黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放) 作:イカ墨リゾット
嬉しすぎたので初投稿です。ロボトミーとLoRの小説もっと増えろ。増えなきゃ俺が書くぞ。いいのか(脅迫)
戦場の最中に沈黙が生まれる。
向かい合うのは二人の男女。黒尽くめの男は、両手に握り締めた長剣を胸の前に構え、美しい銀髪をはためかせる女は、自身の身長と変わらない、地面に突き立てた大剣を引き摺り抜く。
不思議と、二人だけの戦場に横槍が入る事は無かった。もし入れれば、邪魔をされた男は怒り、無慈悲な殺戮を開始するだろう。そして、女はそれを宥める。ロドスもレユニオンもそれは理解出来た。無駄な損害を増やす訳にはいかない。
「……はぁ。君とやり合うのは初めてだな。これが最初で最後だと良いんだけど。」
「同感ね。私も余計な血は流したく無いわ。ローラン、だいぶ軽くはなった様だけど、まだ引き摺り続けているのね。」
「ああ。出来れば君とは一時間ぐらい話したいけど、俺はちょっと殺し過ぎた。勿論ロドスのヤツらもな。……だから、これを置いていく事は無理かな。」
黒と銀が急接近し、ぶつかり合う。スカジは大剣を振り上げ、ローランは長剣を振り下ろす。二、三回の衝突を経て、二つの影は距離を取る。
圧倒的なパワーと耐久力で自身のペースに持ち込もうとするスカジに対し、数多の武器を使い分ける技術に特化したローランは少々分が悪かった。
相手はそんじょそこらの力自慢とは違うアビサルハンター。人知れず幾つもの異形から人々を守る守護者。ローランの様な人殺しなんて、本来なら顔を合わせる事すら憚られる筈だ。
ゆったりと佇むスカジと比べ、ローランはいつでも動けるように踵が上がり、表情は険しい。
ローランが駆使する、生きる為に殺す為の殺人術。スカジの怪力の前には、所詮小手先の技術でしか無い。幾ら剣撃が速かろうと、幾らフェイントを織り交ぜようと、スカジは真っ向から叩き潰してくるだろう。
銃を使っても時間稼ぎ程度にしかならないと判断したローランは、一撃の威力と安全性を選んだ。手袋に長剣を突っ込み、代わりに違う武器を取り出す。
取り出したのは『アラス工房』製のランス。ローランの身長と大して変わらないリーチを誇り、相手に余裕を与えない。並大抵の盾ではその突きを防ぐ事は難しく、安易とその装甲を貫くだろう。
先行を取ったのはローランだった。有らん限りの力で大地を蹴り、美しく輝く先端をスカジに向けて突き出す。
スカジは、その攻撃を身を退け反らせる事で回避した。数々の死線を乗り越えたローランも又、スカジには及ばずとも身体のスペックは化け物染みている。一呼吸の間も置かずに、次の刺突が繰り出された。
時には突きから派生して振り上げ、時には薙ぎ払う様にして振われるランスは、スカジにとって厄介としか言いようが無い。ダーっと行って、ドンッと倒して、パパッと片付ける。ローランが聞けばまず間違い無く脳筋かよと答える程に、スカジの戦術は単純だった。
単純故に強く、嵌りやすく、躓きやすい。それを理解しているローランはスカジの接近を許さない。一挙手一投足の動作に目を配り、スカジの行動を阻害する様にランスを放つ。
早い話、スカジは若干苛立っていた。自身が思う様な展開に上手く持ち込めない事もあるが、ローランが振るうランスが、まるで自分を拒絶しているような気がした。これ以上、お前は俺に関わらないでくれと言われているようで、線引きされているようで、嫌だった。
解決方法はこの手が知っている。隙を突いて大剣をコンクリートの道路に突き刺し、そのまま地面をなぞる様にして接近した。大剣は障害物等物ともせず、氷の上を滑る様にスカジの両手に着いて行く。
ローランは初めて見る動きに目を見開き、スカジの意図を理解して歯噛みする。即座にサイドステップを繰り出そうとしても遅かった。苦肉の策と言わんばかりに後退する。
瞬間、スカジが大剣を振り上げ、ローランを目掛けて大小様々なコンクリートの破片が殺到する。攻撃にも、目眩しにも成り得る一手だ。
ああ、確かスカジの前で似た様な事やったよな。そんな場違いな記憶を脳の隅に追いやり、自身が退避するコースに飛んで来る破片だけをランスで迎撃する。
決めた量の破片を捌き切り、反射に近い動作でランスを両手で上に掲げれば、自身が地面に陥没すると錯覚する程の衝撃がローランを襲う。痺れる両手に鞭を打ち、声を上げながらランスで払い除ける。一瞬の内に交差する視線は、スカジは熱く、ローランは苦しげだった。
素早く動くランスを足場にし、もう一度空中で一回転からの剣撃を繰り出すという離れ業をスカジは見せる。迫り来る凶刃をローランは避けきれず、左の前腕を大剣が掠めた。防刃性のスーツは意味を成さず、前腕に一本の赤い線が刻まれた。膨大な質量で切り裂かれた肉はぱっくりと裂け、血液が溢れ出す。
骨まで届いていない事を把握したローランは、慣れた痛みを無視してランスを仕舞い、左手を腰の辺りに持ってくる。そこからは、正に神速と言うべき電光石火の抜刀だった。
目にも留まらぬ、嵐の様な太刀筋。防御の為に構えた大剣から夥しい程の金属音が鳴り響く。腕や足に無数の赤い線が生まれ、赤い玉が浮かび上がる。
最後の一閃を大剣に受け、再び距離を取る。一連の攻防で生じたテンガロンハットのズレを直し、正面に立つローランを見据える。
ローランは目を瞑って息を吐き、ゆっくりと抜身の刀を鞘に戻す。その姿は、何十年もの間研鑽を積んだ達人と見間違える程だ。
漸く目を開いたローランは、左手が問題なく動く事を確認してから、『ムク工房』製の太刀を仕舞った。抜刀してからほんの僅かな間だけ、身体能力が向上するアーツが込められた業物だ。少しはダメージを与えられるかと期待したが、手で擦れば消えていくスカジの傷を見て、大きな溜息を吐いた。
「あら、女性相手に酷い仕打ちをするのね。髪の毛が何本か切れちゃったわ。」
「お……君がそんな冗談を言うなんて、ちょっとびっくりしたな。まぁ、悪いとは思ってるけど、しょうがないだろ?」
「私のコレは本心よ。言っておくけれど、分かっていたわ。貴方が言う冗談は、いつも中身の無い薄っぺらな物だって。」
「……もういいだろ。頼むから引いてくれ。これ以上は。」
「無理ね。いつだって貴方はそうやって……「俺のダチをやりやがったなクソ野郎ッ!!」
視界外から突然近衛局の兵士が、仲間の静止の声を振り切って現れる。憤怒に煮えたぎる想いを乗せたその剣は、ローランの無防備な頭へと向かって。
「うるせぇよ、黙ってろ。」
底冷えする様な声が漏れる。刃がローランに届く事は無く、復讐に燃える瞳は顔面ごとランスで貫かれた。司令塔を失った兵士は溢れ出る鮮血をローランへと浴びせ、ランスが軽く振り抜かれたと同時に捨てられる。
頭の頂点から被った血に手を当て、ローランは顔の前に持ってくる。
ローランはアーツを発動させる。二人以外に、言葉が届く事は無い。
「君も見ただろ?俺はどうしようもないクズなんだ。だから、もう俺とは関わらない方が良いと思うよ。」
「それで?貴方はどうなるの。その身を擦り減らして消えていくだけだなんて、私は許せないわ。私としても、貴方の友だちとしてもね。」
ローランの顔が歪み始める。本当は言いたくないが、それでも決心した顔だ。
「俺には、君の友だちなんて資格は無いよ。君はそっちで、俺はこっちなんだ。わざわざ孤立する理由なんて、ないんだよ。分かってくれ。」
「全てを背負おうとするからそうなるの。仕方がない事だってあるわ。」
スカジは大剣の切先を下げる。
「ローラン。貴方は優しすぎるわ。フィクサーなんてやるには、どうしようもないくらい。殺した相手の顔をずっと覚えているなんて、苦痛でしかないのに。」
「……それだったら、俺に殺されたヤツらはどうなるんだよ。誰からも忘れ去られるのか?そんなのは、駄目だ。たかが俺なんて人間の所為で、そんなのは。」
結局、ローランは断ち切れなかった。幾ら立ち直ろうと、幾ら心を入れ替えようと、背負ってきたものはローランの精神を蝕み、溶かし、混ざり合い、確実にローランを殺していった。
「私が全部、受け止めてあげるわ。だって、それが友だちでしょう?貴方が私にしてくれた様に、私も貴方を助けるわ。」
ローランは肩を震わせ、顔を上げる。何故、どうしてといった感情がごちゃ混ぜになった表情だ。口から漏れようとしている言葉は、彼女を傷付けようとしていて、それでも、どうしようもなく嬉しくて。
だが、ローランはまだ断ち切れなかった。その黒く染まった精神は、まだ元に戻るには……不安だった。
「どうして……端から断ち切れるんだよ。」
ローランは長剣を手に強く握り締める。スカジにとってその姿は、あまりにも悲しく映った。
「……断ち切ることはできないんだ、スカジ。」
「今更、このまま自分勝手に断ち切れないんだよ!!!!」
・ローラン君
まだ断ち切れていなかったヘタレ男。スカジの対応に地雷が爆発。原作ローラン君の名言?が炸裂する。みんなもどうしようもなく追い詰められた時に使ってみよう。
・スカジ
ローラン君の友だち。ローラン君かわいそう。助けたい。でも肉体言語。
・W
チラチラローラン君の安否を確認してた。
・アラス工房
カジミエーシュを中心に活動する工房。主に騎士の為の武器を作ってきたが、近年需要が低下し始めたのでフィクサー相手の工房に改装した。ローラン君が使うランスはその時の名残り。
・ムク工房
極東を中心に活動する工房。老いた少年工房と同じ様に作成した物にアーツを付与出来る。材質や品質に拘っており、値段は相当な物になる。尚、老いた少年工房の方が高いが、店主と仲良くなればまけてくれるかもしれない。