GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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09、一人消えれば一人来る

 ぼーっとしながら天井を見上げる。

 胸に抱えた枕がモフモフしていて気持ちいい。

 

 

 俺が今いる場所は自室。そしてベッドの上だ。寝転がってる。

 昨日、リンドウさんが行方不明になった。原因は分かっていないが、報告外のアラガミが多かったそうだ。

 第一部隊が帰ってきた後、リンドウさんを探すために人が派遣されたが見つからなかったらしい。

 まあ、捜索部隊なんて『人』よりも『神機』を探すからな。正直当てにできない。

 

 それに、行方不明になった神機使いの運命なんて、決まっているようなものだ。

 それは第一部隊で長いサクヤさんやソーマだって分かっていることだろう。

 分かっているからこそ、それを否定したくなるのだ。

 否定しないと、感情に潰されてしまいそうで。

 

「……うし、決めた」

 

 とりあえず俺がこんなところで落ち込んでいたって仕方ない。俺が落ち込んだらリンドウさんが戻ってくる、なんてことは現実に起こりえないんだ。

 なら、いつも通り行動するしかない。誰かが居ないまま始まる一日は悲しいけれど、それしか俺たちに選択肢はないのだ。

 悲しみに暮れたまま出撃すれば、次に死神の視界に入るのは自分かもしれないから。

 

「あの人、タフだもんな……。ひょっこり帰ってくるに違いない」

 

 それは俺が持っている認識であって思い込み。

 そう思い込んでないと、俺が潰れ……。

 

「いや、潰れてる場合じゃない」

 

 俺には捜索依頼は回ってこないから、気長に待っているしかない。それが、今俺に出来ること。

 ……こういう時いつも、自分が無力だと認識される。嫌な現実だ。

 

「とりあえず、エントランスかな」

 

 いつもより二倍の時間をかけてエントランスに着いた気がする。

 途中で考え事もしていたのだが、正直その内容はあまり覚えていなかった。

 ……ヤバイぞ、俺、老化進んでるぞ。

 

「ヒバリちゃん、依頼ある?」

 

「あ、夏さん。ツバキさんが呼んでいましたよ?」

 

「げげっ!? まさか減俸!? 俺なんかやらかしたっけ!?」

 

「なんですぐに消極的になるんですか……。支部長室に用があったようなので、役員区画にいると思いますよ」

 

「ありがとう。……行ってきます」

 

 朝からテンション下がった……。いや、朝はもともとテンションが低いものだ。これから上げてけ!

 でも、怖いな。俺何かしたっけ。何にも覚えがないって逆に怒られそうな気がする。何か悪いことしたかな……?

 

 考え事をしている間に役員区画に到着した。到着してしまった。でも、どこにもツバキさんの姿は見えない。まさかお説教なし!? やったね!

 ……と、思ったら支部長室から出てきました。何故支部長室からああああ!? 本当に俺が怒られる気がしてきたよ……。

 

「つ、ツバキさん。お話、とは……?」

 

 ツバキさんに声をかけてから気付く。ツバキさんの後ろに、女性がいる。女の子、と言うよりは女性と言ったほうが良い気がする。でも大人かと言われたら、大人じゃないと思う。

 多分、年齢は俺と同じくらい。それか上か下か。つまりよく分からない。年齢の目利きなんてしたことないよ。

 

「ちょうどよかった。新たに新入りが到着した。紹介する」

 

 ツバキさんは後ろに立っていた女性に前に出て自己紹介するように促す。

 前に出てきた女性は、全身黒ずくめだった。黒いコート黒いズボン。黒い短髪に黒縁の丸メガネ。そして黒(というより灰?)の丸目。

 残念ながら丸目は少しキツイものになってしまっているが。

 

「……本日からここでお世話になります。メリー・バーテンです。よろしくお願いいたします」

 

 あ、外国人なんだ。あまりにも黒だから日本人かと思った。珍しい。

 というかメリーさん、非常に機嫌が悪そうだ。声から分かるよ。なんでそんなに不機嫌なんだ?

 ……もしかして、腹痛? 腹痛なのか? 今すぐトイレ行ってきたほうが良いんじゃないか?

 

「彼女は別の支部にいた新型だが支部長に引き抜かれてきたそうだ」

 

「新型……、それはすごいですね」

 

 ということはこの支部には既に貴重な新型が三人いるわけか。

 ……贅沢だな! 極東支部って贅沢な場所だな! なんか特別な権利でも持ってったっけ。

 

「しばらくお前が彼女につくことになるから仲良くしておけ」

 

「……へ?」

 

「部屋はお前の部屋の正面の空部屋になった。後で案内するように」

 

 俺が、新型の、付添?

 ……普通だったら第一部隊とかだよね!? なんで俺なんだろう! すっごい気になってきた!

 というかこれを許可したのって最終的に支部長ですよね! 何考えてんだ支部長うううう!!

 

「それと、今日はお前と彼女とゼルダの三人で任務に出てもらう」

 

「……はい」

 

「お前は旧型だが、アドバイスできることもあるだろう。しっかりと補助するように」

 

「……はい」

 

 モウ、驚カナイヨ! 色々とはっちゃけた日だな。

 ツバキさんは「以上だ」と言って去っていきました。後ろ姿がかっこいいですね!

 

 俺たちはとりあえずエントランスへ向かうためにエレベーターに乗り込んだ。

 が、沈黙が、辛い。な、何か喋らないとアカン! 俺がこの空気に耐えられないよ!

 

「え、えーっと、メリー……さんっていくつなんですか?」

 

「十八。それと、あたしも呼び捨てにするから呼び捨てで構わないわ」

 

 ……ん? なんかさっきと違うような……。

 違和感を感じてメリーときちんと目線を合わせる。

 

「あたし、堅いの嫌いだから。……ま、あまり話す機会はないでしょうけど」

 

「うわ、ひでえ。あ、俺は日出 夏。俺も同じ十八だ。よろしく」

 

 この子初対面から酷い。明らかに距離を置かれてる。

 というか服の色と同じ空気だよ。暗いよ怖いよ黒いよ! いきなり前途多難の予感です……。

 そしてふと、メリーの髪型に目がいく。こちらから視線を外し扉と向き合うようになったメリーの髪型が、短髪でないことに気づかされたのだ。

 どうやら肩を少し越えるくらいの長さの髪を黒いピンを使って後ろで留めているらしい。髪の流れがU字型になっていて、毛先が振動でピョコピョコ揺れていた。

 

「うるさい場所よね、ここ」

 

「賑やかって言ってくれよ」

 

「……楽観的すぎるわ、ここ」

 

「そうかあ?」

 

 あんまり分からない。何が言いたいのかもわからないけどメリーの価値観もわからない。

 今日が初めてなんだから分からないことだらけは当然だ。これから分かっていけばいい。今はとにかく、メリーのことを知ることが大切なんだ。

 今日は既に用意されている依頼みたいだし、ヒバリちゃんに話したらすぐに出られるかもしれない。それとも俺が話す前にすべて知ってます、って感じで依頼書を出されるかも。

 色々考えながら、まずはヒバリちゃんのところに行こうと俺は開かれたエレベーターから一歩を踏み出した。

 

 

――――――――――

 

 

「あっちぃ……」

 

「なんなのよ、ここは……」

 

 そんなわけで依頼開始です。

 今日の依頼先は煉獄の地下街。もともとは地下鉄だった場所と聞いている。まあ、見る影もないが。

 今回のターゲットはシユウ堕天だ。……俺の神機、シユウ類に効きにくいのに……。

 

「え、普通の暑さじゃないですか?」

 

「あれー、一人感覚がおかしい子がいるー」

 

「ゼルダ、恐るべしね……」

 

 いつもと同じ格好なのになんで普通って言えるんだい、君は。

 というかここの温度が普通だったらエントランスは極寒になるよ。

 ここが暑いのはマグマがあるからだ。欲張ったアラガミがどうのこうのらしいけど、覚えていない。自分で確認してくれ。

 

 ゼルダとメリーは依頼前に軽い自己紹介をした。

 正反対の二人だから合わないかなー、と思ってたら以外に意気投合したからびっくりした。これなら時々ゼルダに頼っても問題なさそうだ。同じ新型だし、仲良くやってくれることだろう。

 

「さて、敵を探しますか、って二人ともいない!?」

 

「遅いですよー」

 

「ちんたらしてんじゃないわよ!」

 

「後輩に怒られた!!」

 

 メリーはエントランスの時と違って楽しげだ。アラガミを倒すのが大好きな人ですか、そうですか。

 既に二人の姿は目視できない。二人が向かった方向へ早く行ったほうがよさそうだ。

 ……戦闘の音も聞こえてきたし。

 

「早い! 俺を置いていくなよ!」

 

「馬鹿が悪い」

 

「会って数時間で貶された!」

 

 なんだ、なんなんだ。もしかして、メリーって意外にドS? ドSなの、あの子?

 ……一応言っておくが、俺はMじゃないからな、貶されたって心が傷つくだけです。

 

 ようやく二人のところへ辿りつけた。当たり前だが戦闘は始まっていた。

 さて、早く加勢しないとまた怒られてしまう。怒られるのヤダー。……俺、先輩だよね?

 

「面倒ねえ……」

 

「そりゃそんなにすぐ倒れたら大陸滅びないだろ」

 

「そうですね」

 

「あー、もう面倒くさい! 一気に行くわよ!!」

 

「「え?」」

 

 メリーがシユウ堕天を捕喰した。当然、オラクル細胞を取り込んだメリーはバーストするはずなのだが。

 確かに、バーストしたのだが。

 

「なんだ、あれ……」

 

「普通のバーストじゃ、ない……?」

 

 確かにメリーはバーストした。だが普通のバーストでない。

 どこか黒っぽい、禍々しいオーラがメリーを包み込んだ。神機はそれに呼応するように紅い光を放っている。

 そして、普通のバーストではありえない速さでシユウ堕天を斬り刻んでいくその姿は正しく鬼神。同じ仲間でも恐ろしさを感じる。

 ショートより速いって、どういうこと。

 

「っは――」

 

 瞬きをすればメリーの位置が全く別の場所に移動し、呼吸をすればシユウ堕天の傷が十以上増える。同じ神機使いとは思えない、この力は一体……。

 

 一瞬見えたメリーの瞳は、真っ赤に染まっていた。

 

 

 結局、俺たちはただ傍観しているだけだった。それだけで依頼は終わっていた。

 

「何ボーっとしてんのよ。仕事してないの、夏セ・ン・パ・イ、だけよ?」

 

 その言葉にイラッときて、反論しようとしたがそんな話はどうでもいいことに気付く。

 今俺が知るべきは、普通の神機使い離れしたあいつの力だ。あれは、普通じゃない。

 

「お前、その力なんだ? 普通じゃないように見えるんだが……」

 

「ええ、あたしは普通じゃないわ。『発作』もあるから、あまり近付かないことをお勧めするけど」

 

「発作? 発作って一体……」

 

「そんなことより、ここ暑いのよ! 早く帰投しましょ」

 

「あ、はい!」

 

 なんで俺はメリーにつくことになったんだろう。

 ますます上の考えていることがわからなくなってしまった。

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