GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
「俺は日出 夏。俺も同じ十八だ。よろしく」
きっとそれは運命でした。
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煉獄の地下街。そこは先日二名の神機使い……ブレンダンさんとカノンが失踪した場所だ。
現在俺とゼルダとメリーとアネットでその二人を捜索中なわけだが……。まあこれがまた見つからない。
――先輩たちと任務に出たら……予定に無い見たことのないアラガミが現れて……――
アネットの話によるとそういうことらしい。
全く交戦経験もなく更に強敵、それを新兵と戦わせるのは酷だと判断したのか二人はアネットだけを逃がしたらしい。
その代わりに二人は帰ってこない。アネットはそれに責任を感じて俺たちに捜索の手伝いを依頼した。一人で行くのはさすがに危険だと判断したようだ。
というわけでオレたちはグボロ・グボロ堕天の討伐も兼ねて、煉獄の地下街に来ていた。ちなみに今は索敵中で、俺はアネットと一緒である。
「私のせいでみなさんにも迷惑をかけてしまって……すみません」
「アネットのせいじゃないよ。仕方ないことだって」
「でも……」
「あーもう! ならこれから頑張っていけばいいって! クヨクヨすんな!」
「わあっ!?」
強引にアネットの頭をワシャワシャと撫でまわした。俺はしんみりした空気は苦手だ。なんかこう……むず痒いというか……とにかく苦手なんだ。それにさ、こんな世の中なんだから笑っていかないと楽しくないじゃん!
いろいろと考えながら伝わってくれればいいなと思いながら撫でまわす。「髪が乱れるじゃないですか!!」怒られた。
「だって、落ち込んでるアネット見たくないし……」
「ふぅ……。その点に関してはありがとうございます、ちょっと元気出ました」
「本当? よかったー」
悲しんでる顔を見るよりも笑っている顔を見ている方が俺も幸せになれるしな! 人生楽しく笑顔で行こう!
アネットの調子が戻ったところで再び索敵に戻る。そういえばさっきから探し回っているのに全く見つかってないような気がするな……。
すると腕輪が誰かからの信号をキャッチした。これは……ゼルダか。うーん、態々下に下りたものの外れだったみたいだ。
「よし、ゼルダのほうに合流するぞ」
「はい!」
チラッと表情を窺ってみれば影も少しは晴れたように見えて安心した。
新兵にとってはかなりきつい出来事だったからな、負い目を感じて責任を取ろうというのは立派だけどそれを気にしすぎて倒れても困る。
anettは新型、俺は旧型。新型については俺自身もよく分からないから、精神的なサポートくらいしかできないけど。少しでも役に立てそうであれば、それだけで俺は嬉しい。
ゼルダたちはドーナツ型のエリアにいた。ここって下手したらぐるぐる回ることになるからあんまり好きじゃないんだよね。
「加勢するぞ!」
「おっそいわね、どこほっつき歩いてたのよ!?」
「ほっつき歩いちゃいないっての! 索敵してたんだよ!」
どうやらメリーは一足先にゼルダと合流していたようだ。
新型、それもそれなりの実践を踏んでいる二人にとってグボロ・グボロ堕天は大した脅威ではないらしく、既に砲台など大体の部位が結合崩壊している。
的確に狙ってたんだろうな、きっと……。なんだかグボロが哀れでならないよ、おかしいな、敵なのに。
「さあ、あんたたち、決めなさい!」
「了解です!」
「おー……久しぶりだな、これ」
「ありがとうございます!」
メリーからそれぞれに一発ずつアラガミバレットが受け渡され、リンクバーストする。
レベル3と比べたら軽いものだが、レベル1でも相当な力を発揮してくれるからリンクバーストってすごいよな。
軽くその場で数回跳ねて身体を力に慣らしてやる。この分ならもうすぐ依頼も終わりそうだな。
メリーは銃形態のまま後方支援に努めるつもりらしい。最近は誤射も減ってきたけど、なんか心配だな。
「っ――?」
「メリー? どうした、おい……おい!」
一向に銃での攻撃がないことを不審に思っていると、突然メリーが踵を返してどこかへと走って行ってしまった。て、敵前逃亡!? あいつが!?
いやいや、あいつのことだからきっと何かがあったんだろう、うん、きっと。今単独行動をするのは危険だ。それが原因でまた行方不明者が出ちゃたまらないしな。
ゼルダに目配らせすればすべて合点したと言う様に頷かれた。アネットのことも心配だけど、ここは任せるしかないか……。俺の離脱を考えてかアネットがスタングレネードを放ってくれてちょっと嬉しかった。
メリーの後を追いかけてみたが、いない……。いくらあいつの足が速くてもそんなことは無理だ、つまり階段を下りたな。
簡単に予想してみて下りてみると、少し遠くに立ち尽くすメリーの姿が目に入った。思わず安堵の息が漏れ、小走りで俺は近寄って行った。
「いきなり走り出すなよー、ビックリしたろ?」
「……いた」
「は、はあ? 何がだよ」
小さく呟いたメリーの表情は青い。見たことがない表情にぎょっとするものの、いつもと同じようになんてことのない態度で接する。
酷い顔してるぞ、なんて茶化すように言うことすら出来ず困っていると、メリーは突然自分の両頬を両手でパン! と挟むように叩いて調子を取り戻していた。
いくらか落ち着いたのかふう、とため息をつくメリー。どれだけ強く叩いたのかは知らないが、赤い紅葉が両頬にくっきり表れていて笑いをこらえるのが辛い。
「ソロの言ってた黒い奴よ、神機も持ってたわ。……逃がしたけど」
「え? いやいや、待てって。ここ、旧市街地じゃないだろ?」
「ここは元地下鉄よ? 上手く使えばどこにだって行けるわ」
「そ、そうか……」
つまりいざとなったら向こうはここを使ってどっかに行けるって言うのか?
俺たちにとってはあんまり使えそうにないけどな。大半がマグマで通れなくなってるし。
未だに使えそうなところを探している調査の人をもいるんだよなー、実際調査によって使えそうな場所も見つかってるし。
「で、あたしの顔に何かついてるの? じろじろ見ないでよ」
「ついていると言うか、ついちゃったと言うか」
「え?」
「その、さっきの頬叩いたやつで……跡がくっきりと……」
「なっ……!?」
かあっと一気にメリーの顔が赤くなり、両頬を押さえてその場にしゃがみ込んだ。そんなに見られたくないものなのか?
普段女らしくなく、特にそういうことを気にしないと思っていただけに意外だな。そこに付け入るような真似はしないけどさ。
でもそろそろゼルダのほうも終わっただろうから合流したい頃なんだけど。
「なあ、合流しに行かないか?」
「後で行くから先に行ってて!」
「そうは言ってもさ……」
「早く行きなさいよ」
「……はあ、分かったよ」
これはどう見ても動きそうにないな……。仕方ない、自主的に動いてもらうのを待つとするか。
ゼルダに連絡を入れた所、余った時間を使ってブレンダンさんたちの捜索をしているらしいので、俺もメリーが目に入る範囲内で捜索をすることにした。
いつの間にかいなくなってた、なんて怖いことが起こったら嫌だしな。
「あいつら」
「ん?」
「今どこにいるのかしらね……」
「さあな……」
角度的に丁度メリーの顔が見えないので表情を確認することはできないが、暗い顔をしているのは間違いないと思う。
態度ではあまりよく分からないが、やっぱり仲間が心配なんだなと思うと、なんだか最初に会った時の突っ張った態度が嘘みたいだ。
「どこ行っちゃったのかしらねぇ……」
寂しそうにそう呟いたメリーの言葉が、妙に俺の耳に残る。
結局この日、二人を見つけることは出来なかった。
――――――――――
ガタン! と大きな音がした。ソロが勢いよく立ちあがった音だが……、なんだかいつもと様子が違う。
帰ってきて早々に俺たちを迎えたのはどこか表情が硬いソロだった。言葉を選んでいるのか、目線を泳がせている。
「その、リーダー……。俺たちに、何か隠してませんか?」
「隠し事、ですか? 特に何も、隠してはいませんよ?」
「でも最近のリーダー、すごい疲れてるじゃないですか」
「嫌ですね、いつものことじゃないですか」
「……俺たちに、言えないことなんですね」
確信するように言葉を続けるソロに対して、ゼルダは不思議なくらい笑顔で対応し続ける。
ゼルダが何かしているというのはなんとなくで俺も分かる。よく依頼に出たりするし、何よりサカキ博士の元に行くことが多い。なんとなく、前の時と似ていて不安だ。
話してくれそうにないゼルダを見てソロが唇を噛む。目には不安が宿っているように見える。
「俺たちじゃ、頼りになりませんか」
「どうしてそんな話になるんですか?」
「だって、現にリーダーは悩んでいるじゃないですかっ……」
「……心配していただいて嬉しいですけど、私は大丈夫ですよ」
「……俺は、いつでも力になりますから」
目に見えてしょんぼりとしたソロ、なんだか泣きそうな雰囲気があるのは気のせい……ではないはずだ。
「失礼しました」とだけ告げてソロは区画移動用エレベーターに乗って行った。自室に帰ったらしい。
「いいのか、ゼルダ?」
「夏さんはいいご友人を持ちましたね」
「ああ、あいつはすごい優しい奴だよ」
「もうちょっとなんです。だから、話せません」
「そうか」
そんなに一人で抱え込むなって言いたかったのにな、ソロは。
どれくらい頼れないものなのか俺には分からないけど……、頑張りすぎなくてもいいのに。
特務レベルのものだったら俺には厳しいかもしれないけどさ。
「みーんな、悩んでるのは同じって事ね」
「うわああああ、止めろよそういうこと言うの! 俺には耐えれない!」
「普段あまりにも楽観的すぎるのよ」
「大きなお世話だよ……」
というか考えてみたら俺が今日一緒に依頼に行ってた三人はみんな悩んでるのか。
もしかしなくても結構気まずい雰囲気だったんじゃないかな……。よく耐えたな俺。
どうにかして全部解決できないかな。変に重たい雰囲気のエントランスは嫌いなんだよ。
「ま、直に解決するわよ」
「直にっていつだよ」
「もうすぐよ」
「分からねえ」
意味ありげに悪戯っ子のように笑うメリーに、なんだか誤魔化されたような気がした。
もうすぐとは言うものの、それはいつなんだろうか。結局のところ分かりゃしないくせに。
ともかく面倒な悩み事が一刻も早く解決することを俺はただ願うしかなかったのだった。