黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放) 作:イカ墨リゾット
原作ローラン君の実年齢を推測するとどう足掻いても最低で四十代後半になったので初投稿です。そこに特異点とかが入り込んでくるとコレもうわかんねぇな?
そして、今こうして小説を投稿出来るのは月島さんのお陰だったんだよ!(サボりの原因)
「……クラウンスレイヤー、これでもう三部隊目だ。そろそろ俺達を排除する為の部隊が来てもおかしくない。」
「そうだな。では、頃合いを見て撤退するとしよう。場は十分に掻き乱せた。」
無線機で部下に集合をかけるクラウンスレイヤーを尻目に、ローランはスーツの袖口に付着した血液を拭う。まだ乾き切っていなかったからか、血液はさらに染み込んで血痕になり、手袋で擦った跡に沿って広がっていく。
この血痕はローランのモノではない。先程始末した若い近衛局の兵士のモノだ。目の前で他の部隊員達があっという間に殺害され、それを黙って見る事しか出来なかった臆病者。
長剣から血を滴らせながら歩み寄るローランを見て、ただ顔から体液を垂れ流すのに精一杯な意気地無し。それをほんの少し哀れに思ったローランは、目を合わせる様に前屈みになり、一気にその男の胸を貫いた。
目を大きく見開いて、口から真っ赤な泡と呻き声を上げ、ローランの剣を持つ方の手に縋り付く様に腕を伸ばす男。そこから伝わる力は押し戻したいのか、はたまた押し込みたいのか判別不可能な程弱かった。
男からはっきりと見て取れる絶望の感情。それを目に焼き付けたローランは、ゆっくりと突き刺していた剣を引き抜く。どぷりと溢れた血液が僅かに糸を引き、それが切れると同時に崩れ落ちる男。今までに幾度となく繰り返してきた生命を刈り取る行為。
スーツの袖口の血液はその時に付着したらしい。徐々に黒ずむそれは、ローランの暴力性や残虐性を象徴している様にも見えた。
何処からともなく吹いてきた風に靡く前髪を弄り、今までの自分を顧みる。最初から何も無かったローランが今まで生きてきて、作り上げてきた己自身。それはどうしようもない人でなしだった。
目を閉じれば先程の光景が鮮明に浮かび上がる。どうやらあの光景はローランの脳裏に焼き付き、精神を蝕み続ける過去の記憶の仲間入りを果たしたようだ。一度こびりつけば、二度と離れる事は無い。そんな呪いにも似た記憶が今日も脳に蓄えられる。
自分はこうする事でしか生き残れなかったのだろうか。もっといい道は他になかったのだろうか。これからもこの道を、死ぬまで辿っていくしかないのだろうか。そんな考えは肩に置かれた手によって打ち切られる。
顔を向ければ、どうしたと言わんばかりの顔をしたクラウンスレイヤーが佇んでいた。呼び掛けの声も聞こえないぐらいに考え事に没頭していたらしい。何でもないと謝罪の言葉と一緒に返答し、気付かない内に集合していたクラウンスレイヤーの部下に、お疲れ様だなと声を掛ける。
フィクサーになって初めて引き受けた
……人を殺せば殺すだけ、背負い込むモノが増えていく。もうとっくに理解してただろう?結局、俺にとっての最善は───
今度の思考は誰かの手ではなく、ウエストポーチに付けておいた無線機から聞こえるノイズ音で打ち切られた。恐らくペイルが通信を入れてきたのだろう。一瞬びくりと肩が跳ねたのを誰にも見られていない事を確認しつつ、無線機を手に取る。
『あー、あー………これで聞こえるかな?ローラン。』
「ばっちり聞こえるぜ。で、どうした?お前の依頼は達成出来たのか?」
『うん。勿論そっちの方はッと、完璧さ。ただちょっと、厄介な相手に出会してね。』
ペイルの声に紛れ込む音や断末魔から察するに、どうやら戦闘中に通信を入れてきたらしい。心の中でホントよくやるよなコイツ、と思いつつ、話しの続きを促す。
『サーバールームから情報を入手したのは良かったんだけど、いざ脱出ってところで近衛局にビルを囲まれちゃってね。うおっ、テレポートするにもさっき使ったばかりだったし、え、ちょっ……』
暫くの間音声が乱れるが、後ろで聞いているらしいクラウンスレイヤーが心配になってきたタイミングで回復する。
『……ふぅ、それで最上階に上がって、メフィストっていう子にローランの仲間だよ〜って協力を求めたんだ。で、今戦闘中な訳だけど……そこから龍門アップタウンの近衛局ビルは見えるかい?』
ペイルの言葉に釣られ、この場にいる全員が集合場所にしたマンションの非常階段を駆け上がり、屋上に出る。
至る所から火の手が上がり、黒煙が濛濛と空に登っていく様は、無数の黒い柱を彷彿とさせた。それらの奥に見えるビルの上空に、見慣れないヘリの様な機体がホバリングしていた。誰かが何だあれ、と言葉を漏らしている中、ローランだけはそのずば抜けた視力で機体にペイントされたマークを視認していた。
「……ロドスが介入してくるとは思ってたけど、たった今、それも上空から来たのか?」
『その通り。はぁ、落下して来たかと思ったら、いきなり展望デッキの半分を破壊してさぁ……製薬会社が何でこんな戦力抱え込んでるんだろうね?それとも、最近の企業ではこれが常識だったりするのかい?』
「いや、それはないだろ。……俺も加勢した方がいいのか?」
『ん〜……ま、大丈夫だよ。あぁ、本当に言いたい事はコレじゃないんだ。君以外のお仲間さん達がその場にいるのなら、音量を上げてよく聞いて欲しい。』
『結論から言うと、この作戦は失敗だ。各地に展開していた小隊がどんどん音信不通になっていってる。龍門の警察と近衛局だけじゃあこんな事にはならない筈なんだけどね。』
その言葉と共に、一部のクラウンスレイヤーの部下達に動揺が走る。しかしそれも直ぐに落ち着いて、各々で事態の確認を行った。
「……隊長、俺達以外の巡回部隊が軒並みやられてる。最後の通信から十分も経ってないのに、だ。」
「外周に待機していた支援部隊もだ!拠点も半分以上が潰されてるぞ!?」
「慌てるな、落ち着け。暫くすれば、龍門にレユニオンの二十個小隊と二個本隊が到着する筈だ。予定通りなら私達は既に撤退しているが、近衛局を圧倒するには十分……それに、フロストノヴァもいる。」
「……らしいぞ?ペイル。正直、俺は嫌な予感がしてしょうがないんだけどな。あまり長居すると取り返しのつかない事になりそうだ。」
『同感だね。君達はッ、直ぐにでも撤退した方がいい。……あ、最後に一つ。僕達も知らない謎の部隊が裏で飛び回ってる。レユニオンが追い込まれてる原因だと思うけど、ローランは心当たりあるかい?』
「そればっかりは実際に確かめないと何とも言えないな。ペンギン急便でもなければシシリアンでもないし……まぁ、可能性があるとしたら鼠王ってところか?」
『分かった。ありがとう。じゃあ、お互いに頑張ろうか。切るよ?』
その言葉を最後に通信が終了する。クラウンスレイヤーは全く感じていなかった不安が一気に押し寄せてくる様な気がして、一刻も早く正確な戦況を確認したかった。それでも隊長の立場の責任を感じて己を奮い立たせ、士気が低下し始めている部下を元気付ける。
それでも、彼女が投げ掛けた激励は、反射で長剣を鞘から引き抜いたローランと、それと同時に屋上から階段に繋がる扉から出現した黒装束の集団に遮られた。
「……さて、と。待たせちゃったかな?」
つい話しが長引いてしまったとでも言いたげに微笑み、耳に当てていた無線機をトランクに収納するペイル。
「……ッ!」
その隙を狙ったかのように放たれた神速の斬撃。普段なら彼女が隙と判断し、そして攻撃したのなら致命傷は免れなかった。それも赤霄による一撃ともなれば、確実にあの世へと葬り去るだろう。
「もしかして怒ってる?まぁ、確かに僕も悪かったね。敵との戦いの最中に通信だなんて、無視されてると取られてもしょうがないし。」
ちょっと腕が痺れちゃったよ、と戯けたように肩を竦め、防御に使用したトランクの表面を撫でる。その手には先程まで握っていた無線機の代わりに近未来的な装飾が施された大振りのナイフが握られ、ぶらぶらとその剣身を揺らしている。
「にしても、凄い業物?だねその剣。斬撃を直接飛ばす剣だなんて、僕達フィクサーでもそうそう持ってないよ。オークションにでも出せば高く売れそうだ。」
相手を舐めているとも取れるその態度。しかし、目深に被った中折れ帽から覗く瞳は、あの斬撃を放った相手の動作を一つも見落していなかったかのように鋭かった。
(……クソ。便利屋ともなると、ここまで強いものなのか?)
全力の一撃が軽々と防がれた事実に顔を僅かに歪め、次の行動を考える。その手には、予想外な事にあっさりと抜刀できた赤霄があった。
龍門のトップであるウェイ・イェンウーから渡されたソレを、チェンはまともに扱えた事は殆ど無かった。数少ない使いこなせた経験は、余程の危機に直面した時のみであった。
そんなチェンにとって不安定な切り札に等しいこの剣は、展望デッキで待ち構えていたこの男の前であっさりとチェンに身を委ねた。そして目の前に立つ男を見て、漸く男が青の便利屋であると認識した。
チェンは己の心臓がかつて無い程に早鐘を打っているのを感じた。赤霄が脅威と認める程の力量を保持したフィクサー。それがどれ程強大な存在なのかは、想像するに難しくない。相手がフィクサーの中でもビッグネームともなれば尚更だ。
邂逅から、ほんの十秒ばかりの接近戦で脳が警鐘を鳴らし始める。
攻撃は全てトランクで防がれ、ナイフで流され、体術で躱された。逆に攻撃される側になると、此方が勝っている筈の武器のリーチの差が一瞬で無くなる。負けてたまるかと反撃に出ようにも、本能が擦り傷さえ命取りになると訴えて止まない。この間にもメフィストが操る駒と化した兵士が味方を消耗させ、デッキから最上階へと続く階段に押し戻されつつある。ロボットの様にビルの周辺を徘徊していたレユニオンの兵士も展望デッキを目指して集結しつつあり、戦況は極めて劣勢だった。
そんな中、青の便利屋はあろうことか戦闘中であるにも関わらず、トランクから無線機を取り出して喋り始めたのだ。ペイルにとっては、たった今メフィストが漏らしたレユニオン側の損害について伝えておかなければと行動に移しただけなのだが、結果的にその行為がチェンに対する挑発としてのクリティカルヒットとなった。
怒涛の連撃を繰り出すも、その悉くを回避される。途中、急なロドスの増援によりデッキが半壊し、その張本人であるロドスのエリートオペレーター、ブレイズが青の便利屋との戦闘に参加するも、彼が無線機を手放す事は、彼が通信を終えるまで終ぞ無かった。
「それじゃあ、改めて戦おうか?途中で野蛮な子も降って来たけど、僕の役割は君達を此処で食い止める事だ。二人で攻めてもらって構わない。」
「そっ。じゃ、精々後悔しない様に動くことねッ!!」
地を這う様に接近したブレイズのチェーンソーが唸りを上げ、床材の破片と共にペイルを襲う。ペイルはコレをトランクで難なく受け止め、盾で身を堅める騎士の様に堅実に対応していく。チェンがタイミングを見計らって挟み撃ちにしようとするも、すかさずメフィストが兵士を操りルートを封鎖する。解放された赤霄で薙ぎ払うが、いかんせん数が多い上に倒しても倒しても立ち上がってくる。
ならば確実に始末しようとチェンが意識を集中させている時、ペイルとインファイトを繰り広げるブレイズにも変化があった。
突如相手の手元に出現した拳銃を見てからの行動は迅速だった。ブレードの腹を盾にしながらただでさえ開いていない距離をさらに詰め、狙いを付けさせまいとタックルをかます。その行動に若干の驚きを見せたペイルは直ぐ様拳銃からナイフに持ち替え牽制しようとするも、咄嗟に構えたトランク越しに、二段回の強い衝撃に襲われる。当たった直後にさらに押し込まれたらしい。
チェンが放った赤霄の斬撃よりも弱く、そして中身の詰まった衝撃に体勢が崩れ掛け、狙いを定めて振るったナイフはブレイズの二の腕を浅く斬りつけるに終わった。
「線が細いって思ってたけど、その分じゃ全然鍛えてないのかな?」
「いやぁ、僕もよく言われたり言われなかったりするよ。でもね、今のは狙いをつけさせないという意味では最善かもしれないけど、僕のアーツの前には悪手だよ?」
その意味を理解する前に、ブレイズは体内からエネルギー……何となく生命力と呼ばれそうなソレがごっそりと抜け落ちるのを感じた。額からじわりと冷や汗が滲み始め、身体の末端が冷えていく。
「うっ、な、何コレぇ?温度を奪うアーツ、だったのかな?」
「残念だけどハズレだ。因みにソレは毒でもないし、僕はこのアーツについて説明するつもりもない。」
(毒じゃない?じゃあ、コレは何だって言うの?何かが奪われたっていうのは分かるんだけど……うぅ、一気にくるなぁ。)
形勢があっという間に押し込まれ、絶対絶命の崖っぷちに立たされるブレイズ。後方から医療オペレーターがアーツで回復を掛けてくれたが、身体の不調が治る気配は皆無。温度を奪うアーツがハズレだと言ったのも実はブラフで、試しに周囲に血を撒いて温度を上げるも、効果なし。
油断してたつもりは無いんだけどなぁ、と心の中で喝を入れるも末端の冷えがどうしても気になり、更にそれすらもペイルがトランクから出したモノに目が釘付けになり、それ以外の思考が塗り潰されそうになる。
「今、僕の周りにいる彼等に正気といったものはないらしいんだよね。メフィストも、その周囲にいる正気の人達にもコレについては言ってある。だからこそ、君が初っ端から大技を披露した様に、僕もコレを振り回す事が出来るってものさ。」
「……何なの、ソレ。何でそんなモノ持ってるの!?」
トランクの蓋の隙間から這いずり出した幾つもの水色の触手。それらはペイルを取り囲む様に伸びていき、次第にその範囲を広げていく。思わず当たりを見渡せば、チェンは赤霄を構えている手が僅かに震えており、後方で戦っているオペレーター達も必死にこの触手を見ないように立ち回っている。心なしか、ペイルの周辺にいる兵士達も怯えている様に見えた。
「こういう狂気を振り撒く異形と対峙する経験はお有りかな?じゃあ、今日が君達の記念すべき真の狂気に触れる日であり、もしかしたら命日にもなってしまうかもしれない奇妙な日だ。」
「足掻け。飲み込まれて、自分自身を見失わないようにさ。」
蛍光色でありながら何処か濁っている様にも見えるその触手と同じ様に、ペイルの水色の瞳も濁っていた。
・PALEダメージ
ロボトミーにて登場する四つのダメージ属性の内一つ。対象に体力の割合ダメージを与える。アークナイツで例えると、オリジムシを倒すのに十回殴らなければいけないが、パトリオットを倒すのに十回だけ殴ればいいというある意味ブッ壊れな属性。ペイルのアーツの正体はコレ。