ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 オリヒロだけの回。


26 「理からの昇華ー万象の軽重を問え。鼎の譲渡を認めよ。」

―*―

 

 「ミレディ、どういうこと?

 

 リューティリス・ハルツィナの言っていたことは、本当?」

 

 「そうだよ。

 

 神代魔法を、さっきゲットした昇華魔法で一段進化させ、組み合わせれば、神の御業、概念魔法に至る。

 

 ミレディちゃんも使ったことあるよ。

 

 『極限の意思』で、やっと、使える程度だけどね。

 

 理を超えて、概念を生み出す。」

 

 「そうよね…

 

 …あの『導越の羅針盤』、なんとなく地球の位置までわかったものね。

 

 ミレディ、それで、ずっとおかしいと思ってたことに、疑問が一つ増えたのよ。

 

 技能って、全部、魔法よね。『魔法力場全否定』すら。

 

 よくよく考えれば『言語理解』すらおかしいのよ。言葉が通じるのも読めるのも当然だと思ってたから気づけなかったけど。

 

 それに、『魔法力場全否定』じたい、別の世界の法則を押し付ける、超常的なモノ。

 

 私は、魔力がないから魔法を使えない、そう思ってきたけど…

 

 …ミレディ、本当に、魔法に魔力は必要なの?

 

 言い換えるわ。

 

 概念魔法は、魔法の理すら、超えているんじゃない?」

 

 「…どういう、意味?」

 

 「私が魔法を嫌ってきたのは、魔法が、私が知る理に反してきたから。

 

 でも、魔法もまた、私が魔法力場理論と呼ぶ理論にそって、魔力を伝播子で伝播させ、魔力場を形成し、それによりエネルギーや物質に作用してその状態を変えている。その限りにおいて、この世界の法則。

 

 そこにあって、概念魔法は、なに?

 

 それは、本当に魔法?

 

 概念は、物理法則とは何の関係もなく、人間の頭に根差すもの。それを、どうして作れるの?」

 

 「ミレディちゃんには、ヒカリが何言ってるのかさっぱりだよ…」

 

 「ごめんなさい。

 

 …でも、それくらい、わけがわからないでいるの。」

 

―*―

 

 もしかしたら、すべてを、見直さなければならないかもしれない。

 

 科学の法則と言うのは、誰によっても差が出ない、再現的なモノ。それが科学とオカルトの違い。

 

 火をつける時に、誰がやっても同じ火がつくのなら科学だが、ある人が呪文を唱えた時だけ炎の魔人が現れるというのならそれはオカルトで、なんかのマジック。

 

 だから、誰がやっても、同じ魔力を同じ魔法陣なら同じ魔法で同じ結果になる以上、ト-タスの魔法は科学の範疇に入るべきもので、だからこそ私は「魔力はエネルギー伝播」「伝播子が存在し、力を伝える場を形成する」「伝播されたエネルギーによって、物質の状態が変化する」までの仮説を立て、特に反証が見つからないと思ってきた。

 

 すでに、標準理論上での、魔力伝播子の絞り込みまで行った。もしかして、魔法の法則は、地球にすでにあった法則なのではないかと言うことも。

 

 けれど、「概念に干渉し、概念を創造する」、これだけはどうにもならない。

 

 概念などというものはそもそも、理論でどうにかするものではない。人間に根差すものだ。

 

 それどころか、概念って…

 

 …日本人は虹を七色だと思っている。だけど、多くの国の多くの民族にとって、「七色の虹」はフェイク。

 

 虹は6色だったり、5色だったり、人によっては2色だったりする。それぞれの人にとって、虹というのはそういうもので、概念とはかくのごとく各人に依存する。

 

 よりにもよって「概念を生み出し、作り替える」だなんて…

 

 概念を構成するのは、物質でも、エネルギーでもない。単純に各個人の認識でしかない。

 

 …でも、だったら、概念でしか認識できないこの世界そのものも…

 

 ダメよ、ヒカリ・ヒトツイシ。それは、世界の仕組みを根底からひっくり返す連想だわ。

 

 世界が誰にも由来しないから、誰が実験しても同じ結果という根本の下に、科学的思想が成り立ってきた。

 

 その連想は、非科学、オカルト。

 

 いくら、魔法が、各人に根差しているように見えても。

 

 現象の主語は常に「it」でなければならない。

 

 さて、そう考えた上で。

 

 概念と言う、人間がいて初めて成り立つそれに立脚する魔法?

 

 …魔法を加えたこの世界の法則すら、捻じ曲げている。

 

 あくまで行使者の人間だって、物理的実体だ。そこから発せられる質量粒子の運動量とエネルギーで周囲と相互作用を起こしている点は、たとえ計算式に「魔力エネルギー」「魔力伝播子」を含めたところで違いはない。

 

 その大前提を、無視する魔法…?それはもはや、魔法でも何でもないし、それに…

 

 …それでも、それは、この世界の法則の法則の外側で動く作用だ。それならば法則が異なる宇宙の間に存在する「事象の地平面」などという煩わしいものに邪魔されず、別の世界へ行くことも、容易いのかもしれない。

 

 だけど…

 

 …概念魔法は、字面だけで理解していいのならば、法則によって駆動していた世界を、人間の想い、認識のもとに引きずりおろす魔法。

 

 私が信じ、追い求めてきた、万象を司る法則、その真理は、「極限の意思」なんていう、たった一人の気持ちに世界を譲り渡してしまうほど、軽いものなの?

 

 私は、何を信じて、何を求めるべきなの?

 

 私が、そして人類すべてが求めてきた真理は、もしかして、探究に値するモノじゃなく…

 

 「ダメね。知らないことが多すぎるのに考えすぎて、結論が出せないのに悪いほうへ考えてしまうわ。」

 

 いつでもどんなところでも考え事ができる…ってクセも、良し悪しね…

 

 「たまには、香織だけじゃなく、シアの恋路も応援することにしましょうか。」

 

 「な、なんでいるって気づいたんですか!?」

 

 「え?

 

 …まあいいじゃない。それより、私、南雲君を誘惑する方法をいくつか知ってるんだけど…

 

 …宝の持ち腐れだから、伝授されてはくれないかしら?」

 

 あ、食いついた。

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