GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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55、アルダノーヴァ

『誰か来てくれ! またやった!』

 

 そのまま、永久に眠りたかった。

 

 

――――――――――

 

 

「アルダノーヴァがエイジス島に現れた?」

 

 ゼルダの口から発せられたその言葉を、俺はそのまま復唱した。

 今俺たちがいるのはエントランス。ゼルダから今日の依頼についての話を聞いているところだ。

 ゼルダとメリーと俺……。実にいつも通りのメンバーだな。

 

「ええ。厄介なことに」

 

「随分早かったわね」

 

「確かになー。学習しているとは言え、こりゃないぜ」

 

 アルダノーヴァ。

 前支部長、ヨハネス・フォン・シックザールが造り出した人工アラガミ。

 この前は第一部隊全員、プラスでメリーも加わってフルボッコにして倒したんだよな。

 俺? 俺はその場に居たけど傍観に努めてたよ。ナレーションベースって大事だろ?

 

「で、この任務にご協力していただきたいのですが」

 

「あたしは構わないわよ。経験者がいたほうが良いしね」

 

「俺は経験者でもなんでもないんだけども」

 

 あのー、と言った感じで俺はゆっくりと挙手して発言した。

 さっきも言った通り、俺は傍観に努めてたから実際に戦ったわけじゃないんだよね。

 これを言うと言い訳にしか聞こえないんだけど、サカキ博士も護ってたし。

 しいて言えばみんなの戦闘を見てやっぱ強いなー、フルボッコ可哀想だなーとか思ってたくらい。

 

「あんたは……攻撃パターンくらい見てたから分かるでしょ?」

 

「何その微妙な間」

 

「いや、アルダノーヴァと接触した瞬間胸をビームで貫かれそうと思って」

 

「お前はそんなに俺を殺したいのか」

 

「まあ今日夢に見たんだけど」

 

「見ちゃったのかよ」

 

 どうもこの前から俺はメリーに嫌われてしまったらしい。前は……ハンニバルに殺される夢を見たんだっけか?

 なんでそんなにしょっちゅう俺が死ななきゃいけないんだろうか。まだ殉職する気はないぞ。

 というか、そもそもメリーに嫌われる心当たり自体が俺には無いんだが……。

 

「あ、そう言えば、お二人はサカキ博士から任務があると聞きました」

 

「任務? ……ああ、あの長期任務」

 

「最近贖罪の街付近で起こっている謎の事件のことですよね」

 

「良く知ってるな」

 

「聞きましたから」

 

 いつ聞く機会があったのかは別として、なんでサカキ博士に聞きに行ったんだろ。

 前だったら純粋に心配してくれたのかなって思うんだけど、今のゼルダは毒舌だからな……。

 とりあえずそこに触れるのは止めておこうか。

 

「大丈夫ですか? 相当危険な任務と聞いていますが……」

 

 心配してくれた!

 良かった、まだゼルダの良心は残っていたんだね。ちょっと安心した。

 

「大丈夫よ、いざとなったらこいつ囮にして逃げるから」

 

「え、ちょ、酷くないかそれ。俺は使い捨てかよ」

 

「いいじゃない。一生に一度の見せ場よ?」

 

「その見せ場で俺命落としそうなんだけど?」

 

 メリーの発言を聞いて、ゼルダが眉を潜めたのを視界の隅で捉える。

 幸いなことにそのことにメリーは気付いていないようだった。

 ゼルダが訝しげな態度を取ったのには意味があり、俺もその理由が分かっていた。

 

 

『だからこそいいじゃない?』

 

 

 適当に考えてみたけど、案外メリーが言いそうな言葉だ。

 メリーは基本的に俺が考えもしないような考えをすることがある。

 つまりで言う、常識から逸脱した考えってやつだ。

 

 例えば、メリーはウロヴォロス種が大好きだ。

 ここから既にメリー・バーテンという女が普通の人間ではないことが分かる。

 他にも最近発見された新種のアラガミ、ハンニバルの情報をほとんど効かずに出撃したり。

 ……まあ、普通に考えたら馬鹿じゃねえのみたいなこともするのがメリーだ。

 

 そのメリーが、あの好戦的なメリーが開口一番に“逃げ”の提案をするはずがないのだ。

 むしろそんな障害、どんと来いと言わんばかりの態度で迎え撃つのが俺の知っているメリーだ。

 それはゼルダも一緒なのだろう。だから怪訝そうにした。

 

「なによ、あんたたち。揃いに揃って変顔しちゃって」

 

「変顔じゃありませんけどお!?」

 

「ムキにならないでくれる? 腹立たしい」

 

「何故腹を立てられたのかが分からないんだが……」

 

「というか今回は私も巻き込まれてるんですね」

 

 メリーが俺たちの態度の意味に気付いてないってことは、無意識か。

 無意識のうちにメリーが恐れるものって、いったいなんなんだ?

 それが今回のサカキ博士の依頼と何か関係が……?

 

「聞いてんの、馬鹿夏?」

 

「てえっ!?」

 

 脳天に一発、とっておきの一撃ともいえるような拳骨が落とされた。

 今まで考えていたことがどこかへ飛んでいき、堪らず両手で患部を押さえた。

 う、ぐ、ぐ……。めちゃくちゃ痛いんだけどこれぇ……。

 

「うぅー、何すんだよお!?」

 

「人の話を聞かない夏が悪いのよ」

 

「だからって本気で頭叩くなよ!」

 

「本気? まだ二割よ」

 

「なん……だと……?」

 

 こいつはいったいどれだけの力を持ってるんだ……。

 って、俺は今まで何を考えていたんだっけか。確かメリーのことだった気が……。

 あー! すっかり忘れてるよ、俺! 俺の記憶力ザルだな。

 

「何そんな絶望的な顔してるの」

 

「今まで考えてたことを忘れた……」

 

「ぷぎゃー」

 

「まだ感情籠ってた方がマシだよ!」

 

 そんな棒読みで言われた方が余計に傷付くっつーの!

 いや、メリーの場合は俺が傷つくように言葉を選んでいるのか……。

 しくしくと机に突っ伏した俺を見てゼルダの苦笑する声が聞こえた。

 黙ってないで止めてくれよ……。

 

「あ、私、準備してきますね」

 

 ゼルダはそれだけ言うと俺たちから離れて階段を上って行った。

 今言った通り、依頼に行くための準備をするためだろう。

 ……でも。

 

「見事に見捨てられたわね、あんた」

 

「言うな。たった今同じ結論に辿り着いたんだ」

 

 俺だってそう思ったけどさ、言わない優しさってあると思うんだ。

 あ、そもそもこいつには優しさと言うものが欠落しているのかもしれないな。

 机に頭を乗せたまま視線を上げると、何もない所に向かって喋りかけているゼルダが見えた。

 笑っているところを見ると、相当いい雰囲気らしい。

 

「なんだろうな、あれ……」

 

「ん? ああ、最近エントランスや病室でよく見かけるそうよ」

 

「誰と話してるんだろ」

 

「幽霊でも見えるようになったんじゃない?」

 

 なんて怖いことを言ってくるんだ、この人は。

 楽しそうに俺たちが見えない何かと談笑しているゼルダから目を外す。

 

「やめてくれよ、幽霊なんて存在しないんだから!」

 

「……今度肝試しやろうかしら」

 

「あ、それは中身が人だから大丈夫」

 

「見事につまんないわねー」

 

 そんなことを言われてもなー。

 多少なら大丈夫なんだ、妖怪の本とかも読んだことあるし。

 でも、本当に半透明とかのアレが出たら多分失神すると思う。

 女々しい? 男がなんでもかんでも強いと思うなよ。

 

「それにこの支部に、レン、なんて名前の神機使いいたかしら?」

 

「誰それ」

 

「ゼルダが誰かさんと話しているときに出てくる個人名よ」

 

「ふーん……」

 

「レン、って名前の幽霊なのかしらね」

 

「幽霊って名前持ってんのか……」

 

 というかツッコみ損ねたけど、こいつ耳良すぎだろ。地獄耳か。

 レン、ねえ。俺はその名前を聞くと某歌を歌う機械を思い出すんだけど……まあいいか。

 今の会話で得たことは、遠くにメリーがいたとしても悪口は言っちゃいけないってとこか。

 ……あー、心も読めるんだったか、こいつ。マジエスパー。

 

「何見てんのよ、気持ち悪い」

 

「え、あ、いや。……俺の心安らげる場所なんてどこにもないんだって思って」

 

「今更ね。まあできたとしても破壊しに行くけど」

 

「嫌いか! そんなに俺のこと嫌いか!」

 

「リアクション的には好きね」

 

 うわあああ、妙なところで好かれてる……。

 それならむしろ嫌ってくれてる方が俺的には安心なんだけども。

 もう朝から嫌だなーと思ったところでゼルダが戻ってきた。

 誰かさんとのお話は終わったようだ。

 

「お待たせしましたー」

 

「よし、じゃあ神機取りに行くか」

 

「あー、なんか疲れたわー」

 

「俺の方が疲れてるって気付いてる?」

 

 ため息を吐きながら俺たちは神機の倉庫に移動した。

 あ、ちなみに今回の依頼は三人だけで行くそうだ。まだハンニバル対策は終わってないらしい。

 なんかその中で自由にやってる俺たちってなんなんだろうな。

 

「しっかし、相変わらず目を引くラインナップだな」

 

 神機の倉庫には、個人で所有している神機パーツもある。

 ここで目立つのはやはりゼルダが持っている神機パーツだろう。

 ゼルダは素材とお金に物を言わせて結構な量の神機パーツを所有している。

 おまけに新型だから、剣も銃もどっちも作る。そのおかげで量が多い。

 いやー、ここまでくると一種の博物館だよね!

 

「……ん、なんだこのパーツ」

 

 不意に一つの剣パーツが俺の目に入った。バスターか。

 真っ白な刀身を囲むようにして取り付けられた半透明の赤い結晶が淡く輝く剣パーツ。

 美しくも確かに強さが見えるその剣はとてもかっこよく見える。

 

「あ、それはハンニバルから作ったものです」

 

「え、ハンニバルから?」

 

「この前私の神機が壊れたときの素材です」

 

「ああ、あれね」

 

 そういえばその時の依頼はハンニバルだったか。

 いいなー、俺はバスター使いじゃないけどちょっと羨ましい。

 まあ俺はサリエルの神機が気に入ってるから別にいいんだけどね?

 

「今度機会があったらつけていきましょうか?」

 

「えー、今日がいい」

 

「今日は別の剣パーツで行きます。もうつけてもらったので」

 

「そっか、残念だな」

 

「無理言うもんじゃないわよ」

 

「はいはい」

 

 なんだか母親みたいなことをメリーから言われた。

 煩いな、俺だって断られたらちゃんと身を引いたじゃないか。

 さすがにそう何度もしつこく言い寄ったりはしない。迷惑になりたくないからな。

 

「よし、行こっか」

 

「今日もよろしくお願いしますね」

 

「さっさと終わらせるわよ!」

 

 メリーが張り切ってそう言い、神機を引っ掴むとさっさと倉庫から出て行った。

 俺はゼルダと揃って苦笑するとメリーの後を追って倉庫から出た。

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