

 

 

 あー、そういうわけでただいま嘆きの平原。

 そんな場所でカンカンと虚しい音が響いている。言わずもがな俺の神機からである。

 あははー、なんかもうこのカンカン音よりも聞きなれてしまっている俺の耳が悲しいよ。

 

「なんだよ、結局こうなるのかよ……」

 

「やーくたーたずー!」

 

「そんなに俺を馬鹿にしたいのかお前は!?」

 

 妙に嬉しそうにメリーが俺を貶した。なんなんですかあなたは。

 俺って意外と傷付きやすいんだからな。いやまあ、これで大分精神鍛えられてるんだけど。

 でもだからといって感謝するつもりはない。というかこれで感謝したら俺本当のドMだから。

 なんか考えてたら悲しくなってきた。もう考えるの止めよう。

 

「というかヴェノム要員って二人も必要ないわよね」

 

「昨日も同じこと言われた気がする……」

 

 カレルの場合、ヴェノム効果のある弾を使っているだけだけどね。スキルとして持っているのは俺とシュンだ。

 でもヴェノム効果が二人いたっていいじゃない。その分ヴェノムが加算すると思ってくださればいいのですよ、はい。

 

「俺だって頑張ってるんだからね!」

 

「言い訳すんじゃねーぞ馬ー鹿」

 

「メリー、その言い方だと女性に聞こえないから止めて!」

 

「男性の物言いですね、完全に……」

 

 男化してどうすんだよ、メリー。というかまるでシュンが言っているようにしか聞こえないから。

 混同しちゃいそうで怖いんだよ。なんかご丁寧に声まで変えやがったから。

 ……あいつの性格が良かったら、モノマネを頼むんだけど。

 

「結合崩壊、確認しました」

 

「脆いのよ!」

 

 シユウ堕天の頭と翼が結合崩壊した。

 メリーのやつ……、いい笑顔を浮かべてるなー。

 相変わらず暴力的と言うかなんというか。

 

「お疲れ、上出来じゃない?」

 

「被害は最小限、上出来ですね」

 

「うっし、お疲れさん!」

 

「おう……は?」

 

 ちょ、え、あれ? 今、結合崩壊させたばっか……あれ?

 シユウ堕天倒れてる……メリーがコアを回収してる……二人は神機の様子を見てる……。

 ん? なんか展開が早すぎるような……。ん?

 というかまた俺が蚊帳の外になってる?

 

「何ぼけっとしてんのよ、さっさと帰るわよ」

 

「あ、うん。……分かってるから耳引っ張らないで!」

 

 メリーが思い切り俺の右耳を引っ張る。割と手加減なく引っ張ってる。

 やめてえ! まだ身体の一部を失くしたりしたくないんだよお!

 

「あんたがちゃんと歩かないのがいけないのよ」

 

「歩いてるから! 耳、ブリュっていっちゃうから!」

 

「煩いわねえ、もうちょっと静かにできないの?」

 

「外れるうううう!!」

 

「……普段一緒じゃねえから分かんねえんだけど、いつもああか?」

 

「ええ、いつもああです」

 

 そこの二人、普通に会話してないで俺を助けてくれよ!

 

 

――――――――――

 

 

「おー、痛……」

 

 痛みにジンジンする俺の右耳は、多分赤いんだと思う。

 俺はそっと右耳を押さえながら病室へと来た。くそ、メリーのやつめ……。

 

「一条さー……ん?」

 

「あ、夏くん」

 

「やあ、耳が赤く腫れ上がっているがどうしたんだい?」

 

 なんでサカキ博士が病室にいるのー!?

 しかも見た感じ、一条さんと二人で何かの話をしていたみたいだし。

 もしかしてサカキ博士も怪我……をした様子はなさそうだな。

 じゃあなんで?

 

「実は私、少し前まで技術屋だったんですよ」

 

「興味深かったから少しそのことで話をしていたんだよ」

 

「私はサカキ博士と違って二流も二流。机上の空論で実現には程遠かったんですけど」

 

「へえ、その資料って今でも残ってるんですか?」

 

「いえ、盗難に遭いまして。今はどこにあることやら……」

 

「大変ですね」

 

「まあ技術屋を辞めるいいきっかけにはなりましたよ」

 

 苦笑しつつもそう言う一条さんの言葉に後悔はなさそうだ。

 サカキ博士とはそこで別れ、一条さんに手当てをしてもらうことになった。

 あ、でも後でメリーと一緒に研究室に来るようにサカキ博士に言われた。

 なんでも例のことで話があるんだってさ。進展があったんだろうか。

 

「どうしたんですか、この耳……」

 

「メリーに思い切り引っ張られて、こうなりました」

 

「またメリーさんですか。大変ですねえ」

 

「最近あいつだから仕方ないって思うようになった自分が嫌です」

 

「あ、あはは……」

 

 一条さん、その曖昧の笑みは肯定も同じです。

 俺は一条さんから貰った氷を入れた袋で冷やすことになった。

 うー、冷たい……。冷たすぎて耳が痛い。

 

「メリーさんは乱暴で困りますね」

 

「誰が乱暴よ」

 

「え……うわあ!?」

 

「一条さん!?」

 

 一条さんの腰にメリーの回し蹴りが見事に入った。

 結構な音がしたんだけど……大丈夫かなこれ。

 痛そうに腰を押さえる一条さんは涙目だ。メリーがすみません……。

 

「イタタ……、手荒な挨拶ですね」

 

「随分ポジティブね、一応腰を砕こうと思ったんだけど」

 

「物騒だなオイ!! 大丈夫ですか、一条さん」

 

「な、なんとか……。湿布を貼って大人しくしてれば問題なさそうです」

 

 よろよろとよろけながらも近くにあった椅子に座って一息つく一条さん。

 「下手に動いたらぎっくり腰になりそうです」それ笑って言うことじゃないです。

 しかも隣にいるメリーはぎっくり腰にしてあげようかと言わんばかりの笑みを……。

 お願いだから、病室で暴れるのは止めてくれ。

 

「そ、そうだ! サカキ博士に呼ばれてるんだよ」

 

「あんたが?」

 

「俺もそうだけど、メリーも。一緒に来てくれって」

 

「えー、行きたくない。変態の巣窟だもの」

 

「まだそんなことを……とにかく行くぞ。一条さん、お大事に」

 

「あ、はい。また来てくださいねー」

 

 一条さん、それって病室の先生が言う言葉じゃないと思うんですけど。

 どことなく一条さんもズレているよなあ、と思いつつ俺たちはサカキ博士の研究室に来た。

 まだメリーは嫌そうに顔を顰めている。そんなに嫌か。

 

「やあ、よく来てくれたね。夏くんはさっきぶり」

 

「どうも。……それで、用というのは?」

 

「ああ、うん。依頼の件なんだけどね、……また被害者が出た」

 

「「っ!?」」

 

 思わず息を呑む俺たち。メリーが更に顔を顰める。

 サカキ博士曰く、一応そこら一帯は立ち入り禁止地域に指定して今は入る者がいないのだという。

 しかしアラガミはそんなもの知ったことではない。普通に徘徊する。

 それを神機使いが討伐しに行ったところ、やられたらしい。

 危険なのに出撃した理由だけど、今までの現場から考えた出没地域から相当離れていたため大丈夫だろうと判断したらしい。

 

「それで襲われた、と」

 

「嫌ねえ……」

 

「出撃した四人の内、一人は重傷ながらも帰還。今は様子見だそうだ」

 

「そう言えばお……ネエサンの姿が見えなかったな」

 

 もしかしたらそっちの方に回っていたのかもしれない。

 一条さんも回るかもしれないのに、腰やっちゃって大丈夫だったかな。

 メリーはどうも反省してなさそうだけどな。

 

「資料は?」

 

「まだ調査中さ。……しかし、帰還した一人が妙なことを呟いていてね」

 

「妙なことですか?」

 

「“悪魔を見た”と“仲間の脳が……”。この二つだね」

 

「……つまり今までのと違って脳もやられたわけね」

 

「どういう心境の変化は分からないけど、アラガミだとすれば情報収集だろうね」

 

「だったらどうして今までは食べなかったんです?」

 

「何にせよ、まだ分からないことだらけだよ」

 

 なんかどんどんグロテスクなことになってきてるな……。

 そんな相手といずれ衝突しなくちゃいけないんだろ? うぅ、俺の人生終わりかも。

 そこまで凶暴な相手とやりあえる自信がないよ。

 第一、メリーに特訓つけてもらっててもまだこいつには届きそうにないんだ。

 結局メリー頼りになっているところが情けないよなあ。

 

「今まで大人しくしていたと思ったら急にこれだよ」

 

「まるで人間みたいな心の変化ね」

 

「未知の相手とか、エンカウントしたくないな……」

 

「弱音吐くんじゃないわよ」

 

 バシッとメリーに頭を叩かれた。痛いから止めて!

 叩かれた場所を押さえて思わず蹲ると、メリーから呆れたため息が出た。

 なんで俺、呆れられなきゃいけないの?

 

「明日はあたしが調査に行くわ」

 

「おおっ! それはありがたいね!」

 

「じゃ、じゃあ俺も……」

 

「あんたはいると足手まといよ、ついてこないで」

 

「……」

 

「おやおや、フラれちゃったね」

 

 サカキ博士に殺意を抱いた瞬間だった。

 ……あ、俺はメリーと違って物騒なことはしなかったからな?

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