GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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52、ボルグ・カムラン堕天

『どこで、間違ったんだろう』

 

産まれたときからが正解かもしれない。

 

 

――――――――――

 

 

「つーわけで、頼む! 手伝ってくれ!」

 

「わ、分かりました!」

 

 おかしいなー、同じような光景を昨日も一昨日も見たような気がするなー。

 今日ゼルダに応援を要請したのはタツミさんだった。

 そう言えば最近は忙しくてあんまり話してなかったな。

 

「タツミさん、それ、俺も手伝っていいですか?」

 

「おっ、夏! そいつはありがたいぜ!」

 

「あれ、今日はメリーさんと一緒じゃないんですか? また置いてかれた?」

 

「うん、置いてかれた」

 

 実は朝、やっぱり不安だから俺も一緒について行くってメリーに言ったんだよね。

 そしたら笑顔で「お断りするわ」って言われて、鈍器で、殴られて……。

 簡単に言うと今の今まで俺は気絶していました。暴力反対。

 というか、今から考えたらよく生きてたな、俺。鈍器で殴られるとか普通死亡だろ。

 

「……大変だったな」

 

 ゼルダとタツミさんにそれを話すと心底気の毒そうに言われた。

 タツミさん、“だった”んじゃないんです、現在進行形なんです。

 俺ってなんでこうも面倒事に巻き込まれるかなー。すごい嫌になってくる。

 

「俺のことはいいんで。今日は何の依頼ですか?」

 

「ボルグ・カムラン堕天です」

 

「サカキ博士から頼まれちまってな。結構な量あるんだが……」

 

「……なんかアラガミの素材、多いですね」

 

「何に使うのか皆目さっぱり見当がつかねえが、頼まれたんならやり遂げねえとな」

 

 タツミさんって本当にいい人だな。

 多分タツミさんなら断らないって思ってサカキ博士も頼んだんだろうけど。

 でもこのリストを見る限り一人はちょっと辛そうだな……。

 だからこそゼルダに頼んでたっていうことかな。

 

「タツミさんって、ちょっと損してません?」

 

「そうか? 人から頼られるって事は信頼されてるって事だろ? その信頼に応えねえと」

 

「兄貴……!!」

 

「ちょ、どうした、夏」

 

 タツミさんからすごい兄貴のオーラが……!!

 なんだろうな、一生ついて行きたいって思えるオーラがあるんだよ。

 まあ多分本人の前で言ったら謙遜とかするだろうから言わないけど。

 俺の心の中にとどめておきます。

 

「メリーさんがいれば更に戦力アップだったんですけど」

 

「ゼルダ。お前、俺があいつと仲悪いの知ってるよな」

 

「……あ」

 

「ある意味今日俺を置いて行ってくれてよかったな……」

 

 でもやっぱり置いて行かれたのは寂しい。

 なんかメリーから信頼されていないみたいな感じがしてさ……。

 俺だって、弱いなりに役立てるように今まで頑張って来てたのに。

 もっと精進しろって事なのかなあ。

 

「よしっ、じゃあ各自で準備を整えて出撃するぞ」

 

「了解です」

 

「分かりました」

 

 俺はいつも依頼後にアイテムは補給してるから、待つとするか。

 

 

――――――――――

 

 

 というわけで愚者の空母です。なんかここに来たのも久しぶりな気がする。

 最近の俺の依頼先ってすごい偏ってるよね、どうしてだろう。

 しかもサカキ博士からの依頼があるからしばらくは贖罪の街に行くことが多くなりそうだし。

 あー、アーク計画が終わったっていうのに神機使いって忙しいな。

 

「斬っ!!」

 

「はあああ!!」

 

「いっただきぃ!!」

 

 はい、戦闘中です。暢気に心の中で愚痴ってたけど、戦闘中です。

 最近は俺の苦手なアラガミばかり行っていたせいかボルグ・カムラン堕天戦がちょっと楽に感じる。

 あくまでちょっとだから、大したことではないんだけど。

 ちなみに荷電性のボルグ・カムランだ。

 

「受け渡しますよ!」

 

「おっ、噂のリンクバーストだな!」

 

「サンキュー!」

 

 ゼルダからアラガミ弾を受け渡された。前衛しかいないから放てないがな!

 だからか、ゼルダは一つずつ受け渡して残った一つをボルグ・カムラン堕天に放っていた。

 ふー、それにしてもヴェノム大のおかげで俺の存在理由が出来ている気がするよなー。

 逆にこのスキルがなくなったら俺はお払い箱のような気もするんだけどね……。

 ……ん、この三日でそのこと語りすぎだろって? いいだろ、語っても。

 

「っ逃げる……!」

 

「させねえぜ!」

 

 逃亡のために俺たちに背を向けたボルグ・カムラン堕天。

 それをタツミさんがスタングレネードを使用することにより阻み、スタン状態にさせた。

 

「今だ!」

 

「感謝です!」

 

 身動きできないボルグ・カムラン堕天に対し、ゼルダは目一杯に力を溜めチャージクラッシュを叩き込んだ。

 そしてボルグ・カムラン堕天は地面に倒れ伏した。

 

 

――――――――――

 

 

「どうだった、贖罪の街は」

 

「特にこれと言って収穫は無しね」

 

「打って変わって身を潜めたな、オイ……」

 

 二人で今日の成果について話し合う。

 俺は特に変わったことがない普通の依頼だったと報告し。

 メリーも特に何もなかったと報告した。

 

「お茶を淹れましたよ」

 

「ありがと」

 

「ありがとうございます」

 

「というかなんで病室で話し合いしてるんですか、おかしいですよ普通」

 

 にこやかな笑顔で静かに一条さんがツッコんだ。

 一条さんの言うとおり俺たちは今、病室で話し合いをしているのだ。

 ……うん、まあ場違いだっていうのは俺が一番分かってるけど。

 

「いえ、あの昨日の被害者に会いたくて、みたいな……」

 

「ああ、彼。彼はまだ要安静なので面会拒絶中です」

 

「寝言を言ってるって聞いたけど?」

 

「……悪魔を見た、ですか?」

 

「それよ」

 

 ビシッとメリーが一条を指差した。失礼だから止めなさい。

 呆れつつも手を下ろさせるとメリーは不服そうにしながらも一条さんが淹れてくれたお茶を飲んだ。

 どうやら美味しかったらしい。少し機嫌が直った。

 

「一口に悪魔と言っても結構な種類があるよな?」

 

「そうですね、宗教によって悪魔の概念も異なりますし」

 

「そういう問題じゃないと思うわよ。第一想像上の生き物じゃないと思うわ」

 

「それもそうですね……」

 

「アラガミか、人か。問題はここよ。人の線は薄そうだけど」

 

 頬に手を当て考え込むメリー。

 うーん、でもアラガミの可能性も低いと思うんだよね、俺は。

 あまりにも死体が綺麗に食べ残され過ぎてるし、さすがにそこまで知識はないと思うんだ。

 それに人を食べ残すなんて聞いたことがない。大抵が一口でバックリだし。

 ……あー、考えたら気分悪くなってきた。

 

「怖いですよね。私は神機使いじゃなくてよかったですよ」

 

「あ、知ってるんですか」

 

「昨日、サカキ博士から少しだけお聞きしました。恐ろしい話ですよ」

 

 ぶるりと身を震わせる一条さん。

 分かる分かる。あれは聞いただけでもかなり怖いよね。

 俺なんて夢に出そうで怖くて怖くて……!

 

「ところで話を強引に変えますが、」

 

「強引ですか」

 

「強引です。メールはもう見ましたか?」

 

「……メール?」

 

「サカキ博士のでしょ?」

 

 メリーの答えに頷きを返す一条さん。ああ、あれか。

 えーっと確か内容は……、三日間電気の使用を控えてほしいってやつだったか。

 水道の次は電気かよっ! ってターミナルに向かってツッコんだのは記憶に新しいな。

 

 でも俺、この前本当に大変だったんだよ?

 トイレ行こうと思ったらちょうど使用禁止の時間帯で……。

 特に急じゃなかったから頑張って待ちましたよ、ええ。身体には悪いけど。

 でもあれは本当に迷惑だった。

 

「“構想十年、究極の嗜好品の完成が間近です”だったかしら? 何作ってんのかしら」

 

「断水したということは水を使いたいと見たほうが良いでしょうね」

 

「じゃあ、飲み物? 何作ってんのか全く分かんないな」

 

 今日タツミさんに頼んでたアラガミの素材とかも使うのかなあ。

 うわ、なんか考えたくない。この話題は一回やめよう。

 

「そういえば、あの研究室最近匂わない?」

 

「そうか? 俺には分からないけど」

 

「同じく、分かりませんね」

 

「あたしだけなの?」

 

「どんな匂いだよ」

 

「どんなって言われても……、表現しにくいわね」

 

 うーん、と黙り込んで言葉を探すメリーを見て、俺と一条さんは首を傾げた。

 ……後に俺たちはこの正体を知ることになる。

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