ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 どの2次創作でも、たいていなんらかの目にあって、でも半分がた生き返らされるミレディ氏。


11「ニュートン:『だがどうだミレディ!!月は落とせまい!これが万有引力の法則だ…アイテッ!』」

―*―

 

 誰も寄り付かない、ライセン大渓谷の底。その地面を半紙に、巨大な習字が成されていた。

 

 「『ちきゅう』通過まであと5分よ。終わった?」

 

 「ああ。書道検定1級がとれると思う。」

 

 ハジメくん書写検定だよ…とは言わない。香織はやはり天使であった…わけではなく、魔力をハジメに分けていたのでくたびれていたからである。

 

 「ごっそり持っていかれたですぅ…」

 

 「ん…10分の1はキツい…あとでハジメの血を吸う。」

 

 やはり、魔法使いの天敵のような場所で、錬成で地上絵は無理があった。でも、彼らは恨みだけでやってのけた。

 

 しばらくして。

 

 「お、来た来た。

 

 …これはもう0級だな。」

 

 「ハジメくん、それはさすがにおかしいよ…」

 

 トータス文字なのだから達筆に書けるわけはないけれどー

 

 ちなみに、書かれた文章は以下の通り。

 

 〈ププー!ミレディ・ライセンちゃんだよーっ!お待たせーっ!

 あ、もしかして、年取って認知症で忘れちゃった?ボケちゃった?あれ?それとも老衰で死んじゃった?

 神様のクセに、ダッサー!でも、ミレディちゃん生きてます♪

 ねえ今どんな気持ち?どんな気持ち?〉

 

 

―*―

 

 甲冑ドレスに大剣2本を背負い、銀色の翼を以て飛ぶ、機械天使のごとき銀髪碧眼の女。

 

 ソレは、表情を全く変えずに、ハジメが一晩かけて書いた傑作を、銀色のビームで消していく。隆起して黒色の岩で色づけられた文句は、少しずつ、地面ごと削られていった。

 

 文字だけを削ってしまったので、文字のカタチのへこみがくっきりできる。

 

 「ちっ」

 

 透明な音色だが、舌打ちなのがもったいない。

 

 ソレは、谷底を長い時間かけて削り、なんとか、跡形もなく文字を破壊した。

 

 なんとなく、右隣に視線を向けてみる。

 

 〈ちなみにミレディちゃんはとっても

 

      ユ♪ カ♪ イ♪

 

       こっちまでおいでーっ♪〉

 

 「…望み通り、”神の使徒”として、主の盤上より不要な駒を排除します。」

 

 銀光が、岸壁に刻まれた文字を削り、中からガラガラと岩が次々崩れ落ちては消滅していき。

 

 「もう!

 

 ミレディちゃんの大迷宮に、なんてことするの!直すの大変なんだよ!

 

 もう怒った!プンプン!」

 

 その奥から、巨大なゴーレムが姿を現し、そのゴツイ巨体に似つかわしくない動きでなぜかクネクネポーズを取り。

 

 「砲撃、今。」

 

 ゴッォォォォォーーーーーォーーーーーンッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 渓谷全体が、ビリビリと震えた。

 

―*―

 

 「「「「「よし!」」」」」

 

 ミレディ名乗るゴーレムと、神の使徒を名乗る銀髪女。その2つが抱き合うのを見て、ハジメ、香織、ユエ、シア、一石は笑い出しそうになった。

 

 もし、表情をゴーレムと機械天使が持っているなら、マヌケにぽかんとしているだろう。

 

 「だがこれからだ!いくぞみんな!」

 

 「うん!」「んっ!」「はいですぅ!」「任せて。」

 

 「う、後ろから!?」

 

 「な、何なの!?なんかブサイクに抱き着かれたし!もう!」 

 

 「誰がブサイクですか。『分解』」

 

 「おっと、させねーよ!」

 

 ハジメが、魔法レールガン銃「ドンナー」「シュラ―ゲン」を、機械天使に撃ち込む。

 

 「次弾装填開始。

 

 …香織、またアレ、行くわよ。」

 

 「照準は?」

 

 「右33,上29,距離17!」

 

 「おっけー…『纏雷』!」

 

 バッ!

 

 衝撃波とともに、オルクス最深部でも使われた爆縮ジェネレーターレールガンが、あの時より格段に強力な砲弾を撃ち出した。

 

 極超音速。1秒で数キロ飛ぶー衝撃波だけでも生身の人間はジュース待ったなしのそれを、避けられるわけがない。

 

 機械天使の腰から下が、消失する。

 

 「こうなっては、イレギュラーもまた、神の駒にふさわしくない。

 

 改めまして、ノイントと申します。”神の使徒”として、主の盤上より不要な駒を排除します。」

 

 「あれあれー?操り人形ちゃんに、ミレディちゃんが負けるとでも本気で思ってるのかなー?」

 

 「…私を怒らせようというのなら、無駄です。」

 

 (どういうこと?

 

 本当に、感情がない?

 

 いや、だとしても、身体に指示を出す神経回路、電子回路がないことには…)

 

 ノイントの下半身が、アーマーごと銀の光に包まれ治っていく。

 

 (…まさか、「魂」と呼ばれるモノには、神経回路や物理的存在とは関係がない?でも、じゃあ、私たちは何?)

 

 「どっちも砕け散れえ!ですう!」

 

 巨大なハンマー「ドリュッケン」が振るわれ、衝撃でゴーレムとノイントが同時に吹き飛ばされる。

 

 「て、敵なの、味方なの!?どっちなのさーっ!」

 

 「こんなところに召喚しやがった恨みと!」

 

 「さんざん罠にかけてくれたお返しだよっ!」

 

 ハジメと香織が、必殺兵器「バイルバンカー」を電磁加速で発射し、ノイントの翼をゴーレムの持つ鉄球に縫い留めた。

 

 「消えなさい、神の反逆者!」

 

 鉄球が、銀色の光によって消失する。

 

 (質量保存は?原子単位で分解しているのなら、再結合で熱を出すはず。かといって質量保存則を破って消失させているのか?それとも、もしかして…)

 

 「一石、あの分解魔法?消せないか!?」

 

 (そもそも銀色の光の正体は何?なぜ、後ろからの砲撃で抱き合わせた時に、ミレディゴーレムはやられなかった?どこから、魔力は出ている?

 

 …わかったかも。)

 

 「無理よ!

 

 それから2つ!」

 

 「何だ!」

 

 「1つ目!そのゴーレムは本体じゃない!本体は奥にいるはず!」

 

 (どこかで修復している。だからこそ、消えてしまう鉄球による攻撃でも、勝てる自信があるし、ゴーレムを使いつぶしても問題がない。それに、迷宮の試練としてでなければ、自分が戦えるゴーレムに入る必要は薄いけど、戦って負けても2度目の挑戦を受けられるように、バックアップが要る。)

 

 「2つ目!

 

 ノイントは、どこかから魔力の供給を受けている!それに分解だって本人は思っているけど、それは分解じゃなく、無数のマイクロブラックホール!」

 

 (鉄球が消える寸前に行使してみた「魔法法則排除」が通用しなかった。光の粒はブラックホールで、銀光がホーキング輻射なら、魔法なしでもあの現象は再現可能!)

 

 「付け加えて3つ!ミレディの魔法は重力操作!無意識にブラックホールが弱まっているから、やられにくい!」

 

 「バ、バレてる!?」

 

 「そ、そうなのですか?」

 

 (ノ、ノイント…知らないの?)

 

 「でも、重力魔法の気配はないけど…ミレディちゃん違うと思う!」

 

 「…南雲君、香織、覚えてる?私が、最初の日に言ったこと!」

 

 …ブラックホール=事象の地平面。すなわち、召喚魔法を「相手先の世界の法則を組み込まず」トータスの魔法法則のみで使用すると、どこにもつなげることができず、ポッカリと世界に穴が空くー一石は、それこそが分解魔法の正体だと言い当てた。造るのには魔法が使われても、「物質を吸い込み、そのホーキング輻射エネルギーで対象を崩壊させ、ブラックホール自体は蒸発する」全行程は、故スティーブン・ホーキング博士が予測したとおりである。

 

 「…とにかく、あなたがたを排除すれば同じこと。まずは小娘、消えなさいっ!」

 

 「っやられてなるものですか!」

 

 カール砲の砲手席から飛び降りた一石を追うように、銀色のビームが奔る。

 

 「ハジメ、行って!」

 

 「わかった!香織、ついてこい!」

 

 「うん!」

 

 「シア、ヒカリを助ける。」

 

 「一族の恩人、やらせはしない、ですぅ!」

 

 「ちょ、ちょっとミレディちゃんは…うう、とりあえずクソ神の手下からだ!えい!『魔力吸収制限解除』!」

 

 「ん、ミレディ、まだ貸しは多い。」

 

 「えー…って、そこの子のまわりだけ、解除できてないんだけど…まあいっか!」

 

 (魔力の吸収が、私はデフォルト?いや、そんなわけない…

 

 …私に魔力が存在しないのではなく、できない?あるいは…)

 

 「ぼっこぼこですぅ!」

 

 鉄球とドリュッケンが乱れ飛び、銀色の光がサーチライトのごとく舞う。

 

 「『雷龍』」

 

 紫電の龍が飛び。

 

 「『分解』。まったくちょこまかと!」

 

 「ユエ、借りるわよ。んビー――――ム!」

 

 大気分子を破壊して放つプラズマビーム(ハジメ曰くには荷電粒子砲と言うらしい)が、不可視のエネルギー線となって、雷龍の電場にそって渦を巻きながら、亜光速でノイントを穿つ。

 

 ーそれでも、無限の魔力がもたらす無限の回復力は、攻撃力を上回り続ける。

 

 「って待って!ミレディちゃんの本体!あ、ちょっと、らめえーーっ!」

 

 (召喚魔法の出来損ない…超統一理論のヒントになりうるか?)

 

 「戦いのさなかに、よそ見ですか、2人とも。」

 

 刃が、ゴーレムのアザンチウム製の右腕を鉄球ごと吹き飛ばした。さらにもう一本は一石にせまり、シアのドリュッケンがギリギリ止める。

 

 「う、お、押し負ける、ですぅ…ぅぅぅ…っ!」

 

 「充電切れっ!」

 

 ゴクとマゴクのビームは、電気によってすべてを発射している。質量弾用の銃口もあるが、分解されてしまうそちらは役に立ちそうもない。

 

 「ちょっとミレディちゃんもそれどころじゃないかもー…わーっ!」

 

 「このタイミングで戦線離脱はひどい。」

 

 「さんざんあおっても、これでおしまい、ですか。あっけない。」

 

 その時、ノイントが分解魔法で穿っていた岩壁から、ハジメと香織が、にこちゃんマークが顔に張り付けられたちっちゃいゴーレムを抱え、現れた。

 

 一石が、目配せするとともに。

 

 「カール砲、今!」

 

 ゴッォォォォォーーーーーォーーーーーンッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 モデルはナチス・ドイツの60センチ自走臼砲「カール」。2トンあるその砲弾は、ノイントと言えども一瞬消し去ることはできず、再び、直撃を受けた機械天使を吹き飛ばし。

 

 ハジメと香織が、ちっちゃいミレディ・ゴーレムを、放り投げた。

 

 「シア、私も投げて!」

 

 「えっ、いいんですか?えいっ。」

 

 できるだけそっと投げたつもりでも、一石も死にそうになりつつ空を飛ばされ。

 

 ミレディ・ゴーレムが、ノイントと接触し。

 

 「なんですこのふざけた顔は」

 

 「思考を保証するのは、脳神経回路。感情なき生きた人体も、感情ある死んだ無生物も、私は同様にー

 

 ー『魔法法則排除』『物理法則準拠』。」

 

 一石光が、ノイントの頭に触れた。

 

 「!!??」

 

 声にならない叫びが、ノイントから漏れた。

 

―*―

 

 え、うそ…

 

 …「私」が、ゴーレムが、見えるよ?

 

 えっミレディちゃんどうなって…

 

 「もしかして、入れ替わってる!?」

 

 ゴーレムは、動かなくて、私の背中に翼が…え、どうなってるの、どうなっちゃったの!?

 

 「…さーてミレディ・ライセン?

 

 おびき出すのにずいぶん手間をかけたけど…」

 

 「「「「覚悟はできてる(か/よね/はず/ですね)?」

 

 えっいやあの後でって聞いてなぎゃーーーーっ!




 他に「銀光を発し、物質を消滅させる」科学的事象に心当たりのある方、お教えいただけると我が知的好奇心がぴょんぴょんします。なお個人的に、マイクロブラックホールというよりは裸の事象特異点でしょう(違いが判らないけど)。

 勝手に「ミレディ氏はライセン峡谷の魔力吸収を逃れてるし他人も逃れさせられる」モノだと思ってたけど、どうなんでしょう。でもあれだけの迷宮、人力で造れるわけないから、きっと魔力吸収を解除するバックドア的なにかくらいあるか。

 それはそうと、カール60センチ自走臼砲、ロマンですよね。史上最大の移動式重砲ですよ(射程なら46センチ三連装砲に、移動を限定するならドーラ80センチ列車砲に、条件を限定しないならリトル・デーヴィッド92センチ迫撃砲に負けるかわいそうな子とか言わない)!きっとハジメくんも知ってたはず。
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