黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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プロムンの新作、Limbus Company のPVきましたね!ダンジョンRPGって聞いてるからダーケストダンジョンみたいで絶対面白いに決まってるよなぁ?








一ヶ月以上サボってました。すみませんすみません………ん?



????「約束の!大切さを!叩き込む必要が!あったからなァ!」

作者「うはぁぇええん!!!」




やり直したいコトってあるよな?

自身を完璧に殺す為の布陣を整えた黒装束の集団を冷めた目で見渡し、ローランは無表情を貼り付ける。それでも、心の中では罪の意識を遠ざける為に必死になっていた。

 

大丈夫だ。今なら、仲間を逃す為だっていう、立派な大義名分があるんだから。だから、俺が正しくて、アイツらが間違ってる。それに、アイツらは明らかに殺しに手慣れてたんだ。俺と同類なんだ。だから、殺しても殺されても、誰も何も言わないんだ。

 

何度もこの世の残酷さを叩きつけられ、それでも空虚に成り切れなかった己の心は脆弱なのか、将又強靭なのか。それが分からない故にこうして逃避を続け、現実から極力目を逸らそうとしてきた。

 

勿論、限界が訪れた。それも何回も。その度に正気を取り戻す為に善行を積んでみたり、いっそ狂い切った方がマシかもしれないと狂人の真似事をしたりもした。それでも結局はそれは偽善だ、これは辛いだけだと何とか正気を取り戻し、また同じ道を歩み始める。後戻りも、道を外れる事も許される訳がないと進み続ける。

 

様々な理由で振るってきた暴力は、かつてはただ生き抜く為に闇雲に鍛え上げ、年が経つにつれて殺す為に磨き上げられるようになったモノだ。これを利用する事に苦悩した覚えはあれど、どうして憎むなど出来ようか?

 

一人ずつ来るのなら一人ずつ叩き潰す。全員でくるのならそれを逆手に取って立ち回る。武器を振るう事に戸惑いなんて必要ない。

 

今の俺は、正しいんだ。少なくとも、間違っては無い筈だ。

 

三方向から急接近する黒装束の集団と、それと呼応するように流れる銀の一閃が静寂を切り裂いた。

 

一対多においては、攻撃の第一波を乗り越える事が大事だ。後は付かず離れずの距離を保って戦えば、同士討ちを恐れる敵なら一安心、恐れないならばそのまま殺していけば良い。黒装束の集団は前者のようだった。それでも一瞬の隙を突くように飛んでくる数多の斬撃からは、長年の修錬が見て取れる。

一定の距離を取られれば、今度は数人が固まって襲いかかってくる。一人を殺してその死体を有効活用する事がベストだが、それが出来る程敵は甘く無いらしい。タイミングを見極めて丁寧に相手をしていくしか無さそうだ。

 

戦斧とメイスを取り出して急所への攻撃を防ぎ切る。両手に武器を持つ、所謂二刀流と呼ばれるスタイルは攻撃よりも防御に寄ったモノであり、利き手では無い方に持った武器は、主に防御かもう片方の武器の補助に使う事が多い。左右で同じ、又は違う武器を持ち、尚且つその状態で別々に動かしたりするのは至難の技であり、卓越した技量や筋力、体幹等が求められる。これで一方的に攻撃を繰り出せる者は極めて少数だ。

 

ローランはその少数に数えられる人間だった。二つの武器がまるで意思を持ったかのように澱みなく動き、全く別の動きを体全体を使う事によって難無く繰り出していく。威力の乗った鋭い一撃も危なげなく受け止め、ここぞという時にだけ、片方がもう片方に追従するように動く。

 

黒装束の一人が迫ってきた戦斧を短刀で防げば、戦斧の峰をメイスで強打して短刀ごと使い手を叩き斬る。顔面の中央から顎まで深く切り裂かれ、その過程で傷付いた中枢神経が機能を停止した。

手答えを感じたローランは、直様別の敵に武器を振るう事は厳しいと判断し、崩れ落ちるようにして頸動脈を噛み切るように放たれた左右からの斬撃を避け、斜め右後ろに向かって戦斧を振り抜く。

 

短刀を持つ腕を狙われた黒装束は半身になってこれを回避。ローランの体勢が整わない内に仕留めようと刺突を繰り出そうとするも、不安定な姿勢から放たれた蹴りが太腿に命中して体幹を崩し、遅れて振われたメイスの頭部直撃により、仮面に覆われた狭い空間内に二つの目玉が飛び出す。そのまま先程蹴りを放った足を軸に回転し、残った一人が突き出した短刀を持った腕を半ばから斬り飛ばした。

 

腕を落とされた黒装束は即座に跳躍して大きく距離を取り、入れ替わる様にして新たな四人の黒装束達が襲い掛かる。一人は直刀を握っているようだ。敵の人数と装備している武器、それぞれの配置を冷静に確認し、この状況に於いて最適解となる武器を取り出す。ローランはコレを繰り返すだけで殆どの戦闘を制してきた。

 

リーチの短い武器相手に態々同じリーチで挑む必要は無い。長剣で適当に遇らいながら、僅かに晒した隙にランスを突き刺す。引き抜く時に飛び散る鮮血が煩わしい。

 

振われた刀身を必ず刀身で受け止めなければならないというルールは存在しない。即座に手甲を手袋に重ねる様に取り出して、指先から伸びる左右五本の刃で挟み込む様にして封じる。後は相手が直刀を手放す前に引っ掻けば完璧だ。

 

取られた防御に見合う攻撃をするなんて思考はありえない。機械仕掛けの大剣を振り下ろし、そして薙ぎ払えば上半身が宙を舞う。辺りにビチャビチャと瑞々しい臓器が落ちる。

 

距離を取られたからといって無理に詰める事はない。拳銃を取り出し、すっかり軽くなった引き金を数回引けばそれで良い。衝撃を受けびくりとした黒装束は倒れ込んだ。

 

今度は十人近い人数の黒装束達が襲い掛かってきた。スーツに着いた肉片を払う暇すら与えてくれないらしい。それにそこまで広く無い場所で、しかもそこそこ密集した状態で戦うのだ。クリーニングが大変な事になるかもな、と無意味に考える。

 

長剣で斬り払う。

ナイフで突き刺す。

メイスと戦斧で舞う。

鉤爪で撫でる。

双剣で駆け抜ける。

ハンマーで叩き潰す。

拳銃の撃鉄を下ろす。

ショットガンで吹き飛ばす。

太刀で一閃する。

ランスで圧倒する。

大剣で真っ二つにする。

 

大体の場合はコレらの中から選んで動く。偶にちょっと違う動きをする。相手に合わせた動きをしてみる。緩急をつけてみる。攻撃を誘ってみる。防御に徹してみる。そして相手の隙が見えたら、斬って、殴って、叩いて、貫いて、引き裂いて、蹴って刺して撃って回って振り下ろしてへし折って飛んで跳ねて地を這って。

 

いつの間にか、ローランは血溜まりの中で、生き残った一人の首根っこを掴みながら、その眼前に長剣の切先を突き付けていた。あれだけいた黒装束は地に伏せ、残りは既に撤退していた。熱を取り戻す思考と、何かがのし掛かるのを感じながら、目の前の黒装束に問いただす。

 

「お前達は誰の下で動いている?もしお前がこの質問に嘘偽り無く答えれば、命の保証は必ずする。」

 

「………。」

 

手を少しだけ前に出せば、長剣の先端が眼球に接触した。ほんの少しの抵抗を無視して更に前に出せば、苦痛を押し殺した呻き声と水音、荒い息遣い。

 

「………殺せば良い。お前は強かった、それだけだ。言う事は、何もない。」

 

引き抜いた長剣をもう一度突き出す。首を掴んでいた手から力を抜けば、どさりという音。

 

 

 

 

 

 

これだけ殺せば、もうあの黒装束達が追ってくる事は無いだろう。何人かがクラウンスレイヤーの方に先行しているかもしれないが、連絡を受け取って追跡を中止する筈だ。今からそこにローランが向かうのだから。

柄まで垂れてきた血液を振り落とし、鞘に納めてから手袋に仕舞う。全力で行けば間に合うだろうか。幸い残香やら何やらで追跡は可能だが、少し面倒くさい。

 

少し前まで向かっていた方向に体を向け、走り出す───そうしようとしたが、背後から聞こえる物音に気付いて大きく溜め息を吐き、少しの間辺りに視線を彷徨わせてから跳躍する。

 

物音は大きくなると共に数を増やしていき、暫くすると緑の長髪を靡かせながら一人の女のオニが姿を現し、それに続いて近衛局の隊服を纏った兵士達がガチャガチャと装備を擦り合わせながら現れる。

建物の影に隠れながら盗み見をする。

 

三角形の大盾を携えたオニには見覚えがあった。確か、時々近衛局の隊長であるチェンと一緒にパトロールをしていた筈だ。まだ龍門を追い出される前の事で、店で食事を取っている時にガラス越しに一度だけ見た程度だが、その長身と額から伸びた一本の角は強く印象に残っている。

 

奇襲ならば兎も角、一度正確に捉えられれば面倒な事になるのは間違いないだろう。それに、これ以上長居するのはデメリットにしかならない。ローランは素直にクラウンスレイヤーと合流する事にした。

 

もし黒装束達が襲撃を仕掛けて来る前にかち合ってたらどうなってたんだろうな。そもそも、此処に来てるって事はバレてたって訳だし、いや、あくまで目的は撹乱だったから、良かったのか?

たらればは無意味で、反省は今じゃないと区切りをつけ、足音を立てないようにゆっくりと走り始める………が。

 

風に乗って、随分と懐かしい香りが漂って来るのを、ローランの嗅覚が認識した。最後に嗅いだのは何時だったろうか。そう、何年も前。そしてこの香りは、あの子の───

 

「───いづっ!?」

 

右頬が何の前触れも無く熱を帯び始め、思わず声が漏れてしまう。それと同時に、ローランの鼓膜は何かの物体が風を切る音を拾った。

反応が遅れながらも背後へ回避行動を取れば、今度は目の前の地面に、二つの何かしらのアーツを纏った円形が着弾する。直ぐ近くに存在する近衛局の一部隊にも構わず、姿を見せながらも大幅に距離を取り、新たな襲撃者へと視線を向けた。ズキズキと偏頭痛がする。思考が乱れる。ローランは、今の攻撃を知っている。それは即ち、その襲撃者を知っている事に他ならない。

 

「あぁ、やっと逢えたね、ローラン。この瞬間をどれだけ切望したのか、置いて行ったキミにも少しは理解してほしいよ。」

 

曇り空を背に立つのは一人の少女。たったそれだけだと言うのに、直視する事を躊躇いながらもローランは見上げる。

 

「キミに少しでも追いつく為にさ、一杯頑張ったんだよ。キミは攻撃してきたボクを殺すのかな?それとも、あの時みたいに頭を撫でてくれるのかい?」

 

乱れ具合から手入れが行き届いていないと分かる銀髪はそれでも綺麗で、浮かべられた狂った様な笑みと良く似合っている。細められた目からは並々ならぬごった混ぜの感情が放たれ、両手に持った奇妙な部品が付いた剣にもその感情が宿っているかの様だ。

 

「あの後、膨大な時間を掛けて考えたんだ。でもね、考えれば考える程、全てを奪ったキミが憎くて、新しいボクを見せてくれたキミが愛おしくて………最っっっ高だね!!」

 

己の罪の象徴でもあり、成し遂げ切れなかった贖罪の象徴でもあるその少女は、ローランがどうしても自身を責めずにはいられない呪いであった。それすらも、少女にとっては堪らなく嬉しいというのに。

 

「……何で、此処に来てるんだよ。⬛︎⬛︎──」

 

「おっと、今はラップランドって呼んで欲しいなぁ。それはどうでもいい奴に覚えて欲しく無いんだよ。ボクと二人きりの時以外で呼ばないで。」

 

語尾を強めて拗ねた様な表情を取るその様は、まさに年頃の少女に相応しい。その身から漂う溢れんばかりの血の匂いを除けば。

 

──全部、俺の所為だ。





元ヤン「……へ。一週間以内に次話を投稿する。内容は四千文字以上でストーリーを進ませる」

作者「ファッ!?」

・黒装束のみなさん
本編でスノーデビル隊員に撃退されているシーンがあったので隊長格以外はそこまで強く無いと判断。ローラン君に無双される。彼らは星になったのだ………星になって会おう!(蒼星並感)

・ラッピー
愛と憎しみは表裏一体。故に愛憎。はっきりわかんだね。

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