GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
今回は本編から脱線して季節行事企画の番外編を書きました。
では、スタートです。
「パンパカパーン! 第二回、料理対決ー!」
「夏さん……、本気で二回目やるんですか……」
「ふふ、コウタよ。ここまできたら引き下がれないぜ」
「そうっすか……」
と、いうわけでどうも! 夏です。
今日はバレンタインである。女子が男子にチョコレートを贈るあの日である。
……さて、皆さんは覚えておられるだろうか。
ちょうど一年前の、バレンタインデーの日のことを。
そう、コウタの言うとおり、この料理対決は第二回目なのだ。
去年はそれはそれはすごい結果が出たもんだ。
あと、チョコレートの存在をみんなが忘れるというバレンタインデーらしからぬ出来事もあった。
……そうだな、もう一つ補足するとするならば、メリーの料理の腕はやばかった。うん、悪い意味で。
「さてさてさて! 今回は前回の失敗がないように行くよ、コウタ!」
「はいはい……。えー、今回のお題は……“チョコ関連”って、えー……」
コウタが俺に呆れたような視線を向けてきた。
だ、だって、チョコレートを使った料理なんていろいろとあるじゃないか!
ケーキだったり、タルトだったり。まあ、とにかくたくさんあるんだよ。
それなら各々に選ばせたほうがよくない? って話。
そこのところは理解してくれたまえ。
「十分な食材は用意済みだ! 俺の財布が泣いてるぞ!」
「ただでさえ金欠なのに、よくやろうと思いましたね」
「一年に一回のイベントくらいいいじゃないか」
是非とも俺の財布が報われるようなものを作ってほしいな。
さて、そろそろ今回のメンバーを紹介するとしようか。
俺は背後に立っていた女子たちのほうへと向き直った。
「今回のメンバーは、ゼルダ、メリー、アリサの三名だ」
「……あれ、減ってません?」
「前回優勝者のカノンは今回審査員に入ってもらった」
「よ、よろしくお願いします!」
「ちなみにサクヤさんからはまたNGが出ました」
今回も一応オファーはしたんだけど、やっぱり断られた。
絶対料理上手いのにね。そんなに断らなくてもいいと思うんだ。
「またあたしは強制参加なのね……」
「はいはーい! パティシエゼルダ、頑張りまーす!」
「わ、私も今回こそ優勝を狙います!」
さて、今回の参加者の服装であるが、無論アンナミロワールだ。
メリーは既に諦めたようなため息を吐いている。
ゼルダは「早く始まらないかな~」とそわそわしている。裏の方、どうもです。
アリサは若干緊張しているように見えるが、意気込んでいるのも分かる。
また随分とばらばらなメンバーだなあ……。
「というわけでスタートっ! 頑張ってくれよ!」
俺が開始の合図を出すと三人が一斉に食材の元へと向かう。
今回はちゃんと食材の他にケーキの型とかも用意したぞ。
道具類はサクヤさんとかカノンから提供してもらったものだ。本当にありがとうございます。
みんなが食材や道具を持って各々の位置に着いたところで俺はインタビュー開始だっ!
まずはゼルダからいってみようか。
「ゼルダー、今回は何を作るんだ?」
「チョコチップクッキーです。前回もクッキーで、バリエーションがないですが……」
「いや、構わないよ。何を作るかは自由だからね」
ゼルダはさっさとレーションを砕いて生地づくりをしていた。
なるほど、確かにこの前もクッキーだったから作るのは簡単だな。
まあ覚えていれば、って話だけどこの分だと覚えているんだろうな。
これ以上の邪魔をしてはいけないと思い、俺はその場を移動した。
今度はアリサのところに行こうかな。
「アリサは何を作るんだ?」
「チョコチップを使ったカップケーキですね。お手軽ですから」
「へえ、そうなんだ?」
「焼く時間が短いので案外簡単なんですよ」
良いこと聞いたな。今度俺も作ってみようかな?
……いや、止めとこう。包丁を使おうとしたら怪我をする俺だからな。
で、最後にメリーなんだが……。ぶっちゃけ行きたくない。
だって見てて悲しくなるんだよ? いつもの調子なんて存在しないんだよ?
逆に俺の調子が狂うっつーの。
「メリーは、何を作るんだ?」
「……無難に、チョコを型に流して固めようかなって」
「ああ、それがいいな」
「これなら消し炭も作らないだろうし」
「……」
さり気なく去年のこと、気にしてるんだな……。
そう、去年は参加者全員がクッキーを作ったのだが、その中でメリーのみが消し炭を生成したのだ。
まだ紫色の煙を放つ遺物の方が反応できた。でも、消し炭は……。
あの後メリーはガチ凹みしてしばらく夜中に泣いてたんだよな。
「まず湯煎だぞ? 分かってるよな」
「そ、それくらい分かるわよ。ボウルにお湯を入れて……」
「ちょっと待て。お湯の中にチョコを入れるんじゃないぞ」
「えっ、違うの?」
「違うよ!? そんなことしたらただの水っぽいチョコだからね!?」
まるでさも当たり前じゃないの? というように聞いてきたメリーの言葉を一刀両断する。
確かに俺も昔にそんなことを思った時期があったけどさ、さすがにこの歳じゃ常識だよ。
「お湯を入れたボウルの上にボウルを重ねて、それに刻んだチョコを入れるんだ」
「なんで刻む必要があるの?」
「お前なあ……。そのほうが熱の通りが早くなって溶けやすくなるだろ」
「……なるほど」
いつもと違って真剣に俺の話を聞くメリー。そんなに今年は失敗したくないのかな。
俺の話を聞いてぎこちない動きながらも言われた通りにしているメリー。
どうしよう、この場から動いたらいけない気がする。すごい不安だ。
いや、でもここから先は間違えるようなことないよな? これ自体それほど難しくないし。
不安ではあるけども、とりあえず俺はこの場から離れることに決めた。
後は頑張れ、メリー。お前次第だ……。
「ただいま」
「どんな感じでした?」
「みんな頑張ってるよ。楽しみだ」
「ふうん。……カノンは誰のが楽しみ?」
「え、えぇっ!? 私ですか!? ……私は、全員楽しみですね」
司会者側のところに戻って雑談開始。雑談してないとそわそわしてきそうだからな。
それにしても、この時間が一番暇だ……。
だってさ、特にまわることも無いじゃん。俺が説明受けたって分からないし。
しかもその後にお菓子が待ってるとなると、ねえ?
「やっぱり今回もメリーさんは期待のダークホースっすね」
「ダークホースすぎるでしょ、あいつは」
「だ、大丈夫ですかね、メリーさん」
「湯煎から危なかったけど、大丈夫じゃない?」
「ゆっ、湯煎からですか!?」
さすがに驚いたようにカノンが目を見開く。まあ、そうなるよね。
「教えてきたらから大丈夫」と付け足すとカノンはホッとしたようにため息を漏らした。
是非今度、あいつに料理ってものを教えてあげてください。
多分今のメリーなら喜んで指導を受けると思うんだ。
自分が下手だって自覚がある分、メリーは少しはマシだと思うんだよ。
下手って分からずに毒物を生成する人よりは、多少。
「コウター。俺、また寝ていい?」
「ちゃんと見てるこっちの身にもなってくださいよ……」
「悪い悪い。じゃあ寝るわ」
「聞いてないっすよね!?」
はてさて、何のことやら。
――――――――――
うーん、よく寝たなー。
やっぱり暇なときは寝るのが一番だよね! それで一回休みの日を消化しちゃったけど。
他にやりたいことがあったから、あれは泣きそうになったなあ……。
「コウタ、どんな感じだ?」
「起きるのが遅いですよ。もうみんな完成しました」
マジかよ。みんあ作業が早いな。ん? それとも俺が寝すぎただけ?
ま、まあそんなことはどうだっていいんだよ。さっさと審査に入っちゃえばいいんだし。
「まずはゼルダからだな!」
「確かリーダーはチョコチップクッキーだっけ?」
「楽しみですっ」
ゼルダがクッキーの乗った皿を俺たちの前に置いた。おお、良い匂いがする。
焼き立てなのか、良い匂いが辺りに漂っている。
そうっと一枚取ってパクつくと、チョコとクッキーの甘味が口に広がった。
「おお、美味いな……」
「さっすがリーダー。なんでもできちゃうなあ」
「とっても美味しいです! 私も今度作ろうかなあ……」
「み、みなさん、言い過ぎですよ!」
ゼルダの顔が真っ赤に染まった。そんなに照れなくてもいいと思うんだが。
美味しいって言われたら普通喜んで終わりじゃないかな。
料理で褒められたことがないのかな? いや、それはないか。
「それにしても、腕あげたなー」
「そっ、そんなことはないですよ! 確かにあれから作るようになりましたけど……」
「わあっ、じゃあ今度一緒にお菓子作りしましょうよ!」
「ええ、喜んで!」
女子の会話が盛り上がってきたところで、次の人いってみようか。
そういう会話は全部終わってからやってください。なんか途中でごめんね!
さて、次はアリサの番だ。
「アリサはなかなか料理上手いからな」
「俺からすれば、あのアリサが? って感じだけどなあ」
「コウタさん、そういうのは失礼ですよ」
アリサが作ったのはさっき聞いた通りチョコチップのカップケーキ。
これも焼き立てなのか甘い香りがしてくる。いいね、焼き立て万歳。
早速フォークで少し切ってパクつく。あー、幸せだわ。すごい美味しい。
甘いもの食べると元気が出てくると思わない?
「さすがアリサ、美味しいぞ」
「焼き加減もなかなかいいんじゃない?」
「ふんわりしてて美味しいですねー」
「なんでコウタが上から目線なんですか?」
「なんで俺だけ言及されるの!?」
隣でコウタが傷付いてるがぶちゃっけどうでもいい。
今日は俺が傷付かなくてもいい日だから態々傷付きに行きたくない。
……うん、こんなだからいつも俺は周りから助けてもらえないんだね!
「どうやったらこんなの作れるんだよ……」
「今度教えてあげましょうか?」
「いや、遠慮するよ。どうせできないし」
「そうやって最初から諦めてたらできるものもできませんよ?」
「うっ、そ、そうだけどさ……」
アリサにどんどん詰め寄られながら説得された。
だ、だって、そうやっておばさんと料理してもいい加減なものしかできないんだ!
それに包丁の使い方が危ない、って途中からやらせてくれないしさ……。
どっちにしろ俺は料理が出来ないんだよ。
「つっ、次! 次はメリーだ!」
「……きましたね、ダークホース」
「今回はどうなるんでしょうかね」
「何食べる前から危険人物扱いしてくれちゃってんの?」
早速メリーがお怒りです。だって君は前例があるから。
というわけでメリーは普通のチョコだ。丸い銀の型に入れて固めたチョコ。
うん、今回は何事もなさそう……。
「……メリー?」
「な、何かしら?」
「お前、冷やす前に空気は抜いたか?」
「く、空気? 空気なんて抜かなくちゃいけないの?」
おうふ、そこで詰まったかメリーよ。
メリーのチョコの表面には丸い白っぽいものが無数に出て固まっていた。
これは冷やしたときにチョコの中にあった空気が表面に出て固まったということだ。
これが出ると見栄えが悪くなるから冷やす前に普通は空気を抜くように何かしらするんだが。
生憎、メリーはそれを知らなかったようだ。
ま、まあ、今回は味の方は大丈夫だろ!
試しに一個口の中に放り込んでみる。
「……うん、味の方は問題ないな」
「表すなら普通、だな」
「初めてにしてはいいと思いますよ」
「よ、よかったわ」
「逆にこれで不味かったらお前すごいよ」
見た目はあれだけど、味の方は全くなんにも問題なかった。
こんな普通のもので暗黒物体を生成することが出来る人がいたら見てみたい。
この調子なら案外メリーも上手くなるかも?
「メリーさんも今度一緒にお菓子作りしましょうよ!」
「あ、あたしでいいなら喜んで」
「ついでに私が料理のコツも教えてあげますから」
「……悔しいけど、お願いするわ」
さすがにメリーも認めざるを得なかったようだ。ぺこりと頭を下げた。
まさか頭まで下げるとは思ってなかったけど……。まあいいや。
それよりも、今回の結果発表しないとな。
「というわけで、今回の優勝者だが……どうする?」
「割とみんないい感じでしたよね」
「私としては甲乙つけがたいです」
うん、なかなかみんな健闘したからな。味もみんな美味しかったわけだし。
見た目は、メリーのがちょっとあれだったけど。他は大丈夫。
……ということは。
「もう今回、みんな優勝でいいんじゃないか?」
「俺は異議なし」
「私も平和的解決でいいと思います」
「じゃあそれで決定」
「なにそれ適当」
何事も平和っていいよね! って話。
メリーも泣かないし、ゼルダやアリサも満足できるし。みんな笑顔でハッピー。
うん、今回はこれにてお終い。
……え? 締め方が適当だって? いやいや、そんなことはないですよ。
――――――――――
「夏ー、ゼルダー」
エントランスでゼルダと団欒しているとメリーから声がかかった。
メリーの持っている皿の上にはチョコペンなどでデコレーションされた手作りチョコが並んでいる。
「改めて作り直してみたのよ。いかが?」
「ほー、また随分可愛くデコレーションできたな」
「僅かな女子力を掻き集めて頑張ったのよ」
「そうだな、お前には僅かしかないな……ぶほぉ!?」
お、思い切り鳩尾叩かれた……。
なんだよ、自分で最初に言ったんじゃないかよー!
「もういいわ、夏にはあげない」
「えぇー、美味しそうだから俺にもくれよ」
「ムカつくからやだ」
「そんな……!」
なんでそんなことで俺だけ食べられない訳。俺だって食べたいのに酷い。
ちょっと不機嫌になっているとゼルダがメリーのチョコを頬張った。
いいなあ、美味しそう。
「あ、ブラックチョコで作ったんですか?」
「美味しいでしょ」
「……やっぱ俺、遠慮しとくわ」
ある意味メリーの嫌がらせに感謝した日だった。
ちなみに第一回の料理対決は真・ゼルガーの部屋に「息抜き番外編 激闘!料理バトル」として掲載してあります。