GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
『希望は絶望が在るからこそ在ると言うけれど』
自分にとっての希望は生まれちゃくれない。
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現在、エイジス島。
今日はゼルダの仕事の手伝いとして依頼に参加しました。
メンバーはゼルダ、メリー、コウタ、俺である。あっ、ソロはまた置いてきた。
また第一部隊の誰か(俺の予想ではアリサ)に愚痴ってるんだろうなー。
まああいつは不器用だから、どんな形であれ他人と接するのはいいことだろう。
……あ、誤解がないように言っておくけど、スキル的な意味での不器用じゃないからな?
「すみません、今回の討伐対象は少々厄介に思えまして……」
「ああ、大丈夫だよ。借りられるのには慣れてるし」
「ていうか、メリーさんテンション低すぎない? 頭打った?」
「その口、二度と喋られないようにしてあげましょうか?」
「……なんか迫力ないっすね」
いつもと違うメリーを見てコウタは首を傾げている。仲間の反応には敏感なやつだ。
メリーは結局昨日からこの調子だ。アーク計画前のように引き籠らなかっただけマシか。
今回の依頼も自分から志願してきたもので、一応仕事をしようと言う意思は窺える。
俺から見ると何かを忘れたいからって印象が強いけどな。
「なんか悩んでるなら相談したほうが良いって!」
「そ、そうですよ! 私たち、仲間ですし」
「パートナーの俺にも言えないことかよ?」
「大丈夫よ、そのうち話すから。そのうち」
「ずっとそれだな、オイ」
メリーは自分に言い聞かせるように呟くが、俺にはもはや飽きたセリフだ。
そりゃ、俺は無理に聞きたくはないよ? だからと言ってこんなに隠されるのも嫌だけどさ。
俺だって弱音を吐いたんだから、メリーのを聞いたっていいじゃない。それでお相子だ。
暫く俯き加減だったメリーが急に顔を上げた。その目は爛々と輝いている。
「さあ、狩りの時間よ……!」
「あー、うん。君ならその反応すると思ったよ」
「ウロヴォロスじゃないのになんで……」
「似てるからでしょう。アマテラスですし」
今回の討伐対象はアマテラス。ウロヴォロス級のでかさを誇るアラガミであり第一種接触禁忌アラガミ。
まさかそんな怖いアラガミが相手だとはなあ。まあメリーは嬉しそうだが。嬉しがるポイントが女らしくない。
それがメリーって女だな、うん。再認識。
「ひゃっはー!」
「お願いだからもうちょっと落ち着いてよ!」
「……なんか夏さんがメリーさんの保護者に見えてきた」
「奇遇ですね、私もです」
ワクワクが抑えきれないと言う様にメリーは神機を片手にアマテラスに向かって駆けだした。
慌てて俺もそれを制止しようと少し高所にあったその場から飛び降り、メリーを追うようにアマテラスに向かって駆ける。
でも一つツッコませて。メリーの保護者になんかなってたまるか!! きっと心労のせいで一年でぽっくり逝くよ!?
アマテラスの横に回り込み触手を斬りつける。が、あまり効いた様子はない。うぅ、俺もう帰りたい。
「んっ、触手が硬いわね……」
「頭を重点的に狙いましょう! コウタさん!」
「オッケー、リーダー!」
ゼルダがコウタにアラガミ弾を送る。リンクバーストしたコウタは調子良くアマテラスの頭を確実に撃ち抜く。
コウタって散々ふざけてるけど実力は本物だよな。時々かっこいいなー俺もあれくらいかっこよくならないかなーとか思ってる。
きっとコウタはもうちょっと性格を落ち着けたら確実にモテると思うんだ。
「スタングレネードよ、畳みかけて!!」
途端パッと閃光が破裂した。目を瞑っていても瞼の裏が赤く染まりちょっと痛い。
というかまさかメリーがスタングレネードを使うとは予想できなかったな。普段の行いのせいでね……。
俺、メリー、ゼルダが一斉にアマテラスに喰い付いて勢いよく引き千切った。ゼルダはまたコウタにアラガミ弾を送り、メリーはゼルダに送った。
俺はただのバーストのまま勝負を挑む。リンクバーストよりは劣るけどバーストだって十分に強い。
そのまま斬る斬る斬る斬る斬る! あ、いやそんなに調子には乗れないよ? だって向こうも無抵抗ってわけじゃないしね。
「地獄に落とす!」
「なんか今日のメリーさんはっちゃけてるなー」
「ならあんたにはっちゃけてあげましょうか?」
「謹んでお断りします!」
コウタの銃撃が心なしか激しくなった気がする。そんなに嫌か。俺も確かに嫌だ。
だってメリーのはっちゃけって絶対リンチだよね、ちょっと考えたらすぐに答えが出るって素晴らしいね。
ああ、もうなんだかアマテラスが悲惨なことになってきてるんだけど……。
メリーによって触手が斬り落とされ、ゼルダが脚にダメージを与え、コウタが顔を抉る。
正直見てらんないわー……。あ、俺も触手斬り落としてますよ。ちゃんとお仕事してるよ。
「喰らって喰らって喰らって喰らって……」
「エンドレス!? お前何がしたいの!?」
「とりあえず神機のお腹を満た……あ、不味い?」
「ねえ成立してるの!? 神機との会話成立してるの!?」
いきなりメリーが奇行に走りはじめた!
これはあれか、最近様子がおかしいと思ったらついに壊れたってやつか。
いやまさかメリーが壊れるとは思えないけど、でもメリーも人だからね! そういうことも……ぶべっ。
「何投げてんだよ!」
「スタングレネード」
「顔面は駄目だって! 痛いし破裂したら俺の顔大変なことになるから!」
「なってしまえ」
「俺が何をしたっていうんだー!」
今出先だから! 目の前に敵いるから! ふざけてる場合じゃないからね!?
とりあえず投げつけられたスタングレネードを使ってアマテラスの動きを封じる。
その隙にみんなそれぞれの攻撃を仕掛けて確実にアマテラスの体力を削る。
「ゼルダ、コウタ、決めなさい!」
「了解です!」
「一気に行くぜ!」
「あれー、俺はー?」
おかしいなメリーは結構喰らってたはずなのに俺にだけ送ってくれなかった。そんなに嫌いか。
その後にリンクバーストさせてもらったけどね、舌打ち付きで。泣いてもいいかな。
そうして俺たちはアマテラスに引導を渡したのだった。
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現在、病室。
ゼルダとメリーはお互いで何やら話があるそうなのでその場で別れ、俺はさっきまでコウタといた。
だけどコウタは突然「良いことを思いついた」と言い出してどこかへ駆けて行った。
とってもいい笑顔をしていたよ。何を思いついたっていうんだ。なんだか嫌な予感がするなー。
「一条さん教えてくださいよー」
「駄目でーす。昨日言った通り本人から聞いて下さーい」
「そこをなんとか」
「個人情報なので」
というわけで昨日のあれが気になったので一条さんのとこに来たわけだ。
え? 本人から聞けって? だってはぐらかされるんだもの。これ以上の焦らしは辛いです。
だからこそ一条さんに聞きにきたんだよ。
「板チョコ」
「っ」
「カノン特製クッキー」
「う、ううぅぅ……!」
誘惑から耐えるように拳を握りしめてプルプルと震える一条さん。
なんだろう、一条さんの方が俺よりも年上のはずなのにすごく可愛く見える。小動物的な。
そういえば一条さんって何歳なんだろうね? 二十歳手前に見えるけど……結構歳いってるんだろうか。
おっといけない、話が逸れた。でもまだ一条さんは耐えているようだ。
「ま、負けませんよ……。例え噂のカノンさんのクッキーと言えど……」
「そうだ、今度カノンが新しいクッキーを作るそうです」
「参りました!!」
泣きそうな目で一条さんが敗北を俺に訴えた。
どんだけ甘いもの好きなんだろうこの人。とりあえず板チョコとクッキーは渡しておく。
約束だからね。渡さなかったら悪いでしょ? メリーだったら渡さないんだろうけど。
「うーん、でも本当に言える範囲は少ないですよ?」
「ヒントでいいんです」
「ヒント、ですか。うーん……そうですねえ……」
もぐもぐと板チョコを頬張りながら首を傾げる一条さん。
食べながら考えるって、そんなにお腹が減っていたんだろうか。それとも糖分が足りないんだろうか。
というか食べるスピード早っ!? もう板チョコないんですけど。
一条さん、太りますよ?
「メリーさんの神機は特殊です」
「ええ、知ってますよ」
「あの神機は、世界にたった一つしかない特殊なものです」
「え、そんなに特殊なんですか?」
「手作りですからね。あの性能は、きっと二つと作れません。異常ですよ」
「異常……。アラガミを喰らった時のバーストのことですか?」
異常って言われれば思い付くのはそれくらいしかないな。
俺たちとは違う、禍々しいオーラを纏うメリーのバースト状態。あれは異常の一言に尽きる。
だというのに一条さんは静かに首を横に振った。あれ、違うの?
「その性能自体はメリーさんに聞くべきですね。これが彼女の悩みですから」
「そうなんですか……。じゃあ、バーストは?」
「それはその性能の副産物であると私は考えています」
「……なんでも知ってるんですね」
「私だって知らないことは山ほどあります。メリーさんの心を開いた夏くん、とか」
えっ、俺? なんでそこで俺が出てきたんだろうか。
一条さんの言葉に首を傾げていると面白そうに一条さんが笑う。
なんでだろう、馬鹿にされているようにしか思えない。
「メリーさんは前の支部で心を閉ざしました。だからこそ私は彼女に知られずに見ることが出来たのですが」
「えっと、何を言いたいのかさっぱりなんですけど」
「メリーさんがあなたに何を見出したのか、それが私には分からないのです」
「信頼とか……」
「そうでしょうね、きっと。彼女が恋するようには見えませんし」
クスクスと笑いを押さえている一条さんはいったい何が言いたいのか俺には分からない。
んー、回りくどいような表現は好きじゃない。だって理解できないんだもんな。
つまり何が言いたいのか俺にはさっぱり分からないんだ。
「ああ、ですからもっと友好的な関係になるといいということですよ」
「なるつもりですよ。じゃないと話してもらえそうにないですし」
「あっ、個人的には恋愛関係になってください! 面白そうなんで!」
「そんな生き生きと言われても……」
楽しそうに笑いながら言う一条さんに、俺は苦笑いを返すのだった。
――――――――――
ゼルダに呼びされた。まったく訳が分からないわ。
話があるらしいけど……何を話すっていうのかしらね?
それにしてもゼルダの部屋って可愛らしいわね。女子力が溢れてるわ。
「メリーさん、夏さんには話さないんですか?」
「何を」
「過去です」
「……時が来れば、ってゼルダにも言ってるわよね?」
あら、何を言うのかと思ったらそんなこと。
来るんじゃなかったわね。ゼルダは結構しぶといから、ちゃんとした答えを言わないと返してくれない。
夏はぶつぶつ文句を言いながらも引き下がってくれるのに……。お節介を焼くのが好きねえ。
「メリーさんは、贖罪の街での事件の犯人に、心当たりがあるんでしょう?」
「どうしてそう思うのか三十文字以内でお願いするわ」
「メリーさんは最近様子がおかしいです。いちいち出来事に怯えているように思えます」
「オーバーよ、ゼルダ。もっと簡潔にまとめて頂戴」
「私は真剣に話をしています」
やっぱり誤魔化しは利かない、か。ううん、面倒ね。
それにしてもゼルダのここまで冷たい目は初めて見たかもしれないわね。
そんなに聞きたいのかしら。
「私は以前、メリーさんと感応現象を起こし、過去を見ています」
「私も見たわ。父親のことをね」
「……私が見たのは、メリーさんが神機使いになる時からこの支部に来る前までの全てです」
「っ、」
嘘でしょう? それって今私が隠したいことの全てじゃないの。
はあ、なんでそういうことになっちゃったのよ……。運が悪いというか……ああもう。
「私はあなたを差別しません。仲間ですから」
「そうね、いきなり差別されたらあたし泣いちゃうわ」
「そしてバケモノだとも思っていません」
「……そう」
「夏さんに、話してあげてください」
どこまでも真っ直ぐな、純粋な瞳。曇りないそれに、悲しみが滲んでいるように見える。
同情、してくれているのかしら。ありがたいけど少し痛いわ。
「時は来る。今はその時じゃない、それだけよ」
「ですが……!」
「これはあたしの問題よ。話すも話さないもあたしの自由」
「…………」
「大丈夫よ、あたしは強いから」
安心させるために笑いかけたつもりだったのに、ゼルダは悲しそうに眉を下げた。