GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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しかし誰の血を引いてしまったのでしょう?


73、その少年、家族につき

「ここが、極東支部……!」

 

 今まで忘れてしまっていた活気。暖かさ。繋がり。

 様々なものを思い出してくれるそこは、僕にとってとても魅力的でした。

 フライアは人数が少なかったし、なんか豪華で……言い方を変えれば格式張った、とでも言うんでしょうか。厳格な雰囲気で、こんな感じじゃなかったです。だから新鮮ですね。

 

 それに僕たちブラッドのために歓迎会まで開いてくれて!

 極東支部の人たちは本当にいい人たちばかりなんだと思います。ここはいい職場ですね。

 それでも――、いえ、なんでもないです。

 

 

 歓迎会が開始されてから数時間経ちました。

 ジュリウスは色んな人からお話を聞いて、ロミオはコウタさんと何やら意気投合していて、ギルは離れた所でお酒の杯を傾けて、ナナちゃんは料理にがっついてます。

 みんなそれぞれらしいですけど、ナナちゃんの胃袋は無限大なんでしょうか。

 

「……どうかしましたか?」

 

「あ、シエルちゃん」

 

 不安そうに僕の顔を覗き込んできたのは、シエルちゃんでした。

 こっそりとエントランスに出てきたんですけど、シエルちゃんに気付かれちゃってたみたいです。さすが、気配には敏感なんでしょうか?

 それにしても、シエルちゃんを心配させてしまうなんて。そんなつもりはなかったのに。

 だから僕は安心させるためににっこりといつも通り笑顔を見せました。

 

「何でもありませんよー?」

 

「そういえば、君の実家はここでしたね」

 

「う゛。よく覚えてましたね……」

 

 この前、赤い雨で外に出れない時にちょこっと話したんでしたっけ。

 特に当たり障りもない話だったから覚えてないと思ったんですけどねー?

 シエルちゃん、記憶力高いんでしょうか。分けてほしいです。

 

「ご家族に会いには行かないんですか?」

 

「ちょっと、会いに行きづらい事情があるんですよねー」

 

 昔のことを思い出しかけて、慌てて頭を振り、それを心の奥に押し込める。

 過去のことはもうどうでもいいんです。会いたい人は勿論いるけど。

 それでも僕は、忘れようって決意したんです。……決意、したいんです。

 

「僕には会いに行く勇気がありませんから」

 

 上手く笑えたはずなのに、何故かシエルちゃんは困ったような表情でした。

 

 

――――――――――

 

 

 帰ってきました極東支部! 懐かしのエントランスよ、ただいま!

 いやあ、今回もだいぶ振り回されたなあ。しばらく休んでいたいもんだけど。

 とりあえずはサカキ博士に報告をするのが先だよね。コアもいくつかとれたし。

 

 疲れたなー、とハルさんの後ろでため息をついていると、どうしたのか急にハルさんが立ち止まり俺はその背中にぶつかってしまった。

 何があったんだろうと思っていると、ハルさんが誰かに親しげに声をかけながら階段を下っていった。誰だろう。また女性を口説こうとしているのかな。

 そう思いながら階下を見ると、そこにいたのは男性と少年だった。普段の様子を見るにそっちの気はないみたいだから、たぶん昔の知り合いか何かなんだと思う。

 ハルさん、結構いろんな支部を渡り歩いていたみたいだしね。

 

「ハル隊長、報告……」

 

「でも楽しそうですし、私たちだけで済ませちゃいましょうよ」

 

「ですが……。いえ、そうですね! ハル隊長、私たちで報告しちゃいますねー!」

 

「じゃあ俺は部屋に戻っても?」

 

「夏さん……」

 

 カノンよ、何故そんなに残念な目で俺を見る。

 弥生の声はちゃんと届いたらしく「おーう」と緩い返事が返ってきた。

 まったく俺の上司は困った人だなあ。そう思っていると誰かが階段を駆け上がってきた。

 緑髪の少年はどうやらハルさんが声をかけた男性と知り合いらしい。のだが、俺たちに何の用だろうか? 俺はこの少年と会ったことがないんだが。

 それにしても小さいな。弥生と同じくらいかな。……そういえば、髪の色も弥生と似てるな。

 

「あ、あのっ!」

 

「ひゃいっ!? な、ななな何でしょうか!?」

 

 どうやら少年は弥生に用があるらしい。

 だけどあまりにも突然に、それもまさか自分に話が振られるとは思っていなかったらしい。

 弥生はパニックになってちゃんと言葉を喋っていない。お、落ち着けよ……。

 

「……本物だ」

 

「……えっ?」

 

 少年の目が感激の涙で潤み、頬が興奮したのか赤く染まる。

 そして次の瞬間、彼は弥生に思いきり抱き着いていた。

 

「本物の弥生だ! 久しぶり! 元気にしてた? 僕の愛しのプリンセスーーー!!」

 

「え、えぇ!?」

 

 弥生に抱きついてわんわんと泣く少年にドン引きである。

 というか、なんでこいつは弥生のことを知っているんだ?

 アイコンタクトで弥生から助けを求められて、とりあえず少年を引き離す。

 

「あ、あなた誰なんですか!? い、いきなり、ハグなんてっ」

 

「え? ……嘘でしょ、弥生。僕のこと、覚えてないの……?」

 

「え!? どこかで会ってました!? すみません、覚えてません!」

 

 弥生のストレートな自白により、少年真っ白。

 力が抜けたらしくヘナヘナとその場に座り込んでしまった。

 まあ本当に知り合いなんだとしたら今の発言はかなり失礼だよなあ。ともかく少年の様子を見てまたしてもパニックになっている弥生を宥めてから、手を引いて少年を立ち上がらせる。

 

「大丈夫か?」

 

「弥生が……僕を忘れてる……ショックだ……死のう……」

 

「どうした副隊長!? 落ち着け!」

 

 こちらの様子が異常であることに気づいたらしい男性が階段を上ってくる。

 あ、この少年、副隊長なのか。……副隊長!? とても見えないぞ。

 ここで二人の腕輪の色が俺たちのものとは違う黒色であることに気付き、俺の頭に一つの考えが浮かぶ。もしかしたらこの人たちは巷で有名なブラッドじゃないだろうか?

 さっき神機を預けたときにリッカさんからブラッドが来て歓迎会を開いたって話を聞いたしな。俺も歓迎会出たかった。ユノさんも遊びに来ていたみたいだし。

 

「ああ、ギル。丈夫なロープを一本用意してください。僕の体重に耐えられるもので」

 

「いいから落ち着け! 何馬鹿なことを言ってんだ!」

 

「だ、だってギルぅ……」

 

 どうにも収拾がつかないな。

 ギルと呼ばれた男性が俺のほうに視線を向けてくるが、俺だって分からない。

 どうやら弥生と関係があるようだけど、とうの弥生は泣きそうで喋れそうにもない。

 

「とにかく、俺たちは用があるからそっちを済ませてからでいいか? 弥生も宥めたいし」

 

「それで構わない。その間に俺が副隊長を落ち着かせておこう」

 

「ギル!! もうやだ僕は生きている意味がないんですー!」

 

「だから落ち着けって……」

 

「妹に顔も名前も忘れられた気持ちが分かるって言うんですか!? 分かるわけがないです!!」

 

「……は?」

 

 どうやら相当面倒なことになりそうだ。

 

 

――――――――――

 

 

 ラウンジにて。

 さっきのブラッドの二人、俺、弥生、そして何故かハルさんが話し合いに参加している。

 ハルさんが来た理由はよく分からないけど……まあこの際いいか。

 

「改めて、俺はギルバート・マクレイン。ギルでいい。ブラッドに所属している」

 

「ギルは俺がグラスゴー支部にいたときの後輩でな。なかなか腕が立つんだぜ」

 

 誇らしげに語るハルさんにギルは恥ずかしそうに否定していた。

 つまりハルさんとギルは先輩後輩の仲だったってことだな。ギルさんが別支部にいたときの話は女性関連しか聞いていないから、ちょっと珍しい。今度詳しく当時の様子を聞いてみよう。

 久しぶりの再会みたいだし、話したいのも分かる。メリーが帰ってきたときの俺もそんな感じだったしな。よし、こっちの事情は理解した。

 問題はもう一人、少年のほうだ。

 

「僕は九城(くじょう) 飛鳥(あすか)。ブラッドの副隊長で……弥生の双子の兄です」

 

 拗ねたように口を尖らせながら自己紹介をした飛鳥に、弥生が首を傾げる。

 どうやら本当に覚えていないようだ。それを見て飛鳥が更に拗ねた。

 

「嘘、じゃないよな?」

 

「ならどうして僕が弥生の名前を知ってるんですか?」

 

「でも飛鳥の言葉を証明できるものが今のところ何もないんだよ」

 

 指摘してやると飛鳥はますます拗ねたらしくぶすっと頬を膨らませた。

 弥生と双子ってことは、飛鳥は十九歳のはずなんだけど……。とてもそうには見えない。

 むしろ弥生の弟って方が……弥生も年齢の割には幼いんだった。

 

「弥生、お前の家族構成は?」

 

「はいっ、私とお母さんの二人です!」

 

「え? 父さんも含まれてないの……?」

 

 飛鳥がきょとんと、純粋な疑問を口に出す。

 敬語口調は弥生に対しては抜け落ちるようだ。

 

「私はお父さんを見たことがありません」

 

 愕然。飛鳥はそんな感じだった。信じられないものを見るように弥生を見て、しばらくして「そっか、そうだよね」と何故か一人で納得していた。それでいいのか。

 つまり飛鳥の中では家族は四人で、弥生の中では二人ってことらしい。どうしてそうなった。

 

「それなら飛鳥が弥生の家に行って確認してくるとかはどうだ? 手っ取り早いぞー」

 

「ハルさんの言うとおりだ。副隊長、行ってきたらどうだ」

 

「ええと、僕、母さんには会いたくないんですよねー……」

 

「それだと振り出しに戻っちまうな。他に証明できるものはないのか?」

 

 ギルに言われてむむむ、と飛鳥は考え込んでしまった。

 必死に心当たりを探している飛鳥は、たぶん嘘をついていないんだと思う。

 弥生が覚えてないってところが引っかかるけど、一先ず認めてみても……。

 

「……神様は、行動で示せばお願いを叶えてくれるそうです」

 

「は? 副隊長、何言って……」

 

「な、何でそれを知ってるんですか!?」

 

 飛鳥の発言を聞いてガタッと弥生が勢いよく立ち上がる。びっくりしたあ!

 ちょっとのことで驚いちゃうよ、だって小心者だもの。……はい、自重します。

 そういえばあれって弥生がゼルダに教えた言葉だったっけ。弥生がここにきたときに、ゼルダがそんなことを言っていたような気がする。

 

「僕が弥生と離れるときに言った……約束みたいなものです」

 

「約束?」

 

「弥生ったら、行かないでー、って愚図ったもんですからねえ」

 

 たはは、と困ったように頬を掻く飛鳥。本当のことっぽいな。

 弥生もそれを聞いてどうやら本当のことであるらしいと思ったようである。

 

「なんで飛鳥は弥生と離れたんだ?」

 

「それは……今はシークレットです」

 

 言いたくないらしい。無理に聞きだす必要はないから、そこは飛鳥の意思を汲んでおく。

 弥生も懸命に頭を抑えて思い出そうと努力しているがどうやらそれは叶わなかったらしい。諦めたようにため息をつくと飛鳥をじっと見つめる。

 

「な、なんですか弥生ー。そんなに見られたら僕恥ずかしいですよー」

 

「じゃあ私は、お兄ちゃんって呼べばいいのかな?」

 

「……え」

 

「ごめんね、ショックだよね。でもなんて呼んでいたのかも覚えてないから……」

 

「お、お兄……ちゃん?」

 

「そう、お兄ちゃん。……駄目かな?」

 

 飛鳥はぶるぶると身体を震わせている。忘れられたことがショックだったのかな。

 そんな飛鳥を見て不安になったらしく、弥生は顔を覗き込んでいる。

 

「もう一回お願いします!!!」

 

 あ、この子馬鹿なんだ。咄嗟にそう思った。

 

「お兄ちゃん! なんていい響きなんでしょうそう思いませんか!?」

 

「副隊長……?」

 

「世のお兄さん方はいつもこの気持ちを……!? ああ僕も体験できて嬉しいです感激です!!」

 

 頬を赤く染めて息を乱した飛鳥は非常に興奮しているように見受けられる。

 副隊長さん、あなたのとこの隊員がドン引いてるんでその辺にしといてあげてください。

 弥生があわあわしながら止めに入ろうにも飛鳥は更にヒートアップしていく。

 こいつ……さてはコウタと同類か……っ!!

 

「ギル、お前んとこの副隊長面白いなー」

 

「俺は頭が痛いです……」

 

 なんだかギルとは仲良くなれそうだ。主に苦労人的な意味で。

 今すぐギルを宥めてやりたいところだけど、まずは飛鳥を落ち着かせないとな。

 しかしどうしたものか……。盛り上がりすぎた飛鳥は弥生に抱き着く始末だ。

 誰かこの極東支部の中に救世主はいないのか。

 

「飛鳥。次の任務について相談が……飛鳥?」

 

 いた。銀髪の可愛らしい救世主がそこにいた。

 この人もブラッドの人らしい。黒い高貴そうな腕輪を身につけている。

 

「あっ、ブラッドの人だよな!? あいつ止めてくれない?」

 

「え? 飛鳥、どうどう」

 

「シエル。あいつは馬じゃないぞ……」

 

 シエルと呼ばれた少女はどうやら天然らしい。宥め方って果たしてそれしかないんですかね。

 ギルはシエルの登場で少し落ち着いたのか、強引に飛鳥を引き剥がして軽々と持ち上げる。

 ばたばたと暴れる飛鳥に対してギルの顔は涼しい。力持ちなんだなあ。

 

「あー! ギル何するんですかー、降ろしてください!!」

 

「煩い。少しは反省しろ、お前の妹も困ってるじゃねえか」

 

「だってだって、感動的な再会なんですよっ」

 

「シエル、ブリーフィングをするんだよな? 場所を移すぞ」

 

「あ、はい。分かりました」

 

「シエルちゃんもギルに何とか言ってくださいよー! ……あれ無視ですか? もしもーし」

 

 段々と遠くなっていく飛鳥を見て涙が出てきた。たぶん俺も経験があるからかな。

 頑張れ、飛鳥。強く生きろ……。前見て歩いてればいいことあると思うよ。

 

「いやあ、楽しくなりそうだなあ」

 

 ケラケラと笑いながら酒を煽るハルさんに俺も頭が痛くなる。

 飛鳥の様子を見る限り、悪乗りしてハルさんの話題に乗りかねない。そんなことをされたら見ている俺としては悲しくなってくる。

 これからまたアナグラは騒がしくなるんだろうなあ……。メリーがフライアから戻ってからすぐ、サカキ博士のお願いで遠出しているのが幸いだ。いつ帰ってくるのか分からないのが怖いが。

 頭に響く痛みを無視するように、俺は麦茶を喉に流し込んだ。




九城(くじょう) 飛鳥(あすか) (19)
フェンリル局地化技術開発局ブラッド所属。
早くも血の力“喚起”に目覚めており、その活躍などから副隊長に任命された。
ゼルダと同じく敬語を使っているがゼルダより固くはなく、むしろ親しみやすい。誰かを弄ることが大好きで悪戯っ子のような雰囲気をまとっている。

九城 弥生の双子の兄であり、弥生と離れていた期間が長かったためかシスコンを患っている。
弥生と離れてからしばらくして孤児院(マグノリア・コンパスではない)に入っていた経緯もあり、家族を大事にしている。ジュリウス・ラケル博士が言っていた「ブラッドは家族」である思想に感銘を受けていて、ブラッドのメンバーを家族のように慕っている。
本人曰く「愛の戦士を目指している」らしいが、その真意は不明。

身 長:156cm
誕生日:9月21日
誕生花:クズ「芯の強さ」

神機:チャージスピア・ブラスト(第三世代)

衣服:チアフルモンキー上・ワイルドチタナイト下

ボイス:10
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