GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
ブラッドアーツって主人公と心を交わせば取得できるそうですね。
何が言いたいかと言うとですね、なんかごめんなさい。
「改めて、ようこそ、極東支部へ! よろしくな、飛鳥!」
「はあ。よろしくお願いします」
現在、嘆きの平原です。大きな竜巻が渦巻いています。うーん、今日も曇天ですね。
今回はまったく事情が分かりません。今日はどうしようかな、と思っていたら先日出会った夏さんに会って、いきなり「ごめん飛鳥! 手伝って!」と言うがいなやそのまま連れてこられた次第です。何を手伝えばいいのかとか、まったく分かりません。でも夏さん、頻りに申し訳なさそうに謝ってくるからなんとなく聞きづらいんですよね……。そんなに謝らないでほしいんですけども。
他の人の手伝いをするのは今に始まったことじゃないですし、別に気にしなくてもいいんですけどね? むしろ僕に出来る事ならどしどし言ってほしいです。何でも屋飛鳥、ってなんだかかっこいい響きじゃないですか?
「それで僕は何を手伝えばいいんですか?」
「あれ、言ってなかったかな。サリエルだよ」
「サリエルですか」
確か空中をふわふわ飛んでるお姉さんみたいなアラガミですよね。データベースで何回か見ました。でもそれくらいで、僕自身はサリエルとは初戦闘になります。
それに僕、いりますかね? 単騎での討伐は危険かもしれませんけど、夏さんの剣と盾はサリエルの素材でできているみたいですし。不慣れな僕を連れてくるより、よっぽどいいんじゃないでしょうか。
「サリエルって、氷属性が弱点ですよね? もう一つ神機パーツ持ってましたよね?」
そう、僕が一番気になるのはそこでした。
極東支部に来てすぐに保管されている取り付けられていない蒼い神機パーツを見つけたのでリッカさんに聞いてみたことがあったんですよね。それが夏さんの保有しているもう一つの神機パーツであり、アラガミ“カリギュラ”の素材でできているものだったんです。データベース曰く、氷属性を持つ、なんか素早い蒼いアラガミらしいです。
夏さんは「ああ、あれかー」とちょっと照れくさそうに笑いました。
「あれ、メリーにもらったやつなんだよな。なんか、使うの勿体無くて……」
「神機パーツなんて使ってなんぼじゃないですか」
「メリーにも言われたよ。でもとっておきたくなっちゃうんだよな」
「爆発してください」
「ちょっと待って、どういうこと。待って待って銃口向けないで落ち着こう!?」
問答無用です。そーれ、モルターどーん。ちゃんと狙って撃ったつもりだったんですけど、夏さんは素早く避けてしまいました。チッ、回避スキル高いですね。当たって吹っ飛んでくれればよかったのに。そのまま頭アフロみたいになっちゃえばよかったのに……。
そういえば僕が使っている銃身って……カノンさん? っていう人と同じものらしいです。どうしてか夏さんが「なんでここでも誤射に気を付けなくちゃいけないんだよ……」と哀愁が漂っています。まあ、気にしない、気にしない。それに僕は普段、攻撃用のバレットを使う機会ってあんまりないので安心してもらっていいですよ。
「で、なんで僕と二人きりでサリエル討伐なんです?」
「しいて言えば近くに飛鳥がいたからかな」
「あっ、僕じゃなくてもよかった感じですか」
「うん。弥生の兄がどんな戦い方するのか気になったっていうのもあるけどな」
そこは少しくらい否定してほしかったんですけど……。ちょっとショックです。
サリエル討伐の経験がないことを伝えましたが、それでも夏さんは「大丈夫」と僕に言葉をかけ続けてくれます。いやもう大丈夫とかそういう問題じゃないんですよ夏さん。
「毒鱗粉にだけは特に気を付けてくれたらいいよ」
「他に注意する点は?」
「あとは目から出るレーザーとか……。まあ遠距離攻撃が多いし、その分隙も多いからなんとかなるよ」
「最悪、本当に危なさそうだったら俺が指示出しするから」にこにこ笑顔の夏さんが頼りなく見えて信用できないのは果たして僕だけなんでしょうか。僕よりも先輩、ですよね。それは分かっているんですけど、ちょっとなよっちく見えるというか。僕が言うなよって話なんですけどね。
いやいや僕。疑っちゃいけないです。人は見かけによらないって言うじゃないですか。それに失礼だからこういうことを思うのは止めたほうが良いですね。
「それにしても今日はいい天気だな」
「え? 馬鹿なんですか?」
「え、それは酷くない?」
だって嘆きの平原ですよ。お日様なんて見えないですよ。この曇天のどこをどう見たらいい天気になんてなるんですか。目が腐ってるんですか。やっぱり夏さんって頼りない人なんじゃ……。
ジト目で見ていると「ポカポカしないか!? 日向ぼっこしているみたいな!」と夏さんが訴えかけてきました。だからそもそもお日様なんて出ていないんだからポカポカなんてしているわけがないじゃないですか。
「飛鳥はポカポカしないのか? ……俺の気のせいなのかなあ」
「出先だから気分が高揚しているんじゃないですか?」
「でもこれはそういうのとは……。まあ、後ででいいか」
夏さんの顔から急に笑顔が消えたのでびっくりしました。視線を辿ると、サリエル。といってもだいぶ距離があります。ふわふわと浮かび優雅にぼくたちに背を向けるサリエルをじっと見つめる夏さんは、やはり先輩にあたる人に違いないのだと認識を改めました。
僕に目配らせすると夏さんはそのまま大きく踏み込み、サリエルに向かって駆けだしました。今日は既にオラクルリザーブを済ませていた僕はスピアの状態のままその後を追います。む、考えたらスピアだとやりづらいでしょうか。
先にサリエルに追いついた夏さんが地面を蹴って飛びあがり、更に空気を蹴りより高い位置まで跳躍するとサリエルの頭に一撃を加えました。スキル“空中ジャンプ”の効果を差し引いたとしてもその跳躍力は並のものではありませんでした。
「先手取ったりー!」
それから二回、三回と斬撃を負わせた夏さんは体勢が崩れると左手でサリエルのスカートを掴み、腕力だけで持ち上げて……それから今度はサリエルの首を背後から掴んで頭を斬りつけはじめました。
「え、あの、ちょ、何やってんですかあんた!?」
「斬ってる!」
「それは見れば分かりますよ!! ああもう、極東の人間は皆頭おかしい!!」
見ていて危ないから勘弁してほしいんですけど!
まさか掴まれるとは思っていなかったのかサリエルも身体を捩って夏さんを落とそうと抵抗していました。銃での支援も視野に入れていましたがこれじゃあできませんね。サリエルの意識が僕に向いていないうちに下からスカート部位の結合崩壊を狙うことにしましょう。
しばらくしてから夏さんも維持できなくなったらしく、サリエルの身体に蹴りを入れて離れ、降り際にスカート部位を斬りつけて……。
「えっ」
そこで唐突に夏さんが僕の視界から消え失せました。
「わああああ!?」
次いで夏さんの悲鳴が、僕の上……正確にはサリエルの更に上から聞こえてきました。何が起こったのか分からなくて、でも放心してしまえば死にかねないから集中を欠かすこともできず、とりあえず一度銃形態に切り替えてサリエルから距離を取りました。サリエルの真下にいた僕はサリエルよりも上の視界を見ることが出来なかったので(ところでサリエルってパンツとかないんですね、残念です)離れないと状況が把握できなかったんです。
「あ、飛鳥っ! 今の何だ!? あれがブラッドの力なのか!?」
「……は?」
先程夏さんが傷を入れていた頭に照準を合わせてバレットを撃ってみようかと思って砲身を向けると、そこには既に先客がいました。夏さんでした。今頃は地面に降り立ち、再び飛びあがっていたであろうその人はその間のステップを抜かして、サリエルの頭に再び攻撃を加えていたのです。
ただし、サリエルの冠と頭を真っ二つに斬り裂いて、神機の刃がサリエルの胸部の位置で動かなくなっている状態でした。びくともしないのか、夏さんは神機の柄に手をかけてサリエルの身体を何度も蹴りつけ、神機を取り戻そうと躍起になっていました。
なるほど。夏さんは地面に降りる直前、何かが起こってサリエルの真上に移動し気付かぬうちにサリエルを斬り裂き、しばらく訳が分からなくて神機にぶら下がっていたけどとにかく神機を取り戻して離れないと危ないことに気付いて今に至る……。そんなところでしょうか。
帰ったらラケル博士に相談する必要があるかもしれませんね。そう思いながら僕はスピアに力を溜めていく。どうやら夏さんの今の攻撃はかなりサリエルに効いたみたいですし。
「夏さん、避けてくださいね」
「というかこれ取れない……! って、ん? 飛鳥何か言ったか?」
「いきますよー」
「ちょっと待て! 飛鳥落ち着け!!」
やっぱり問答無用でした。僕はスピアに十分な力が溜まったことを確認してから、サリエルの腹部に向けて狙いを定めて……空を飛びました。チャージグライドによって僕は空を駆け、サリエルの腹部を貫きました。それから強引に身体の向きを変えてスカート部位に力強く一閃。部位破壊までには至りませんでした。
ですが十分だったようです。サリエルはそのまま地面にべしゃりと落っこちると、それ以降身動きをしませんでした。ちょっとやりすぎたかなって思ってます、主に夏さんが。
件の夏さんは僕が飛び出す前に危険を察知したのか神機を諦めてサリエルから離れていたらしいです。
「お前なあ……。俺の神機が傷付いたらどうしてくれるつもりだったんだよ」
「あ、自分の身体の心配はしてないんですね」
「そりゃ俺は逃げられたからな。次からは気を付けてくれよ?」
霧散し始めたことによって抜けやすくなったらしく、夏さんの手には神機がありました。ついでに捕喰もしてくれたようです。仕事が早いですね。
夏さんにごめんなさいしつつ、頭の中では先程の瞬間移動が気になっていました。それは夏さんも同じだったのでしょう。ヒバリさんに連絡を入れてから「あー」と気まずそうに夏さんはしばらく視線を泳がせていました。
「ま、なんだ。とりあえず、帰るか!」
――――――――――
所変わって極東支部ラウンジにて。
夏さんが「お腹減ったからラウンジで話そうぜ」と提案したので、ここにきました。今はムツミちゃん特製カレーライスを食べているところです。この前コウタさんにもムツミちゃんのカレーライスは美味しいって言われて一緒に食事をしましたっけ。僕もムツミちゃんのカレーライスがあれ以来大好きなので、嬉しいです。
「夏さん、あの時何か特殊なことをしましたか?」
スプーンを持つ手を止めて夏さんを見ると、既に夏さんは食べ終わっていました。なんと。いくらなんでも食べるの早すぎやしないでしょうか。さっきまですごく美味しそうに食べていたから、味わっていないなんてことはないはずなんですけど。もう少しゆっくり食べてもいいような。
僕の質問に夏さんは少し呻ってから、諦めたように首を横に振りました。
「特には何も。……サリエルから離れて、スカートを斬って、気付いたらサリエルの頭上だ」
「あの時の夏さんの悲鳴、とっても面白かったですよ」
「俺は死んだかと思ったよ」
苦笑いをした夏さんは、なんだかそういった突発的なアクシデントに慣れていそうな感じがしました。疲れた笑い方が染みついている、様な気がします。気のせいでしょうか?
お皿を下げてもらった夏さんがムツミちゃんから缶ジュースを受け取って喉を潤し始めた頃、ようやく僕もカレーライスを食べ終わりました。どうして水を貰わないんだろうと思いつつ、ムツミちゃんに同じものを頼んでみました。
「え……。飛鳥さん、やめたほうがいいですよ」
「ムツミちゃんがそんなに深刻な顔で止めるって、夏さんは毒物でも飲んでるんですか」
「毒物じゃないよ!? 全然、普通に飲み物だからね!」
そう言って夏さんが差し出してきた缶のラベルを読んでみる。ええと、冷やしカレードリンク? ……カレーライスを食べた後に、飲み物のカレーを飲むってどうなんでしょうか。というか飲み物のカレーってなんでしょう。サラサラなんですかね。所謂スープカレーみたいなやつなんですかね。こんなの誰が考えたんですかね。
ムツミちゃんが止めた理由が分かりました。一度試してみたくもありますがカレーにカレーはちょっと遠慮願いします。また今度機会があった時に飲んでみることにします。
「どうしてみんなこの味が分からないかなあ。リッカさんだけだよ……」
「ああ、リッカさんもそれ好きなんですか……」
そういえば自販機にずっと売り切れ状態の初恋ジュースなるものがありましたけど、あれもコアな飲み物だったんでしょうか。一度飲んでみたかったものですが、まあたぶん無理でしょうね。
美味しそうに冷やしカレードリンクを飲む夏さんを見て、なんだか胃がもたれてきました。僕は夏さんほどカレーが大好きってわけでもないんですよ……好きな料理の一つ程度に過ぎないんですよ……。
「……あ」
「どうかしましたか。ハトがスタングレネードでも食らったような顔して」
「それかなり危ないやつな。……あのさ、さっきの依頼の時のことなんだけど」
冷やしカレードリンクを飲み終わったのか缶が机に当たり、カツンと乾いた音が鳴りました。夏さんは言葉を整理しているのか目を伏せていましたが、すぐに目を開きました。「信じてくれないかもしれないんだけどさ」と前置きする夏さんに「気にしないのでどうぞ」と促します。
「サリエルの頭上に行ければいいな、ってあの時思ったんだ」
「頭上に、ですか」
「頭は比較的剣戟が通りやすいからな。そこに行けたら有利だなって思った」
それで気付いたら頭上に、という具合らしいです。夏さん自身もどうやってサリエルの頭上に移動できたのかよく分かっていないそう。……詳しく調べる必要があるのかもしれないですね。一応、帰還前にラケル博士に送った通信では夏さんを連れてくるように頼まれましたし、今日中に夏さんをフライアのほうに連れて行ったほうがよさそうですね。
最近はなんだかギルがハルさんに会ってからそわそわと落ち着きがないですし、仮にも副隊長を任されたからにはしっかり見張っておかねばなのです。ジュリウスが今、フライアのほうに籠ってますからね。そういう意味でも僕の出番なのです!
さて、そうと決まれば夏さんとフライアに……と思ったら夏さんが二本目の冷やしカレードリンクを飲んでいました。……ああ、フライアにはまだ行けそうにありませんね。
【夏は???を取得した】