ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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13 「6次の隔たり理論に基づき、一度別れた人間と再会できる可能性を算出されたし。」

―*―

 

 湖畔の町ウル市か…正直なところ、避けたいのが本音だけど…

 

 「光ちゃん、なんかあるの?」

 

 「南雲君から聞いてないの?」

 

 「え?ハジメくん、隠し事?」

 

 「香織、言わなかったか…?」

 

 「ウル…あ、思い出した。先生がいるかもしれないんだっけ?」

 

 畑が急激に増えていることからして、作農師の天職持ちが滞在している可能性が高い。そもそも、王国各地のデータを見るに、平地が余っていて生産量が低くて住民も余っている点で、ウルほど先生に適している場所もないし。

 

 「で、どうしてダメなの?」

 

 「…なんか、イヤじゃないか?」

 

 面倒なことにもなりそうだし…って、私のみならず南雲君も思っていそう。

 

 「でも…雫ちゃんにも会いたいし…」

 

 「でも、香織、八重樫はたぶんウルにはいないぞ。」

 

 「うん、でも、さびしくない…?」

 

 すべてを一度切り捨てた南雲君と、南雲君を再び拾うことに特化した香織…同じ迷宮でも、先発と後発の差ね。

 

 「ん。でも、協力しろって言われるかも。」

 

 「早く神代魔法を手に入れたいですしね…

 

 …あ、でも、ミレディ置いていけますよハジメさん。」

 

 「「「「「よし、行こう(か/よ/です)。」」」」」

 

―*―

 

 かくて、湖畔の町、ウル。

 

 置手紙一つをブルックに残し、テクニカルは夕方には到着した。

 

 双方、積極的な理由があったわけではないし、ハジメ側には特に畑山先生一行を捜し出す理由は今もない。

 

 にもかかわらず。

 

 (…このレストラン、よく見たら、〈召喚されし神の使徒愛子様御一行御用達〉って札がかかってるんだけど…

 

 …マーフィーの法則、あるいはフラグ、なんてね。)

 

 気づいていないなら、言うまい…それに数か月ぶりの米料理も悪くない…と、一石は黙っておくことにした。

 

 「何食べます?ハジメさん、香織さん、ユエさん、シアさん、ヒカリさん。」

 

 「お米のご飯だよ!?ハジメ君もそう思うよね!」

 

 「ああ。今となっちゃ香織の弁当が懐かしいな…うっとうしいとか昔思っててホントごめん。」

 

 「もう…いつでも作ってあげるのに。」

 

 「…あのー、ちょっと二人の世界作りかけるのやめてくれません?ハジメさん、香織さん。」

 

 「ん…仲間に入れて。」

 

 「ユエさんは宿で一緒だったじゃないですかあ!私なんか、ヒカリさんと一晩ですよ!ときどきわけわかんない寝言言ってるし…」

 

 「失礼な!香織、私、寝言癖なんてないわよね!?」

 

 「うーん、えっと、その…」

 

 「え」

 

 ピシャーーーーーッ!

 

 「南雲君!?白崎さん!?一石さん!?」

 

 カーテンが勢いよく引かれ。ギョッとして6人が硬直する。

 

 「せ、先生!?」

 

 最初に、香織が動き出し、畑山先生に飛びつくー残念ながら先生のほうが小さいので、先生はあわれ押し倒されてしまった。

 

 「え、香織さん、そういう趣味が…」

 

 逆にシアが飛びのこうとして、ユエに首根っこをつかまれ、「ぐえ」。

 

 「ちょっと違うけど…でも、白崎さん…生きていたんですね!それに、変わってしまったけど、南雲君もいっしょに…一石さんも、ありがとうございます。」

 

 ハーバー・ボッシュ法のやり方についてのメモを、畑山先生は突き返した。

 

 「…私独りで決められないから先生に委ねようだなんて甘かったわ。

 

 あ、注文いいですか!?この、ニルシッシル?っていうの6つ、それから、ついでにこの紙、厨房で焼き捨てて、灰もかきまぜちゃってください!」

 

 「はい、注文承りました。」

 

 オーナーのフォス氏が、クシャクシャのメモを受け取り、下がっていく。ちなみに一石が文明を変えかねないメモをオーナーに託せたのは、どうせ素人にはわかるまいということもさることながら、ぞろぞろ奥からやってきた他のクラスメートや騎士の存在が「ここのオーナーは重要人物と接する人物で、信用ということを良くわきまえている」と判断する材料になったからでもある。

 

 「…それで南雲君に白崎さん、その格好…何があったんですか? こんなところで何をしているんですか? 何故、すぐに皆のところへ戻らなかったんですか?

 

 事情があるのはわかりますが…」

 

 「…先生、とりあえず、食べながらでいいですか?私も、先生に尋ねたいことが…」

 

 「…一石さん、相変わらずマイペースですね…

 

 あ、それと、南雲君…そちらのお2人は?」

 

 「ユエ」

 

 「シアです!ハジメさんの女ですぅ!」

 

 「…シアはまだ。」

 

 「香織さん、正妻として、ユエさんにいい加減なんか言ってあげてくださいです!」

 

 「シア、落ち着いて…先生がいる、か、ら…」

 

 「なーぐーもーくーんー?」

 

 クラスメートや騎士たちはおろか、バケモノぞろいのハジメたちが、ちっこい畑山先生が首を少し曲げながら出した声に、震え上がった。

 

 「あ、こちら注文のニルシッシルにございます。」

 

 「ありがとうございます。会計は?」

 

 フォスと一石だけが、暢気なもので。

 

 「こ、こともあろうに、きれいな女の子をよ、4人も侍らせて!すぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか! もしそうなら…許しません! ええ、先生は絶対許しませんよ! お説教です! そこに直りなさい、正座しなさいっ!南雲君!」

 

 (いっしょにしないでください先生…南雲君は3股です。…ってダメじゃない。

 

 あ、これどっちかっていうとハヤシライス?おいしい…)

 

―*―

 

Q:橋から落ちた後、どうしたのか?

 

A:ハジメ「超頑張った」

 

 香織「ハジメくんのおかげ。ついでに光ちゃんも。」

 

Q:なぜ2人とも白髪なのか、ついでに一石だけそうでないのか。

 

A: ハジメ「超頑張った結果」

 

  香織「光ちゃんが自分では頑張らなかったから」

 

Q:その目はどうしたのか

 

A:ハジメ「超超頑張った結果」

 

  香織「これはこれでかっこいいと思います」

 

Q:なぜ、すぐに戻らなかったのか

 

A:ハジメ「戻る理由がない」

 

香織「ハジメくんが戻ろうとしなかったから」

 

 「真面目に答えてくださいバカップル!」

 

 …もー何やってるのよまったくもー。…こんなことなら「香織が全部知っています」なんて言うんじゃなかったわ…

 

 「はあ…」

 

 「ヒカリさん、幸せが逃げますよ?」

 

 「癖になったわ…」

 

 「ね、ねえ、一石さん…」

 

 「何?園部さ」

 

 見当は付くけ

 

 「おい、お前ら! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」

 

 「…まあ道理よね…」

 

 「あはは…」

 

 介入したほうがいい…?

 

 「でもまあ、ハジメが答えたがらないのもわかるのよ。ジョークみたいに苦労を重ねてるから。まさか一冊本を突き付けて『これを読めば全部わかる』とは言えないのに、『じゃあ代わりに音読してください』って言われてるようなモノだし。」

 

 「…そんなに、大変だったの?」

 

 「ん」

 

 「私が望んだことですけどね。」

 

 「私は全然。」

 

 私ごときが苦労したなんて言うことは、許されない。

 

 「こら!お前も、何をこそこそ話している!」

 

 「…別に?あいにく人種差別主義者に話せる口は付いてないの。出直してこないとあなたは話を聞けないってこと。」

 

「ふん、出直してこいだと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が出直してこい。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう。それになんだその白髪は。その女はその年にしてもうしわくちゃのババアなのか?」

 

 「…はい?撤回して出直しなさい。」

 

 …神殿騎士さん、神の使徒と呼ばれるところの香織も銀髪だから、その発言は半ば自己矛盾よ…どちらにせよ、宗教的価値観に凝り固まった人たちとの対話はごめん被りたいけど。 

 

 「何だ、その態度は? 無礼だぞ!さては、貴様が魔人族の手先というのは真実だったのだな!おい、こいつをひっとらえろ!殺して構わん!」

 

 もう、勝手にやってなさいよ…

 

 「さすがヒカリ。動じないし」

 

 「に、にべもないですう…」

 

 「それにしても、小さい男。」

 

 ユエ、「器の」を付けたほうがわかりやすいわよ。

 

 「な、何?貴様も、神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!」

 

 騎士さん、後ろでハジメと香織が銃身なでてるのに、気付かないの…?死んだわね。

 

 「ちょ、ちょっと待って!一石がスパイ!?ないない!」

 

 「使徒優花様、その言い分は聞きかねます。」

 

 「だって、オルクスであたしのこと助けてくれたんだよ!それがスパイなんて」

 

 「そうやって信頼を得ようとしたのですこやつは!」

 

 はあ…粒子線源をマゴクの中の遮蔽弾倉に…

 

 「ちょおーーっと待ったぁ!」

 

 「だ、誰だ!?」

 

 「話は全て聞かせてもらったっ!

 

 ミレ」

 

 「バカーーーーーーーっ!」

 

 「え?あ、あ!」

 

 歴史上の反逆者の名前を、軽々口に出してどうするのよ! 

 

 …ああ、もうこれ!どう収拾付けるのよ!

 

 「…じゃあどうすればいい?」

 

 「ウザディとでも名乗りなさい。」

 

 涙ぐましい努力がうかがえる…ノイントの人間離れしたところはなくなってるし、ちょっと縦横比もコホンコホン。そんなにその見た目がイヤなのね…

 

 「えー…

 

 名前なんかどうでもいい!」

 

 良かないわよ…

 

 「とにかく、ウサ耳ちゃんをいじめるなんて、さては弱い者いじめが好きなのかなぁ?騎士の風上にも置けない奴!自分に自信がないからって相手の実力まで見誤るなんて、弱すぎ!プークスクス!」

 

 「なにをほざくっ!」

 

 「まして、そこのちびっ子に好かれたいからって、正義気取り!自分で考えることもできないのかな?ざんねーん!そんなんじゃ女の子の心はつかめないゾ☆」

 

 …あの、その人、先生…

 

 「え、えっとどうすれば…」

 

 「どうにでもなればいいのよ…私はごちそうさまだし。清水知らない?」

 

 「し、清水?最近姿を消してて…捜してるんだけど…」

 

 …なんで?

 

 「とにかく、今日は早く寝るわ。おやすみ。」

 

 付き合ってらんない。

 

 「お山のガキ大将みたいな真似はかっこ悪いからメッ!服だけ『分解』♪」

 

―*―

 

 「なあ一石…起きてるか?」

 

 「おはよう。

 

 …まだ深夜?おやすみ。」

 

 「おいおい…

 

 …なあ、先生に、話しておくべきだと思うか?」

 

 「エヒトについて?

 

 敵になったとして、戦力的には問題にならないし、行動で先生に誤解されても寝ざめが悪いし…

 

 …ただ、知ってしまえば、知る前には戻れないわ。」

 

 「わかった。知らせてくる。」

 

 「そう…おやすみ。」

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