ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 何度書き直しても、しっくりいかない。


15 「裏切りと真実のリスクマネジメント(注:あらゆる要素を計算した場合、ボーナス得点を与える)」

―*―

 

 「清水君……なぜ、こんなことをしたのですか?」

 

 重々しい雰囲気の中で、清水君は、畑山先生をにらみつけた。

 

 「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって…勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに…気付きもしないで、モブ扱いしやがって…ホント、馬鹿ばっかりだ…だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが…」

 

 「だから、魔人族に、価値を示そうと?」

 

 これは、私の失策でもある。

 

 「ああ。王宮にいた時に、届いたんだ。

 

 俺の闇術は、魔人族の魔物使役と同じで、魔物を操ることができるかもしれない。その方向性で頑張れば、勇者に認められなくても、勇者よりも活躍できる。場所を間違えなければ…ってな。

 

 だから、俺は、俺が活躍できる場所を見つけたんだ!」

 

 「…そう…あなたは、そう決めたのね。」

 

 失策、失策、失策!

 

 でも、私は、悔やんでもいられない。

 

 「…魔人族が、俺をスカウトしたんだよ。俺を、魔人族の勇者にしてやるってな!だから俺は…

 

 なのに、なのに、なんだよアレは!あれじゃまるで、ヒロシマじゃねえか!もう意味わかんねえよ!

 

 なんなんだよ!南雲と白崎はもうなんか中二病だし!もうなんなんだよ!」

 

 …燃料気化爆弾が、ビジュアル的に、メンタルへの威力がここまであるとは…錯乱一歩手前じゃない。

 

 「動くなぁ! ぶっ刺すぞぉ!」

 

 …あ、本当に錯乱した!?

 

 「な、何を!?」

 

 「先生も、クラスメートも、王国の誰一人として、俺を認めてはくれなかった…だから俺は!

 

 いいかぁ、この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ! 刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ! わかったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!」

 

 しかたない…

 

 「南雲君、武器を、捨てさせて。

 

 …武器を。」

 

 「な、一石、その必要なんて」

 

 私は、南雲君に目でメッセージを送った。

 

 ゴトン、ゴトンゴトン。

 

 ドンナーが、シュラ―ゲンが、ドリュッケンが、ゴクが、マゴクが、香織の名前の呼ばれない2丁拳銃が床に落ちる。

 

 「よし…先生、そのまま立て。」

 

 「は、はい…」

 

 「ハジメさんっ!」

 

 すべてが、スローモーションに流れて見えた。

 

 シアが、畑山先生に飛びつき。

 

 ビームらしきものが、清水君の胸を撃ちぬこうとし。

 

 私は、とっさに、この中で最下位レベルの敏捷力を振り絞った。

 

 南雲君が、ビームの出どころの方角へ、義手を構え。

 

 私の背中に、激痛が走り。

 

 義手が光り。

 

 ミレディが、破壊された窓から飛び出し。

 

 あ、痛くなってきた…

 

 「ヒカリ!?」

 

 「ヒカリさん大丈夫ですか!?」

 

 「一石さん!?」

 

 「光ちゃん、待ってて、治すから…死んじゃダメーッ!」

 

―*―

 

 状況は、混沌を極めた。

 

 毒にやられて早くも倒れている畑山先生。

 

 背骨が傷口から見えている一石光。

 

 2人に押し倒されて床に頭を打ち付け昏倒する清水。

 

 そして、義手を窓に載せ、片目で何度も義手を震えさせてから振り返り、絶句するハジメ。

 

 香織が、一石のブレザーと下着を破き、背中を出させて治癒を始める。

 

 「ハジメさん!神水を呑んでくれません!」

 

 「くそ、どうすれば…香織、ユエ、すまん!」

 

 シアの手からグイッと神水を呑み干し、畑山先生の唇に口を押し付けるハジメ。

 

 「あーっ、もう、ハジメくんったら!

  

 シア、私にも!」

 

 「は、はい!」

 

 「ん、私も手伝う!」

 

 治癒師として最低限の知識として習うことに、傷ついてはいけない重要臓器がある。背骨の内部の脊髄もその一つー迅速かつ完璧に治さなければ、脊髄損傷により運動機能が、神経感染症により頭脳が永遠に失われる!

 

 傷口に神水を直接かけるわけにはいかない。神水に除菌作用などないから、脳みそと基幹神経だけには使えないし、ハジメの片目片腕が戻らなかったことからわかるように神水は失われたものまで戻さない。あくまで、平常で数年かかるような自然治癒を一瞬に起こすだけである。

 

 香織とユエが、手を添えて治癒魔法を全力で行使し、シアが塞がりつつある傷口へ神水をスポイトで垂らしていく。

 

 畑山先生が、顔を赤くして起き上がり、数秒後、状況を把握して今度は真っ蒼になった。

 

 「みなさん、一石さんと清水君は、無事なのですか!?」

 

 「ぶ、無事よ…っ」

 

 「光ちゃん、しゃべっちゃダメ!数十秒待って!」

 

 「ダメ!

 

 だって、その間に、南雲、君、清水君を、撃つ、でしょう!」

 

 畑山先生、そして園部優花らクラスメートは、一斉にハジメを見つめた。

 

 「ああ。」

 

 「な、南雲君…」

 

 目を覚ました清水が、自分を感情の感じられない目で見つめ、義手の人差し指の指先を向けるハジメを見て口をぽかんと開け震える。

 

 「…ま、待て南雲、謝るから、話し合おう!

 

 お、俺、何だってするから、心入れ替えて、お前に忠誠を誓う、女だってやる、だから」

 

 「見苦しい真似は、やめなさい、清水、君…」

 

 「「「「「え…」」」」」

 

 「私が、悪かったのよ…」

 

 「ひ、光ちゃん?」

 

 やっと塞がった傷口だが、痛みにまだ顔をしかめ。

 

 一石は、なんとか、椅子に座りこんだ。

 

―*―

 

 「清水君、手紙は、2枚あったわよね?」

 

 「先生に渡せって書いてあった…」

 

 「し、清水君、それは、まさか…」

 

 「置いてあったのは?」

 

 「迷宮から帰ってきた時だ」

 

 「…だから、その手紙を置かせていったのは…

 

 …私よ。」

 

 「やっぱりか、俺を認めてくれたのは…」

 

 「そんな小芝居は要らないわ、清水君。

 

 私はちゃんと、手紙に書いたのを覚えているから。

 

 …『できうるのならば、魔人族のところへ行け』って。」

 

 「な…」

 

 「光ちゃん、嘘だって言ってよ!」

 

 「噓じゃないわ。」

 

 「き、貴様、やはり魔人族のてさ」

 

 「私、もう傷は治ったから。黙らせるわよ。」

 

 「…ヒカリ」「ヒカリさん…」

 

 「一石さん、どういう、ことですか?」

 

 「あの手紙は、私が無事に帰っていたら、回収していたのよ。

 

 あの時点では、普通に考えて、地球に帰る方法は3つ。

 

 1つ目は、魔人族を滅ぼし、エヒトに帰してもらう。

 

 2つ目は、独力で召喚魔法の謎を解明して、独力で戻る。

 

 3つ目は、魔人族と結んで、魔人族の神様に帰してもらう、あるいは、教会と魔人族を脅して協力して帰させる。

 

 訓練用の迷宮で壊滅し解明に不可欠な私も消えるようであれば、もう、1つ目と2つ目の目はない。

 

 迷宮で私たちを失ったあの時点で、戦術単位でしかない勇者たちが戦争の中ですりつぶされることも、人間族側にいても漸減されゆくだけで帰る方策など見つかりっこないことも、はっきりしていた。」

 

 「う、嘘だろ…」

 

 クラスメートの誰かー仁村か、玉井か…が呟いた。

 

 「嘘じゃない。

 

 だってあなたたち自身、思ったから、オルクス迷宮から逃げたんでしょう!

 

 このままじゃ、戦争に勝てないって!戦争になんかならないって!」

 

 「そ、それは…」

 

 「だから、なんとしても、クラスは、人間族だけじゃなく、魔人族へのチャンネルも必要だった。

 

 ううん、違うのよ。

 

 私であっても、帰るには、神代魔法を超える魔法についての充分な知見を必要とする。

 

 神格との直接交渉権を得なければ、帰る手段は手に入らない。」

 

 「そこまで読んで、魔人族の神様との直接交渉を?」

 

 「そう…

 

 わからずやの天乃河はともかく、冷静に立ち止まって考えれば、魔人族を根絶やしにするわけにいかないことはわかっていたはずだし…本当は、いずれ私が魔人族の側へ行って、講和へお互いのチャンネルになり、神格との直接交渉権を得るつもりだったのよ。

 

 それが私はあにはからんや生き残り、清水君はこんなところで何を行方不明になっているのかと思ったら…魔人族は召喚された高ステータス勢と言えども使いつぶすつもりでしかなかったし、私は清水君が先生に相談すらしないほどにクラスで孤立してこじらせているとは思わなかった。すべて、私の独断専行と考えの甘さゆえよ。

 

 すべての責任は、私、ヒカリ・ヒトツイシにあります。」

 

 「違うだろ一石!あんた書いてたじゃないか!

 

 『魔人族のところに行け。人間族にむりやり戦争に放り込まれる前に、先生たちを亡命させろ』って。ついつい、最初に接触した時に、俺だけが勇者になれるかもってそそのかされた、俺が悪かったんだ!」

 

 「…一石さん、清水君、顔を、上げてください。

 

 あなたたちも、あなたたちなりに考えたのですし、戦っていない先生に、言えることはありません。けれど…

 

 2人とも、おごらないでください。そして、抱え込まないでください。

 

 ただどうしようと無力感に震えていた先生には、何も…」

 

―*―

 

 沈鬱な雰囲気で、清水、一石、そして畑山教諭がうなだれる中。

 

 「捕まえて来たよー♪ミレちゃんお手柄☆」

 

 瞬間、ユエが、絶対零度のジト目をミレディに向けた。そればかりか誰もが、お前空気読めよと言う目をした。

 

 「え、ミレちゃん要らない子?」

 

 「しかもそいつ死んでるぞ。」

 

 「え…?魔物の背中から引きずりおろしてきただけだから…あ、ホントだ。ポイッとな♪」

 

 誰もが、唖然とした。

 

 「それで、え、どういう話になってたの?」

 

 かくかくしかじか。

 

 「まるまるうまうま…

 

 …もう、隠し事は、ないんだよね?ならもう、入れ違いとゴタゴタに付け込めてたはずなのに気が付いたら魔物数万とコイツ失ってた魔人族ホント間抜けプークスクス!で、いいんじゃない?

 

 でも、ミレちゃんは、魔人族とも仲良くしたいと思うな。

 

 神様を信じられない故の、昔は、よくあった悲劇だから…」

 

 そんなところが、妥協点だった。

 

 一石が独走し、清水が野望を見て、魔人族が振り落とされ、魔物たちがはざまですりつぶされた。

 

 最初から、真実など明らかにならず、負けた清水が反省すれば良かった話を、ただただ後味が悪くなっただけだった。

 

 この事実は、亀裂を生んだだけ。それで、明らかにする必要はあったのか?

 

 事実、真実、真理というものの性質を、状況は顕著に示していた。

 

―*―

 

 「…光ちゃんは、私とハジメくんがなんとか前だけ向こうってしてた時に、私たちを戻そうと頑張ってたんだね。」

 

 「俺より、決意が、早かったのか。」

 

 「…やり方は褒められたことではなかったし、神格との直接交渉も、半分は私の、真理への道筋を教えてもらいたいスケベ心よ。ここで撃たれたって文句は言えない。」

 

 「そんなことできるわけない。」

 

 「ヒカリさん、仲間なんですから…」

 

 「一人で抱え込むのはダメじゃぞ」

 

 「そうだよ。だから今度は、ちゃんと、考えてることを教えて?きっと、わからないけど…」

 

 「一石が力になってくれるように、俺も、力になる。」

 

 「そうじゃな」

 

 「…おいドM、なんでいる?」

 

 「妾は、仲間ではないのか?認めてもらえんのもそれもそれで…」

 

 「ちょ、ちょっと、ハジメくんに変態は近づけたくないかなー。」

 

―*―

 

 「…一石さん、あの時は、ありがとう。」

 

 「園部さん…あの、迷宮での件ね。」

 

 「…結局、みんなから責められつつも、あたしたちのことを裏で一番考えててくれたのは、光っちだったんだよね。」

 

 「あの時はうまく行って、今回は裏目に出た。プラマイゼロよ…」

 

 「それでも、あたしは、絶対に、光っちのことを忘れないから!ありがとう!」

 

―*―

 

 「…愛子様、あの2人を、討ちたくございます。」

 

 「ダメです。

 

 もとはと言えば、先生である私がしなくてはいけない、考えなくてはならないことなのです。

 

 私は、使徒である以上に、生徒たちの先生なんです。だから、一刻も早く、手段を択ばず、生徒を、御家族に帰さなくてはいけないんです。

 

 王国に見捨てられた時のことも、魔人族との戦争を終わらせる方法の模索も、魔人族の神様の手を借りることも、すべて、私が考えなくてはいけなかったんです!」

 

 「…愛子様、しかし…」

 

 「こんなことを言っても仕方ありませんが…

 

 無理やり連れてこられた私たちは、無理にでも帰りたいし、そのために奮闘する生徒たちは、まがりなりにも成長しているんです。

 

 無理やり連れてきたあなた方には、わからないかもしれませんが…」

 

―*―

 

 「清水君、ごめんなさい。」

 

 「いいんだ。ついつい誘惑された俺が悪い。

 

 …こんな俺でも、はじめて才能を認めてもらえて、うれしかったんだ。それを、忘れてた。

 

 なあ、一石」

 

 「アホなことを言わないで。

 

 私は私で動こうとしたこと自体は消えないし、真理を追い続ける私が、そこにいていいはずがない。

 

 いい?

 

 次私がやらかした時は、いっしょに撃たれるのではなく、撃ちなさい。そうでなければ、ロクでもないことをする。」

 

 「…わかったよ。

 

 でも、絶対に。

 

 俺は、感謝してるから。だから今度は、一石がくれたものを、もう2度と、忘れない。」

 

―*―

 

 かくて、夜は更けていった。

 

 水面下で混乱は終息し、もつれは静かに戻り、種火はそっと消化されていった。

 

 そして、翌朝、2台に増えたテクニカルに分乗するハジメ、香織、ユエ、シア、ティオ、ミレディ、そして一石へ、クラスメートと畑山教諭は見えなくなっても手を振り続け、騎士団も、せめてもの敬意の証として剣を地面に置いていた。




 微妙に前の話と整合性がとれない?すみません。きっと今までが忙し過ぎて、奈落に落ちる前のことを忘れていたんでしょう。
 ただ、たかだか数十人の勇者パーティーで戦況を大きく変えられるわけがありません。現にルーデルはナチスを勝利させませんでした。

 それはそうとして、2次創作ではよくある清水生存ルート…ですがこれで何か変わるか?
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