ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 母がフィッシングメールに引っかかりいろいろ入力してしまったそうなのですが、「パスワードがわからないから適当になんかのパスワードを入力した」と言われまして、おかげで大変でした…送り主だってびっくりするだろうよ。

 


10 「ニュートン:『ミレディ・ライセンめ!すりリンゴを俺の頭の上に落としやがった!』」

―*―

 

 ハイリヒ王国王都。

 

 王女リリアーナは、困惑した。

 

 「お納めものにございます。貴国の勇者様が欲しておられるとのことで、帝国国内の兎人族を、できうる限り買い戻しました。そちらにて御処分願えれば幸いです。」

 

 そう言ってリリアーナの元から、一刻も早くと逃げ出していく、ヘルシャー帝国の使いたち。後ろにずらりと鎖でつながれていた兎人族ざっと500ほどが、あぜんとして、言葉を交わしている。

 

 ヘルシャー軍は、すぐにでも、兎人族を勇者に送りつけたかった。なにせ兎人族を狩っていた帝国兵が、身体の穴という穴(目口鼻や肛門から、毛穴の一つ一つに至るまで)から血を染み出させ、冷やしても冷やしても火傷は直らずに増えていき、血液や内蔵にウジと腐臭を伴い、治癒魔法をかけるほど苦しみ(癌/白血病細胞も同時に治癒しているから当たり前である)、「勇者のような資格のある者以外がみだりに奴隷に触れると天罰が下るらしい」と言い残して死んでいったばかりであるーしかも、担当治癒師にも1名、同じ症状がおこり、「治癒師が奴隷に関わった者の治癒を嫌がる」という現象まで発生、帝国軍部は激震していた。

 

 一方でリリアーナ姫としては、わけがわからない(帝国使者は、あまりにおぞましい帝国兵の最期を姫に告げることができなかった。まして帝国兵の遺言曰く、兎人族の扱いは国際問題になるほどデリケートらしいのだからなおさら)。とりあえず「勇者が奴隷を欲しがっていると王国が武装商人を送ってきた」かららしいことだけは理解できた。

 

 「すみません。」

 

 「な、なんでしょうか。」

 

 「その、商人の名前は?」

 

 「ヒカリ・ヒトツイシと言うそうです。では。」

 

 (ヒカリ・ヒトツイシ…確か、迷宮から消え、死亡認定が出された3人のうちの1人!目撃されたのはホルアドの迷宮を挟んだ反対側、ライセン大渓谷…なぜ?

 

 …愛子様からも、「手紙を預かったがあまりに影響が大きいから見せられない」「檜山様を監視してほしい」との使いがあった…)

 

 リリアーナも、一石光という人間を、ただの「使徒の1人」としてではなく、とらえている。最初にあいさつした時、教皇に口づけする父を、そしてリリアーナ自身を、見定めるように見つめたまなざし、「訓練に一度も来ない無能」という評判、王立図書館で見かけた「世界をまったく違うやり方で見ているかのようなまなざし」、いなくなってからの「魔人族ではないか」という悪評まで、良くも悪くも印象は強かった。

 

 (一石様、あなたは今どこで、何を、そのタカのような眼で見ていらっしゃるのですか?)

 

―*―

 

 「…いやいやお前、本当に『勇者』か?軍部から聞いていたにしては野望も下衆さも見えんし、かと言ってアレが嘘と思えるようなずる賢い女がそれでもついてくる器にも思えねえんだが。」

 

 皇帝ガハルドもまた、困惑していた。

 

 軍部が騒ぐさまも、実際に「天罰」で苦しみ死ぬ兵の様子も見て、仕方なく、兎人族だけは王国に送り付けた。結果的に入れ違いになってしまったが。

 

 しかし、フタを開けてみれば、女を侍らせる好色勇者には見えない。ならば一杯食わされたかと思っても、そうするだけの知恵袋がついてくるような覇気、魅力があるようにも思えない。金色に輝いていても、メッキなのは丸わかりの、ただのちょっとかっこいいことになれたガキだった。

 

 「…うーん、そこの、誰だ?恵理様、だったか?

 

 …お前か?」

 

 「な、なんの話、ですか?」

 

 「いや、お前が、一番賢そうだから…うちの兵を30人ほど苦しめたのは、なんのためだ?」

 

 「こ、皇帝だからってエリリンをいじめるなんてダメ!」

 

 「そ、そうだぞ!だいたい、何の言いがかりだ!」

 

 「…そうか、勇者も、仲間も、知らないのか…」

 

 誰かが、勇者の名前で帝国をたばかった?いやしかし…

 

 「…ヒカリ・ヒトツイシという女に、心当たりは?」

 

 「光…あ、あいつ…」

 

 ガツン。

 

 八重樫雫が、後ろから天之河をみねうちで昏倒させるー一石が帝国と関わり、あまつさえ帝国兵と交戦したのなら、それは迷宮で落下した後。それはとりもなおさず、香織やハジメも生きている可能性を指摘し、だから今回ばかりは、天之河に余計な発言はさせられない。

 

 「…もう少し、お話を聞かせていただけますか?」

 

―*―

 

 ブルックの町にて。

 

 「南雲君…

 

 …昨夜はお楽しみでしたね。」

 

 「…ああもう!

 

 超特急で造るから、造りゃいいんだろ!」

 

 南雲ハジメは、恥ずかしさをごまかすように、宝物庫から取り出した鉱石を錬成し始めた。

 

 「しかし、一石、スマホをばらしていいだなんて…本当に良かったのか?」

 

 「ええ。もう時計機能よりあなたの技能のほうが正確だし、下手に計算を打ち込むより私のほうが早くなっちゃったから。」

 

 人間、極限状態に至ると、計算や時間測定では機械を超えることもあるのである。

 

 「はい、これで、できたと思う。」

 

 「じゃあ、キャサリン支部長と、適地を相談してくるわ。

 

 デート、楽しんでらっしゃい。」

 

 「…帰ってきても、からかうなよ。ってかお前は行かなくていいのか?」

 

 「雫の話を聞く限り、私が行くと、香織の着せ替え人形にされそうで怖いのよ…」

 

 町に行かなくても、帰ってきた香織に着せ替え人形にされるぞ…とは、ハジメは言わない。ちょっとした意趣返しであった。

 

 …なおこの後、ただでさえジンの股間を治癒させられた経験があってストレスがたまっていたこともあり、香織が主犯となってブルックの町に「漢女」なる存在が若干数名生まれた事件もあった。2度目はないらしく、ヒーラーながらも彼女は自分の攻撃の結果を治癒しなかった。

 

―*―

 

 「3,2,1…

 

 …0,発射!」

 

 夕方。

 

 ブルック郊外の草原。

 

 5人が見守る中で、一筋の光が、夕焼けの中へ消えていった。

 

―*―

 

 1日経って。

 

 ライセン大渓谷を探索してみたハジメたちだが、オルクス氏が書き残した「ライセン大迷宮」は見つからない。

 

 「なあ、一石、パッと大迷宮が見つかる技術知らないか?」

 

 知っていたら提案するだろうと思いつつも、8つの大迷宮を巡り神代魔法をコンプリートする目的上、見つからないでは話にならないため、テントを広げながらハジメは呟いた。

 

 「地震波測定か、μ粒子測定か…どちらにしても大規模で時間もかかるし、データだって裸のままじゃ何もわからない。こういうことは魔法のほうが向いていると思うわ。」

 

 「やっぱりか…

 

 …ん?どうしたシア」

 

 「えっと…ちょっとお花を摘みに…」

 

 4人が、手を振る。

 

 「どうする?この後。見つからなかったら。」

 

 「今見つけないと二度手間だというリスクが一つ。他の迷宮でライセン大迷宮の位置がわかるかもというリスクが一つ。

 

 どちらにせよ、迷宮の性質によっては私は入れないから、投票権は棄権するわ。」

 

 「…私は、雫ちゃんに、一言…言いに行きたいかな。」

 

 「ん。ハジメがしたいほう。」

 

 「…いったん飛ばすか…」

 

 「ハ、ハジメさーーん!」

 

 「何だよ、そんな慌てて」

 

 「た、大変ですぅ!皆さんを連れてきてください!」

 

 「むぅ…どうしたの、シア…?」

 

 「見つけたんですよ、大迷宮の入り口!!」

 

 お手柄なのに、残念な奴…と、この時、4人の意見は一致した。

 

―*―

 

 〈おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮♪〉

 

 「…え、ハジメくん、本物?」

 

 「ん…多分本物。名前がその証明。」

 

 「1度目は落下、2度目はコレ…入口って概念が解放者にはなかったのね…」

 

 「間違いなくオルクスとは別の意味でたいへ…っておいシアあんまりさわ」

 

 「キャッ!?」

 

 ガタン。

 

 文字が刻まれていた岩壁が、忍者屋敷のように回転し、シアを消してしまう。

 

 またしても…と4人は思いつつ、岩戸をもう一度押す。

 

 ヒュン!

 

 一本の矢が飛んでくるが、香織が電光を飛ばして焼き切る。

 

 「っと。こりゃ間違いなく大迷宮だな…」

 

 「あ、あれ?シアちゃんは?」

 

 「…そこよ。でも振り返っっちゃダメ。」

 

 無数の矢によってはりつけにされ、さらに足元に水たまりを作っているシアを見て、一石は着替えを差し出しつつ言った。

 

 〈ビビった?ねえビビった?もしかしてチビっちゃったり…ニヤニヤ♪〉

 

 〈もしかしてスタートで誰か怪我した?それとも死んじゃった?…ププッ!〉

 

 「んビーーム!」

 

 ついでに、無表情で、マゴクから中性粒子ビームを発射する。

 

 〈ざんねーん。この石版は時間が経つと自動修復されるよー!無駄な頑張りお疲れ様ー!プークスクス!〉

 

 「おらあああああ!ですうううう!!」

 

 「ごめんなさい。平静が保てないからこの迷宮は降りさせて…くそっ!」

 

 「…いきなりつまづいてんじゃねえかよ…」

 

 「ん、今なら、ヒカリ、今なら魔法が使えそう。」

 

 「あはは…気を付けてね?」

 

 「アレを借りていくわ…

 

 …こんなに気持ちが爆発しそうになったのは、南雲君に火球が落ちた時以来よ…」

 

 ハジメは、ぼりぼり頬をかいた。

 

―*―

 

 翌朝。

 

 ガシャン!

 

 ハジメから借りた大砲「カール」の上で、魔物に時折発砲しながら(渓谷がビリビリ震えた)、一晩中を思索に費やしていた一石は、背後で聞こえた音に、顔をひきつらせた。

 

 ガタン。

 

 「ハジメさん、ミレディ絶対つぶしますですぅ…」

 

 「ミレディ許すまじ、慈悲はない…だよね。」

 

 「ん。あやつは世界の敵。」

 

 「だな。」

 

 「…とりあえず、全員落ち着きなさい。もしかして『残念賞、スタート地点だよー!』とか?あとは、『ちなみに地形は随時変化するから頑張ってねー』とか?」

 

 それだけで、殺意のこもったまなざしを向けられ、あやうく一石は砲手席から転がり落ちかけた。

 

 「…とりあえず、全部話して。対策を考えましょう。」

 

 「ヒカリさんは直接やられなかったからそんな冷静にしていられるんですぅぅ!」

 

 「…そりゃ冷静にできるように行かなかったのだしね。

 

 イライラするなら、今頃エセ勇者がどんな噂されてるか考えて心を落ち着けなさい。」

 

 「…え?」

 

 「ほら、帝国兵からハウリアを助けた時。」

 

 きっと天之河は一部では、兎人奴隷を集めたがる変人と噂されているだろう…ということに気づき、「コイツにもミレディ化の素質があるんじゃないか?」と疑ってみるハジメたちである。

 

 一部始終を話し終わるのに、半日かかった。なお、半分以上はただの悪口であるー途中から、オタクであって作品をいろいろ読み込んできたハジメの巧い語り口によって一石までも感情移入し、収拾がつかなくなっていた。

 

 「…もういっそ、ミレディにも天罰を与えましょう、そうしましょう!」

 

 「いいですねえ!イヤガラセにはイヤガラセで応えてやるですぅ!」

 

 「目には目を、歯には歯を、だね!」

 

 「甘い、ただ攻略するんじゃ甘すぎる。生き返らせてでも仕返ししてやろう。この南雲ハジメに喧嘩を売ったこと、後悔させてやる…」

 

 「…ところでそいつ、なんらかのカタチで、生きているわよ?」

 

 「へ?」

 

 「解放者のリーダー、そしてメンバーに魂魄魔法持ち…要素があって、さらに、誰かが管理していると思われる精密な制御の迷宮。

 

 途中で、揺れたわよね?」

 

 「ああ、砲撃したんだろ?」

 

 「落石の様子が、おかしかった。岩盤はおそらく、大迷宮だけではなく、オルクスからの通路やかつての解放者の隠れ家で、穴だらけ。数世紀以上放置して、誤差なくトラップが作動するほどには、堅固じゃないのよ…簡単には破壊できなくても、粒子が詰まったりしてうまく動かなくなっているはず。」

 

 「…ミレディの魂が、どこかで、それも物理的に干渉してたってことか?」

 

 「鑑賞してたですぅ!?ぐるるぅぅぅぅう…」

 

 「…だから、そんなにまでして来てほしくないなら、向こうから出向いてもらうわよ。」

 

 くふふっ。

 

 「何でもやるぜ。」

 

 「絶対、倍返ししようね!」

 

 「ん、復讐の時。」

 

 「ざまあみろ、ヒカリさんを敵に回すとはついてないな、ですぅぅ…」




 きらファンの前イベントの「ゲーミング宇宙人」がツボだったので「んビー――ム」とう謎の発言がございますが、ユエの発言ではございません。

 調べた限り、大気圏内では荷電粒子ビームは減衰するようです。なので中性粒子ビームの御登場ーはいそこ、「電荷がないから質量効果だけで破壊性に劣る」とか「中性子線は原子核に作用するから放射能を生み出しそうで危険」とか言わない。確かに加速器式の中性粒子ビームって正負の荷電粒子ビームを中和させただけだから中性子ビームしか現実的じゃないけどさ…。

 さて、ネットは使えない、電話もメールも無意味、計算と時計の機能は要らない…では、ばらしたスマホはどこへ使われたのでしょうね?
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