GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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08、リンドウさん

「はぁぁぁ……」

 

 目を閉じ、集中させ、深く息を吐く。

 俺はもともと集中力が持続しない方だ。だからこそこうやって何か動作的に集中を示すことで体も集中しやすいんだ。

 今、さすが馬鹿って思ったやつ出てこい。サリエルの毒鱗粉吹っかけてやる。

 

 まあともかく、俺が今いる場所は訓練場だ。

 別に戦績が悪いからしごかれてるわけじゃない。なんでもかんでもできないと思い込むなよ? できなかったら俺、とうに死んでるからね。

 俺が訓練場にいる理由は至って簡単なことだ。

 

「てやああああ!!」

 

 気合を入れるために大声を上げ、そのまま神機を縦横無尽に振るう。

 ん、なかなかいい感じかもしれない。前もショートだったから重さは変わらないけど、なんかこっちのほうがしっくりくる。

 

 俺がここにいる理由……、ズバリ、新しい神機の試し振りです。

 戦場でやって来いとか言わないで。俺、そっち気にしてたら確実に喰われるから。

 

 

 早く強くなりたいなあ、と思いながらため息を溢す。

 ショートブレード使いとして俺が尊敬している人はタツミさんだ。

 指揮能力にも優れているおかげでタツミさんは第二部隊の隊長も務めている。

 憧れだよ、かっこよすぎるよ、兄貴! ……いや、ノリだから。見逃して。

 

 それでも、剣の種類とかを無視して、強い、憧れる、と思うのが第一部隊隊長の雨宮 リンドウさんだ。

 リンドウさんは俺のショートより少し重いロング使いだ。

 だがそのリンドウさんについて依頼に行った人の生還率が半端ないそうだ。

 さすがツバキさんの弟だよなー。目の前で言ったら確実にツバキさんに怒られるけど。

 

 五分程試し振りをした後、俺は神機を一度預けて訓練場を後にした。

 向かった先はエントランス。依頼を受けるためだ。

 

「ヒバリちゃん、サリエルの討伐依頼ってあるかな?」

 

「ありますが……。珍しいですね、夏さんが任務を選ぶなんて」

 

「あっ……、選り好みできるほど偉くないか。ごめん」

 

「いえ、大丈夫ですよ。緊急性のあるものではないので夏さんに任せても大丈夫そうです」

 

「本当にごめんなさい! でもありがとう!」

 

 カタカタとヒバリちゃんが端末を叩いて依頼受注のための手続きをしてくれる。

 いつも迷惑かけっぱなしだな。今度何かお礼でもしてみようか。

 何がいいかな……。やっぱあれか、冷やしカレードリンクだな。あれ、美味いし。

 

「何か気に入った神機でも見つけたんですか?」

 

 ぼんやりと考え事していた俺にヒバリちゃんが声をかけてきた。

 え、神機? ……確かに、俺は昨日作ったあの神機を強化しようとしているけど。

 

「うん、サリエルの神機。強化したいなーと思ってね。でも、よく分かったね?」

 

「みなさん、神機のこととなると同じようなものですよ」

 

「……そういうものなのか……」

 

「?」

 

 今まで俺は神機をあまり強化するという選択肢を取ったことがない。

 というかそもそも神機をあまり変えたことがない。

 理由? 金け……。いや、悟ってくれ。俺の口から言わせないで。凹む。

 

 でも、あの神機パーツなら俺のちゃんとした愛機になってくれる気がした。

 だからこその今回のサリエル討伐だ。

 今までこんなこと思わなかったのに、なんで今頃……。

 まあ、あの神機パーツが俺にとっていい転機を与えてくれたのは確かだろう。

 

「それじゃ、行ってきまーす」

 

「お気をつけて!」

 

 

――――――――――

 

 

 カンカン、と鉄塔の森に音が鳴り響く。

 俺は無言で、無表情で空中に浮かぶサリエルに攻撃を続ける。

 グシャ、と音が聞こえてサリエルの足が結合崩壊を起こした。ラッキー。

 

 しかし相も変わらず攻撃は通りにくい。

 大して通らないのはやっぱり同族の神機だからだろうか……。

 シユウ種も通りにくいのに、これ以上通らないものが増えたら本気で泣きたいな。

 

「うぅー、つらい」

 

 こんなに手ごたえがなさすぎる相手と戦っても虚しさが増していくだけだ。

 だが俺は帰らない。なぜならこのサリエルの素材を集めないと俺の神機が強化できないからだ!

 あと逃げ帰ったらただでさえ低い俺の信頼が減るからね。帰れない。

 

「うーん、効率のいい攻め方ってなんなんだろう」

 

 たとえば、頭を狙ってみるとか?

 でも俺がいるのは鉄塔の森の中心部の建物の中だ。足場に出来そうなものはない。

 俺が銃も使えたら狙い撃ちできたんだろうけどな……。まあ、愚痴っても始まらない。

 

 ため息をついてまたサリエルに斬りかかる。

 あ、スカートが結合崩壊した。ということは落ちてくるな。

 予想通り落ちてきたサリエルにラッシュをお見舞いする。地上だと上手く動けるよね。

 

「けほっ。……毒鱗粉、かあ……」

 

 毒鱗粉が俺に振りかけられたが、毒になることは無い。ダメージは受けたけど。

 俺がこの神機にしたおかげでスキルとして『ヴェノム無効』が付いたんだよな。その恩恵です。

 このスキルが手に入った途端、毒鱗粉は俺にとってただのシャワーと化しました。

 ちょっと痛いシャワーだけどね! だから一応ガードはするけどね!

 ガードが間に合わなかった時とか役立ってくれそうだ。

 

「あ、逃げるなよ!」

 

 ある程度ダメージを負ってきたのか、サリエルが背中を向けて離脱を図ろうとしている。

 しかも俺にとって最悪なことに、サリエルは一本道を使わずに俺が通れない壁の穴を通って外に逃げて行った。

 ここでスタングレネードを使いたいのはやまやまだが、使ったら水に落ちてしまうかもしれない。そんなことはできない。

 

 仕方ないが、自分の足で探すしか他に方法はないだろう。

 遠回りとなってしまうが他に出る方法がないので一本道を使い外に出る。

 確かサリエルは外から見て右の穴から出て行ったから、俺は左に行けば良い訳か。

 ある程度簡単に行先を把握して、闇雲に走っていたらサリエルと遭遇した。

 

 ……既に、食事を終わらせて。

 

「お、おま……。そりゃあないぜ」

 

 全く、また面倒事が増えてしまった。

 これだと依頼の終了はもう少し先になるかもしれない。

 

 俺はため息をつきながらサリエルに駆け込んでいった。

 

 

――――――――――

 

 

「あ゛ー、疲れたー」

 

 いけない、声が掠れてしまっている。

 だが、許してほしい。結局あの後色々と手こずって五分も時間を取られたんだから。

 くそう、あのタイミングで抵抗するとか、本当ありえないよ……。

 

 今日何度目か分からないため息をついた後、不意にエントランスの空気がいつもと違うことに気付き首を傾げる。

 ざわざわとしている様はいつもと変わらない。でもそのざわつきの種類がいつもと違う気がするのだ。

 ……ざわつきに種類があるかどうかは定かじゃないけど。

 

 何がいつもと違うのか。さすがにそこまで俺はわからない。

 ただ、いつもと違ってみんなの表情が暗いような気がする。

 ここのエントランスって元気な騒がしさが売りじゃなかったっけ。いや、今考えたんだけど。

 

「んー……? あ、タツミさーん! ブレンダンさーん! 何かあったんですかー?」

 

 辺りをもう一度見まわしたとき、第二部隊の二人の姿が目に入ったので声をかけつつ駆け寄っていく。

 近寄った二人の表情もやはり暗いもの。タツミさん、いつも元気いっぱいなのになー。またヒバリちゃんに振られたんだろうか。

 ということはブレンダンさんはそんなタツミさんを慰めているのかな。仲良いですねー。

 

「よお、夏……。今帰ったのか」

 

「はい、そうです。で、何かあったんですか?」

 

「……良くない報せだ。冷静に聞いてほしい」

 

「良くない報せ……?」

 

 ブレンダンさんはいつもキリッとしてて真面目な顔してるけど、今日はいつにもましてキリッとしている。

 でも、やっぱりその表情には影がある。一体、どうしたって言うんだろう。

 タツミさんはつらそうに顔を歪めている。こんな顔、見たことない。

 

 本当に、何が起こっているんだ?

 いや、実際何が起こったかは薄々気づいていた。誰がまでは分からないが、気づいている。

 認めたくないだけ。目を逸らしていたいだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンドウさんが、行方不明だそうだ……」

 

 低かった周囲の温度が、更に低くなった気がした。

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