GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
今回は季節行事企画番を投稿いたしました。くだらないギャグですが少しでも笑っていただければ幸いです。
では、スタートです。
「嫌だ! 俺は絶対やらない!」
「別に、恥ずかしがることの程でもないと思うが?」
「だってソーマも逃げたじゃん! なら俺だって逃げていいはず!」
ソロに羽交い絞めにされて、俺は必死にもがいた。くっそ、力強いな本当!!
そんな俺たちの前に悪魔三人。その三人とは、ゼルダ、メリー、アリサのことだ。覚えているだろうか、俺がこの三人のせいで去年のハロウィンなどで散々な目に遭ったことを。
そしてその“散々な目”と言うのが、主に衣装の面だったことを。
「俺はっ、絶対にそんなの着ないんだからな!!」
「ただの狼コスだ。恥ずかしいことではないだろう」
「ただの!? 露出多すぎだよ馬鹿!」
どうやら今回の衣装は大体が同じものらしい。最近忙しかったし、バリエーションが多く作れなかったんだろう。それはな、うん、仕方ないと思うよ?
それでもその狼コスは本当ないって! 渡されたら二つ返事で承諾して戸惑いなく着るソロもどうなんだよ!? 多分ゼルダの力が大きいんだと思うけども。
まず耳と尻尾がかなり作りこまれてる。なんか感情によって動くらしい。ゼルダを見ているときのソロの耳と尻尾は子犬さながらだ。ちなみにソロ本人は気付いていない。
服のほうだが、サタンを考えてくれれば分かりやすいと思う。あれのズボンが太ももまでしかなく、しかもダメージ加工がしてある。ふざけるなよ、おい。
まあ、つまり何が言いたいのかって言うと、だ。……上は殆ど裸に近いじゃねえか! 何が面白くて上裸にならなきゃいけないんだよ!!
「そー固いこと言ってさー、着ないってのはないんじゃなーい?」
「あたしだって着せられてんだから、あんたに拒否権なんてないのよ」
「女子組で頑張って作ったんですから、着てください」
上から順番にゼルダ、メリー、アリサの台詞だ。そう、ゼルダはまた裏が出てきた。今回は色っぽいお姉さん的感じだ。なんかポージングとか諸々、色っぽいです。
ちなみに女子は猫娘をイメージしたコスらしい。これは去年のメリーの小悪魔コスと似たような感じだ。オプションとして耳と尻尾の他に肉球手袋も装着しなければならないそうだ。
目の前にいる三人は既にそれを装着済みでなんとも愛らしい。……のだが、俺としては近付きたくない。今すぐ逃げ出したい。何故なら三人が俺の分の衣装を持っているから。
俺は遠慮します! 本当に、そういうのはいいから! みんなでやってて、俺は見てるから。
「大丈夫よー、夏は可愛いんだからさ、狼と言うよりは子犬に見えるって」
「それはそれで失礼だよゼルダ!?」
「だから拒否権はないのよ。早く着なさい」
「煩い! とにかく俺は嫌なの!」
「さすがに男性を剥くわけにもいかないですし、ソロ、お願いしますね」
「着替えさせるくらいなら構わないぞ」
「承諾しないでよおおおお!」
ソロは俺を羽交い絞めにしたまま器用にメリーから服を受け取る。なんで承諾するんだ!
その後女子三人は退室、どうやら後でエントランスで合流する算段らしい。よ、よし、今のうちに逃げればいいんだな!
そう思っていると、唐突にソロが俺を解放した。突然のことで逆に今まで拘束されていた俺が困惑する。
「なあ、夏」
「な、なんだ?」
「俺がお前を全力で叩きのめしてから着させるのと、自分で着るのどっちがいい?」
「…………自分で、着ます」
究極の選択を押し付けてきたソロは俺の答えに満足すると、服を渡してきた。今のは酷い。
ソロも「態々着替えているところを見る必要はないだろう」と告げるとそのまま退室していった。
これは羞恥心を捨てるしかないんだろうか。お腹ぽっちゃりとか、そういうわけじゃないんだけどさ? 鍛えてるわけでもないからさ……。うん、なんか恥ずかしい。
ソロはいいよ、ちゃんと鍛えてるみたいだから筋肉ついててかっこいいから。でも俺はそうじゃないの!
「腹を括るしかないか……」
グッバイ羞恥心。俺はしばらくお前を捨てるよ。
別れを惜しんでいたらちょっと涙が出た。
――――――――――
うぅ、恥ずかしい。やっぱり戻ろうかな……。戻ってしまおうかな。
そうエレベーターの中で悩んでいたら隣にいたソロにつまみ出された。行くしかないんですね、はい。ええい、ままよ。こうなったらもうどうにでもなれ……!
ひょいとエレベーターから飛び出し、蹲りたくなる衝動をどうにか抑えて、むしろ胸を張る。胸を張ったのはあれだ、羞恥心を捨てるためのおまじないであって決して露出協ってわけじゃないからな。
「ぉ、お待たせ……」
うおおお、声が裏返ったよ。俺声が裏返ったの人生で初めてだよ。
よし、ポジティブにいこう! 俺の上裸見たって喜ぶやついないしむしろ見てくるやつなんていない! 変に自意識過剰になってるんじゃない!
……少し気分が落ち着いたな。こうなったからには全力で楽しまないと。
「あら、似合ってるじゃない、夏」
「なんだかソロが夏さんの親みたいに見えます」
「誰がこんなやつの親になるか」
「辛辣!!」
いや、別にそこまで言うことないじゃないか。そんなにばっさり言われたら俺傷つく。
まあ今の俺の仮装が狼に見えないってのは分かるさ、俺だって今の俺の姿は犬にしか見えないさ。逆に狼に見えるソロが羨ましいったらないよね。
俺がクールキャラになれば見えるようになるのかな。でも俺にはクールキャラなんて無理だしなあ。
「と、ところでゼルダは?」
「リーダーなら向こうに行きました」
「男誑かしてお菓子狩ってるわよ」
「ハロウィンってそんな行事だったっけ」
俺の知ってるハロウィンじゃない。というか去年もハロウィンやったのにな。
そういえば去年のお姫様ゼルダはいつもと同じような雰囲気だった気がするけど……一年前の記憶だから案外当てにできないかもしれない。
というか、そもそもハロウィンっていうのはだな、「トリック、オア、トリート」って言ってお菓子をもらうことを言うんだよ。絶対言ってないだろ、ゼルダ。
「あたしもお菓子もらってくる」
「お、おう」
「……メリーさん、楽しそうですね」
「おお、耳と尻尾は動く仕組みになっているのか」
メリーは少し表情を綻ばせてゼルダがいるあたりの群れに突撃して行った。その気持ちを表すように、耳と尻尾がピコピコと嬉しそうに動いている。
なんだかんだ女子はお菓子が好きなのかな、そう思いながらお菓子をもらうメリーの姿を眺める。ちょっと分かりにくいけど頬も染まっている気がするな。
というかソロは今更動くことに気づいたのか。……でも俺が気づけたのはソロのおかげだったからソロ自身は自分の姿が見えていないわけか。気づかなくて当然かもしれない。
俺の尻尾と耳は動いてるんだろうか。俺も自分のは見えていないわけだからいつ動いているのかが分からないし。ど、どうせ動かないし、うん。
「夏、動いてるぞ」
「えっ、なんで!?」
「はい、冷やしカレードリンクですよ、夏さん」
「ありがとう、アリサ……!」
「とても動いているぞ」
「だからどうして!?」
動く理由が一つも思いつかないんだけど。どうして動……冷やしカレードリンクか! むむむ、冷やしカレードリンク恐るべし。
でも仕方ないじゃないか! 今だってにやけが止まらないんだもの! とにかくこれは飲んでしまおう。
冷やしカレードリンクを飲み終わって一息ついているとアリサとソロがまだ俺の頭を見ていることに気づいた。まだ俺の耳に何か用なのかよ?
「夏さんの耳と尻尾、常時動いてますけど」
「壊れているんじゃないか?」
「えー……、ずっと動いてんの?」
「そうだな、お前の心が浮かれているんだろう」
酷い言い様だな、俺は確かにそんなに頭がいいわけじゃないけどさ、そういうこと言うのよくないと思う。
アリサはその後サクヤさんの姿を見つけたらしく移動、同じくソロもチョコレートを貰うためにどこかへ行ってしまった。結果、俺ぼっち。
俺も何か貰うためにみんなのところに行くべきかな。俺としては冷やしカレードリンクが貰えればいいわけだから……もはや俺もハロウィン関係なくなってきたな。
近くにいた女子にトリックオアトリートで少しのお菓子を貰い、ソファに移動してもそもそと食べる。……また質が落ちたか? 文句を言える身分じゃないって、分かってるけども。
「あら、夏。子犬みたいに動きっぱなしね」
「煩いな、故障だ」
「そう。故障してよかったわね」
「何がだよ、いい迷惑だ」
去年同様、大量のお菓子を腕に抱えたメリーが現れた。持ちすぎだよ、今にも零れ落ちそうじゃないか。
っと、メリーを見て思い出したけどゼルダの姿が見当たらないな。さっきまでそっちでお菓子貰っていたからまだいると思ったんだけど……少なくともエントランスには見当たらないように見える。
どこに行ったんだろう。依頼に行くならほかの誰かも出るはずだけど、そんな様子はどこにも見受けられないし。
「ゼルダさんなら、外部居住区のほうへ向かわれましたよ」
「あ、一条さん。ミイラ男ですか」
「包帯を頭に巻いただけですけどね」
少しの、いかにも甘ったるそうなお菓子を手に持って、一条さんがにこやかにこちらに微笑みかけながら歩いてきた。どうやら業務のほうは今のところ問題ないらしい。
もぐもぐとドーナツを頬張り幸せそうなオーラを周りに振りまく一条さんは、申し訳ないけどとても俺よりも長く生きているとは思えない。年長者って、なんだっけ。
今の一条さんはどう見たって小動物と変わりない。なんだか前にも同じことを考えたな。
「それで、ゼルダが外部居住部にってどういうこと?」
「さすがって感じがしません? 最初から彼女は子供たちにお菓子を上げるつもりだったみたいです」
「どうりで持っていく数が多いと思ったわ」
「それいいな。メリー、俺たちもやろうか」
「構わないわよ。まだあるし、どうせいつか配給されるでしょ」
とりあえずもう一回回収してくるわね、と告げるとメリーはまた群れの中に突撃していった。いいけど、回収って言い方はどうなんだろう。
メリーのほうがたくさんのお菓子をもらえるだろうけど、俺も参戦してくるか! メリーは男子から貰って、俺は女子から貰う。きっと効率がいいはず。俺が相手にしてもらえれば。
「若いっていいですねー」
「一条さんもまだぜんぜん若いじゃないですか」
「こう見えて四十は確実に超えてます」
「……え?」
「あ、正確な歳はまた今度にしてください。記憶してないので逆算しないといけなくて」
「自分の年齢くらいちゃんと覚えててくださいよ」
「別に必要ないじゃないですか、死期に近づく数なんて寒気がします」
面白い考え方をするんだな、一条さんって。確かに少し変わっているとは思っていたけども。
俺の考えは顔に出ていたらしい。明らかに不機嫌そうに一条さんが頬をふくらます。子供っぽい。
お菓子はメリーに任せることにして、俺は一条さんの相手をすることに決めた。一条さんの話に興味があったのと、向こうからちょっとした歓声が聞こえてきたからだ。メリーは予想以上に人気らしい。
「だって多分あと何年かしたら五十越えますよ!? 私おじいちゃんとか呼ばれたくないです!」
「一条さんって結婚してるんですか?」
「バツイチです」
「嘘だ……」
「いや、本当ですって。まあ妻も子供も死にましたが」
さらっとなんでもないように言ってみせる一条さんの顔には寂しげな微笑みが浮かんでいる。
何でそんなふうに言えるんですか、なんてことは言えない。きっと一条さんは自分の中で自分なりに折り合いを既につけている。だからこその表情だと思うから。
少し空気が悪くなったのが居心地悪くて、俺は貰ったお菓子の中から甘そうなキャンディーを渡す。途端、嬉しそうな顔を見せるから単純すぎる。
「さーて、今日は食べますよーバンバン食べます!」
「太りますって」
「大丈夫です、私は太りにくいんです」
「そういう問題じゃ……」
「トリックオアトリートォー!」
「行っちゃったよ」
元気に群れの中に突入していった一条さんはあまりにも突然すぎたのか避けられてた。ショックを受けていた。
いつもあんな感じの調子だから、たぶん復活も早いだろうと思っていると「準備できたわよー」とメリーの声が耳に入る。
満足そうな声は聞こえるものの、メリーの顔はこんもりと盛られたお菓子のおかげで見えない。さすがに持ってやれば「ありがとう」とさも持ってくれて当たり前のように言われた。うぜえ。
「そんじゃ、行きますか」
「ええ、行きましょう」
お菓子の山と共に俺たちは外部居住区に繰り出した。