黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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今回はちょっとやっつけ感が凄い気がします。ローラン君だって暴れたいんです。

また退屈な月曜日が始まるので初投稿です。


財布を潰して皮を削ぐ

生き別れた姉弟が遂に再会、感動する場面だな。今は仲睦まじく話し合ってるし、他のヤツらも温かい雰囲気だ。

 

が、そんな空気にはとても馴染めそうには無いので、Wと二人でちょっと離れたところを散歩している俺、ローランだ。ま、あの場に居続けて水を差すよりはマシだろうな。

 

レユニオンとしては、多少の損害を払って龍門から脱出し、当初の目的を達成した訳だけど、まだ気を抜いてはいけない。何時だってハッピーエンドにはバッドエンドが付き纏うんだ。

 

「おいW。この状況、近衛局のヤツらが諦めるとは思わないよな?」

 

「十中八九追跡して来るでしょうね。まぁ、私達にはもう関係無いけど。」

 

「そうだな。後はスカルシュレッダーなら何とか出来るだろうし、これ以上俺達が出る幕も無いか。」

 

近衛局とロドスは必ず此処を目指している。あのターゲットの少女の価値なんて知りたい気も起きないけど、それ程重要な情報を持っているっぽいな。

……う〜ん、恐らくチェルノボーグ関係なんだろうけど、あの作戦の裏側はかなり混沌としている事は察せる。これ以上ヤバい事に首突っ込むのはやめたいかな。いつか首だけになりそうだ。

 

「ねぇローラン。どうやらスカルシュレッダーが近衛局の連中を迎撃するらしいわよ。早いとこ逃げておきましょ。」

 

「やっぱり直ぐそこまで来ていたみたいだな?よし、じゃあ取り敢えず炎国辺りにでも……。」

 

炎国料理は美味いんだよな。程よい辛さが、凄く今食べてますって事を実感出来て、生きている事の幸せを噛み締められる……気がするからな。どれ、最近はWにやられっぱなしだし、アイツの料理に唐辛子でも……。

 

「ローランにW!すまないがミーシャを安全なところまで連れて行って欲しいんだ!」

 

予定変更だ。まったく……もう勘弁なんだけどな?

 

「うん?ああ、いいよ。上司の願いくらい素直に聞くよ。」

 

「ちょっとローラン。言っておくけど私はゴメンだから、あなたが面倒見なさいな?」

 

「俺は決着を付けなければいけないんだ。ありがとうローラン。幹部じゃなかった頃から色々と面倒を掛けていたな。」

 

「別に、気にしない気にしない。」

 

……子守ねぇ?龍門に居た頃でも偶に依頼としてはやっていたし、あの子は大人しそうだ。それ程手間の掛かる事じゃ無さそうだ……。Wは俺に丸投げするみたいだし、ここはフィクサーとして鍛え上げた俺のテクニックを見せてやりますかね。

 

 

 

 

 

 

俺とWはスカルシュレッダーからミーシャを託され、少数の突撃部隊員と共にレユニオンの野営地に向かっていた。あそこなら簡単には見つからないし、近くに炎国行きの交通機関もあるから丁度良い。そんな風に今後の予定を建てていたんだけど、どうやら神様は俺の事がとっても嫌いらしい。

……この子がスカルシュレッダーを心配する気持ちは分かるけど、だったら何で引き留めなかったのかな。姉なら、無理矢理にでもして欲しかったよ。

 

「お願い……あの子を、助けてあげて。」

 

「はぁ?」

 

Wが機嫌の悪そうな声を上げる。俺だって内心そう思ってる。来た道を引き返して、スカルシュレッダーを助けに行くのか?今更行ってもな……。

 

「貴方達が強い事はよく知ってる。だからお願いなの。アレックスとはもう離れたく無い……!」

 

実を言えば、凄く面倒くさい。またあの連中と顔を合わせるとか、余程の戦闘狂とかじゃなきゃ喜ばない。最初は断ったけど、そこからずーっとこの調子だ。いい加減五月蝿くなってきたな?

 

「はぁ、そうかい。……なぁW?お前、行ってきたらどうだ?お前1人で十分だと思うんだけど?」

 

「奇遇ね?私も似たような事考えてたわ。黒い沈黙様なら救出くらい余裕なんでしょ?」

 

「……ふーん。」

 

「へー……。」

 

「あの、早く……。」

 

「「うるさい。」」

 

Wとの真剣勝負なんだ。頼むから邪魔しないでくれ。

 

「おい、次は負けないからな?」

 

「よく吠えるわねぇ?叩き潰してあげるわ。」

 

 

「「……ジャンケンポイ!」」

 

「あっち向いてホイ!」

 

「フッ!」

 

「「ジャンケンポイ!」」

 

「あっち向いてホイ!」

 

「っしゃ!」

 

「「ジャンケンポイ!」」

 

「あっち向いてホイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偵察目的で配置していた兵士が倒され、迎撃に出ようとするも、まるで戦場を上から直接見ているのかと疑いたくなる程の、ロドスのドクターの戦術指揮。奇襲を仕掛けても悉く看破され、戦力はどんどん削られていき、ミーシャを逃す事を目的としていたスカルシュレッダーも、源石爆弾を握りしめて潜伏し、覚悟を決めていた。

 

自身の武器による爆破で巻き起こる砂埃に身を隠し、それでも不安と焦りを隠せなかったスカルシュレッダーは、判断を誤ってしまった。

ドクターを巻き込んで死ぬ。最終手段としてドクターの背後から接近し、源石爆弾を起動、しかしドクターの側に居たコータスの少女が反応して………何も起きなかった。

 

突如消えた敵に困惑を隠せない少女、アーミヤは周囲を警戒する。それはドクターや他のオペレーター、チェンや近衛局の兵士にペンギン急便の面々も同じだ。

一瞬だけだが、音が完全に聴こえなくなったのだ。寧ろ消えたと言う方が正しいだろう。この現象に、かつてチェルノボーグで似た様な経験をしていたロドスの者達は全力で警戒し、それと同じ様に近衛局の者達も周囲に敵が居ないか探し始めた。特に隊長のチェンは必死だ。唯一、ペンギン急便の二人だけが対応出来なかったが、首を傾げつつも辺りを見回すと……。

 

「なぁ。もう此処で引いてくれないかな?これ以上損害を出すのも嫌だろ。」

 

いつからそこに居たのか。少し離れた岩場に全身黒尽くめの男が立っていた。近くにはスカルシュレッダーも居る。漸く敵を認識出来た近衛局の一行を尻目に、その男はスカルシュレッダーに話し掛けていた。

 

「スカルシュレッダー。ミーシャからキミを守れと言われたんだ。だから先に撤退しておいてくれ。」

 

「ロ、ローラン?今のは……いや、ありがとう。しかし、お前一人でこれだけの量は……。」

 

「撒く事ぐらい出来るさ。さ、早く行ってくれ。」

 

後ろ髪を引かれる想いで撤退して行くスカルシュレッダー。ローランはそれを見届け、そして振り返った。

 

「よぉ、また会ったな?キミ達が何であの少女を追いかけているのかは知らないけど、さっさと回れ右して帰ってくれると嬉しいよ。」

 

ローランは手ぶらだ。その様子に全員が怪しんだが、武器を隠し持っている様には見えない。剣を持ち直しながら、チェンが前に出た。

 

「貴様は、以前龍門で低級フィクサーとして活動していたローランだな?何故レユニオンに参加した。」

 

「何故だって?笑わせてくれるなよ。お前らが俺を追放したからだろ。俺が何かしたか?何もして無いよな。だったら少しぐらい報復してもいいだろ。」

 

先程見た時よりも妙に険しい眼付きのローランを若干不思議に思いながら、チェンは何時でも動けるような体勢で話を続ける。

 

ウェイ長官に問い合わせて分かった事は、名前がローラン。九級フィクサーで、数年前に龍門にやって来て、それ以降事務所を経営している。

たったそれだけである。以前何をしていたのか、何処にいたのか。それらが完全に謎だったのだ。龍門に来てからは、毎日都市でフィクサーとしての活動をしていたとあるが、本当にそれだけである。

あの戦闘力を見て、チェンはローランの正体が隠しているか、又は降格処分を喰らった上級フィクサーだと仮定していた。実際その仮定は間違っていないが、少しだけ解釈が違う。

 

「……貴様を追放したのはウェイ長官だ。理由は私も知らない。」

 

あの時のナイフと鉤爪の様な武器は持っていない様だが、それでも今さっき見せ付けられた素早さは侮れない。このまま戦闘に入るか、はたまた相手が撤退するか。それを見極めようとして……。

 

「……ねぇ、何で?ローランが、追放?」

 

ローランのでもチェンのでも無い声が響き渡る。全員がその声の持ち主に目を向けると、そこに居たのはペンギン急便所属のトランスポーター。サンクタの少女、エクシアだった。

 

「ん?……ああ、キミか。さあな?俺だって追放された理由が分からないなぁ。」

 

「追放って……何かしたの?引っ越したとかじゃなかったの?」

 

「黙れ。何でキミ如きに一々話さなくちゃいけないんだ。」

 

「ッ!……。」

 

そう言われ、エクシアは黙り込んでしまう。少し前まで親しかった者が突如消え、久しぶりに会えたと思ったら追放されていたと知り、さらに自身の敵としての再会。あの冷たい言葉は、龍門に居た頃のローランを知るエクシアには想像も付かないものだった。

 

「まぁ、俺はスカルシュレッダーを撤退させに来ただけだし、それじゃあもう二度と会わない事を祈るよ……。」

 

「待て。逃すと思うのか?」

 

次に言葉を発したのはドクターだった。目の前で自身を救出してくれた人々の何人かが彼に殺された事を、ドクターは鮮明に覚えている。チェンから襲撃を仕掛けて来た男の容姿を聞いた時から、なんとなくは予想していたが、こうして再び現れた敵をみすみす見逃す事はしたく無かった。

 

「はぁ、やっぱりこうなるのか。っち、頼みなんか聞くんじゃなかったな……。」

 

ローランは言い終えると、最も近くに居たチェンに急接近する。それにしっかりと反応したチェンは洗練された動きで迎撃に出ようとするが、その一撃は何時の間にか、両手に小振りの剣を持ったローランに容易く避けられる。武器を持ち出した瞬間が全く見えなかったが、気にする余裕も無い為、フェイントを織り交ぜた剣撃を繰り出すが、その悉くを避けられ、躱され、逸らされる。

 

『クリスタルアトリエ』製の双剣は繊細な為脆いが、驚く程軽く鋭利に出来ている。重さなど感じさせない腕を振るえば、敵は防御に徹しざるを得ず、自身のペースに持ち込む事は簡単だ。敵集団への牽制や強敵との一対一に使われるこの武器は、よほど熟達した者にしか使い熟せない。

 

流れる様な斬撃を繰り出すローランに対し防戦一方になってしまったチェンを見て、近衛局の兵士が援護射撃をする為にクロスボウを構えるが、その視界は狙いを付ける前に暗転してしまう。

響き渡る聞き慣れない轟音。糸が切れた様に後ろに倒れ込む兵士。この音が何なのか、それを一番よく知っているエクシアは驚愕する。

 

「ラテラーノ銃!?」

 

瞬時にチェンから距離を取ったローランの両手には、黒い大型の拳銃が握られていた。今までに見た事の無い形をした銃を、ローランは平然と発砲していく。

またしても急に出現した武器に混乱が起こる。矢とは威力も弾速も違う、死の鉛玉が肉眼では捉えられない速度で飛来し、命の灯火を消し去っていく。

 

正直なところ、ローランはこの『ロジックアトリエ』製のラテラーノ銃を使いたくは無かった。兎に角弾丸が高いからだ。しかし、その出し惜しみが自らに牙を剥く事を知っているので、敵の遠距離攻撃の手段を潰す為に引き金を引く。

 

二丁合わせて装弾数十六発、発掘では無く、一から作成されたこのラテラーノ銃はローランの戦闘スタイルに合う様に造られている。敵の手数を削ぐ為に造られたこの銃は、それ故に距離も装弾数もエクシアの持つ銃に劣るが、威力と狙ったところに飛ぶ精密性は一級品である。

 

一見無差別に発射している様に見えるが、ローランはしっかりと考えて撃っており、なるべくチェンやドクター、それに近しい者を撃たない様にしている。こんな状況に陥ってまでなるべく敵を作らないその姿勢は、例え無意味であっても見事なものだろう。

 

弾丸を撃ち尽くし、しかし再び弾丸を込める事はせずに、ズボンに着いていたベルトに銃を仕舞ったローランは、とても憂鬱そうな顔をして一言。

 

「な?余計な損害は出したく無かったろ?キミ達は戦力を削がれて、俺は金を失った。良い事なんて何一つとして無かったな。」

 

去っていく彼を止められる者は、誰一人として存在しなかった。

 





ローラン君
今のところ、本番でWとの勝負に勝てた事が無い。

W
帰ってきたローラン君を散々煽り倒し、その後炎国でラーメンを奢らせた。なお、その時にローラン君の報復(激辛ラーメン)を受け、二人で店の外で語り合った。

ミーシャ
自分の時もそんな決め方をされていたのだと、何となく察した。でも感謝はしてる。

スカルシュレッダー
無事撤退。背後から鳴り響く轟音に気が気でなかった。

クリスタルアトリエ
カジミエーシュを中心に活動する工房。作り出す武器の見た目の良さから、観賞用としてオーダーメイドするフィクサーも少なくない。

ロジックアトリエ
ラテラーノを中心に活動する工房。主に銃の弾丸を製造しているが、独自で銃を作り出す技術を保有している。ローラン君が扱う武器の製造費の中では最も高く、そこに免許取得の云々も入っているのでえげつない額の金が消えた。一応執行人に免許を見せれば罰せられる事は無い。あくまで免許取得の試験までの仲介手数料だけで、試験は本人の実力次第。ローラン君は目に隈を作った。
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