ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結 作:十二の子
…ドイツ語の単位落としてたんだがどうすりゃいい?(苦笑)まあ来年再履修しろよって話ですが。にしても50点台はかえって60に届きそうなのが悔しい。
―*―
鏡屋敷…とでも、言い表すのかしらね。
氷が、全反射を起こして、私たちの姿をきれいに映し出している。…あれ?額の赤いのは何かしら…あ、さっきまで突っ伏して寝てたから…
「…ん?」
「何かしら?」
「どうかしたのか?」
「あ、いや、今、何か聞こえなかったか?人の声みたいな。こう囁く感じで…」
「天乃河君には人の声に聞こえたのね?私にもなんかこう耳をくすぐる感じで…参考までに、なんて聞こえたの?」
「『このままでいいのか』って…」
そりゃああなたの場合良くないでしょうけど…
…あ、私にも聞こえて来た。
ー「本当は、怖いんでしょう?」
「『本当は、怖いんでしょう?責任なんか果たしたくないくせに』…?」
「ひ、光ちゃん?
…っ!?」
「香織、どうした?
…なるほど、そういうことか。」
「ん…もしかして、心の声?」
「とりあえずミレディをボコればいいですかぁ?」
「それだ。」
ー「そうはしていられないのはいつも口に出している通りなのに、御託で正当化して、偉そうに口だけ出す。変わってないのね?」
「な、なんで流れるようにしてミレディちゃんにしわ寄せがいくかな!」
「だって自業自得じゃろう…」
変わってないも何も、私にできることなんて口を出すことだけでしょう。
ー「そうやってまた屁理屈を並べても、着実に否定されようとしてるのに。」
…あんまりマジになって聞くなと、南雲君も言っているわよ?これ以上聞くべきなの?
ー「そうやって、いざとなると他人の優しさに頼る。
どうせあなたには、今リフレッシュのためにかけてもらってる魂魄魔法すら、使うことができない。否、怖がって使っていない。
そうですら、ないでしょ?」
…それで?この非常事態に、そのことが何の関係があるの?
ズルくても、利用してるだけだとしても、それでも私は生き抜いて、追い求めるわよ?
ー「うんまあそうなんでしょうね。
でも、とっくに気づいてない?
だって、あなたが思う魔法の正体は。
だったら、使えないんじゃなくて、意地とわがままで使ってないんでしょ?」
…だったらどうだと言うの?
ー「もう、あなたは知っているんでしょ?
どうして、責任を果たせないの?果たさないの?
もはや、行く先を阻む者はなく。
すでに、世界は私たちの手の中にあると言ってもいいのに。」
それはおごりよ。
私たちは強くなりすぎた。だから万能感を抱いているだけで、私が奥底で考えてることは、誤謬、とまで言わなくても科学ではなく哲学。
ー「とうに状況を、インフラトン理論なんてわけわからないものを持ち出してなお説明しきれなくなっているのに?」
思考による脳内の電位変化によって魔力伝播子に運動量が与えられ、目的の物質に光速で到達して状態を改変する。それだけの話。
ー「ミレディが嘘をついてないのはわかってるくせに。
技能は、言語理解にしても、魔力と関わりない技能にしても、本当はそれ自体一つの概念魔法。そう仮定したら、おのずと答えは出てこない?
科学を、実験者によって結果が変わらない物事のことだとしたら、だって、言うまでもなく、個人によって種類も発動の結果も異なる技能は?」
…百歩譲って、この世界に、科学を超えているように見える事象があることは認めましょう。魔力も他のエネルギーや伝播子・力場なしに当たり前のように使われている「技能」がその一つかもしれないことも。
ー「それを概念魔法になぞらえる意味は分かっているわよね?
『極限の意思』が、何かを成し遂げようとする強力な想いのことだとしたら、あって当然で発動して当然の各技能に対しても各人は、『発動して当然だろう』って言う『究極の意思』を持っているものね。
『勇者として異世界に来たんだから、なにか特殊な技能の一つもあって当然だ。』
それどころか『あいつらは勇者として召喚されたんだから、強くて当然だ』って言うのも、『究極の意思』?そりゃあ一人一人なら弱いでしょうけど、聖教教会だけで何千何万といて『エヒト様が呼ばれた者だから世界を救えるすごい力を持ってて当然』って想ったらすごいわね?
そしてあなたは思った。『魔法なんてそんな馬鹿な』って。
それどころか、今も、そう思っている。心の底で」
原理がわかった今、そう思うわけないでしょう?
ー「私はあなたの深層心理なのに?」
ああそう?
表に出ている心理は深層心理から見て氷山の一角、意識は無意識に比べてはるかに少ない…なんて、疑似科学でしょうに。
「ゴールだよ!」
「…太陽、いや、罠だな。一気に突破するぞ!」
タイムアップよ。どうせ、睡眠時間が足りなかっただけのことでしょう。
「わかったわ!」
―*―
ダイヤモンドダストと雪煙の中から現れた氷の巨人、フロストゴーレムは、全員の前に立ちふさがった。
ミレディだけは、ピースを片目に添えるポーズをした瞬間にゴーレムがおじぎして道を開け、転移陣が現れたが、他の10人はそうは行かない。
「あ、一人一体だからね!寄生プレイでうまく行くと思った?残念でした、プギャー!」
これまでのうっ憤を盛大に晴らすかのような叫びとともに、ミレディは転移で逃げた。
―*―
時折、天乃河君の飛ばしているのであろう聖剣砲撃が飛んでくるんだけど…
…ささやき声で、意識を誘導しているのかしら?
いや、これは、暗示ね…
…絶妙なタイミングで、深層心理の存在と、認識によって人間はいくらでも世界を歪んでとらえられることを証明しに来るなんて…なんと意地の悪い。
でも、そこまでイヤガラセするのなら、私にも考えがある。
レンジファインダー、セットよし。
光干渉度、最大を確認。
距離10,方位右56…ジョークみたいにズレてるわね。
でも、私の目が私を裏切っても、光速度不変の原理は私を裏切らない。
「カチューシャロケット、てっ!」
よし、倒せた。
借り物の力、頼りきりの私でも、とにかくもできてることがある。心を縮れさせるにはまだ早いじゃない。
―*―
しばらくして、天乃河を最後とし、全員が脱出を完了した。
ミレディの姿はすでになく、それはミレディほどの魔法使いであっても無効化できないのみならず脅威となる仕掛けがあるためにバックドアで回避したことを示す(当然魔物ではありえない。服従させていないわけがない)。
香織が、面倒そうながらも回復魔法を投げつけるようにして使い、それでボロボロになっていた天乃河は全回復する。
そして、10人は踏み出す。
ーいや、5人と4人と1人か?
彼ら彼女らの足元に、転移魔法の魔法陣が現れ、そして、どこかへ連れ去った。
次回はオリヒロ単独の種明かし回です。
追記:昨日深夜、ありふれ×マギレコのクロスオーバー「ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ」などという冒険作を先行投稿しました。本編ではないので別にどうでもいいっちゃいいのですが、それでも良ければ、作者の暴走っぷりがうかがえます。