GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
最初に小説内での変更事項を少し。
・ZELDAさんの本名をゼルダに。ZELDAは今後コードネーム扱い。
・既存キャラも依頼中コードネーム化。tatsumiさん(笑)
全ての反映は今週一週間を目標に頑張ります。
では長らくお待たせしました。
大体五千字といつもと同じくらいですが……、どうぞお楽しみください。
ちなみにメリーさんが少しいつもと違ったりするかも知れません。
では、スタートです。
季節行事企画番外編 「ハッピーハロウィン!」
「trick and treat!」
「いきなりおかしいよ!?」
メリーに扉を開けるよう指図する声で起こされた俺は、扉を開けると早々にそんなことを言われた。
確かに今日、十月三十一日はハロウィンだ。子供が近所の家を回ってお菓子を貰う日。
でも明らかにメリーはいろいろと違うだろ。子供っていうような歳じゃないし、言葉も違うし。
やたら英語の発音はいいけど“and”じゃなくて“or”な。お菓子持っていって更に悪戯とか悪質すぎるだろ。
「はいはいトリートな。悪戯はするなよ」
部屋に一度戻って板チョコを持って来た。俺が持ってるお菓子ってのはこれくらいだ。
二枚あったから後でゼルダにもあげよう。ゼルダは甘党だから絶対喜んでくれる。
ほくほくした顔でメリーは板チョコを受け取ると早速銀紙をめくってパクついた。動画で見たウサギを思い出した。
「甘いー……」
「幸せそうだな」
目を細めながら板チョコを頬張るメリーを見て右手がウズウズしてきた。どうしよう、頭撫でたい。
そんな俺に気付かず黙々とメリーは食べ続け、ついに最後の一片欠を飲み込んだ。よく途中で気持ち悪くならなかったな。
「ご馳走様」
「お粗末様でした、と」
いつもは見せない満面の笑みを浮かべるメリーを見て反応に困る。どう接すれば……。
困り果てているところにゼルダがやってきてくれた。おっ! ナイスタイミング!
「はい、ゼルダ。トリート」
「え?……あ、ありがとうございます!」
すかさず残っていた一枚を渡した。
一瞬何のことか分からないように首を傾げたゼルダは板チョコを見ると顔を輝かせた。甘いもの好きだもんな。喜んでくれて良かった。
「板チョコ、後でゆっくりいただきますね」
「うん。ゼルダ、甘いもの好きだろ?」
「ええ、とっても。ありがとうございます」
静かにお礼を告げるゼルダはおしとやかなお嬢様を想像させる。うーん、ドレス着てても違和感なさそう。
するとゼルダが突然何かを思い出したように「あっ!」と声をあげた。どうしたんだろう。
「私、アリサさんたちがパーティーをするそうなので呼びに来たんですよ」
「ハロウィンパーティーってことか?」
「ええ、そうみたいです」
「楽しそうね」
メリーもなかなか乗り気なようで興味深々だ。俺もそういうのはやったことがないからかなり興味がある。
どうやらエントランスで大々的にやるようなのだがその前の準備として女子はアリサの部屋へ、男子はコウタの部屋に行かなければいけないそうだ。
なんか荷物でも運ぶんだろうか。俺は楽観的に見ながらメリーたちと分かれ、コウタの部屋へと向かった。
――――――――――
「やっ、めろ! 放せコウタ!!」
コウタの部屋に入った瞬間、俺は呼ばれた意味を即座に理解し撤退しようと身を翻したのだがコウタに捕まってしまった。その顔はにやにやと笑みを携え、いかにも楽しいと言った感じだ。
コウタの部屋にあるのは大量の服だった。しかしただの服ではない。ハロウィンならではの服、仮装のための衣装があるのだ。
多分女性陣が作ったんだろうなと予想してアリサとかを恨むことにする。
ちなみにコウタは既にバガラリーの登場人物の誰かであるらしいウエスタン的な服を着ている。さっき説明してたけど忘れた。
「それは聞けないです。ソーマも夏さん押さえんの手伝って」
「……」
「ソーマアアアア!裏切り者おおおおお!!」
同じく部屋にいたソーマがしばらくしてからコウタと一緒に俺を押さえはじめた。
あれだろ!? どうせ手伝わないと変な服着せるぞとか脅されてるんだろ!? 仮装なんてみんなそういうのなんだよ、バカヤロー!
さすがに女よりも力が無いのではと疑われている俺が年下とは言え男二人に勝てるはずが無く、そのまま上着から剥がされはじめる。
変態め! お前らも恨んでやるからなー!
「……なんで俺がこんなこと」
「夏さんが自分から着てくれれば解決するんだけどな」
「着るわけないだろっ!」
「今なら選べますけど?」
「ロクなもんないじゃないかよ!」
ソーマの愚痴から始まったコウタの言葉を全て拒否した俺は正論だったはずだ。
にも関わらずコウタはやれやれと言った感じでため息を吐いて、また作業にとりかかった。
うわあああああん!
――――――――――
コウタがクイクイと座り込んでいる俺の服を無言で引っ張ってきた。
どうやらエントランスに着いたようだが、俺はエレベーターから出るつもりなんて無かった。自分から死にに行く気かよ。
結局、ウエスタンコウタと執事服を着たソーマに引きずられる形で俺はエレベーターから出た。
ソーマだが、執事服に抵抗したもののそれ以外いいものがなかったので執事服で落ち着いている。ざまあ!
「なかなか似合ってますよ、夏さん」
「それは褒めてんのか? 貶してんのか?」
「褒めてます」
コウタの言葉に「嘘つけ」と返しながら、俺はコウタに手を引かれて階段を下りた。
階段を下りてすぐにあるフロントのところにはヒバリちゃんがいる。小さなジャック・オ・ランタンが置かれていたので恨んでおいた。今日は恨みデーだ。
「おはよう、ヒバリちゃん……」
「おはようございます。夏さん、その恰好似合ってますね」
「……俺は、黒歴史だと思ってる」
ヒバリちゃんが元気づけてくれるが元気が出ない。末期だ。
タキシードのようなぴっちりした上下の服。風に靡くは黒のマント。本来の俺のものより少し長い尖った爪。凝った造りの尖った二本の義歯。合わないという理由でコウタに乱された少し癖があるように見える髪。これが俺の今の恰好だ。
……俺が何に仮装したか分かってくれた人はいるだろうか。
答えを言ってしまうと、俺はドラキュラになっていた。自分で鏡を見てそれっぽいと思ったときコウタに負けたと思う。
涙目になりながら黄昏れて立っている俺は実にらしくないドラキュラだと思う。
女性陣はまだ来ていないようで周りにそれらしい人影はない。俺、このままで放置は嫌なんだけど。
あっ、今指差されてる気がする。泣きそう。
「夏さーん!」
「……ゼルダ?」
ゼルダの声が聞こえ、背後にあるエレベーターのほうへ向き直ると仮装したゼルダがいた。
足元がすっぽり隠れる白い無地のドレス。頭にちょこんと乗ったティアラ的なもの。雨避けにはならないであろう小さな丸っぽい傘。
そう、ゼルダはお姫様に紛していた。扱いの差……。
「似合ってるぞ、ゼルダ」
「夏さんこそ」
「お世辞はいいから。……メリーは?」
「あ、そうでした。メリーさん、可愛いんですよ!」
転ばないようにドレスを両手で摘んで持ち上げたゼルダはまたエレベーターに入って行った。
しばらく攻防の声と音がしてようやく二人が出てきた。あまりにも攻防が長くて一回エレベーターが別の階へ行きそうになっていた。
「やーめーなーさーいー!」
「折角可愛いんですから、恥ずかしがってちゃ駄目ですよ」
「だって! この服を作った人に悪意を感じる露出度よ!?」
「はいはい」
出てきたメリーを見て、俺は絶句した。
胸の部分にのみ巻かれた一枚の黒い布。太股の半分も無い、腰に先が矢印のような形状の黒いしっぽが付いた黒いショートパンツ。踝ほどの高さの小さなブーツ。両の腕の付け根にまた黒い布が一巻き。頭にはしっぽと同じような角が二本。服やブーツの端には白いフリルが付いている。
俺の予想が正しければ小悪魔をテーマに仮装したメリーがそこにいた。
「おお……」
「あたしは見世物じゃないのよ!!」
白と黒の地味な色なのに惹かれるのはその大胆過ぎる露出ともう一つ理由があるからだろう。
それはメリーが普段身につけている眼鏡を外しているからだ。「見えない……」と嘆いているところを見るとコンタクトはしていないようだが、素顔のままのメリーは完全に女の子だ。
いつもは厚着をしているせいで分からなかったが露出が多いお陰で抜群のプロポーションであることも分かる。
そして本人は完全に無意識であろうが涙目になっていることで不思議と保護欲が掻き立てられる。
とにかく、ストーカーとか変態が湧きそうなくらい今のメリーは可愛かったのだ。
「……可愛い」
「なっ、ばっ!! 頭湧いてんじゃないの!?」
「本当に可愛いですよねー」
ゼルダが並んでしまうと完全に俺のポジションが悪役に見えてくる。俺がゼルダをさらって子分のメリーに過ちを暴力で諭されてる感じだ。
メリーは泣き止まそうとした全然名前も知らない神機使いからもお菓子を貰っていた。それで涙が引くからまた周囲で好感度が上がる。
きっと今のメリーは可愛い妹みたいな立ち位置なんだろうな。
「煎餅欲しい……」
「はい、メリーちゃん」
「メリーちゃん言うな!」
「いつもの三億倍は可愛いですよ、メリーさん」
「一条後で殺すわよ!?」
なんかもう微笑ましくなってきた。
いつの間にか一条さんまでメリーの茶化しに参加してるし。これまた見事に茶化せている。
ヒバリちゃんから慰めで貰った飴を口に含んで転がしながら俺はその光景を眺める。うわ、甘ったるいプリンのレーション味だ。
数十分も経つと自力で囲みの輪を突破したメリーがこっちに歩いてきた。さっきまで無かった小さな籠を持っており、中にはお菓子が山盛り入っている。
モテるんだなあ、やっぱり。
「や、やっと抜け出せたわ……」
「お疲れさん」
飴を舐め終えた俺はまた一つ取り出して口の中に放り込む。ひっ、冷やしカレードリンク味……!
メリーにも飴を勧めてみたが「十分よ」と断られ、代わりに硬そうなクッキーを貰った。カノン特製クッキーないかな。
「人気者だな、メリー。やっぱりモテる顔してんだよ」
「いい迷惑よ。後でアリサに文句つけてやるわ」
「その服はアリサ特製なのか」
「……引き籠りたい」
「勿体ないな、可愛いのに」
かあっ、と顔を真っ赤にするメリー。さっきからやたらに「可愛い」という単語に反応するな。耐性ないのか?
いつもの強気も砕け散ったようにないし……。これは俺が平等に接せるチャンスか?
「いつもお疲れさんっ!!」
「もがっ!?」
メリーの口の中にさっき貰ったクッキーを押し込んでやった。
慌てて抵抗するメリーだが口から出すのは汚いと思ったのか素直に口を動かしはじめた。小動物に餌付けしてる気分だ。
ごくりと喉を鳴らして食べ終わったメリーは不機嫌そうに頬を少し膨らませながら籠を漁る。
「あんたもねっ!!」
「むぐっ!?」
メリーがお返しと言うようにプチケーキを口に詰め込んできた。
うん、美味しいんだけど……。口の中の水分が奪われまくってる。飲み物欲しい。
なんとか食べ終え、メリーに顔を向けるとにやにやと笑っていた。まさに小悪魔。いや、悪魔。
「ははっ、まあいつもありがとな」
「じゃああたしも一応、ありがとう」
「一応、は余計だろ」
「あたしの性に合わないのよ」
「まあいきなり素直になられても引くけど」
こつん、と拳をぶつけあう俺たち。メリーが全力でぶつけてこなくて安心した。
きっと、こんな時代に生まれて来なければもっとゼルダとかメリーとかと遊べたんだろうな。そう思う傍ら、こんな時代じゃなかったら会わなかったんだろうなという、どこか確信にも似た思いがあるのに気付いてくすりと笑う。
メリーは不思議そうに首を傾げていたけど、しばらくしてからつられたように小さく笑った。
「ハッピーハロウィン」
「ええ。Happy Halloween」
なんだか、服装以外は穏やかな日だった。
後日、いつ撮ったのか分からない俺やメリーの仮装姿が写真となって売りに出され、羞恥で顔から熱が取れなかったのはまた別の話。
「真・ゼルガーの部屋」では今回のメリーさんの服装を私が下手ながら描いてみました。
靴が描けなかったのは許してください。
最初の段階で足の角度を間違えたせいだ……。
今後ともよろしくお願いいたします。