GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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二話連続投稿です。これは一話目です。
こんな感じで時間に余裕がある時はキャラエピはできるだけ同時間帯での投稿にしたいです(本編が進まないので)


昔の(Episode1 弥生)

 今日はどうやって過ごそうかと考えていると前方に愛しの妹の後姿を発見! むむ、しかも見た感じ、どうやらお困りの様ですね! これはチャンス! ここで頼れるかっこいいお兄ちゃんを見せて忘れてしまった僕の記憶を思い出してもらう……。ふふ、僕ってば天才ですね! 早速行動に移しましょう。

 

「弥生ーっ、何か悩んでるなら僕に任せて! ババンと解決するよ!」

 

「あ、お兄ちゃん」

 

 背後から飛び出したのにリアクションが皆無でした。解せぬ。もうちょっと驚いてくれてもいいと思うんですよ。折角やったのに反応が無いって寂しいんですよ。

 ぷー、と頬を膨らませていじけながら弥生が持っていた紙を覗き込みました。ふむふむ、オウガテイル三体の掃討任務ですね。これくらいなら別に弥生が悩むことでもない気がするんですけどねー? 新人一人で、なら難しいかもしれませんが、弥生はもう三年の経験がある神機使いなわけですし。

 しかし不安だと言うならその不安を取り除いてあげるのが兄としての仕事ですよね! 大丈夫、弥生に不安な思いなど僕がさせない許さない!

 

「僕も同行する」

 

「でも……」

 

「迷惑じゃないよ! オウガテイルを見たいんだ!」

 

 言い訳としては苦しすぎましたかね。思い付きでベラベラと喋るものじゃありませんね。でも弥生、迷っているように見えますし、ここはもう一押しすれば……。

 

「……じゃあ、お願いしていいかな」

 

「喜んで!!」

 

 もうひと押しなんて必要ありませんでした、万歳。

 申し訳なさそうに「ありがとう」と言う弥生が可愛すぎます。本当に同じ人間なんですかね僕の妹天使すぎてちょっと困るんですけど誰か語り合いませんか。ああああ、ちょっとティッシュが必要かもしれません。誰か、誰か僕にティッシュください、鼻に詰めるので。

 いきなり挙動不審になった僕を怪訝そうに弥生が見ていたけど、気にしない。「行くと決めたからには早く行こう!」と弥生の背中を押して僕たちは出撃用エレベーターに乗り込みました。

 

 

――――――――――

 

 

 やってきました、黎明の亡都。ここは本当に見晴らしが良くていいですね。

 崖の上から標的であるオウガテイルはすぐに見つけることが出来ました。なんとなくジュリウスに初めてブラッドアーツを見させてもらった日のことを思いだすような数と場所ですね。

 で、一方の弥生はと言うと、何故か萎縮していました。この三年間で大型アラガミにも何度か挑んだはずの弥生が、何故かオウガテイル三匹で。

 

「どうしたの、弥生。オウガテイル嫌い?」

 

「き、嫌いじゃないんだけど……ね」

 

『あー、あー。……弥生ちゃん、聞こえているかな?』

 

「あれ、リッカさん?」

 

 装着したインカムから流れてきた声に首を傾げる。オペレータはヒバリちゃんのはずです。そしてリッカさんは整備士であってオペレータではありません。その彼女がどうして通信をしているのでしょうか。

 リッカさんによると、弥生はどうも戦場を運で生き延びている節があるそうです。と言っても“運だけで生きている”と主張しているのは弥生だけみたいですが。リッカさんは弥生のその危ない戦闘は身の丈に合わないバスターブレードを使っているからだ、と見抜きました。だけど弥生は頑なに神機パーツの変更を拒絶している。仕方ないので今回テストとしてこういう形を取った、らしいです。

 ……うん。

 

「訓練場でやってください」

 

 何も実践でやること、ないじゃないですか。訓練場のダミーアラガミで十分ですよ。

 と思いましたがどうやら実戦でやりたいと言ったのは弥生自身だったようです。「実践だからこそ分かることがあると思うの」と僕に説明する弥生の言い分は屁理屈に聞こえてしまいます。弥生も年齢は僕と一緒でも神機使い歴は僕よりも長いですし、何か譲れないものがあるのかもしれません。全然見てないうちに弥生は僕の知らないところに行ってしまったんですね。

 

「あれ? じゃあ僕、来ないほうがよかったんじゃ……」

 

『いや一人くらいは誰かに監督してもらいたかったし、丁度いいと思うよ』

 

「お兄ちゃんには主に補佐をお願いしたいなって思って……」

 

 弥生は実戦で証明したいと志願したけれど、危機的状況に陥った場合一人で対処するのは難しいと判断された。そういうことでしょうか。でも僕、監督とかできないんですけど。なんで僕なんでしょうか。僕だってまだまだひよっこなんですよ。ピヨピヨなんですよ。

 ここまでくっついてきちゃった以上、やり遂げますけどね。それに僕の目的は弥生に“僕をお兄ちゃんだと認識してもらうこと”! ここでカッコイイお兄ちゃんを見せてあげないといけません。いや、補佐にカッコイイ場面なんて訪れるのかって話ですけど。とにかくナイスアシストを狙えばいいって事ですよね。

 

「ふふん、お兄ちゃんにまっかせなさい!」

 

 いつの世だってお兄ちゃんはすごいんだってことを教えてあげます。僕の方が後輩ですが!

 僕の言葉に弥生は不安そうな表情を崩すと、力強く一つ頷きました。そしてちょっと助走をつけてから待機地点である崖から飛び降りました。橙色のミニスカの中が見え……ない! 僕が先に降りていたら結果は変わっていたでしょうか……っとと、つい意識が逸れました。

 意識が逸れちゃったせいで僕は完全に出遅れていました。弥生は既に交戦を開始しています。バレットちゃんと持ってきておいてよかったなあ、なんて思いながらオラクルリザーブを済ませてOアンプルを数個口に放り込みました。今回は後ろから見守っているだけにしましょうかね。一応、攻撃用のバレットをセットして、いつでも回復用のバレットにも切り替えられるように気を配ります。

 

「そぉれっ!!」

 

 オウガテイルから放たれた針を払い落とし、そのままの勢いをオウガテイルにぶつける。ふらふらとおぼつかない足取りは確かに神機に振り回されている事実を僕に教えてくれましたが、そこには不思議と不安感はありませんでした。それは弥生の瞳に宿る、未だ僕にはない戦士としての闘志のせいでしょうか。

 さすがに自らを起点をしてぐるんぐるんと神機を振り回し薙ぎ払っているのを見たときは酔っちゃわないか心配になりましたが、問題ないようです。

 時々危なさそうな動作を見せるオウガテイルにはもれなく僕からバレットのプレゼントをしていますが、特に問題はなさそうに見えます。相手はオウガテイルですが、それでも無理な追撃はせず適度にステップを踏んで距離を取り直したりしています。今回はリッカさんに証明するということもあるから、尚更気を遣っているのかもしれまんけど。

 それにしても、やっぱりバスターブレードは強いんでしょうか。ブラッドだったらロミオが使っていますが……。質量こそ正義なんでしょうか。僕はどうも、重すぎる軽すぎるの両極端な神機パーツは苦手なようで、訓練でいくつか練習してみましたが、実践では結局チャージスピア以外は使っていません。

 

「弥生、回復!」

 

 弥生に飛びかかろうとしたオウガテイルを撃ち落とし、バレットを切り替えて念のために回復弾を撃ちます。回復弾は僕の前面に広範囲にぐるりと放射され、範囲内にいた弥生にも十分に届きました。こうやって後ろから見た感じ、ほとんど被弾していないですけど回復はしておくに越したことはないです。

 「ありがとう!」返答した弥生はそのまま棍棒を遠心力を使って強引に持ち上げ力を溜め……チャージクラッシュを先程僕が撃ち落としたオウガテイルの頭部に落とし、そのまま潰しました。今更ながら棍棒怖いです。

 チャージクラッシュが無事決まると、今度は僕が牽制していた二体のオウガテイルを豪快に横から打ち据え、飛ばします。……って、これ僕の方に飛ばされても。

 

「まあ弥生に任せられたからにはやるけどね」

 

 バレットを切り替え、空中に浮きなす術のない二体のオウガテイルの胴体に風穴を開ける。続いて弥生も銃形態に変えたらしく、オウガテイルの頭部が吹き飛びました。さっきから弥生は頭部にばかり攻撃していますがオウガテイルの頭が嫌いなのでしょうか。もしそうなら今度から積極的にオウガテイルの頭部をぐちゃぐちゃにしないといけなくなります。

 悲惨な姿となったオウガテイルは頭だった場所から地面に落ち、そのまま霧散をし始めました。どうやら終わりの様です。頭部が潰れたほうのオウガテイルのコア回収は弥生に任せるとして、僕はこっちの損傷が激しい二体の方のコア回収をすることにしましょうかね。神機を捕喰モードにして、そのままぱっくん。ごりごり噛み千切っていますけど、これって味わっているんでしょうかね。

 

「お疲れ弥生! かっこよかったよ!」

 

「そ、そんなことないよ! お兄ちゃんの補佐がよかったんだよ!」

 

 どうして謙遜するんでしょうか。今回の任務において僕は明らかに必要がありませんでした。むしろタダ働きごめんなさいと土下座したいところです。弥生は弥生なりにこの地で生きるための方法を身に付けてきたんだな、と思うとなんだかちょっと寂しくなりましたけど。

 分かっていたんですけどね。僕がいなくたって、家族に欠員が出たって弥生は生きていけるって。それなのにどうして僕は離れ離れになっていた間、ずっと弥生を心配し続けたんでしょうか。遠くにいるからこそ想いつづけるのが家族なんでしょうか。いや、それとも……。

 

『弥生ちゃん、飛鳥くん。お疲れ様!』

 

「あ、リッカさん。どうでしたでしょうか……?」

 

『まあ、及第点ってところかな。とりあえず帰ってきたらちょっと面談しよっか』

 

「分かりました」

 

 『それじゃあアナグラで待ってるね』リッカさんからの通信が切れて、弥生は安心したのかホッと息を吐きだしました。お疲れ様の意味を込めて背中を優しく撫でてあげると弥生は驚いたようにこちらを見てから、笑いました。

 

「なんだか、不思議だね。本当に飛鳥はお兄ちゃんなのかもしれない。すごく、安心する」

 

「わー、心外。僕はずっと昔から弥生のお兄ちゃんなのになあ」

 

 消えてしまった弥生の記憶。直接僕が弥生を傷付けるような、記憶を消したいくらいに追い詰めたようなことをした覚えはないから、僕は原因を“僕、または父さんが家を出たから”と踏んでいる。いや、父さんも原因に含めたくはないですけどね。腹立たしい。むしろ入れたくないですが、まあ可能性の一つとして。

 あくまでこれは推測に過ぎないけれど、そうであるなら少し嬉しい。だってそれは弥生にとって僕という存在がそれほどまでに大事だったということで。絶対に離れたくはないと思っていてくれたということで。

 ただその事実が、僕の寂しかった心をどれだけ癒してくれたことか。

 

「忘れちゃって、ごめんね」

 

 顔を曇らせて俯いてしまった弥生に僕は慌てざるを得ませんでした。だってこんな表情、望んでいません。弥生は僕にとって運命共同体であり片割れ、そして何よりこの世で最も大切な人物です。それに僕は弥生の兄。弥生の幸せな表情を見ることを願っている僕が、どうして弥生に悲しい表情をさせたことを喜べましょうか。弥生は絶対に幸せにならなければならない僕の天使なのに。それが与えられた期間の中で導き出した僕なりの贖罪なのに。

 

「いいんだ。僕はずっと待ってる。それに、仕方ないことなんだよ、きっと」

 

「……仕方ない? それってどういうことなの?」

 

「うーん。どういう、かあ。…………僕はね、弥生。君を――」

 

 夏さんたちに言っていませんけど、弥生には言っておくべきかもしれませんね。そう思って開いた口は、弥生の右手で塞がれていました。あれ、どうして塞がれちゃったんでしょうか。あるいはこれはもしや手を舐めろと言うプレイのサイン……すみません煩悩が過ぎました黙りますね。

 もしかして弥生を困らせてしまったんでしょうか。そう思って弥生の表情を盗み見てみますが、弥生はむしろ晴れやかな表情をしていました。はて、これはどういうことなんですかね。

 

「言わなくて大丈夫。私、全部思い出すから!」

 

 ああ、そういうことだったんですか。恐らく弥生は全く負わなくていい“僕を忘れてしまった罪悪感”が胸の内にあるのでしょう。だから記憶を思い出すことでその思いを晴らし、更に僕が悩んでいる原因を取り除こうとしてくれている。やっぱり弥生は昔と変わらない優しい子。そういうところが僕は大好きなんです。

 「早く帰ろう!」と僕の手を掴んで弥生は走り出しました。手を引かれるままに僕も走る。ああ、純粋で可愛い可愛い僕の弥生。ちょっと勘違いしちゃうドジなところもある弥生。

 

「――思い出しても、昔の僕が理由を話していたわけがないじゃないか」

 

 僕の呟きは幸か不幸か弥生の耳には入らず、そのまま溶けていきました。

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