ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 最初は海底遺跡編と抱き合わせの予定でした。無謀!

 総UA10000超え、感謝してもしきれません。このダイジェスト一歩手前の妄想実験にお付き合いいただけていることに震えが止まりません。いよいよ折り返し(おそらく40で終わるでしょう。ありふれ2次創作の中でも記録的な短さ!)なわけで、最後までお付き合いいただけると2回生で対面授業だらけとなっても次作への励みとなるかも知れません(それはそれで勉学の徒としてどうなんだというのはともかく)。ともかく、思考実験そのものが破綻しない限り、きっちり完結させられるよう頑張ってまいります。


結果:そして、人間族はひっくり返った
19 「火山噴火の防災コスト」


―*―

 

 露天荷台に機関砲/ロケットを搭載するテクニカルという車両の性質上、対天候性能はお世辞にもいいとは言えないーが、戦車にしてしまうと汎用性は著しく悪化するし、普通車仕様に戻すには男1人女5人幼女1人、ちと人数が多い(なにより武装を省くのは無理がある。引き金を引けば魔力要らずでミュウですら迷宮の魔物を撃破できるであろう機関砲は捨てがたい)というわけで、応急策としてアクリル様の素材で荷台を覆うことになった。

 

 「前に来たときとぜんぜん違うの! とっても涼しいし、目も痛くないの! パパはすごいの!」

 

 装甲を兼ねた遮蔽版の内側には魔力式の冷房を回している。ソマリアゲリラが見たら地団駄踏みそうな贅沢仕様だが、常に砂が吹き上がり上下前後左右を覆い隠す「グリューエン大砂漠」は金星のごとく過酷な環境で、航空偵察ができないばかりか、驚くべきことにはレーダー波を反射するチャフの役割を果たす鉱物が混入しているらしかった。

 

 「まあミュウの健康には気を使いたいからな…」

 

 「びっくりだよね…まさかトータスにも黄砂があるなんて…」

 

 「赤いけどな。」

 

 顕微鏡で砂を眺めてみたハジメと香織は、長時間滞空する微細さながらも針のように鋭い砂粒に戦慄していた。長時間の曝露はPS2,5やアスベストと似たようなモノであるという一石の説明にはさらに戦慄した。

 

 だからー

 

 「…ところでハジメくん、気付いてる?」

 

 「ああ…」

 

 ー砂漠の中で倒れる人間と、それを取り巻く魔物を察知して、緊張感が生まれるのも無理はない。

 

 「ん?ミレディちゃん試し撃ちしたいんだけど」

 

 「バカ、砂が舞い上がるでしょうが。」

 

 波動砲をこんな砂地で発射するなど常軌を逸しているし、一石も測距の正確さを保証できる自信がないのであわてて止めた。

 

 「それじゃあ妾も遠慮したほうが良さそうじゃの。」

 

 「止めて、是非止めて。

 

 シア、任せていい?私測距するから。」

 

 言うなり、一石が潜望鏡のような形状のレンジファインダーを覗き込み、遮蔽板の上の1メートル測距儀を回転させ。

 

 「15秒後、方位52度傾斜28度!」

 

 「了解ですぅ!」

 

 遮蔽板が開かれ、多連装ロケット弾ポッドから16発のロケットが同時に、砂煙の中へ消えていく。

 

 ドォン…

 

 魔物ーサンドワームたちが爆死したのを確認し、テクニカルが停車する。健康に悪いので倒れていた男を荷台に引き上げ、遮蔽板が閉じられた。ポンポン砲をしまってスペースを作り、香織が助手席から出てくる。

 

 男は行き倒れ人のくせに王子で、この先のアンカジオアシスで中毒症状が多発、魔力暴走で倒れ伏す人間が続発して治療のための「静因石」を捜しに行き道中で行き倒れたらしい。

 

 香織を女神だとあがめようとする男を運転席からハジメが張り倒しつつ、テクニカルは一路アンカジオアシスへ向かった。

 

―*―

 

 …魔力の暴走?

 

 魔力は重力、電磁気力、弱い力、強い力に続く第5の力と仮定してきた。しかし実際に治癒師である香織が技能で「魔力の暴走」と言うのなら間違いなく、魔力は暴走している。

 

 …どうなってるの?

 

 多いのは、伝播子?それとも仮定からして間違っていた?

 

 もし、伝播子が多すぎたのだとする。これは自由電子が多くて体が導電体になってしまったようなもので、電流がそばに在ればもれなく感電することになる。魔力もまた、そのような状態を起こし得て、それを暴走と称する…ということ?

 

 物理的な想定をするには、あまりに魔法法則は「人」に依存しすぎる…

 

 「光ちゃん、オアシスの魔物は倒したんだけど、毒が抜けないみたい。どうなってるの?」

 

 「逆浸透膜は試した?」

 

 …あるいは、魔物の肉を食べた時の人間の変質を見るに、魔力は本来は暴走的に制御されるもので、安全にコントロールされるには体内因子が必要、とか?それを毒物が阻害する…生物学的な要因を求めたほうが良いかもしれないわ。

 

 「圧力が足りないって重力魔法かけたら破れちゃって…」

 

 「じゃあもう魔力にあかして貯水塔でも造って蒸留でもなんでもすればいいじゃない…」

 

 「あ、それもそっか。ユエ―っ!」

 

―*―

 

 「ねえ、ホントに、ナっちゃんの迷宮を攻略しなくていいの?」

 

 「ええ。香織の背中を押しておいて、私まで行ったら誰もアンカジの状況を収束させられないしミュウもお守りできないし。」

 

 「ミレディちゃん一人じゃ心配だと言うのかー!」

 

 「もちろん…って言うか、どうせオルクスと一緒で、バックドアがあるんでしょ?」

 

 「まあ、万が一のことがないとも限らないし、脱出路から逆に入れる方法はあるから、ミレディちゃんも後で行くけど…でも、ズルだから絶対ダメだよ。」

 

 「はあ…魔法が使えない私でも?」

 

 「うーんどーしよっかな…そうだ、日ごろの扱いを謝ってくれたら」

 

 「…そうも言ってられなくなったわね…」

 

 「え、なんで?」

 

 「この映像、どう思う?」

 

 「灰色の、龍?ダッサいねえ…」

 

 「じゃなくて、背中に乗ってる魔人族。南雲君たちと接敵するわよ。」

 

 「あー…でも、手助けするのはちょっと…」

 

 「あいつら火山ぶっ飛ばすかも。」

 

 「ヤバいヤバい、来て!」

 

―*―

 

 「やっほー、待った?ミレディちゃんは待ちすぎて汗かいちゃったよー♪」

 

 「「「「「うるさい(わ/よ/です/のじゃ)!」」」」」

 

 グリューエン大迷宮最深部、マグマのドームの下で、手を振って出迎えたミレディと一石に、一斉に舌打ちが向けられた。

 

 「おっと、そんなこと言っちゃっていいのかなー?」

 

 パチン。

 

 指の音とともに、マグマでできた蛇が百体以上、マグマの中から現れた。

 

 「…あいつ後で〆る。」

 

 青筋を立てるハジメ。今回は傍観者に徹しているミレディと一石は、奥の扉から解放者ナイズ・グリューエンの部屋へ引っ込む。

 

 それをよそに、電磁の奔流が走り、銃弾が乱れ飛び、ハンマーが宙を舞い、マグマ蛇は1匹また1匹と姿を消していく。

 

 そして、最後の1匹ー

 

 「行っけえ!」

 

 ーその時、かすかに開いた扉のスキマから、白色の閃光が瞬間的に空気を割り、天から降り注いできた極光を打ち消した。

 

 なおも引き続く白色の閃光と銀色の極光は、伯仲を続け、姿を現したミレディの手元にある銀色の光=マイクロブラックホールの集合体は徐々に小さくなっていく。

 

 「天文学的な威力の波動砲を打ち消すとか、どうなってるのよ…」

 

 「あれはヴァンちゃんの魔物だね…」

 

 冷や汗をかく待ち伏せ組。ハジメたちもすぐに動き出し、ビームが上方へと乱れ撃ちされる。

 

 「…看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達は危険過ぎる。まさか、私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは…おまけに報告にあった強力にして未知の武器や光線…しかも総数五十体の灰竜の掃射を耐えきり撃ち返すなど有り得んことだ。貴様ら、一体何者だ? いくつの神代魔法を修得している?」

 

 白龍に乗った魔人族が、上から現れ、呟いた。

 

 「うーん、ちょっと違うかなー?

 

 我が名は解放者ミレディ・ライセン!自由な意思のもとに復活した者ここに!

 

 どう?まさか御本人登場とは思わなくて驚いちゃった?驚いて心臓止まっちゃたり」

 

 ピースしてポーズするミレディに、魔人族は一言

 

 「『界穿』」

 

 ミレディを背後から襲う極光。分解を打ち消していく。

 

 「もう!あっぶないなー!なんてことするの!せめて名乗ってからじゃないと!」

 

 小指をちっちと振るミレディ。しかし、背後に突如現れた魔人族は表情をピクリとも変えない。

 

 「貴様が、神に逆らった反逆者か。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である。私の名を骨身に刻み滅べ。」

 

 キュイン!

 

 シャー芯ほどまで細く絞られた極光が、ユエと香織とミレディが重ねがけした障壁を貫こうとする。

 

 「今だティオ!」

 

 その間に、ティオが姿を黒龍へ変え。

 

 「解放者の次は龍人だと!?」

 

 「紛い物の分際で随分と調子に乗るのぉ! もうご主人様の邪魔はさせぬぞ!」

 

 漆黒のブレスを上へと吐き出した。

 

 「若いのぉ! 覚えておくのじゃな! これが『龍』のブレスよぉ!」

 

 灰龍は一掃されていく。

 

 一方で、フリードがふいに、血を吐いた。

 

 「ぐはっ…何を…」

 

 何もしていないかに思われた一石のゴクとマゴクの銃口から、青い光が漏れているー放射線源の臨界光である(なお電磁的に指向性を持たされている)。

 

 「いったん戻って治癒したほうがいいか…くそっ。

 

 だが黒龍のブレスを利用してマグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無くこの大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様らをここで仕留められるなら惜しくない対価だ。自らの仲間が造った大迷宮によって果てるがいい。」

 

 ミレディが「ププッ、自動で修復されますけどー」なんて言っているが、それどころではない。フリードは上へと飛び去ろうとしている。

 

 ハジメが静因石の入った宝物庫をティオに渡す一方で、一石はナイズの部屋への扉を開き残りの4人を招き入れる。

 

 誰1人、あきらめた様子はないーそれに、一石がミレディとだけで普通に来られるはずはないので、どこかにバックドアがあるのだろうと、もう全員勘づいていた。

 

 「ミュウに伝言頼む。『後で会おう』だ。」

 

 そして、黒龍は飛び去った。

 

―*―

 

 「南雲君、時間がないから潜水艇を出して。」

 

 「…バックドアは?」

 

 「その要石の中を通るのよ。」

 

 「マジか…ダメじゃん。」

 

 「海への路は変わって無ければわかるよ。ミレディちゃん昔オーちゃんと通ったし。」

 

 なんなんだ解放者って…と、誰もが思いつつ、質素な部屋で神代魔法を回収した5人である。

 

 ハジメが、宝物庫から潜水艇を取り出す。球形のアクリル船殻に筒型の航行装置がかぶさっているスタイルだ。

 

 いそいそと6人が乗り込み(狭かった。そして香織とユエとシアはお互いがもっともハジメに密着できることを望んで騒ぎ一石に怒られた)、直後にマグマがなだれこんですべてを押し流す。

 

 「右、左、そう、直進、後ろ右…」

 

 ミレディが懐かしそうにつぶやくのに従い、ハジメが流されまいとマグマの路の中を必死に操縦する。

 

 「下、右下、左下…しばらくまっすぐ」

 

 「おい、本当にあってるのか?」

 

 見えるのは灼熱の赤のみ、魔法瓶のような断熱構造とはいえ熱さは完全にはなくならないし、冷やし過ぎれば表面でマグマが凝結してしまうし、操縦に魔力は使うしで不安しかない。

 

 「下、左下…ミレディちゃんをボケ老人呼ばわりなんて右上、下ありえないよ少年、左…」

 

 半信半疑ながらも、体感で数時間後、潜水艇は無事に海底火山から海中へ。

 

 しかし。

 

 「…ソナーに感アリ!正面!」

 

 「うっそぉ…」

 

 「これは…」

 

 モニターを点滅させる、数十メートルはある巨体+触手。

 

 ハジメは思わずガリガリと頭を搔き、潜水艇の内壁に「宝物庫」の指輪をかざした。

 

 「あ」

 

 一石が止めようとするが時すでに遅く。

 

 艇体側面から発射された魚雷は、巨大クラーケンの触手に弾き飛ばされて海底へ激突、爆発し。

 

 潜水艇が出てきた海底火山の火口が、爆発に巻き込まれ。

 

 「っ、全員何かにつかまれっ!」

 

 マグマが海水に触れた直後、水蒸気爆発が、海底を爆破して周りのすべてを吹き飛ばし、白が海中を埋めつぶした。




 ※ロケット弾は曳火(エアバースト)射撃なのでそこまで正確な測距は要らないです。どうせ真っすぐ飛ばないし。波動砲は直線上以外にはダメージをもたらさないので敵の位置が不正確な状況では危ない。
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