GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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名前は次話で出すんじゃよ。
……勘のいい方はなんとなく察してしまいそうですが。


72、出会いまでもう少し

 こんにちは、夏です。

 いやあ、とってもいい仕事日和でした。……うん、終わったよ、お仕事。

 仕事日和というか誤射日和というか。今日もすごい動いたね。

 

「どわっしょーい……。ムツミちゃーん、カレーライス大盛りでー……」

 

「夏さん、今日もお疲れですね。ちょっと待っててくださいね」

 

 ムツミちゃんのカレーライスが俺の唯一の癒しだよ……美味しいよ……。

 ぐだっとカウンター席で突っ伏しているとバシッと頭を叩かれた。メリーは今いないはずだけど。

 頭だけ振り返ってみると書類を持って呆れた表情をしたソロが立っていた。

 

「おう、ソロ。お前、依頼はいいのか?」

 

「今のところ緊急性のあるものはないな。そういうお前は、支度しなくていいのか?」

 

「ここで食事取ってからやる……」

 

 そうだ、サカキ博士のお願いでしばらくサテライトの周辺調査に行くんだった……。

 確か一週間くらいかかるんだっけ? それまでサテライトにお邪魔することになるんだよね。

 難しいことは分からないけど、とりあえずアラガミ出たら討伐ってやつだと思う。

 

 しかしサテライト計画はすごいよな。これで外部居住区外の人たちの住処が確保されるし。

 なんにせよちゃんと安全になるまでは俺たち神機使いが頑張らないといけないな。

 それにしてもこれに携わっているアリサもすごいよね……。大変そうだけど。

 

「さっさと荷造りしろ。お前のせいで遅れたりしたら仕方ないだろう」

 

「大丈夫。早食いは得意だぞ! ちゃんと味わっての早食いだぞ」

 

「……俺はツッコまないぞ」

 

「別にボケた覚えはないんだけど」

 

「そうか」

 

 頷かれても……。何を妙に納得しているのか分からないけど。

 ムツミちゃんに配膳してもらったカレーライスを一口。今日も美味しい。

 そんな俺の隣でソロはコーヒーを啜っていた。お、大人っぽい。

 あ、いや、俺たちはもうどっちも成人してるんだったか。

 最近ソロのほうが俺より年上に見えてしまう。そんなの昔からなんだけどね。

 

「そういえば、メリーとの約束はどうする気だ?」

 

 思い出したようにこちらに視線を送ってくるソロ。

 さっきも少し触れたが、現在メリーは極東支部にいないのだ。

 移動要塞のフライアってところに、第一部隊のエミールと応援に行ったんだ。

 そうなるとあの子たち寂しがるよな……。代わりに俺が行くわけにもいかないし。

 可哀想だけどしばらく我慢してもらうしかないよね。……とと、話が逸れた。

 

「……できるなら反故してもらいたい」

 

「酒を飲む約束くらいいいと思うが……」

 

「だってメリーのやつ、無理やり飲ませてくるんだもん」

 

「無理やり飲まされるお前もどうなんだ。お前、男だろう」

 

「あいつ強制力強いから」

 

 メリーは成人してから酒を飲むようになった。

 それだけならいいんだけど、お前の胃はザルかってくらいの酒豪だった。

 ちなみにメリーはリンドウさんとの酒飲み対決で引き分けた。あいつもう訳分かんない。

 メリーは配給ビールを何本だって飲めるけど俺はせいぜい五本で意識が終了だ。

 俺も酒は飲めなくはないけど、あんまり飲まないからほとんどメリー行きだ。

 

「ご馳走様ーっと。さて、荷造りせねば……」

 

「いってらっしゃい、だな。まあこっちは俺たちに任しておけ」

 

「第一部隊もエミールがいないけど、大丈夫なのか?」

 

「静かなのが寂しいくらいだ。気にするほどのことではない」

 

 そう言いながらコーヒーを飲み干したソロはチョコレートを食べ始めた。

 お前、どこからそれを取り出した……。なんてのは野暮な疑問なんだろうか。

 

「それじゃ、またな」

 

「ああ、気をつけてな」

 

「お前も無理しすぎるんじゃないぞー」

 

「無理をするほどの仕事量はない」

 

 果てしなく不安だ……。過労で倒れないといいけど。

 まあグダグダ説教しても俺が今の状況を変えることはできないんだろう。

 後ろ髪を引かれる思いがあったが、俺はラウンジを後にして自室へと戻った。

 必要なものはーっと……大してない気がするな。着替えを適当に詰めるか。

 

「さらば、冷やしカレードリンク……。お前ともしばしの別れだ」

 

 冷やしカレードリンクも持って行きたかったんだけど、ハルさんにやめとけって言われた。

 だから仕方なく部屋に備え付けの小さな冷蔵庫の中に封印しておくことにする。

 ちなみに俺の冷蔵庫の中には冷やしカレードリンクのほかにジャイアントトウモロコシがある。

 これもそろそろ賞味期限が危ないか……? でも今食べるのは、ちょっとな。

 さっきムツミちゃんのカレーライス食べちゃったからパンパンだよ。

 

「永遠の別れって訳でもないしな。死ななければの話だけど」

 

 俺としてはまだ死んでやる予定はこれっぽっちもないからな。

 いざとなればどんなに無様でも死から足掻いてやるさ。

 

 いろいろ考えた結果、そこまで荷物は必要ないだろうという結果になった。

 それでも着替えを入れたら旅行鞄一つ程度にはなったけど、これくらいならいいか。

 この前アリサの遠出の荷物見ちゃったから、随分少なく見える。……これが普通、だよな。

 

「今日も疲れたー!」

 

 ベッドに倒れこめば柔らかい布団が俺を歓迎してくれた。

 布団最高……。今度有給取れたら一日中眠っていたいなあ。

 もぞもぞと布団の中に潜り込むと、俺は意識を夢の中へと飛ばした。

 

 

――――――――――

 

 

「――ありがとうございます、ラケル博士」

 

「いいんですよ。私も、あなたの神機には興味があるから」

 

 フェンリル局地化技術開発局、移動要塞フライア。あたしが今いるのは、そこである。

 何でここにいるかって言うと、簡単に言えばあたしの神機の情報が欲しかったのよ。

 あたしは神機に詳しくないから、そういうのに詳しそうな人に見てもらうのが一番だと思ってね。

 あたしの大事な相棒だもの。ちゃんと理解してあげないと可哀想じゃない。

 

 それで、目の前にいる車いすに乗った女性。彼女こそ、今回あたしが会いたかった人。

 ここの副開発室長、ブラッドの創始者である彼女の名前はラケル・クラウディウス。

 人当たりのいい笑顔を浮かべてる彼女は、あたしにとってなんだか不気味に見えるわ。

 

「今までの戦闘データは用意したのだけれど……足りるかしら」

 

「後で拝見させていただきますわ。態々ごめんなさいね」

 

「あたしが不躾なお願いをしているんです。謝るのはむしろこっちです」

 

 とりあえず現在の戦闘データも渡したほうが良いかしらね。

 こっちで戦闘データを直接録ってもらって、それも参考にしてもらおうかしら。

 ここに来たのはそもそも応援だしね。アラガミ討伐のついでに、って感じで。

 

「そういえば、ブラッドの隊長さんに会いたいのだけれどどこにいるか分かりますか?」

 

「ジュリウスのことね。あの子なら今、庭園にいると思いますわ」

 

「庭園……?」

 

「あなたも行ってみるといいですわ。素敵なところですよ」

 

 庭に園って書いて、庭園よね? 別に間違ってないわよね?

 でもちょっと想像できないわね……。どんなところなのかしら。

 ラケル博士の言葉に内心首を傾げつつも、あたしは部屋を後にする。

 エレベーターに乗り込んで庭園があるらしい階のボタンを押して扉を閉めた。

 

「わあ……!?」

 

 再び扉が開かれた時、あたしの視界に入ったのは楽園だった。

 草花が咲き乱れ、暖かな日光が降り注ぎ、清らかな水のせせらぎが耳に心地よい。

 すごい。こんなに綺麗な場所、動画でしか見たことないわ。

 ふらふらと緑の中央まで歩いていき、ぼすっと仰向けに倒れ込む。

 こんなに素敵なところ、皆にも見せてあげたかったなあ……。

 

 

「――だ、大丈夫?」

 

「……えっ」

 

 ひょこっとあたしの視界に帽子を被った少年が入った。だ、誰!?

 というかもしかして、もしかしなくても、見られてた……? 油断した。

 そもそもジュリウスに会うために来たんだったわね! 人がいないとおかしいわね!

 

「ええと、あなたがジュリウス?」

 

「違うよ。俺はロミオ・レオーニって言うんだ。ジュリウスはあっち」

 

 ロミオの指した先、大きな木の下にいた男性がこちらに歩いてくる。

 へえ、随分整った顔してんのね。一瞬女性かと思っちゃったじゃない。

 でも身長高いとこがマイナスよ。上から見られるのはムカつくわ。

 

「初めまして。ジュリウス・ヴィスコンティと申します」

 

「こっちも初めましてね。メリー・バーテンよ。よろしく、二人とも」

 

 二人にはさっきのことは秘密にしてもらうようお願いしておく。

 一緒に来てるエミールにでも知れたら、あいつ極東で言いふらしかねないわ。

 あ、そうだ。後でここのお花で押し花でもひとつ作らせてもらいましょう。

 

 一先ずあたしたちはエレベーターに乗り込む。

 他のブラッドの人たちはロビーにいることが多いみたいだから、自己紹介しないとね。

 

「メリーさんは極東の方でしたか」

 

「ええ。もう一人、応援で一緒に来てるんだけど……」

 

「のわああああ!!」

 

「……もしかして、あいつ?」

 

 エレベーターの扉が開いた時、ちょうどエミールの悲鳴がロビーに響き渡った。

 ゴロゴロと階段から転げ落ちてくる様はちょっと滑稽ね。とっても無様だわ。でもどうやったらあんなに綺麗に転げ落ちることが出来るのかしら。

 付添で来たのは正解だったようね。変なところでミスされちゃ敵わないわ。

 

「エミール、何してんの?」

 

「な、何。少し転んだだけに過ぎない!」

 

「どう見ても少しじゃないわよ……」

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

 エミールの後を追って階段から降りて来た男性。……また身長が高いわね。

 なんで男って身長が高い奴が多いのかしらね。あたしも男に生まれたかった……。

 それかもう少し身長伸びないかしら。夏にも僅差で負けてて悔しいのよ。

 

「ふふ、安心したまえ! 僕は屈しない!」

 

「馬鹿。……初めましてね。あたしはメリー・バーテン。極東支部から来たの」

 

「極東から……。俺はギルバート・マクレイン、ギルでいい。よろしくな、メリー」

 

 ギル。どこかで聞いた名前だわ、と心の中で思い、後で調べておくことにする。

 それにしてもみんないい人そうじゃない。仕事しやすそうな人たちで良かったわ。

 性格噛み合わないと戦場でも息が合わないしね? 前に一回、やらかして思い知ったし。

 ……そういえばあの振られんボーイは今何してんのかしら。サテライト防衛任務に入ってから全然見かけてないわね。今度メールでもしてみようかしら。

 

「嫌ですねえ、ギル。ギルバードじゃないんですか?」

 

「俺はギルバー“ト”だ。ドじゃない」

 

「ギルバードはギルバードじゃないですか! 後ろだけにしたらバードですね鳥ですね! 空飛ぶんですか?」

 

「飛ばない!!」

 

 ギルと同じく、階段から降りてきた少年がニヤニヤと笑いながらギルをからかう。

 随分と子供っぽいわねー。まあそれはロミオに対しても言えるんだけど。どっちが年上でどっちが年下なのかちょっと気になるところよね。

 ロミオはさっき年齢を聞いたけど、この子は何歳かしら。

 

「おぉ? みーんな集まってどうしたのー?」

 

「ああ、ナナちゃん! 極東の人たちが来たそうですよー」

 

「あ、そうなんだ! はじめまして! 私は香月ナナって言うんだ!」

 

「あたしはメリー・バーテン。こっちはエミール。よろしくね」

 

 なんて布面積の低さ。羞恥心ってものはないのかしら。

 見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうわよね、同性なのに。

 やっぱりこれ異常よね。アリサと一緒に衣装変えてくれないかしら。

 

「それで、あなたは?」

 

 気になっていた少年の名前を尋ねる。

 にこやかな笑顔を浮かべる少年の顔が、一瞬あの子の笑顔と重なる。

 まさか。そう思っていても一度意識してみると、ますます似ているように思える。

 もしかして。いやでも、あの子はそんなこと一度だって言ってないし……。

 

「僕ですか? 僕の名前は――」

 

 少年の名前を聞いて、あたしは目を見開く。疑問が確信に変わったのだ。

 あたしは差し出された手に応じながら、不思議な出会いにちょっとした運命を感じていた。

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