GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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59、捜索再開

『人なんてどうせ死ぬ生き物』

 

 分かっているのに、溢れてくるこの気持ちは……。

 

 

――――――――――

 

 

 気分最高潮、朝から俺のテンションはいつもより高いです。

 そんな俺の隣で興味がなさそうにツバキさんの話を聞いているメリー。

 メリーは多分、ここに集まっている人の中で一番やる気がないんじゃないかな。

 

 どうも、夏です。今日は朝からエントランスに神機使いが勢揃いです。

 何故かって? 気になるよね。実は、リンドウさんが生きているかもしれないんだって!!

 リンドウさんは前支部長に殺されたって聞いてたんだけど、生きているなんて感動ものだよ……。

 サクヤさんたち第一部隊の人たちは特に嬉しそうだしね。

 

「……以上、DNAパターン鑑定の照合結果から、対象をほぼ雨宮 リンドウ大尉と断定。本日一二〇〇をもって捜索任務を再開する!」

 

 エントランスのあちこちから歓声が上がった。これがリンドウさんの人気を表している。

 俺も狂喜乱舞したいところだけど、今はまだ我慢。喜ぶのはリンドウさんが見つかってからだ。

 そういうわけでツバキさんの話が終了。早速探しに行こうぜって話になったんだけど……そういうわけにもいかないらしい。

 捜索は第二部隊、第三部隊が中心で第一部隊は通常の依頼を前提としてじゃないと行動できないらしい。

 俺たち第四部隊は状況に応じて双方のフォローだって。なんか難しいけど、要は手助けすればいいんだろ?

 

「リンドウ、ねえ……」

 

「さっきからすごい興味なさそうだな」

 

「ないわよ。だって会ったことないもの」

 

 さらっとメリーがそう言って、そういえばメリーはあの事件の後に来たんだったと思い出した。

 なんだか時々その事実を忘れそうになる。最初から極東支部にいたような気がしてきちゃうんだよな。

 それだけ最初の頃と比べて仲良くなったって事なのかなあ……。

 

「リンドウさんはすっごい強いんだからな」

 

「じゃあ帰ってきたら不意打ちしかけてみようかしら」

 

「何故不意打ち!?」

 

「あたしが楽しいからよ!」

 

「すごいドヤ顔だ!!」

 

 いや、メリーさん。そこは別にドヤ顔するところじゃないっす。

 本当にメリーの思考は理解できないなー。理解できないからこそのメリーって感じだけども。

 ……というか、メリーって小さい頃からこんなに性格捻くれてたんだろうか。

 さすがに小さい頃は可愛い女の子だった、と信じたいけどあながち昔からこうだったという可能性も否定できない……!

 メリーの小さい頃の話、聞きたいなあ。いつか聞けないだろうか。

 

「何よ、見つめないでくれる?」

 

「言外に気持ち悪いから見るな、と聞こえた」

 

「エスパー……!?」

 

「え、冗談だったんだけど本当に言ってたの!?」

 

 ちょっとショックだ。俺って本当にメリーと仲良くなったのかな……。

 床に視線を落として肩を落としていたらメリーに肩を叩かれて視線を上げた。

 何事かと思ったらサムズアップされた。お前のせいだからね?

 

「きっとエントランスが今以上に賑やかになるんでしょうね」

 

「そりゃあリンドウさんは人気者だからな!」

 

「会ってみたいわね。……できれば、“人”として」

 

「……」

 

 自然と表情が顔から消えるのを感じた。

 俺たちはエントランスの端っこにいるから皆には気付かれていないはずだ。

 視界の端で新人に質問責めに遭っているゼルダが見えた。ゼルダはもう分かっているのだろうか。

 メリーとゼルダは大体同時期に神機使いになったはずだ。メリーが知っているならゼルダも知っているのだろう。

 

「腕輪を失くした状態で過ごす。それが何を意味するか、センパイなら分かるでしょう?」

 

「……勿論だ。みんな、それには気付いているはずだ」

 

「だからこそあたしにはこの活気が理解できないのよ。現実逃避しているようにしか見えないわ」

 

 俺たち神機使いはオラクル細胞を暴走させないように定期的にそれを供給している。

 供給させるために必要なものこそが腕輪だ。ちなみに神機を操作するのにも腕輪を介さなければいけない。

 結局のところ何が言いたいのかと言うと腕輪が無くなった今、リンドウさんはかなり危険ということだ。

 最悪の場合はアラガミ化、なんてことも考えられる。そうなったら帰還自体が絶望的だ。

 

「皆、明るい未来を望んでいるんだよ」

 

「望むのはいいけど、最悪の事態になった時その分絶望が大きいわ」

 

「違うな、メリー」

 

「何がよ」

 

「未来は望むだけじゃ手に入らない。だから俺たちは動くんだよ」

 

「へえ……」

 

 気のせいかメリーの顔に影が差したような気がした。

 観察するように俺の顔を見、薄く笑うメリーに身体が少し震える。

 震、える? なんでだ?

 

「……ふふっ」

 

「メリー?」

 

「本っ当にここはいいわねー。楽観的で、楽しいわ」

 

 クスクスと笑うメリー。それは褒めてるのか?

 メリーもゼルダみたいに結構コロコロ表情変わるよなあ……。

 でもゼルダ以上に何を考えてるのか読めないから……もういいか。

 ふぅ、メリーのせいで嫌な現実見そうになったな。暗いやつめ。

 

「あ、そうだ。病室に行きましょうよ」

 

「一条さんに何か用なのか?」

 

「違うわよ、昨日の患者。さすがに気になっちゃって……」

 

 バツが悪そうに頬を掻くメリーを見て俺は苦笑した。

 確かに昨日のあれは何が何だか分からない感じで曖昧になっちゃったからな。

 俺はメリーの言葉に頷き、一緒にエレベーターに乗り込んだ。

 

 

――――――――――

 

 

 病室に着いた。だが俺たちは入ってすぐに動かなかった。

 何故なら……、

 

「すー……、すー……」

 

 一条さんがテーブルに顔を突っ伏して寝ていたからだ。

 これって俗にいう寝落ちってやつなのかな。机の上に投げ出された右手にはペンが握られている。

 口元には少し涎が見えており「もう食べれません……」となんとも幸せそうな寝言が聞こえた。

 すごい幸せな夢だな。

 

「疲れてるみたいだな。また今度に……」

 

「起きなさい」

 

「うごっ」

 

「メリー!?」

 

 なんだか起こすのも可哀想だから今日は帰ろうかな。

 そう提案しようとしたとき、メリーが一条さんの脳天にチョップした。

 飛び起きた一条さんは頭を押さえて痛そうに蹲っている。

 

「あうぅ……、イチゴパフェが……!!」

 

「そしてあなたはまだ食べる気だったんですか」

 

「ええ。美味しかったですけど、同時に激太りするんですよね」

 

「それって良い夢なのか悪い夢なのか分かりませんね……」

 

「ドーナツ、クレープ、ケーキ、クッキー、マカロン、タルト……」

 

「……それは太って当然です」

 

 もしかして一条さんって甘党なのか? すごいスイーツの名前が出てきた。

 涙目ながらも口元の涎を拭き取った一条さんは「何か用ですか?」とにこやかに尋ねてきた。

 

「昨日の患者が気になってね」

 

「様子を見に来たんですよ」

 

 一条さんのにこやかな笑顔が固まった。

 予想外の反応を受けてメリーが少したじろいだのが見えた。

 少し顔が青くなっているような気がするのは多分気のせいのはずだ。

 

「昨日の患者さん、ですか」

 

「何があったの、言いなさい」

 

「……お亡くなりになりました」

 

 部屋の温度が少し下がったようだ。

 神妙な面持ちの一条さんはこういう時に限り確かに医者に見える。

 

「経過は順調だったはずなんです。何が原因なのかさっぱり分かりません」

 

「死因が不明ってこと、ですか」

 

「その通りです。私にはこれ以上調べようがありませんね」

 

 困りました、と両手を上げて肩を竦める一条さんはそう言えば元気がないようだ。

 その割にはさっきまで幸せそうな夢を見てましたね、とはツッコんじゃいけないんだろうか。

 医者っていう仕事についたからいくらか慣れているのだろうか。

 

「はあ……、面倒なことが山積みで困ります」

 

「大変ですね」

 

「医者だってある意味では戦っているんですよ」

 

 疲れた笑みを見せる一条さんはおや、と急に眉を潜めた。

 どうしたのだろうかと一条さんの視線を追ってみるとその先にいたのはメリーだった。

 顔を俯かせ視線を地面に落としたメリーからはいつもの強気な雰囲気が窺えない。

 

「死ん、だ? どうして……」

 

「おい、どうしたんだ、メリー」

 

「……ごめん、ちょっと部屋に籠るわ」

 

「あ、おい、待っ……!」

 

 制止する暇もなくメリーは病室から飛び出していってしまった。

 くそう、本当に足が速い奴め……。今から追いかけて行っても遅いだろう。

 なんなんだよもう、調子狂うな。

 

「弱い。やはり弱いですね」

 

「へ……」

 

「メリーさんは人の死が怖いんです。受け止めなければいけないことと分かっていても、ね」

 

「そりゃ俺だって怖いですよ」

 

「違います。“自分と関わることで人が死ぬ”ことが怖いんですよ」

 

「……もしかして一条さん、何か知ってます?」

 

「確かに私は彼女の秘密を知っています。ですが……ここから先は彼女から聞くべきです」

 

 いつも以上に真剣な表情の一条さんに俺は頷くことしかできなかった。

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