GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
『もう、放っておいてっ……』
嫌だと返した貴方は誰でしたか。
――――――――――
「お? ソロじゃないか」
エントランスに出たところで、ばったりソロと出くわした。
ソロは手すりに座るようにしていて時々階下のソファにチラチラと視線を送っていた。
腕を組みながら、しかし眉を寄せていて何だか悩んでいるみたいだ。
「……ああ、夏か」
「えっ、それだけ!? 久しぶりに真面に会話する機会できたのに最初の一言それ!?」
「煩いな、お前はもう少し声量を押さえろ。目の前にいる相手にそれはでかい」
「うぐぐ……!」
なんで朝から駄目だしされなきゃいけないんだ俺は。
というか俺の声ってそんなにでかいのか……? 今度から気を付けてみるとしよう。
で、結局のところソロはなんでこんなところに一人でいるんだろうか。
視線だけで訊ねれば視線だけで階下を見ろと伝えてきた。声使えや。
「あれっ? コウタにアリサ、ゼルダ、メリー、カノン、ジーナさん……女性ばっか」
「コウタのくだらない作戦のせいだ。サクヤさんは今、別の任務でいないがな」
「コウタは呼び捨てなんだな」
「あれのどこを敬えばいいんだ。第一、向こうの方が年下だ」
「コウタェ……」
「お前もだからな」
「そうだったちくしょう!!」
まあもう気にしないがな、どうせ言ったところで敬うわけないし敬い出したら逆に怖い。
幼馴染って事もあるしな……。もう呼び捨てでも構わないようん。
「あれ何やってんだ?」
「コウタ曰く、おびきよせ大作戦、だそうだ」
「おびきよせ? ……何を」
「リンドウさん」
「っは?」
「「リンドウさんって女の子大好きだろ!? それなら女の子連れて歩いたら……」らしい」
「ちょっ、声真似上手いな」
あの低音が一瞬でコウタの声に変わっただと!? 初めて知ったわソロの特技。
というか普段不器用なのになんでこういうのだけ器用なんだよ……。
あ、スキル的な意味でじゃないからな!
「詳細は俺も知らないがな」
「ふーん」
「……」
俺と話しながらもチラチラとソロはゼルダを見ている。そんなに心配か。
そこまで心配するなら言葉に出せばいいだろ、とは言わない。これがこいつのデフォルトだ。
要するにソロはこういうところが不器用なんだ。人と接することが苦手なやつ。
それだけ見れば可愛いんだろうが、如何せん棘がありすぎる。
おかげで俺がその棘に何回刺された事か……。
「コウター、あたし面倒だから降りていいわよね?」
「あ、メリーさんは構いませんよ。リンドウさんに会ったことないでしょ?」
「それは事実だけどそんなにあっさり言われるとなんかムカつく」
「え、ちょ、それ理不尽……。痛い痛い痛い! 髪引っ張らないでください!」
「相変わらずだなー」
さすがメリー、朝から絶好調らしい。コウタ相手にも容赦ない。
逆にメリーが容赦する相手って誰だろうか。想像がつかな……ゼルダか。
ゼルダは色んな人から好かれてるよな。そういう特殊能力でも持ってるんだろうか。
あ、駄目だ。今の俺痛い子だ。
「……最近、リーダーはどうだ?」
「ゼルダ? なんかバタバタと忙しくやってるよ」
「そうじゃない。無理をしていないかと聞いているんだ」
「無理はしているだろうな……。元からそういう奴だし」
「そうか。……」
「ゆっくり自分の言葉纏めときな」
「そうする」
ソロから離れてコウタたちのところに向かう。
随分盛り上がってるなー。コウタすごい痛そうにしてるけど。
そういえば俺も前に引っ張られたっけー。あれ、それは耳だったかな。
どうしよう記憶力曖昧になってきた。
「なんか面白いことやってるんだって?」
「あ、夏さん。違います、コウタの暴走です」
「ちょ、アリサ!? そんな言い方ないだろ!?」
「事実は受け止めないと駄目よ、コウタ」
「メリーさんまで!?」
「頑張って受け入れてくださいね!」
「リーダアアアア!!」
めちゃくちゃ弄られてるよ、コウタ……。
でも俺に矛先が来ないように頑張って! 毎日弄られるの疲れちゃってさ。
たまには他の人も俺の苦労を知るべきだよ。結構疲れるんだからな。
「あー、じゃあこんなに人集まらないから夏が女装したら?」
「えっ!? どうやったらそうなったの!?」
「夏さん、元の顔がかわいい系ですから薄めのお化粧を施したら……」
「ねえなんでゼルダも乗り気なの!?」
「服なら任せてください、リーダー。提供します!」
「あれ、このメンツなんか嫌な予感しかしない!」
俺このメンツで一回嫌な目に遭ってるよね!?
これはやはりこの場から離脱するのが最良の手なんだろうか……。
「あのー、それで結局誰が一緒に行ってくれるの?」
「そもそもコウタ女じゃないよな」
「そ、そういうツッコミは無しの方向で!」
慌ててコウタが付け加えた。そうかツッコんじゃいけないのか。
こういうところではヤジを飛ばすくらいのことしかできない俺です。
迷惑だっていうのは俺が一番よく知ってるよ!
「私で良かったら、ご一緒していいですか?」
「カノンさん……!」
「ふふ、そうね……。面白そうだし、私も同行させてもらうわ」
「ジーナさん……」
「私も隊長ですし、一緒に行きますね」
「リーダーも……ありがとうございまっす!!」
コウタめちゃめちゃ嬉しそう。これが落としてあげる作戦かね。
俺は大抵いつもこの反対だからな、羨ましい奴め。
アリサとかにいろいろ言われてるコウタだけど普通にみんなから好かれてるよな。
……俺も好かれてるよな?
「じゃ、メンバー揃ったみたいだしあたしたちは別の任務行くわよ」
「あ、うん」
後ろから肩を叩かれ振り返ると満面の笑みを浮かべたメリーがいた。
君の笑顔って嫌な予感しかしないんだけどなんでだろうね?
――――――――――
俺たちin贖罪の街。
久々に贖罪の街に来た俺です。同行者はメリーただ一人。
ソロも誘ってみたんだけど「アリサに勝手にアサインされた」と断られた。
アリサも新人が来たから張り切ってるなー。ソロだからちょっと落ち込んでるけど。
「んで、この前来た時痕跡はなかったんだっけ?」
「今までの現場は全部回ってみたんだけど、何もなかったわ」
「ふーん、おかしなもんだな」
「しいて言うなら地面が血で赤黒くなってたわね」
「……うえ、マジかよ」
あんまりそういうところは行きたくないなー。鎮魂の廃寺での一件を思い出しそうで怖い。
克服できたとは言え人が死んだ跡とか見たくはない。というか誰でも見たくないだろ。
見たいっていう人がいたらそれってただの……、いやなんでもない。
「ただ、人の足跡っぽい血の跡もあったわよ」
「それって血を踏んでもお構いなしだったって事じゃないか」
「まあ足跡と言うよりは靴跡ね」
「なんなの本当に……」
ということは犯人は人間説っていうのが濃厚なんだろうか。
メリーによると途中で靴跡は血が乾いたためか途切れていたため犯人は追えないらしい。
全部の現場から離れている場所に潜伏しているってどういうことだよ。
まあ旧市街地もそれなりに広いし複雑だから潜むには最適だろうけどな。
「俺にはいつもの贖罪の街にしか見えないけど」
「そうかしら」
「え?」
「あたしは禍々しい気配を感じるわよ」
「そう、か?」
むむ、気配か。うーん……、駄目だ何も感じない。これも新型と旧型の違いなのかっ。
でも本当に何も感じないよ? 俺は索敵には向いていないのかな。静かな荒廃した街にしか見えない。
とりあえずウロウロしている際に見つけたコクーンメイデンを駆逐しておく。
元々討伐依頼ではないんだけど見つけたら倒しておかないとね。
「……本当に何もないなー」
「証拠隠滅が上手いのかしら」
「あ、そういえば遺体は?」
「決死の覚悟で他の人が回収したんでしょ」
「無差別じゃないのか?」
「さあ、どうでしょう。犯人が何を基準に被害者を選んでいるのか、あたしには分からないわ」
確かに死者もいるけど無事に帰ってこれた人も確かにいる。
ここに来た人全員を見境なく喰らっているわけじゃないってことか。
あー、くそ。こういう推理系は俺苦手なんだよ! 誰か探偵呼んでこい。
「ったく、癪に障るわね。さっさと正体見せなさいよ……!」
「メリー……?」
焦った表情のメリーに違和感。ただそれが分からない。最近は分からないことだらけだ。メリーも、事件の犯人も。そろそろ俺の頭が容量越えてパーン! ってなるよ、絶対。
さっさと解決できればいいんだけどな。でもゼルダも最近無理してそうだし……。なんで俺の周りってこんなに面倒事が起こりやすいんだろう。場所か? 場所が悪いのか?
「……ん?」
「どうしたの、夏。そんなとこで呆けてたら喰われるわよ」
「え、あ、いや……。今、誰かこっちを見てたような気がして」
「はあ? 頭壊れたの?」
「それは酷くないか?」
メリーは気付いていない、か。それならただの気のせいの可能性が高いかもな。
でもこんなところで視線を感じるなんて、とうとう俺は寂しさのあまり変な方向に目覚めたんだろうか。
あるいはアラガミ……。大型の奴を見たって報告はないんだけどな。
とにかくもう一周見回る必要があるかもな。
「アラガミかもしれないから、もう一周な」
「あたしは構わないわよ。その代わりアラガミいなかったら蹴らせてね」
「どうして!?」
「ストレス発散」
「だから俺はサンドバックじゃない!!」
結局この後アラガミは見つからなかった。
――――――――――
現在のメンバー。ゼルダ、ソーマ、ソロ、俺。
メリーは疲れたと言って早々に自室に引き上げたのでこの場にはいない。
「おい……。コウタのやつ、本気で第二弾考えてるらしいぞ」
「それ本当かよ、ソーマ」
「俺が嘘をついてどうする」
「コウタさんは何を考えているんでしょうか」
「最近お前も毒舌になってきたな……」
「そうですか?」
どうやらコウタのおびき寄せ大作戦は失敗に終わったらしい。
ゼルダから報告を受けた俺たちはそりゃそうだとため息を吐いていた。
そして更にソーマからの報告でため息を吐くことになった。懲りないなあ……。
常識的に考えてみようよ、それでリンドウさんが現れたとき俺たちはどんなリアクションすればいいんだ。
言ったところで取り合ってもらえないんだろうな。
「何でだ……、何が足りなかったんだ……」
階下から聞こえてくるコウタの嘆きの声。
自分で考えた作戦に相当な自信を持っていたらしく失敗が相当ショックみたいだ。
それでもめげずに失敗の原因を追究しようとするコウタはすごいよね。
でもその作戦全てがいけないってこの段階で気付いてほしいかな。
「……もう止めてやれよ、リーダー」
「面白そうだから放っておいてもいいと思うがな」
「あはは……、もう少し様子見しましょうか」
「あれは放っておいて大丈夫なのかね?」
せめて悪化しないように願うとするか……。
一先ずその話題は片付いたと解釈したらしい、ソロはゼルダに向きなおった。
いつになく真剣な表情だが視線は少し泳いでいる。頑張れー。
「リーダー、最近きちんと休んでいますか?」
「え? 休んでいますよ?」
「無理はしていませんか?」
「しています」
「正直だな、ゼルダ」
「はわっ、していません! ええ、していませんとも!」
今更ゼルダが否定し始めた。どうやら無意識だったらしい。
その様子に俺は苦笑いしながらソロを見やる。次の言葉を考えているようでまた視線が泳いでいる。
「無理しないでください、あなたの代わりはいない」
「……そうだな、最近妙にこそこそしてるが一人で抱え込んでねえよな?」
「な、なんのことでしょう……?」
「無理するな。いざとなったら俺たちもいるってこと忘れんじゃねえぞ」
なんか面白い光景だな。特にソーマは最近丸くなったから面白く見える。
……あれ、なんでソーマは俺を睨んでるの? エスパーなの?
「で、では失礼しますね……!」
「あ、逃げた」
「休んでくれるといいんだが……」
「お前はゼルダの親か」
「煩い、馬鹿」
「俺の名前は馬鹿じゃない!」
「騒がしいぞ、お前ら」
人手も増えて少し楽になったけど、現状問題はまだまだ片付きそうにないな。