黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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ローラン君が凄くカッコよく思えて来たので初投稿です。


あまり良い思い出じゃ無いのに、懐かしいと思うのは何でだろうな?

はぁ。今までに自分が中途半端にやり残したモノとか、嫌になって捨てたモノって言うのは、思わぬ形になって戻って来るんだよ。

今まで考えないようにして逃げ続けた結果がこれだ。俺の罪の象徴でもあり、俺の強さそのモノでもある、この手袋。

 

丁度今、過去の清算をする事になった俺、ローランだ。ホント、ついてないよな……。

 

「なぁW。俺はてっきり、お前が持ってるくらいなら売り飛ばしてると思うんだけど、何で持ってるんだ?」

 

「私も色々と試したのだけど、幾らやっても中身が取り出せなかったし、これじゃあ普通の手袋と変わらないからよ。それだったら、貴方に恩を売り付ける方が良いと思わない?」

 

「……相変わらずだな。」

 

「お互い様でしょ?寧ろ、貴方の方はもっと酷い事になってそうだけど。」

 

「どうだろうな?」

 

手袋。そう、一見何処にでもありそうな、黒い一対の手袋。かつて俺が常に着けていた物なんだ。

あの頃の俺は、今みたいに落ちぶれてこそいなかったけど、中身の方はぐっちゃぐちゃだったっけ。それもWに指摘されるまで気付かなかったんだ。……荒れてたなぁ。

はっきりと言うと、あの手袋には特別な仕掛けがあって、俺はそれを使って『特色』にまで上り詰めたんだ。師匠には、感謝しておけば良かったな。もう遅いけど。

 

「で?貴方はこの手袋がいらないのかしら?大丈夫よ。あの時程辛い仕事になるとは思えないし、貴方もそれなりに過去とは決別出来てると思うのだけど。」

 

「……ちょっと待ってくれ。」

 

正直言って、アレが無ければ俺はもう死んでいた。これだけは間違い無い。

あの時ドジって手袋を失くしちゃって、唯一回収出来たのは『デュランダル』だけだったかな。それで俺のフィクサーとしての生活は一旦終了、後は底辺として適当に生きる、……だったんだけどな。

まさか見つけてたとは思わなかったぞ。W、お前一体俺に何をさせるつもりなんだよ……。

 

過去に自分を助けてくれたけど、それと同時に苦しめてきた物。そして、今それを突き付けられた。みんなだったらどうする?

俺はもう一度向き合わなきゃいけないんだ。俺の罪に。ちょっと前だったら即座に突き返せたんだけど、今はそう言ってられないんだ。

 

もうどうなったっていい。生きていればいい。そもそも、俺がこんな事になってるのは、全部近衛局の所為なんだ。何で俺だけ追放なんだよ。何で医療機関の紹介すらしてくれなかったんだよ。何で、何で……!

 

俺はもう決めたよ。今は過去がどうのこうのとか関係無いんだ。そんなの後から考えればいい。言ってしまえば先延ばし、かな。

鉱石病に感染している上に、レユニオン・ムーブメントに参加して、散々人を殺して、その前にも人を殺して、恨まれない筈が無いんだ。だったら、とことん恨まれた方が良いんじゃないかな?

 

どうせ俺は空っぽなんだ。それでみんなにも迷惑を掛けていたし、あの状況から抜け出せ無かった。今でも過去を引き摺っているのなら、きっと、俺はまだ空っぽなんだ。

そうなれば今、何が欲しい?

金?そんな物後から幾らでも稼げる。

地位?ただ邪魔臭いだけだな。

親友?俺みたいなヤツと友達になるとか、絶対まともじゃ無いだろ。じゃあ、何が欲しい?何が必要だ?どうせいつかは破滅する。なら必要なのは……。

 

力だ。無慈悲で、無遠慮で、何処までも俺に付いて来てくれる力なんだ。力があるヤツはその分必要とされるし、他の物と比べて邪魔にならない。

今考えてみれば、感染者を徹底的に迫害してきた非感染者を殺し尽くす。なんだ。ちゃんと力を振るう目的もあるじゃないか。喜ぶヤツもいるんだ。だったら、それでいいんじゃないか?

 

人って言う生き物は、いつまで経っても変われないのさ。俺はそうなんだ。

今、失った物を取り返すチャンスがある。これ以上は何も手に入れられない、そんな時に舞い込んで来た物。……受け取らない理由は無いだろう?

 

「その手袋を渡してくれ。契約だ。俺は、お前の言う事に従うよ。」

 

Wの口の両端が釣り上がる。

 

「やっぱりそう来なくちゃね。ただ目の前の敵を殺す為に力を振るう、貴方らしいわよ、ローラン。」

 

Wが投げた手袋を片手で受け止めて、今着けている手袋と着け替える。程良く手に馴染むそれは、見慣れた黒い手袋だ。最初の頃はよく、依頼が終わったら意味も無く手元を見てたかな。

 

「いつもありがとう。結局いつまでも、俺はお前に助けられたな。」

 

「……貴方から感謝の言葉を贈られるのって、違和感しかないからやめて欲しいわね。」

 

「ッ、はいはい、お前はそう言うヤツだったよなぁW!お前なぁ!折角人が言ってやってんだぞ!少しは素直に受け取ったらどうなんですかね?」

 

「え?別に素直に受け取ってるじゃない。これが普通よ。」

 

「……ホント、お前は変わって無いな。」

 

これ以上は何を言っても無駄だと判断した俺は、鞘に入れたデュランダルを手袋に『仕舞った』。

 

「最初からフィクサーじゃなくて、マジシャンにでもなった方が良かったんじゃない?」

 

「フィクサーになってから手に入れたんだよ………あー、今からあの時みたいなスーツに着替えるから、ちょっと向こう向いててくれないか?」

 

「……何でスーツを持ってるのよ。」

 

「追放された時に持って行ける服がこれしか無かったんだよ。」

 

「追放って……まぁ、後で聞かせて貰おうかしら?」

 

そう言いながら向こう側を向いたWを尻目に、俺は素早くスーツに着替える。先にズボンを履き替えて靴を履き、上を脱いでからシャツの袖に腕を通して、ボタンを澱みなくはめていく。何百何千と繰り返してきたから、今更時間が掛かる事なんてのは無い。みんなにとっても当たり前の事だろう?

ネクタイを締めてジャケットを羽織り、ボタンを一個だけはめれば完成だ。

 

「おう。待たせたな。」

 

「……ふーん。やっぱりそっちの方が似合ってるわね。でも、その格好でその仮面は間抜けに見えるけど。」

 

「……もしかしてさ、俺の仮面も持ってない?」

 

「粉々に砕けた仮面を拾い集めるとでも?いっそ外しなさいよ。」

 

「……それさ、マジで言ってる?」

 

「まさか、ま〜だ自分を隠さないと生きていけないのかしら。」

 

その瞬間、俺の視界は急に広がった。当然だ。Wに仮面を剥がされたんだ。俺の顔は、どうなってるんだ?

 

「あははっ、あの時と変わらない、酷い顔ね。いつまで背負ってるつもりなのよ。相手もちゃんと覚悟して挑んでいるんだし、貴方は殺しに快楽を見出す様なヤツでも無いでしょ?」

 

「それはそれ、これはこれだ。疲れてるんだよ……レユニオンに休みは無いのかよ?」

 

「……まぁ、強がれるくらいの気力があるのなら問題は無いわね。」

 

俺は手袋をはめている右手首に手を当てて、とある武器をイメージしながら手を握り、そして引く。

手には一本の剣が握られていた。極東が発祥とされる切れ味に優れた剣、所謂刀と言う武器だ。

 

その調子で他の武器の状態も確認する。どれも錆びたり壊れたりしている様子は無く、これなら何時でも使えそうだ。

 

「本当にその手袋どうなってるの?」

 

「俺の師匠の力だよ。死んだ、筈なんだけどな。何でまだ使えるんだろう……。」

 

「そう。じゃあ、貴方をタルラに紹介しに行くから付いて来て。勿論幹部にさせるわ。」

 

「え?オイ、待てよ。あのパトリオットも幹部なんだろ!?アイツの前に現れたら今度こそ殺されるって!」

 

「過去に命を奪い合った程度で殺そうとはしないわよ。随分と臆病になったのかしら?」

 

「そんな事言われても……パトリオットとやり合った事が無いから言えるんだぞそんな事。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか、W。……その男は誰だ?」

 

「ええ、ローランって言うの。私が雇ったんだし、コイツも幹部に出来ないかしら?」

 

「まだそいつの実力を知らないぞ。本当に腕が立つのか?」

 

「じゃあ、コイツが『黒い沈黙』だって言えば分かるかしら?」

 

「……生憎だが、知らないな。」

 

やっぱりな。俺は徹底的に身バレにだけには気を付けてたし、傭兵ですら無さそうな少女が俺を知ってる訳無いか。

……多分、他の特色だったら名前ぐらいは知ってるんだろうけど、まぁ、俺が好きでそうしてる訳だし……しょうがないな。

 

「……黒い、沈黙か。」

 

「アンタは……久しぶりだなパトリオット。調子はどうだ?若干ボロボロだけど、あまり変わって無さそうだな。」

 

「お前も、あまり、変わって無いな。あの時の、ままだ。」

 

「あー、もしかして喉をやられたのか?」

 

「ああ、鉱石病、にな。此処に、いるという事は、お前、もか。」

 

「アンタに比べればめちゃくちゃ軽症だけどな。もしかしてだけど、あのリーベリもいるのか?」

 

「彼は、いない。それなりに、前に別れた。」

 

「……俺を、殺したりしないよな?」

 

「敵対する、意味が無い。同じ、感染者ならば、尚更だ。」

 

おぉ、生きてられるぞ。にしても、以前より強くなってないか?多分鉱石病が原因なんだろうけど、うわぁ……想像したくも無いな。味方で本当に良かったよ……。

 

「タルラ。彼は、黒い沈黙。あの、特色の、1人だ。有名では無いが、腕は確かだ。かつて、戦った事が、あるからな。」

 

「……なら、腕は十分の様だな。と言っても、いきなり幹部と同等の地位を与える訳にはいかない。この作戦が終わってからだ。」

 

あー、マジでなっちゃうのかなぁ?俺以外全員強いし、正直言って俺だけ弱過ぎると思うんだけど。肩書きが重過ぎる……元々、黒い沈黙ってのもスカーモールが勝手に付けただけだし、特色にも成りたかった訳じゃ無かったんだけど……。

 

まぁ、ほんのちっぽけでも期待されてるんだ。そこはフィクサーとして、特色として答えてやらないとな?

 

視線をウルサス帝国の方に向ける。アレがチェルノボーグだ。……悪いけれど、俺の為に死んでくれ。

 





ローラン君
その正体は黒い沈黙。何か強そう。パトおじと戦った事があるらしい。強そうなのにほぼ無名。

パトリオット
元ウルサス帝国の軍人。あの将軍と一緒に戦っていたアホみたいに強いヤツ。鉱石病にめっちゃ侵食されてる。
ローラン君とは戦った事があるらしい。その戦闘の結果とは……?
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