黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放) 作:イカ墨リゾット
それと、皆さんは危機契約どうでしたか?個人的には、結構簡単な部類だったと思います。お陰でバッジもコンプリート出来ました。エイヤフィヤトラを貸してくれた戦友には頭が上がりません。
初投稿です。初投稿と言ったら初投稿なんです。
あっという間にトランクの中に飲み込まれたペイルとローラン。そこで待ち受けているのは、数々の奇妙な光景だった。
真っ暗闇の中だったり、水色の触手が蠢く薄気味悪い空間だったり、宇宙空間に似た何処かだったりを高速で移動、もとい落下していく。
現在二人は、ペイルがトランクに施したアーツや名状し難いヤバいモノの効果により、次元の狭間を移動していた。初めてコレを利用したローランは暫くの間放心状態にあったりしたが、今ではもう慣れっこである。ローランは年甲斐も無く飛ぶ様に移り変わる景色に目を見張り、ペイルはコートの裾を風にはためかせ、中折れ帽が飛んでいかないように手で押さえている。正に空間移動者に案内される旅行者と言った感じだ。
……完全に余談だが、この間、二人はがっしり手を握り合っていたりする。もしもこの空間で離れ離れになればそれはもう大変な事になるので、当然と言えば当然なのだが、アラサーの青年二人が手を絡めているとなると、なんともアレな光景である。ローランの顔は見る角度によってはそこそこのイケメンだし、ペイルは帽子を目深に被っているので正確には分からないが、それでも覗く口元や顎の形を見るに普通にイケメンだろう。なまじか絵になるのが本当に困る。
一分程経つと二人はさらに加速し、周囲も白い光に覆われていく。完全に真っ白になると、正面にぽつりと浮かぶトランクが現れ、此方に向かって蓋を開けた。二人は減速する事なく、そのまま突っ込んでいく。
次の瞬間にはバカンという音と共に、トランクの蓋が勢い良く開く音が鳴り、二人は空中に投げ出される。ペイルは慣れた様子で開いたトランクをキャッチして着地、ローランもペイルに続いて着地したが、若干足首があらぬ向きに曲がってしまい、暫くの間悶絶する。
少し血の気の引いた表情で、足首を回しながら立ち上がるローラン。それをくすりと笑って見届けたペイルは辺りを見渡す。曇り空の下、人気の無い寂れた裏路地。遠目に見える高層ビル群から、無事に龍門に到着する事が出来たようだ。ペイルはズボンのポケットからメモ帳を取り出し、今回引き受けた依頼の内容を再確認して、同時に取り出したペンで何かを書き込んでいく。ローランは左右の掌を開閉して、手袋の着け心地を確かめていた。ぎゅっぎゅと皮製品特有の音が聞こえる。
「……うん、龍門の第十三区っぽいぞ。近くにスラム街があって、よく近衛局が巡回に来るんだよな。」
数年間龍門で生活してきたローランは、移動都市内の地理を誰よりもよく把握していた。それらを把握していれば、自然とそこに絡んでくる組織についてもよく分かる。かつてのフィクサー稼業では、観光客向けに都市内のガイドもやっていたぐらいだ。この店が美味いだとか、あそこの道は通らない方がいいだとか、未知の土地にやって来た人々に懇切丁寧に龍門の地理を教えていると、観光客もローランに対して色々な情報を教えてくれるのである。ローランのコミュニケーション能力は卓越していた。
「そっか、じゃあさっさと移動しよう。僕達は何処に向かえばいいのかな?」
「ああ、ちょっと待ってろ。今、クラウンスレイヤー……今回の任務で一緒になるヤツだ。ソイツに無線を繋いでるから。」
ローランはベルトに器具で取り付けていた無線機を取り外し、ボタンやらつまみやらを動かしてクラウンスレイヤーに無線を繋いだ。
『ローランか。既に龍門の郊外に着いたのか?』
「ああ。今は都市内の第十三区にいる。何処で落ち合えばいい?」
『……龍門に侵入しているのか?』
「そうだ。コレに関しては、俺の方から協力者を雇ってな。ソイツの能力を使った。青の便利屋って言えば分かるか?まぁ、雇ったって言うよりは利害関係の一致だな。それでも、裏切りとかはまず無いから安心してくれ。今回の作戦に同行させても大丈夫か?」
『青の便利屋、か………実力は確からしいな。今はお前を信用しよう。青の便利屋の同行を許可する。それと、お前達はスラム街の一番外側の部分に来てくれ。そこで私の部隊と合流し、私達の動きについて詳しく説明する。』
「了解……よし、行くか。」
無線機の電源を切ったローランは、目的地に向かって歩き始める。
「へぇ、随分と僕の事を信用してくれるんだね?フィクサーなら、依頼内容によっては簡単に裏切る事も知ってるだろう?」
「お前がどんな依頼を受けて近衛局に向かうかは知らないけど、少なくともこっちに牙を剥く事はねぇだろ。それに、今まで何回お前の移動手段を頼ってきたと思ってるんだ?幾ら俺でも、流石に信用するよ。」
「おー、それはそれは……君も結構、成長したね。」
ペイルもメモ帳とペンをポケットにしまい、小走りでローランを追いかけた。
特色フィクサーと便利屋。最強と準最強のコンビ、此処に結成である。
龍門に存在するスラム街の外れ。近衛局も偶にしか訪れない荒れた場所であり、龍門にとっては邪魔な部分。虐げられた感染者が辿り着く終着点。そこに存在する無数の廃墟の一つに、クラウンスレイヤーは自身の部隊と共に潜伏していた。
今回の作戦の為に編成された部隊は、隠密行動と一対一の戦闘が得意な精鋭達。その証拠に、近衛局に悟られる事なく龍門への侵入に成功している。時折手に持つナイフを突き出しては引き抜き、素早く振り抜いては刃を返して斬り返す。下手をしたらチェルノボーグへの襲撃作戦よりも危険なこの作戦に、クラウンスレイヤーは闘気を滾らせていた。
自身のコンディションにも、装備にも、部隊員にも不足は無い。接敵時の対応を考えていると、側に置いてある無線機から技術偵察兵からの通信が入った。ローランともう一人、恐らく青の便利屋と思われる者の姿を確認したらしい。偵察を交代してすぐさま此処に連れて来るように伝え、無線機を切る。
青の便利屋。裏の界隈では有名なフィクサーで、フィクサーの中でも上から二番目の序列である便利屋の一人として数えられ、その中で最強の呼び声が高い存在である。強敵の各個撃破を得意とし、
フィクサーは一級ならまだ人としての範疇に収まるが、便利屋からは化け物しか存在しないとされている。あの赤い霧が良い例だろう。既に死亡したと言われているが、彼女を知っている者達からすれば何処かで生きてそうと言われるくらいには化け物だ。彼女の最後はカズデルの内戦にて、とあるサルカズ傭兵団の大隊相手に一人で奮戦し、殲滅した後に十人程の一級フィクサーに襲われるも、これを返り討ちに。さらに襲い掛かってきた便利屋三人と相打ち……したらしい。
実は何とか生き延びている、と大半の傭兵やフィクサーは考えているが、実際のところは上記の戦闘を経て死亡している。赤い霧の死体を確認した極小数の者の内、その一人はローランだったりするが、未だにローランはその事が信じられなかった。今頃棺桶を突き破って蘇っているんじゃないかと割と本気で思ってるぐらいである。現実をよく見ているローランがそう思う程、赤い霧は強かった。
クラウンスレイヤーはかつて猛威を振るった、一種の英雄と言っても過言では無い赤い霧に想いを馳せていると、自身に近づいてくる二つの気配を感じ取った。立て続けに、廃材で偽装した入口からノックする音が響く。
部下に扉を開けさせると、まず最初に入ってきたのは、居心地悪そうに早足で入ってきた偵察兵。少し怯えているらしく、クラウンスレイヤーに軽く挨拶をして直ぐに持ち場に戻っていった。
続いて姿を表したのはローランだった。相変わらずの黒いスーツ姿だが、左の袖が一部裂けており、その下から赤く染まった包帯が見え隠れしている。恐らく、少し前のチェルノボーグでのロドスとの衝突で何かしらの理由で居合わせた時に負った傷だと推測した。ローランはクラウンスレイヤーの存在を認識すると、小さく手を挙げておっすと挨拶をしてきた。まるで緊張感を感じさせないフランクな態度が、クラウンスレイヤーは少し羨ましいと感じた。
ローランが横にはけ、黒いコートに中折れ帽を被った男が入ってくる。それを確認した部下が入口を塞いだところを見ると、この男が青の便利屋なのだろう。手に持った機械的なトランク以外に、これと言った装備品は見て取れない。
「僕がローランの紹介でこの作戦に参加する青の便利屋だよ。僕の目的は、近衛局からあるファイル──詳細は言えないけど──を盗み出すこと。よって僕は近衛局に寄る時以外は君達と行動を共にするし、勿論君達の敵は僕の敵にもなる。万が一僕が死んでもそれは自己責任。君達から情報を搾り取るつもりも無ければ、何かにこじつけてお金を要求するつもりも無い……これでいいかな?一応、それなりの実力は持ち合わせてると自負してるよ。」
会うや否や自身が同行する理由とメリット、自身の扱い等を流れる様に喋り出した青の便利屋。余計な事は言わない辺り、実にフィクサーらしいフィクサーと言えるだろう。一見武器らしい物を持ち合わせていなかったり、コートの下にスーツを着ていたりと、ローランとの共通点もそれなりに発見出来た。多分あのトランクの中に収納されているのだろうが、一体何がどれ程詰まっているのか想像すら出来なかった。
なんなら契約書でも書こうか、と提案してくる青の便利屋。流石にそこまで持ち込まれると、後で碌でもない事になりそうだったので遠慮した。
「噂にはよく聞いている。認めるのも何だが、私よりも格段に強いのだろう?一時的とは言えど、頼もしく思っている。今回の作戦、宜しく頼むぞ。」
「こちらこそ、よろしく。さて、それじゃあ早速、この作戦の概要は、そして僕達はどう動けばいいのか教えてくれないかい?」
「よし、お前達もこっちに来い。お前は部屋の外の奴等も呼んでくるんだ。………集まったな?では、再確認の意も込めてもう一度説明するぞ。」
煤けたコンクリートの壁には龍門について詳細に描かれた地図が貼り付けており、現在地には赤いペンで丸が描かれている。クラウンスレイヤーはその側にまで歩いていき、ローランと青の便利屋。そして集合をかけられた部下全員を一通り眺めた。
「私達に課せられた任務は、主に敵部隊の暗殺と撹乱。同時刻に動き始めるメフィストの部隊の援護が目的だ。メフィストとファウストが対処出来ない敵を始末、妨害し、そこをフロストノヴァのスノーデビル小隊が一気に叩く。味方部隊の配置は、メフィストとファウストがここ。フロストノヴァが私達に近いここだ。スノーデビルの連中はそれまで感染者の救助をするらしい。」
そう言いながら、クラウンスレイヤーはウエストポーチから取り出したペンで丸をつけ始めた。
「本来ならスリーマンセルで動きたいところだが、相手が近衛局、そしてロドスも介入してくる事を考え、部隊全員で動く事になった。決して無理はしなくていい。敵の数を減らす事よりも士気を削ぐ事に念頭を置け。もし危険だと感じたら、私がアーツで濃霧を発生させ、それに乗じて撤退する。」
そこまで言い終えたクラウンスレイヤーが、ふと、何かに気付いたようにローランと青の便利屋に首を向けた。
「私の部隊は、全員が私が発生させた霧の中で動けるよう訓練しているが、お前達はどうする?」
あらゆる状況を想定して、クラウンスレイヤーは自身の部隊共々過酷な訓練をしていたが、ローラン達が霧の中で動けるという保証が何処にも無いと言う事を失念していた。
「あー、大丈夫だと思うぞ。俺は劣悪な環境で動くのには慣れてるし、視界不良なんて今更だ。」
「僕もローランに同じく。多少アレだけど、移動も戦闘も特には問題無いかな。」
彼等のハイスペックさを痛感させられるだけに終わった。心配した自分が恥ずかしい、愚かだ。クラウンスレイヤーは視界一杯に灰色の天井を映した。
「……今回は幹部のローランと便利屋が一人付いている。この二人を頼る事が多くなると思うが、油断はするなよ。私達は主にこのルートを巡回するようにして動く。状況に応じて適当に動きを変えるから、ちゃんと着いてくるように。ここも巡回ルートまでの道筋は、こうだ。」
気を取り直したクラウンスレイヤーは、何事も無かったかのように地図に線を描き込み始めた。部下のクラウンスレイヤーに対する親近感が上がった気がした。
「ん……何か質問がある奴はいるか?何も無いのなら、最後の準備に取り掛かれ。十分後にこの廃墟を出るぞ。」
その言葉と共に、隊員達は各々の準備を始める。予めほぼ全ての準備は終わらせているが、もしもの事が無きにしも非ずな為、誰もが念入りに装備をチェックしていく。一方、ローランと青の便利屋──ペイルは、ペイルがトランクから取り出したステンレスボトルで呑気にコーヒーを飲んでいた。
「おーい、お前も飲まないか?集中力が上がるらしいぞ。まぁ、気休め程度だけどな。」
いつの間にか取り出したカップにペイルがコーヒーを注ぎ、それをローランがクラウンスレイヤーの元に持っていく。
これといって断る理由も無かったので、クラウンスレイヤーは素直に受け取る事にした。渡されたカップは温かく、フィンガーレスグローブ越しに温度がじんわりと伝わってくる。口に含めばコーヒー特有の香りが鼻を突き抜け、口内に苦味が広がる。舌を動かして液体を味わい、飲み込んでまた一口。そしてほうと一息。
「……にが。」
「そりゃブラックだからな。」
「結構良い豆使ってるんだよ?」
隊員達は突如和み始めた空気に動揺を隠せなかった。
作者が把握している全て
ここがスゴイ!Lorローラン君の実績!
・アンジェリカとの共闘で都市の星『血染めの夜』を討伐
・妻を亡き者しにた最初のねじれ『ピアニスト』を初見ソロ鎮圧
・黒キチモードに移行。五本指の内一本の『中指』に単独で襲撃し半壊にまで追い込む
・図書館にて『青い残響』アルガリアとタイマン、そして勝利する。ねじれたアルガリアにもトドメを刺した
・『足爪』のバラルに遠回しに「万全のお前だったら俺殺されるかもしれねぇ」と言われる
改めて見るとマジでイカれた強さしてんなコイツ(驚愕)まぁ、シャルルマーニュの方でもトップクラスに強かったし、納得は出来ますね。