黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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思い通りの描写が書けず筆を長い間置いてました。催促まで貰っちゃってホント申し訳ないです。
描写がめちゃくちゃだったり、キャラ崩壊が酷いかもしれませんので、その辺りはズバズバ言ってくれると助かります。

クラスターが発生したので平日の真昼間から初投稿です。イベントガチャの結果?我々の勝利だ(水着チェン入手)


死にかけメンタル

「ぐ、ひゅっ……う、はぁ、はぁ。」

 

ボロボロと崩壊を始めようとする精神に喝を入れ、何とか原型を留めさせようとするも、その原因は油の様にローランの奥深くに染み付いていた。徐々に侵食されていく感覚に思わず吐き気がして、震えそうな手で口元を押さえて堪えようとする。それでも口の中いっぱいに胃液の酸っぱい味が広がったが、えづきながらも飲み込んで、地面に向かってぶち撒ける事だけは防いだ。

 

過去の思い出したくもない、それでも忘れてはいけない記憶を無理矢理引っ張り出され、それを映画のフィルムの様に特定のシーンだけを一つずつ見せられるのは酷く苦痛だった。袖で口の端を拭いながら、何かしらの配管の束の上に立つラップランド、突然の展開にいまいちついていけない様子の近衛局の順で睨み付ける。

今にでも逃げ出したかったが、ループスの、彼女の嗅覚を甘く見れば痛い目に合うのは確かだった。現に嘔吐しそうになったローランを追跡するなど、ラップランドにとっては朝飯前だろう。人はキツい匂いや悪臭の方が発生源を辿りやすい。

 

「……何でここにいるんだよ。」

 

「今のボクがロドスにいるからだよ。近衛局とロドスがある程度繋がってるのは知ってるよね?そんな関係にある二つの片方がレユニオンに襲撃されれば、もう片方は一応助けなきゃいけない。それでボクは龍門にやってきて……ここに来たのは、まぁ、勘かな。」

 

深呼吸をして小刻みに震える筋肉を静止させ、自身が取るべき最適解を考える。気が付けば頬を冷や汗が伝っていたが、それっきりで意識の外に放り出した。

 

「待って下さい。確か、ラップランドと言いましたね。貴方がロドスに所属しているというのなら、少なくとも何かしらの隊を組んでいると思うのですが。それとも、単独行動の許可が出ているのですか?」

 

「うるさいなぁ……キミ達は引っ込んでなよ?ボクが思うに、キミ以外は全員足手纏いだよ。肉壁にすらならないね。」

 

隊を率いていたホシグマが疑問を呈した事に対し、ローランと対面してからずっと続けていたニタニタとした笑みを引っ込め、冷酷さを滲ませた無表情になるラップランド。心底つまらなそうな目で近衛局の面々を流し見るが、それにも飽きたのか、口を三日月の様に歪めて再びローランへと向き直った。

 

「さて、夢にまでみた殺し合いも、これじゃあ邪魔が入りそうだね。それじゃあ、久しぶりに鬼ごっこでもしようよ!勿論、ボクが鬼だ……ハハハッ!!」

 

その瞬間、ローランは迷い無く逃走を選択する。ラップランドの戦い方を間近で見てきたローランは彼女のアーツを誰よりも理解しており、故に一度喰らえば暫くはまともに武器を構える事すら出来ないと知っていた。それに、彼女にはローラン自身の殺人術の一部───主に二刀流に関する技術だが、それを彼女が復讐に燃えていた時期に教えていた事がある。

 

二刀流は防御寄りのスタイルな為、多少扱いが難しくとも、それでも彼女の身を案じるが為に教えていた……筈だったのだが、ラップランドは常に堅実に立ち回る防御重視の二刀流よりも、ローランが普段使用する攻撃に特化した二刀流に強い興味を示していた。

 

戦闘に関しては天賦の才能を有していたラップランドは、ローランから貪欲に技術を盗み続け、実戦で無駄を削ぎ落としていき、遂には彼女だけの二刀流を完成させた。その完成度は凄まじく、実際のところローランも二刀流で戦ったらかなり接戦になるのでは、と密かに考えていた。

 

そんなラップランドと現在の状態で正面からやり合えばどうなるかは、火を見るよりも明らかだった。だからこそ、今は少しでもこの精神を蝕むアーツの効力が弱まるのを期待して時間を稼ぐしかない。ラップランドと殺し合いたく無いという気持ちも強かった。純粋無垢な彼女を悲劇へと突き落とした己が、その両手を更に血で染めてしまえば、もう二度と正気を保てないのでは。そんな気がしてやまなかった。

 

壁を蹴り上がり、不安定な狭い足場を疾走し、段差を飛び越え、ほんの一秒さえも惜しいと最適化された移動法で逃避する。かつて龍門に住んでいた身として殆どの地形は把握していたので、次は何処に行けばいいのかと迷う事は無かった。

 

「ここまで興奮するのはキミが初めてだよ!ローラン!!一切のミスが許されない、そんな追跡は!!」

 

ラップランドの上気した声が耳元で聞こえた様な気がして、思わず背後を確認するローラン。

真後ろにピッタリとくっ付いてきていた訳では無いが、それでもローランが踏んだ場所とほぼ同じ場所を足で踏むラップランド。時折配管や建物の影で見え隠れする引き裂いた様な笑みが、よりローランの精神破壊を進行させた。幾ら逃げても、そこが夜であるなら何処までも追ってくる月の様な、そんな恐怖。

 

少しでも気を紛らわせようと追ってくる存在に対してローランは拳銃の引き金を数回引くが、碌に狙いも定められていない弾丸はあらぬ方向に飛んでいったように見えた。

 

(フフッ、ボクのアーツが確実にローランを蝕んでる。その証拠に、今のだって牽制にすらならない程ッ、!?)

 

ラップランドの耳は弾丸が何処かに着弾するのと同時に、頭上から何かが落下してくる音を拾った。大雑把な感覚を頼りに飛び跳ねれば、本来ラップランドが通ろうとしていた場所を目掛けて室外機が二つ落ちてきていた。体を掠める程正確に落とされたそれらは、大きな音を立てながら地面と激突した。幸いにも喰らう事は無かったが、意識を回避に割かれていた一瞬でローランはかなりの距離を稼ぐ事に成功しており、先程と比べてその背は確実に小さくなっていた。

 

(……やっぱりローランは凄いなぁ。憧れる、尊敬する、感服する。)

 

一時的に腰に差していた双剣を引き抜いて、アーツを伝わらせる。

 

(けどあの時の事を思い出すと、嫌悪するし、唾棄するし、憎悪する。あぁ、矛盾ばっかだよ、ボクの心は。)

 

(でも、それでも!だからこそ!!本当はどっちなのかこの目で、肌で、舌で鼻で耳で全てで!確かめたいんだよローラン!!)

 

二本の剣閃から白銀の光が迸り、勢いよく放たれた。二つ光は風を切りながらその形を徐々に円形へと変化させ、唸りを上げながらローランを追尾しているかの様に飛翔する。銀に光る軌跡は途中の障害物を挟んで半円を描き、まるで物体をすり抜けていると錯覚する程絶妙な射線で放たれた光はローランの右足と左肩を掠めて着弾した。

 

ローランはこれに対し、せめて着弾の際に発生する衝撃波だけでもと回避行動を取ったが、いかんせん反応が遅れた為、直撃こそ免れたもののラップランドのアーツを喰らってしまう。先程体を掠めたアーツの飛翔体や今の衝撃波もスーツがある程度防御するとはいえ、それでも完全では無い。脳に悪意が直接差し込まれる様な感覚を覚えるが、顔を青くしながらも集中を切らさなかった。

 

これを皮切りにラップランドは遠距離攻撃を開始し、容赦無くローランにアーツを放っていく。ローランもアーツで周囲を無音にしてラップランドの混乱を招こうとするも、アーツの仕組みは既にお互い割れている為、直ぐに姿を捕捉されてしまう。ならばと切り返して反撃に出れる機会を窺おうとしても、ラップランドのアーツが思考の半分を埋め尽くしてしまい、戦略が碌に練れない。

 

多少肩をぶつけながら角を左に曲がり、絡まりかける足を力任せに動かしてただひたすらに走る。背後が気になってチラリと見れば、そこには双剣を振りかぶるラップランドの姿。しっかりと目で確認したアーツの飛翔体を今度は半身になって躱し、攻撃後の隙を狙って発砲する。手の震えが治らず、一丁の拳銃を両手で構えて撃ったが、僅かな標準のブレをラップランドは瞬時に認識して回避する。その光景を見るや否やローランは直ぐに逃げ出し、ラップランドとの決死の鬼ごっこは続いていく。

 

しかし、それも永遠ではない。

 

「随分と遠くまで逃げるね?そんなにボクがイヤなのかな、それともボクという存在自体はどうでもよくて、ただ罪から逃げたいだけなのかぁ?」

 

ローランの精神はラップランドの狂気に犯され続け、遂にはまともな判断すら下せなくなっていた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、逃げて、たまるかぁッ!」

 

手袋から真っ黒な鞘に収められた長剣を取り出し、柄を握って銀の剣身を引き抜いたローランは何かに取り憑かれた様な、必死の顔でラップランドに斬りかかる。

待っていましたと言わんばかりに目を輝かせたラップランドは、ローランの切り払いを余裕の態度でいなし、先程までの走っていた勢いを利用した蹴りをローランの腹に向けて放った。

 

攻撃を完璧に対処され、碌に防御姿勢も取れないローランはその蹴りをまともに喰らい、それでも長剣を離さずに下の裏路地へと落ちていった。ベキベキと何かが割れる耳障りな騒音を受け取り、ラップランドも下へと飛び降りていく。

 

そこで目にしたのは、重なったトタン板の上で苦痛に悶えるローランの姿。どうやら日除けにでも設置されていた粗末な屋根に落ちたらしく、骨折等のそれほど酷い怪我を負っている様でも無かった。

怯えた様子でなんとか立ち上がろうとするローランに早歩きで詰め寄ったラップランドは、そのままローランの胸部を蹴飛ばして、再び倒れたローランの両の掌に双剣を突き刺した。

 

「づぁッ!!う、ら、ラップランド。」

 

「あまり暴れないでよ。骨とか腱とかを傷つけない様に刺してあげたんだからね!ローランだって、これから両手に障害抱えて生きていきたくはないよね?」

 

そう言いながら仰向けのローランに馬乗りなったラップランドは、握った双剣にゆっくりと力を込めていく。じんじんと痛む両手に連動して歪むローランの表情に愉悦を感じながら、紅潮しながらも狂った笑みを浮かべてラップランドはずいと顔を近付けた。

 

「ボクが何度も夢に見てきたシチュエーションだよ。夢は夢のままでも美しいけど、叶った瞬間の喜びは何事にも代え難い!」

 

「……お、俺を、殺すのか。」

 

「うん?良い質問だね。ボクはずっと迷ってるんだよ。キミを、生かすか殺すかで!今からそれを決めるのさ!」

 

双剣から手を離したラップランドはローランの頬にぴとりと指を這わせ、自身の目と合う様に顔を移動させた。既にこれでもかとアーツを流し込んでいる為、ローランは動けない。

 

「前提から確認しようか。まず、キミはボク等家族の幸せを永遠に引き裂いた許されざる大罪人であって、ボクに戦いのは何たるかを教えて本当のボクを見つけてくれた大恩人。」

 

「……キミにだったら、俺は殺されても、良いよ。俺が誰よりも知ってる空虚の辛さを、実感させたんだ。」

 

「……フフ、フハハッ!アッハハハハハハ!!」

 

鋭い八重歯を覗かせる口が言葉を紡ぎ始める。

 

「キミは今でもボクに負い目を感じてるんだね。ずーっと心配して、ずーっと苦悩して、ずーっと後悔して。だったら、何でボクを置いて行ったの。何で置いていったんだよ!!」

 

「キミが憎かった!生きていた事を後悔する程殺したいくらい憎かった!!その疲れ切った顔が、血の濃厚な香りが!薄汚れた手が!!ボクの頭を掻き混ぜてぐちゃぐちゃにしたんだよ!!ねぇっ!?」

 

頬にそっと添えていただけの両手が不意に離れ、握り拳となってローランの両頬に戻ってきた。口の中が切れて、唾と一緒に血が飛び出るが、それでも殴打は止まらない。

 

「いつかその喉元に喰らい付いてやろうとずっと狙ってた!引きちぎって貪ってその血を啜ってやろうって!四六時中キミを濁った目で睨み続けてた!!」

 

「それなのに、キミはボクを捨てる事もせず、かと言って暴力も振らず、ただ只管に謝りながら面倒を見てくれた。最初はふざけるなって思ったよ?でもさ、そんなに申し訳無さそうにいられたら、ボクだって多少の溜飲は下ったんだ。」

 

殴り疲れたのか、今度はその両手をローランの首に回すラップランド。

 

「家族以外の温かさを知るのは初めてだった。強くなりたいっていうボクの我儘も聞いてくれて、それでいて優しくて。そうなんだよ、分からなくなっちゃったんだよ。」

 

「怒り狂ってキミを殺したくて堪らないボクと、キミの温かさに甘えてしまっていたボク、どっちを優先すれば良いのか分からなくなっちゃった。」

 

指の一本一本にゆっくりと力を入れていく。

 

「多分、キミとボクの関係はずっと引き延ばされて、何処までも溶けながら続いていって、最後には混ざり合って消えちゃうんだって。結局どっちのボクもずっとは優先されない、曖昧なボク自身が本体で、って。」

 

ローランの喉から声にならない息が漏れ始め、ラップランドの両手に込められる力がさらに強くなる。

 

「なのに、キミは!ボクを!置いていった!!何がキミだけには幸せに暮らしてほしいだ!!何が俺みたいになっちゃいけないだ!!そんなの、絶対に無理って分からないのかよ!!裏切り者!!」

 

「キミという支えを失ったボクは直ぐに崩れた、そうだよ、全部キミのせいだ。ボクの家族が死んだのも、ボクが狂ったのも、ボクが幸せじゃなくなったのも、ぜーんぶ、紛う事無きキミのせいだ。」

 

嗚咽を漏らし始めたローラン。その両目からは涙が伝い、ラップランドの真っ白な手を仄かに濡らしていた。両手の力を抜いて、咳き込むローランの頭を地面に押し付けた。

 

「……分かってるのかな?キミはもう責任を取ったって思い込んでいたようだけど、足りないよ。全然足りないよ?だからさ、ボクはたった今決めたんだ。キミをどうするかを。」

 

今までの戦闘行為で若干乱れていたローランの髪を鷲掴みにし、再び眼前へと持ち上げる。恐怖や罪悪感でぐちゃぐちゃになったローランの顔をじっくりと見つめてから、ラップランドは口を開いた。

ローランの首筋に異物が食い込み、熱せられた金属を押し当てられたと錯覚する様な熱さが脳を貫く。得体の知れない痛みにくぐもった声を上げながら見れば、ラップランドが目を瞑って己の首筋に口を付けていた。

 

それは甘噛みなんて可愛らしいモノではなく、獣が獲物を貪り食うのに酷似した荒々しいモノ。鋭い歯が皮膚を突き破って肉の中に潜り込み、強引に抉り取る。その過程で傷付いた数多の毛細血管から血が噴き出るが、ラップランドはそれをチュウチュウと音を立てて啜っていく。その姿は幼児が読む絵本に描かれているブラッドブルードを連想させた。

 

「ぷはっ……これでいいかな。」

 

ラップランドの未知への恐怖と困惑で完全に動けなくなってしまったローランに、口周りを血で紅く染めたラップランドが微笑んだ。

 

「キミはその傷を感じる度にボクを思い出すんだ。それはキミとボクとのアルバムであって、一生消えることの無い罪の証。ボクの事を何年もほったらかしにする意地悪なローランには丁度良いよね!」

 

そう言いながら、ラップランドはもにゅもにゅと口を動かし始めた。先程抉り取ったばかりのローランの肉を咀嚼しているらしく、悍ましい水音がローランの崩れかけた精神をさらに揺さぶる。暫くの間そうして肉を堪能したラップランドは首元を血で汚したローランに向き直り、手を差し出した。

 

「さぁ、ボクの手を取って。ああ、これはあくまでも比喩的な意味であって、その手じゃ無理だっていうのは理解してるよ。でも言わせて欲しい。コレはキミへの罰でありボクへのご褒美だ。また昔みたいに色んな場所に行って、狂った様に殺して、そして笑うんだ。キミも一緒だよ?ちょっと詰まらない言い回しだけど、一生ね。」

 

ここでキッパリと断れる程、ローランの心は強くなかった。

 

 

 





・ローラン君
つぎはぎメンタルの我等が愛すべき魔法中年。ローラン君は酷い目に遭ってる時が一番輝いてるって完全なる本にも書いてある。

・ラッピー
つよつよメンタルの我等が愛すべき狂犬(犬にあらず)お手製のミルフィーユで差をつけるのが得意らしい。

・W
長い間フェードアウトしてる人。恐らくチェルノボーグにはまだ到着していない。

・スカジさん
ス「海の香りがする」 ペ「」
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