黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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遂にラオル終わりましたね。で・す・が・。このプロムンにしては珍しいハッピーエンド。これは次回作の匂いがします。美味しいです?きっと気に入ります。糸を紡いで待ちましょう(謝肉祭並感)

ローラン君の幸せを願って初投稿です。


道化の奥底

ロドスの艦内は騒然としていた。ほぼ全ての職員が駆けずり回り、ある者は必死にキーボードを叩き、またある者は、医薬品が入った箱を出来るだけ速く運んでいる。

 

ロドスは最近ドクターが目覚めたという理由上、二徹三徹は当たり前というレベルで忙しい会社だ。特に人事部の忙しさは異常を通り越している。勿論人事部以外の部門も忙しいが、全員が全員常に目の下に隈を作っているかと聞かれると、そうでも無かったりする。

 

しかし、この瞬間だけは疲れ切った体に鞭を振るわざるを得なかった。近衛局との合同作戦として龍門に行っていた行動隊が、現在敵対している組織『レユニオン・ムーブメント』の幹部の一人に大きな損害を与えられたのだ。

 

奇跡的にも、ロドスのトップであるドクターとアーミヤに怪我は無かったが、それでも残された爪痕は大きかった。

腕や足が半分で千切れたり、脇腹から内臓が溢れそうになっている重傷者が大量に出たのだ。中には頭の上半分が吹き飛び、帰らぬ人となった者もいる。

……もっとも、高い金や根気強い交渉で揃えたオペレーターとは違い、人事部がそれほど手間を掛けずに集めた彼等は、補充が効くと言ってしまえばそれまでだが、それでも大事なロドスの一員である。

 

ロドスの職員達は個人差はあるものの、全員がこの損害を与えたレユニオン幹部である存在を憎んでいた。休みが減ったというもっともなものから、親しかった、愛し合っていた人を失ったというかなり激しいものまでと、理由は様々だ。

 

近衛局の調査により、このレユニオン幹部の身元は判明していた。その資料はロドスにも渡されており、情報部はそれを頼りにローランなる男の正体を探っていた。

しかし、調べれば調べる程分からなくなった。龍門に来るまでの足取りが完全に不明だった。

 

かつて上級フィクサーだったらしい。分かるのはそれぐらいである。龍門でもフィクサーとして活動していたが、これに関しては本当に普通であり、ペンギン急便のメンバーとも交友関係があったという。その時点では不審な点は見られなかった。

 

レユニオンに所属している理由は憶測だが、現在ロドスと契約を結んでいるペンギン急便のメンバーエクシアによれば、鉱石病に感染して追放されたとの事で、それで恨みを持っているのではないかと言うものだ。実際あながち間違ってはいないが、ローランは恨みを返せるのならロドスでもよかった。ただ先にレユニオンと接触しただけである。さらに現在は傭兵であるWに雇われたという、レユニオン内でもかなり曖昧な立場だったりする。

 

以上の情報は一般職員では情報部にしか知らされていないが、正義感の強い誰かの手により、ローランの現時点で判明しているプロフィールはロドス中に広がっていた。

当然職員達はローランを罵倒し、この男に対する憎悪を募らせていく。……その様子をエクシアとテキサスは離れた所で見ていた。

 

何時、何処で、どのような理由で知り合ったかは覚えていないが、ローランはペンギン急便のメンバーと面識があった。

 

エクシアにとっては都市内を歩いたり、配達をしていれば見かける事がある男友達という認識だった。その度に話し掛けたり、ちょっかいを掛けたりしていた。自分よりも年上で背も高く、誰にでもフランクに話す彼との一時は楽しかった。偶に相談事もする程の関係で、今思えば龍門でローランと一番親しかった者はエクシアだろう。

 

テキサスにとってはなにかと気が合う異性という認識だった。自身がよく食べているチョコレート菓子をお裾分けした時はかなり良い評価を貰い、一緒にカフェに行った時も同じコーヒーを頼んでいたり、ローランに紹介されたハムハムパンパンという店のサンドイッチも気に入り、お互いが一緒にいて疲れないと感じていた。少なくともテキサスはそう思っている。

 

それに、一番の理由としてはローランからは同類の気配がしたという事がある。テキサスと同じ一匹狼の気配だ。一見彼の種族は分からないが、テキサスだけは何となくループスだと感じていた。

 

偶にエクシアがローランをペンギン急便に入社させたいと喚く事があったが、実はテキサスや他のメンバーも満更でもなかった。ペンギン急便を創り上げた社長のエンペラーもローランの能力は評価していたが、幾ら調べても過去が全く分からないという事だけは疑問視していた。しかし、フィクサーにはよくある事だと言うし、普段の素行にも何ら問題は無かったのでローランに意思があるのなら、と思っていた。

 

が、彼は突然龍門を去って行った。何の前触れも無しにだ。

急に一切の連絡が付かなくなり、最終的には彼の事務所にまで赴いたが、そこは既にもぬけの殻となっていた。

以前、エクシアはローランからフィクサーについて色々聞いてみた事があった。彼はフィクサーが受ける依頼について話してくれて、依頼の内容によっては長期間別の場所に滞在する事も珍しく無いと言っていたし、エクシアはローランが何か大きな依頼を引き受けたのだと納得する事にした。勿論心配したが、飄々とした彼なら何時の間にかふらりと帰って来て、何事も無かったかの様に目の前に現れる気がして、その時に何かいたずらをしてやろうと笑みを浮かべた。

 

意外にもその再会は早かった。そして、それは最悪の形として実現した。

いつもの親しみやすい笑顔の代わりに冷え切った無表情を貼り付け、腕に敵対している組織のシンボルマークが入った腕章を着け、両手に黒い手袋をはめていた。

 

再び会えた喜びよりも、何故という疑問と困惑の感情がエクシアとテキサスを支配した。

 

彼は先程まで戦っていたスカルシュレッダーを回収しに来たという旨の発言をした。エクシアもテキサスもあの俊敏さを見て、初めて彼は私よりも強いと認識した。あの時のへらへらしていて、何処か控えめな態度からは想像も出来なかった。それと同時に、彼は私の事を信頼していなかったとも認識した。それが、どうしようも無く寂しかった。

 

そして、チェンがローランにレユニオンに参加した理由を聞くと、彼は自身が追放されたからだと言った。

次に二人を襲ったのは、これまた困惑と、言いようのない怒りだった。何故彼が。どうして彼が。

 

再会の喜びと信頼されていなかった寂しさ、そして近衛局に対する感情が混ざり合い、エクシアは彼に勇気を振り絞って話し掛けた。こうなった理由を聞く為に。

 

返ってきたのは罵倒と拒絶の言葉だった。龍門で活動していた頃の彼を知っているのなら、まず飛び出る事は無いだろうと思える様な言葉だった。

 

そして彼は何処からともなく美しい装飾の施された双剣を取り出し、あのチェンと互角以上に斬り結んだ。彼の実力を痛感するには十分だった。

この時点でテキサスは兎も角、エクシアは事態に付いて行けなかったが、突如響いた轟音に正気に戻される。

 

遅れて地面に叩き付けられる飛び散った肉片の音。彼の両手を見れば、見慣れたシルエットがそこにはあった。

構造が複雑な為、ラテラーノ人にしか使えないとされるラテラーノ銃。彼が両手に握っているのは形状は拳銃で、銃口付近に回転式弾倉が付いているという見慣れない物だった。彼はそれをなんて事無いと言う様に乱射していった。

 

弾丸がこちらに飛んで来る事は無かったが、エクシアは一種の絶望感を抱いていた。

ローランは何故かラテラーノ銃に詳しく、よく守護銃の改良の相談に乗って貰ったが、まさか彼自身が使えたとは思わなかった。それは、彼にとって話す程信頼されていた訳では無いと言う事と同時に、心の何処かで彼を見下していた事を自覚させられた。対等に接していたと思っていたのに、相手だけで無く自分までもが。

 

エクシアとテキサスは、先程の作戦中の出来事をエンペラーには報告したが、まだ他のメンバーには伝えていない。彼の事を何も知らない人達が、彼を貶すのを黙って見ていた。何も知らないくせに、とは言えない。自分達は彼の事を近くで見てきたと言うのに、本当の彼を何一つとして知らなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

暫くして、ロドスに二人のオペレーターが帰って来た。一人は先鋒オペレーターであるグラニ。もう一人は任務という名の単独行動をしていたスカジである。

 

スカジは厄星の異名を持つ賞金稼ぎ(バウンティハンター)であり、その噂は同業者の賞金稼ぎだけで無くロドスにも広まっており、基本的にスカジは他人に積極的に関わっていく性格では無い為、その噂には数々の尾ひれが付いている。

 

とある村に単独で向かっていたという事はケルシーしか知らず、ロドスの職員達は何故か最近見掛けなかった彼女を見て、なるべく同じ空間に居たくないと言わんばかりに足早に去って行く。

スカジはそんな職員達を気にも留めず、ケルシーの元へ『あるモノ』を持って向かっていた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、さっきからロドスがやけに騒がしい気がするのは、私の気の所為かしら。」

 

『あるモノ』と引き換えにケルシーから情報を得たスカジは、ロドスに戻ってから感じていた違和感の正体を知ろうとケルシーに問い掛けた。

 

「気の所為では無いな。龍門との合同作戦に送った行動隊がかなりの損害を負った。そして、その損害を与えた敵の情報を、正義感に駆られた誰かがロドスに流布した。」

 

「私も見てみたいわね。」

 

ケルシーは持っていたクリップボードに留めてあった、ホチキスで纏められた数枚のコピー紙を取り出して、スカジに手渡す。ロドスの情報部が精一杯纏めた敵の情報だ。

 

受け取ったスカジはざっとロドスが受けた被害の欄に目を通し、その敵と思われる顔写真を見つめた。

 

「………ウソ。」

 

「どうした?」

 

スカジらしくない珍しい反応に、ケルシーは彼女の顔を覗き込む。顔は口元こそ変わらないが、その目は驚愕に見開かれていた。

 

「……ロドスは、この男──ローランと敵対したのね?」

 

「ああ。それに書いてある通りだが……まさか、お前はコイツの正体に心当たりがあるのか?」

 

「……ええ。聞く限りは、ローランの事を調べても一切分からないみたいね。」

 

まさかの人物が、現在ロドスを悩ませている敵の正体を知っているかもしれない。ケルシーは、一刻も早くスカジが知っている事を知りたかった。

 

「幾ら調べても足取りが一切掴めない。分かっているのはコイツが元上級フィクサーという事だけだ。もっとも、これすらも憶測に過ぎないが。」

 

「そうね。元上級フィクサーというのは間違って無いわ。」

 

「……一級か?それとも便利屋クラスか?」

 

スカジは天井の隅を見つめ、何処か懐かしむ様な声で話し始めた。

 

「彼はスカーモールから『黒』()を授かった、最上級のフィクサーよ。」

 

「何?コイツの正体は……黒い沈黙なのか?」

 

「そう、彼は黒い沈黙。私と同じ様に化け物と呼ばれる人。」

 

ケルシーは何処か引っ掛かっていた。黒い沈黙と言えば、悪い意味で有名な特色フィクサーだ。諜報に優れたフィクサーで、曰く、臆病者。雑魚。人間不信と言われる特色の中でも奇妙な存在だ。

そんな特色が、あのローランという男。近衛局の隊長と斬り結んだと聞いているから、かなりの実力を持っている。しかし、その顔はおろか、姿や種族、使う武器すら不明で、挙げ句の果てにはその存在すら疑われていたフィクサー。情報を隠蔽していたとするのなら、確かに納得がいく。しかし、誰が特色フィクサーが龍門で九級フィクサーをやっていると思うだろうか。

 

「……なるほど。あそこまで自身に関する情報を抹消する技術。情報戦に強いと言われる黒い沈黙なら納得できる……が、本当にそんな事が可能なのか?」

 

「彼は自身の正体を知った者なら、必ず消していたわ。常に仮面をして、依頼人との一対一の面会だけでしか依頼を受けない。私が生きているのは偶然みたいなものよ。」

 

「特色の中では一番弱いと聞くが、そこはどうなんだ。」

 

「ただのデマね。特色の中でも間違いなく上位に位置する実力者よ。………相手が悪かったわね。黒い沈黙は一対多に強いわ。」

 

報告によれば、この男はスカルシュレッダーを回収する為に一人で現れたらしい。以前チェルノボーグで敵対した時もWとの二人きりだった。

 

「送り込まれたら最後。敵は必ず『沈黙』(皆殺し)する。だから黒い沈黙なのよ。臆病だから沈黙してるとかじゃないわ。」

 

「報告ではこの男が使う武器は長剣、鉤爪、ナイフ、双剣、二丁のラテラーノ銃とあるが、他にも使う武器があると予測出来る。そして、はめている手袋から明らかに質量を無視した武器を取り出す、周囲を無音にするアーツを使うとあるが、お前は何か知っているか?」

 

「私は長剣しか見た事がないし、アーツを使っているところなんて一度も見た事がないわ。そして、少なくとも私が出会った時は手袋をはめてなかった。」

 

スカジはそう言い終えて、自動ドアを潜って部屋を出ようとする。

 

「待て。正体を知った者は殺されるのだろう?何故お前は生きている。そしてこの男といつ出会っていた。どんな関係をいつまで続けていた。」

 

「それを貴方に話す義理も義務もないわ。それに、知ったとしても得られる物は何も無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ローラン。また、会えるのかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううぇっっくしゅんッッ!!」

 

「ちょっと、何よ急に。汚いわね。それぐらい我慢しなさいよ。」

 

「無茶言うなよW。何だろう……風邪かなぁ?」

 

「誰かがアナタに恨み言でも吐いているのかしらねぇ?」

 

「……あー、うん。十中八九ロドスのヤツらだな。」

 





ペンギン急便のメンバー
全員ローラン君と面識があり、仲も良好。ローラン君が入社したいと言えば、喜んで迎え入れてくれた。

スカジ
ローラン君の正体を知りながら生きている人。彼女のローラン君との関係とは……?
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