ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 ※舞台裏では、原作通り、ハジメがぶちぎれています。


35 「エリ・ナカムラの生きる意義の証明」

―*―

 

 エヒトは、己の演出する舞台であるからこそ、神山に現れて、世界を完全に破壊するだろうー

 

 ー概念魔法「我、汝の絶対なる死を望む」によってハジメと香織に殺される寸前、アルヴヘイトはそう言い残した。

 

 だから、ハジメは、決意した。

 

 ユエをさらったエヒトを殺してユエを奪い返し、ついでに、一石光も、中村恵理ともどもぶっ殺す。

 

 そのために、まずは手始めに、先陣きって現れるだろう無数の「神の使徒」をどうにかしなくてはいけない。

 

 神山を標的として、3つの、真円形の金属リングが錬成で形成された。その構造たるや、オルクス大迷宮とライセン大迷宮を利用した周長100キロに及ぶバケモノである。

 

 これに、概念魔法を付与。用いた「究極の意思」は「我、敵を害するまで止まることを許さず」ーなんともはや、つまり、概念魔法によって駆動する円形加速器である。

 

 通常、粒子加速器は誰かを傷つけたりはしない。しかし、概念魔法駆動ともなると桁の10や20は飛び超え、魔力伝播場そのものを(LHC加速器がヒッグス場からヒッグス粒子を叩き出したように)物理的にぶち壊して魔力伝播子を移動させる、つまり、物理的に、何もなさそうな空間を膨大な魔力で爆発させるだけの超常的な粒子ビームを生み出すことができるーと、一石光が、計算式や設計図と共に書き残していた。

 

 他にやり方もあったろうに、こんなふざけきったものをわざわざ用意したのは、つまり、その理論を実証させてやろうという意趣返しにほかならない(もちろん、エヒトが最初に出てきたとしても、加速器の超エネルギービームはユエのいる空間から魔力を叩き出す=エヒトをユエからたたき出すことができる)。

 

 今の一石光ならば、言っただろうー「その出力は、理論的な許容限界を超えている。それほどのビームは、インフラトンを破壊することで、情報そのものを崩壊、消滅させる、いわば『局所的ビッグクランチ』によって『局所的な宇宙終焉』を引き起こさせる最悪の量子兵器だ」と。

 

 因果律的に本来起りえない「情報の消滅」を、引き起こしてしまう、概念魔法を悪用した超常兵器。そのスイッチがまだ入っていないのは、誰にとっても、幸運だった。

 

 神山上空に、ポンと、虚空から放り出されたように、灰色の翼を備えた少女が、何かを抱えるように舞い降りた。

 

―*―

 

 「エリリン…」

 

 「恵理…」

 

 「ユエ…」

 

 「ユエちゃん…恵理…」

 

 「ユエさん…」

 

 「ユエ…」

 

 「恵理、ユエ…」

 

 丸くなって寝ているように見えるユエと、そして、それを抱き灰翼を震わす中村恵理。

 

 本来は、駆け付けた誰しもが言うべきことがあったのだが、わけのわからない状況にセリフを絶した。

 

 こういう時、ある程度離れた者がいると一番助かるー誰が、坂上龍太郎に感謝する日が来ると思おうか?

 

 パンパン!

 

 「なあ、とりあえず、何が何だかわかんねえ。

 

 で、誰をぶん殴ればいい?」

 

 「「「「「「「バカ?」」」」」」」

 

 「何でだ…あ、バカだからか!?」

 

 自分で納得するのかよーと誰もが思いながら、研鑽の日々は無駄ではなく、一気に全員が動いた。

 

 ハジメが義眼でユエをにらんで一気にジャンプ、ユエを奪い取って30メートルほど先に着地し、香織が銃口を中村に向け、龍化したティオの上にシアが飛び乗って中村の上でドリュッケンを構える。そして、谷口は中村を覆う結界を作り、天乃河は、聖剣の腹で香織の銃口をふさいでいた。

 

 「天乃河、殺すよ?」

 

 「香織…言いたくないが、恵理をも俺から奪うなら、もう、容赦はしないぞ。」

 

 「え…光輝くん?」

 

 「ああ。恵理の…

 

 …お前の、勇者だよっ!」

 

 聖剣が、ハジメ謹製の銃をひん曲げた。

 

 「なっ!」

 

 香織が、困惑しながら飛びのき、中村は、天乃河の背中にしがみつく。

 

 「光輝くぅん…」

 

 「何よこの状況っ!」

 

 どっちについてどうすればいいのかわからなくなっていた雫が叫ぶー「説明しなさいっ!」と。どうやら彼女の苦労人気質は終わりが見えない。

 

 「…雫の言うとおりだ。説明してもらおうか。」

 

 無茶苦茶な威圧を放ちつつ、ハジメが言った、否、命令した。

 

 「まず、ユエに憑いてた、クソ神はどうなった?寝てるだけでユエのどこにも見当たらないんだが。」

 

 「…殺されたよ。一石にね。」

 

 「「「「「「「「「はい!?」」」」」」」」」

 

 中村とユエを見た時に倍する衝撃が、彼らを襲った。

 

―*―

 

 「王都のアレが終わってから、ボクはずっと、エヒトのところにいた。

 

 だけど、そんなボクでもわかる。

 

 あれは、圧倒的すぎた…」

 

 ゴミクズだなんてとんでもない。

 

 ボクが敵に回していいナンカじゃなかった。

 

―*―

 

 「では、消えてもらおう、アンチテーゼ。

 

  エヒトルジュエの名において命ずるー『消滅せよ』

 

 ふ、消えたか…あっけない。

 

 …ん!?」

 

 ズ!

 

 世界が揺らぐ、音がした。

 

 そして、つかの間、エヒトと中村は、何もかもが0と1に還元されて消えていくのを幻視しー

 

 ー気づけば、一石はちゃんと、そこにいた。

 

 「バカな!?

 

 『消滅せよ!』『消滅せよ!』『消滅せよ!』なぜ消えない!」

 

 「…私の世界の軸は、私しか、ありえないから?」

 

 例えば、「太陽がない世界」を仮定する。

 

 それは、「太陽がある世界」から見れば、世迷言、戯言に過ぎない。

 

 ならば、「1秒後に太陽がある世界」から見ても、「今、太陽がない世界」は戯言に過ぎない。

 

 「生成魔法で作り出したの、ストレンジレット1粒子だけじゃないのよ。

 

 あなた、うかつにもその間、神域との間を開けていたでしょう?

 

 だから、その間に。

 

 神域に、膨大な超光速子タキオンを生成した。」

 

 「タ、タキオン?」

 

 「タキオンは、相対性理論的に、未来から過去にさかのぼる、虚数質量の粒子よ。」

 

 「遡時、だと…バカな!そんなことができるはず!」

 

 「だって相対性理論を十分に理解していないと、タキオンをイメージすることは不可能だし、そもそも計算式の上の存在を実体化するなんてねえ…

 

 …現に、あなたには、遡時粒子なんて想像できないし、だから創造できない。私には数式と生成魔法で創ることはできるけどあなたはそれを知らない。

 

 もちろん、虚数質量物質なんて地球でもトータスでも存在しえない計算上のあやだけど、ここは神域、自由度は無限大!

 

 私はね?

 

 タキオン粒子で1秒後の自分の構成情報を常にバックアップさせてるの。

 

 …1秒後の存在する私にとって、今消滅した私は、戯言に過ぎない。」

 

 「では『1秒後に消滅せよ』

 

 …なぜだっ!」

 

 「タキオンがどういうものかわかってないのに、タキオンの私の消滅をイメージできるわけないでしょ?

 

 だから、1秒後の私によって私の存在が保証される限り私の消滅は戯言に過ぎず、1秒後にタキオンが生成された時点で、『私が消滅した世界』のみが消滅する。

 

 シュレディンガー的に言えば、箱の中から出して1時間後にネコが生きていることが確定しているのに、箱を開けたらネコが死んでいた世界は、存在できないのよ。」

 

 「それでは、我は貴様を倒せんではないか!」

 

 イメージできない、すなわち概念を作用させられない未来の何かによって存在情報を裏打ちされ、上書きされる一石光。つまり「人を殺してみたら未来からそいつが来て『未来で生きてるのに死んだわけないだろうに』と言うとともにその人が死んだ世界線がなくなっていた」というジョークのような事態である。

 

 「さて、と。

 

 ずいぶん、いいようにしてくれたわね。

 

 『想像は現実化しうる。世界を証明する私の存在こそが、唯一の世界の真理』。

 

 だから私は、ネコがいる箱のふたを開けて、ユエが偶然にも解放された世界を選ぶわ。」

 

 主体に観測されない世界は、ないも同じ。

 

 エヒトの「神言」も、突き詰めればコレだ。しかし、一石光のそれは究極的である。

 

 「なっ、ただの人間ごときに、我の存在に干渉することができるだと!?」

 

 ユエから、白光でできた人型実体が分離し、その過程で幾度も神域が「エヒトが望む世界」の観測的存在否定をかまされて鳴動する。

 

 「それができちゃうのよ。困ったわね。

 

 …ホント、困ったわね。」

 

 エヒトはいよいよ震え、無数の魔法が光の濁流となり一石を襲うーが、「未来に自分が存在すること」が存在の証明である存在に攻撃をしたところで「たまたますべての攻撃が無効・失敗・外れである世界」以外は戯言でしかない。

 

 「や、止めろ!止めろ!このエヒトルジュエが止めろと言っている!言うことを聞け!止めろと言っているのだ!」

 

 ビクビク震えるエヒト。

 

 「中村さん、ユエを地上へ。

 

 贖罪しろなんて、どうせ誰も言えやしないわよ。誰もが等しく血と反吐と肉片と灰の上に立っているのだから。」

 

 「う、うん…」

 

 「絶対、殺されるんじゃないわよ。

 

 本来、正史では、原作では幸せになれなかったあなたを生かせるとしたら、それが私の、たった一つの存在理由なんだから!」

 

―*―

 

 「そうして、ボクは必死に、神域から飛び出したんだ。ユエを抱えてね。

 

 …後ろで、エヒトの断末魔が聞こえたよ。

 

 『殺すっ、殺すっ、殺すっ、殺してやるぞっ、アンチテーゼ』って叫びながら、最後には『ありえない!こんな結末、認めてなるか!』って言ってね。

 

 怖すぎて、一目散で逃げてきた。

 

 …あれは、世界を滅ぼす目だったよ…」

 

 「…光ちゃんが、世界を滅ぼす?」

 

 「うん…

 

 …香織。

 

 エヒトが、最後に一石さんに知識を与えた後。

 

 一石さんの目は、鏡で見たどんなボクの目より、ヤバかった。」

 

 狂いきってた。あれは、あの目は、消される…

 

 「愛情と、冷静で冷酷な気狂い。

 

 ボクにはどうにもできない…だから、せめて最期の日は、一石さんが望んだとおり、ボクの王子様の傍にいたい…」

 

 「ん…

 

 …私も、見てた。

 

 アレは、ダメ…」

 

 「ユエ、大丈夫なのか!?」

 

 「ん、大丈夫…

 

 …ヒカリは、全部、壊すつもりだと思う…

 

 私は、絶対、ハジメとの未来を壊されたくない。だから…」

 

 「ああ。」

 

 「私も。」

 

 「ぶっ飛ばす相手が変わっただけですぅ!」

 

 「少々予定変更じゃの。」

 

 「私も、いいわよね?」

 

 「恵理は、必ず守る。もう一石に奪わせてたまるか!」

 

 「いっちょやってやるかあ!」

 

 「クソ神を倒しても世界を壊されちゃうんじゃあね。

 

 ミレディちゃんも加勢するよ!」

 

 …バ、バカなの、このゴミども…

 

 「ほら、エリリン♪

 

 思ってたのと違うけど。

 

 エリリンも。」

 

 そっか、みんな…

 

 「ボクも、いいのかい?」

 

 「そのために、鈴はここまで来たんだよ。」

 

 はは…

 

 …光輝くんとボクの世界、そして愉快なサブキャラクターたち!

 

 もうちょっと、頑張ってみるか!




 ハジメ作加速器、通称:「空間魔力を空間から叩き出し機」。

 一石光の能力は、世界の可能性そのものの否定です。ートンネル効果により、同じ準位にあるならば障壁を飛び超える可能性があります。コップの中の陽子は同じエネルギーだけ存在に要するコップの外へすり抜けるかもしれません。しかし質量が大きいほどその確率は低くなり、人間が扉の外へすり抜ける/エヒトがユエから分離するには宇宙を何回リセットしても足りないほどの試行回数が必要でしょう。しかし、そうならない世界の存在が観測されなくなっては、もはや、そうなるしかないのです。

 かくて一石光は、無意識による束縛を乗り越え、世界を思い通りに想像で創造する力を得ました。

 -最終決戦です(オリヒロをラスボスにする2次創作者なんてハーメルンでも珍しいかもですね)。
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