なんとなく話に出たので書いた話。恋鐘ちゃんが引退してプロデューサーと結婚する話です。^ワ^????

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インスピレーションを頂いた友人に感謝を


幸せの形

ファン感謝祭で恋鐘は緊張していた。アンティーカのファンの人達に、アンティーカのつながりを見せよう。そう思っていた。

ライブは大成功だった。多くのファンが熱狂する最高のステージだった。恋鐘は今回は必死に練習したおかげもあり、全くミスもなく終わらせることができた。他のメンバーもとても喜んでいた。アンティーカは最高のメンバーだ。これからも、ずっと、アンティーカのみんなとやっていこう。自分はアイドルになるために生まれたに違いないと、恋鐘は革新していた。ファンとの交流会が行われるまでは。

「あっ、まみみだ~~~~!かわいい!!こっち向いて!!」

たくさんの男の子たちが、魔美々の元へ集まっていく、魔美々はなれた様子で握手やサインをこなしていた。ちらりと咲耶の方を見ると、たくさんの女の子にいつもどおりに囲まれた咲耶の姿が見えた。結華の方からはドラマという単語が聞こえてくる。そういえば、大きな役があたったと言って行っていた気がする。

「わあみんな人気者だね。」

恋鐘の後ろにいた霧子がつぶやいた。突然光の閃光の玉が爆発した。

「前回のWING優勝おめでとうございます!」

「今度のドラマ主演の件ですが、意気込みを教えていただきたく!」

「事務所の男性との関係は本当なんでしょうか!!!」

霧子の周りに光の玉が一斉に集まる。自分など彼らは見えていないようだった。

霧子のそばを離れ、自分だけ帰ろうとする恋鐘に声がおってくる。

「あれ誰だったけ?」

「あー月岡恋鐘だったかな。料理番組に出ている。可愛いよな。」

「あの子スタイルすげえなあ。グラビアの仕事やお色気バラエティに出たら人気者になれるぜ。」

 

「うちは、スタイルだけの女じゃなかよ!!!」

枕を布団に叩きつけ、恋鐘は叫んだ。今日のことがどうしても気になっていた。他のメンバーはどんどん他の仕事をこなし、ファンも増やしているようだった。霧子はWINGに優勝したらしい。霧子は自分がいなければ、心配になると思っていたが、そうでもないようだ。霧子はプロデューサーとうまくやっているようだ。最近、霧子がプロデューサーと外食に行く姿をちらりと思い出し、枕に顔を埋める。

「うちアイドル向いとらんのかなあ。」

 

心のなかで引け目を感じながら、恋鐘は毎日の努力を続けた。何年も何年も。

周りはトップアイドルになり、恋鐘の芽はいまだ出なかった。何度も何度前を向いて明るく振る舞っていたが、限界が近づいてきていた。そんなある日のことだった。

「お母さん、うちになんの用?えっお父さんが?!」

父親が体調を崩したこと、そのため、家に忙しいだろうが帰ってきてほしいとの言葉が母親から告げられる。恋鐘のなにかがぶちりと切れる音がした。

 

「アイドルを引退して定食屋を継ぎたい?」

プロデューサーがあっけにとられた顔で恋鐘を見ていた。

「でも・・・こ、恋鐘。」

何かを喋ろうとして、口を開けようとする、言葉を紡ごうとする。代わりに出たのは涙と嗚咽だった。

「恋鐘...。今まで苦しかったんだな。もし、恋鐘がアイドルをやめるなら、俺もプロデューサーをやめるよ。」

「なにをいっとるの!」

「ずっと前から伝えようか迷っていたんだ、俺は恋鐘が好きだ。結婚したいとすら思っている。」

思いもかけない言葉が、プロデューサーの口から漏れる。怒りで口を震わせる恋鐘をまっすぐに見つめ、プロデューサーは言葉を紡いだ。

「霧子と何度も食事に行ったのは、恋鐘のことが知りたかったからだ。何が好きか、何をされると喜ぶかともかく、恋鐘が喜ぶことをしてやりたかった。霧子が1番恋鐘のことを理解していると思っていたからだ。そんな気持ちでプロデュースをしたせいだろうな。恋鐘のプロデュースがうまくしてやることができなかった。甘さが出てしまった。アイドルに恋愛感情を持つだなんてプロデューサー失格だな。俺は俺の個人的な感情で、恋鐘の夢を壊してしまった。だから、恋鐘がアイドルをやめるなら、俺もプロデューサーをやめる。」

「なら、プロデューサー一つだけお願いをしたいんやけれど。」

 

「今話題の定食屋に来ています!なんと、女将さんは昔はアイドルをなさっていらっしゃったそうです!!!んー、とっても美味しい!!!ちょこっと興奮しちゃいますね!!」

リポーターがチョコと絡めたギャグを飛ばしながら、リポートする様子を穏やかな顔で見つめる夫婦がいた。

「あなたー、焼き魚定食一つ!ふふっ、だいぶ上達したねー。」

「おまえが教えてくれれば、もっと早かったかもしれないな。」

「それはダメっ、それじゃあうちはチビちゃんたちの迎えに行ってくるから。」

「ああ。」

恋鐘とプロデューサーだった男が継いだ店は濃い金の愛嬌と料理の腕のおかげで、今ではすっかり地元では有名な店になっていた。今は噂になり、東京の方で活躍している人気アイドルまでもがリポートに来るほどだ。キラキラとした笑顔を振りまくリポーターを見て、どこか懐かしい気持ちをプロデューサーだった男は覚え、少しため息をついた。

キラキラした少女たちを輝かせることは楽しい日々だったが、もっと大切なことがあると数年の間にプロデューサーだった男は学んでいた。

 

「ぱぱー。」

「こらー、手を洗わんといかんよ~!」

「ははっ」

「すみません。一名です。」

線の細い女性が立っていた。

「いや、驚いたよ、こんなにきれいになってるなんてなあ。それに包帯もなくなって。」

「ええ、おかげさまで。」

「霧子~~~お久しぶり~。何にする?うちの作る料理何でも絶品たい!あなたこの子をお願い。」

子供を抱っこした恋鐘が霧子に満面の笑顔で声をかけながら、プロデューサーだった男に子供を預ける。それを見ていた霧子は一瞬顔を曇らせたが、それに気づくものは誰もいなかった。

「恋鐘ちゃん元気そうで良かった。二人目がもうすぐ生まれるって聞いて、仕事の合間に来てみたの。」

「霧子は優しかね~!サービスするたい、まっとって!」

 

「霧子、立派になってたな。恋鐘...。」

霧子は今やトップアイドルになっていた。日本中の誰もが、霧子を知っている。恋鐘の切望した物を霧子は手にしていた。しかし、恋鐘は霧子のことを妬ましいとは一切考えていなかった。自分はとても尊い宝物をアイドルになりたいという夢を捨てても手に入れることができたからだった。プロデューサーだった男の腕に自分の腕を絡め、微笑む。

「大丈夫!うち、ばり幸せたい!」

これからも、幸せで優しい時間は長く続いていく。これが自分の幸せのロードだ。



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