黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放) 作:イカ墨リゾット
危機契約を18等級で突破したので初投稿です。みんなも、ローランの唄と狂えるオルランド、読もう!(なお未読)
チェルノボーグへ偵察目的で送り出した行動隊が、死傷者を出して帰還してきた。
死亡した者は全員が重装オペレーターであり、胴体や脳天を一刀両断された様な傷を負っていた。遺品として持ち帰られた盾は、どれも裂けていた。
一方負傷者の殆どは長時間低温に晒された事による凍傷であり、幸いにも手足を切除する程重症化しているオペレーターはいなかった。唯一アビサルハンターであるスカジが腹部に強烈な打撃を負ったが、一日もしない内に戦闘が可能なまでに回復していた。
ロドスの空気は最悪と言えるだろう。ほんの少し前の作戦で黒い沈黙に大打撃を受け、それを反省して立てた対処法を元に周囲を完全に包囲し、特殊オペレーターマンティコアにより後衛部隊への被害を抑え、真正面の戦闘へと持ち込んだ……筈だった。
その手袋から取り出される新しい武器、機械仕掛けの大剣は全てを薙ぎ払った。強固な重装オペレーター達は、その力の奔流に呆気なく命を奪われた。そして急に現れた閃光弾が炸裂し、黒い沈黙はまんまと撤退していった。
ロドスの艦内で、黒い沈黙への憎悪は募りに募っていた。誰もが恨みつらみを吐き出していた。エクシアとテキサスは、それを遠目に見ている事しか出来なかった。
「ローランは、そんな人じゃないのに……。」
「……この際だからはっきり言おう。私達はローランの事を何一つとして知らなかった。勝手に仲が良いと思い込んでいただけで、ローランからしてみれば……そういう事だったんだろうな。」
そう言いながらテキサスは腰に着けたポーチから箱とライターを取り出し、中からタバコを一本取り出して吸い始めた。エクシアは、先程自販機で購入したミネラルウォーターのペットボトルを傾けた。
ロドスの甲板のベンチに腰掛けた二人は空を見上げた。何処までも続く曇り空だ。周囲には誰も居らず、寂しげな風が吹き付ける。
テキサスが吸っているタバコは、以前ローランと選んだものだった。初めての喫煙に噎せるローランが面白おかしくて、笑った記憶がある。エクシアが身に付けている指無しグローブも、ローランに無理を言わせて買ってもらった物である。財布の中身を空っぽにしたローランに、お礼として特製のアップルパイを作ってあげた。
上っ面だけの付き合いだったのだろう。ローランにとってはどうでもよくて、迷惑なだけの作業。
今この瞬間だけは、タバコを吸う習慣があるテキサスも、近くでテキサスが吐き出す煙に慣れているエクシアも、やけに煙が目に沁みた。
一体どれ程の時間が過ぎ去ったのだろうか。深海の如き気持ちに沈んでいた二人を引き戻したのは、頬を打った一滴の雨粒だった。
気が付けば箱の中から数本のタバコが消え、側に置かれたペットボトルは空だった。立ち上がったテキサスが艦内に向けて足を動かし始め、エクシアもそれに重い足取りで付いて行く。
人工的な白い明かりが照らす廊下を歩き、多くのオペレーター達が集う休憩室に入る。中ではオペレーター達が思い思いの事をして過ごしていた。
一通りの仕事を終えた彼らは、ソファーで横になっていたり、本を読んだり、テーブルを囲ってボードゲームをしていたりと様々だ。だが、二人以上のグループで纏っているところでは、全てに共通している事があった。
全員が全員、黒い沈黙を貶していた。悪口を叩き合い、とても子供に聞かせていい内容ではないジョークで一喜一憂し、また憤怒の炎を滾らせる。黒い沈黙の人外染みた戦闘力が拍車をかけ、化け物と呼んで怒り、恐れ、また怒った。
居た堪れなくなった二人は直ぐに部屋から出ていった。なるべくはやく廊下を移動し、周囲の会話に耳を貸さない様にするもその努力は虚しく、次々と黒い沈黙への罵詈雑言が飛び込んでくる。
人が死ぬような場所で働いている彼らは、自身が死ぬ覚悟はあっても、仲の良い同僚や先輩、後輩が死んだ事実を受け入れられる程の覚悟は持ち合わせていなかった。この想いを吐き出さなければ、怒りでどうにかなりそうだったのだ。
何処か、誰もいないところを探して彷徨っていると、テキサスは視界の端にあまり顔を合わせたくない相手を見つけた。見かける度に絡んでくる、自身に執着する銀色の一匹狼、ラップランドだ。
しかし、何か変だ。いつもなら直ぐに目の前までやって来てべらべらと話し始めるラップランドが、今はこちらに興味すら示していない。その口元は満足気に弧を描き、嬉しそうな瞳を窓の外に向けて、鼻歌を歌っていた。まるで、この状況を楽しんでいる様に。
ラップランドは優越感に浸っていた。今や、ロドス全体で噂される黒い沈黙の悪行を耳に挟む度に、その気持ちは増大していった。
何も知らない愚か者達は、口々に恨み言を吐いている。そんな事をしている暇があるのなら、もっと別の事に時間を回した方が遥かに有意義だろう。それこそ、自身が恨む黒い沈黙を討ち取る為の鍛錬を積めば良い。本当に、口先だけの愚かで、哀れな者達だ。他の努力している者達が目に見えないのだろうか?
ロドスで吐かれた暴言が黒い沈黙に届く事は無いし、仮に届いたとしても、黒い沈黙は傷付くどころか、怒りを露わにする事すらせずに、冷たく受け流すだろう。殺すのなら、殺される事もあるというのに。そんな当たり前の事について不満をぶち撒けて何になるのか。
誰も知らない黒い沈黙。それを───ローランを他と比べれば遥かに知っているラップランドにとって、それは自身が特別な存在である事を実感させてくれた。
と言っても、まだラップランドが幼い頃、自身が実家にいて、返り血を浴びた事も無ければ武器を手に取った事も無い頃だ。
最初は一族の工房を利用する為に訪れたローランが、待ち時間に当たりをぶらついていて、偶然ラップランドと出会した時だ。その体格に合った黒いスーツを身に付け、存在をあやふやにする黒い仮面を着けていた。
初めて見る格好に興味津々だったラップランドは、若干吃りながらも、勇気を振り絞ってローランに話しかけた。意外にもローランはちゃんと反応し、ラップランドの質問にも答えてくれた。
暫くしてから、ローランはまたしても工房に訪れ、そしてラップランドはローランと話した。冷たい雰囲気を放っているが、その言動からは、幼いラップランドを気遣う様子が見て取れた。
ラップランドはそれが嬉しくて、かなり長い間ローランを質問攻めした。ローランという名前はその時に知った。
自身が知らない沢山の知識を教えてくれて、嫌々ながらも遊んでくれて、体の動かし方を伝授してくれて………謝ってくれて、受け止めてくれて、慰めてくれて、正体を明かしてくれて、武器を渡してくれて、その先を指し示してくれた人物。それがローランなのだ。
そんなローランが、何も知らない者達から罵られていると、どうも気に食わないが、それでも、彼らはローランを知らない事の証明になる。自分だけが、彼の一面を知っている。その事実が、堪らなく嬉しかった。
もっと早くロドスに来ていたのなら、ローランに会って戦う事が出来たのかもしれない。だが、再びロドスはローランとぶつかる筈だ。ラップランドはその時を楽しみに待っていた。期待に胸を膨らませ、牙を研ぎながら。
窓の外で降り始めた雨を眺め、鼻歌を歌いながらそんな事を思い返す。ああ、早くローランと会って、話し合って、殺し合ってみたいな、と。
「〜♪……おや?テキサスにエクシアじゃないか。そんな暗い顔してどうしたんだい?」
「お前には関係の無い事だ。今はゆっくりしたい。」
「そっか。もしかして、このロドスを駆け巡ってるあるモノの所為だったりする?黒い、沈黙の話だとか。」
「……ッ!」
そういえば、テキサスやエクシアといったペンギン急便のメンバーは、龍門でローランとの面識があったっけ。流石にあそこで殺り合うのは不味かったから遠目に見ていたけど、あの演技にみーんな騙されてたんだよねぇ。
「フフッ、ローランの心情を理解もせずにいただなんて、ローランにとっては鬱陶しい以外の何者でもなかっただろうね!」
「ラップランド!お前は、ローランを知っているのか!?」
「勿論。ローランの性格も、正体も知ってたよ。これでも、まぁまぁ付き合いが長かったしね。……残念だけど、これはテキサスにも教えられないなぁ。ボクだけの秘密なんだ。」
ラップランドはからからと笑って、テキサスとエクシアの前から去っていった。その呆然とした表情が、またラップランドの気持ちをくすぐった。
・ローラン君
またしてもロドスに爪痕を残していった男。手袋に突っ込む為の武器を集めている時にラッピーと出会った。ラッピーがこうなった理由に深く関わってるらしい。……ロリコンだったのか?(違げぇよ!?)
・ラップランド
みんな大好きラッピー。過去のローラン君を知る人物の一人。ローラン君との関係を秘密と称し、大切に抱えている。やーいテキサスぅ〜!羨ましいだろ〜!ん?どうなのかなぁ?ん〜〜?(満面の笑み)