ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結 作:十二の子
―*―
誰も、こんなことを望まないから。
「想像の現実化」も、概念魔法も、同質の力に過ぎない。だから、概念魔法の取得者たちが逆の概念を生み出してきたのなら、世界の改変力が足りないのは明らかだった。
ならばおとなしく、「想像の現実化による直接改変」に頼らず、世界を滅ぼすしかない。
「さあ、あらゆる物理学者が憧れた、超常たる思考実験を現実のものとしましょう!
『超対称性粒子の顕現』!
『アクシオン磁気崩壊』!
『反素粒子ビーム』!
『真空期待値からのエネルギー取り出し』!」
ダークマターたりえる質量成分を増やして全員にかかる重力を倍化させ。
プリマコフ効果による閃光で視力を奪い。
対生成させた反物質を照射し。
その過程で余剰6次元からエネルギーを取り出して使わせてもらう。
これだけすれば、まず間違いなく、粒子的に対象を破壊できる。
できる…できてない!?
―*―
「そんなヤワな攻撃が効くと思ったか。」
「ヤワどころか不可視だと思うんだけど、いったい何がどうなって、粒子ビームを耐えてるわけ?」
「こうやるんだよ。」
白亜の空間の中で、ハジメの腕ー義手が、震えた。
「まさか、亜光速で腕を動かして…っ!」
「この親指と人差し指のギミック、お前が思いついたんだったよな。
走査型電子顕微鏡の原理を応用した、素粒子ピンセット!」
「光速の10%で発射した粒子をつかみ捨てるとか無茶苦茶でしょう!
…いいわ。
『位相欠陥相転移』
『振動モノポール陽子崩壊』
『量子テレポーテーション0時間転移』」
―*―
戦い慣れてないからか「想像の現実化」とやらのためなのか、視線と殺気でだいたいの位置がわかるのが救いだが…
…次から次へと、明らかに致命的な、しかも原子よりちゃちい攻撃を転移させてきやがる…
「香織、ユエ、シア、ティオ、雫」
俺は、目でメッセージを送った。ーさっきから、攻撃は俺しか狙ってない。しかも玉座に座ったままと来た。なら、俺の彼女たちならやってくれる。
「どうした?打ちとめか?」
「そんなに欲しいなら宇宙滅亡クラスを投げんでもないけど、それで私が先に死んで修復されると困るのよ…とかく、量子力学攻撃は威力がアレなわりに見えにくいし、想像力を浪費するし、おまけに観測してないとトンネル効果でどっか行っちゃうのよね…
…あなた、エヒトルジュエや私のような『知り過ぎて、神』と比べて、充分に『魔王』でしょうよ。」
「じゃあ、そろそろ言うことを」
「聞けないの。
あなたのためだから。
『想像は現実化している』発動。
全可変ステータスを∞に。」
…俺のために?余計なことを!
薬指のギミック…「生成」「錬成」!
「私が、その義手のスペックを忘れたと思ったの?
ウルの魔人族と一緒にしないで!」
カーボンナノチューブが、消されたっ!
「さすがにナノサイズは耐性とかの問題じゃないからベヒモスでも貫通できる…なんて言ったのは私だけど、タネがわかってれば致死毒を送り込まれる前に燃やすに決まってるでしょう。
自分に向けられた時のことを、考えないとでも!?」
「お前、中指は対策しようがないって言ってたよな!」
「っ!大盤振る舞いじゃない!今まで機会なかったのに、最期に使ってるとこ見せてくれてありがとう!」
なに勝手に最期にしてやがる。
「お前が先手先手読むから義手を使うほど追い詰められたことがなかったんだろうが!感謝してるよホント!」
おっと危ない、間違ったら俺が吹っ飛ぶ。
「ちょっと、私の体内の窒素使ったでしょ!
グハァッ!」
やったか!?
「…やるじゃない。
神格でもないのに、私にタキオンバックアップを使わせるなんて、まさに魔王ね…」
…データで再生してる、だと…!?
「…『想像は現実化している。世界を証明する私の存在こそが、唯一の世界の真理』ー『私の無意識領域を意識領域へ同化』『脳の100%を随意領域へ』」
―*―
これが、ホモ・サピエンスの脳みそにかけられた「想像現実化に対する無意識セーフティーネット」を破ると言うことなのね。
世界が、掌の中じゃない。
「概念魔法『神威の前に因果はうつろ』
概念魔法『道化たれども神の慈悲』
概念魔法『神威見通すは森羅万象』」
さあ、現実改変の難易度は論外クラス。
0と1からなり、質量とベクトルからなる情報の世界が、鮮明に見えるわ!
今ぞ、存分に、殴りあいましょう!
…ついでに言うけど、情報次元にあると、上下前後左右関係ないのよね。
「概念魔法『押しとどむ時間の矢』
…なんで、止まらないの!?」
時間が止まってるのに進むだなんて!それほどまでに香織、あなたたちの「究極の意思」が堅いの!?
「っ、仕方ないわね。
想像の現実化『押しとどむ時間の矢』」
よし。
いくら私でも、香織を目の前にして殺すのはちょっと無理。
…さて、いくら魔王でも、時間には勝てないか。
仕上げね。
「想像の現実化『我、汝の相対的なる死を望む』」
…これで、良かったのよね、アインシュタイン…
「まだまだだ、一石光。」
ー!?
「今、消したはず!?それに時間は止まって」
「小指」
あ、まさか…
「宝物庫に自分を隠したって言うの!?でもアレは一度入ったら誰も出てこれないはず!」
面白過ぎるわよ!
もう、万物の理論とか関係ない!
戦いが、こんなにも愉しいだなんて!
「想像の現実化『神威ありて超えられない壁』」
「概念魔法『臨んだ場所へ我を運ぶ』!」
「想像のげんじ」
「させねえぞ!『弱魄』!」
「光輝くん行って!『縛魂』!」
っ、情報干渉!?
まずいまずい、今思考能力低下は想像力が落ちて改変力が
「概念魔法『汝、我より速く考えることを禁ず』」
「概念魔法『我、汝の一手先を知ることを望む』」
「香織、ユエ、仲良くなったじゃない…!
でも、なんで邪魔するの!
私はただ、あなたたちが元居る場所に帰してあげようとしているだけなのに!
これが世界の摂理、真理なの!
こんなまがい物の世界失くして!
おとなしく、戻ろうよっ!戻ってよっ!
いなくなる私に、いなくなりたくないだなんて、思わせないで!」
「そんなこと、私はしてほしくない!
たとえ本来いないはずの人物でも!
この世界がまがい物でも!
私と光ちゃんの絆は、私にとって本物、真理だよ!
だから!
いなくなっちゃダメ!」
そんなこと、言わないでよ…
「もう、躊躇なく殴って言うこと聞かすわよっ!」
「上等だよっ!」
もう、理屈とか理論とか仮説とかどうでもいい。
「おせっかいな私の想い、受け取れぇぇぇっっ!!!」
「光ちゃんのバカぁぁぁぁっっ!!!」
―*―
もはや理論も仮説も何もなかった。
想いの強いほうが勝つ、ただそれだけ。
自分を否定するか。
友達を認めるか。
衝突した拳を基点に、いかなる理論でも説明できない、何が何だかわからない何かが、物質世界と情報次元をひとしなみに駆け抜けた。
トータスでは、まだ頑固にエヒトを信奉していた者たちが一斉に卒倒した。
地球では、実害はないにもかかわらずあらゆる地震計が一斉に振り切れ、重力波望遠鏡は巨大すぎる重力波を感知し天文学者をビビらせた。
汎次元空間を伝わるその想いは、あらゆる可能性世界を駆け抜けたし、あらゆる物語世界で主人公とは何の関係もないところに一波乱を巻き起こした。どんな世界にもバタフライエフェクトがなかったのは単なる必然である。
そして、衝突点では。
星が、一つ、流れた。
暗黒が、白亜の世界に生まれた。
最強の法則ーその名は「想いの強いほうが、勝つ!」
ーオマケでギミック一覧(指1つに1つ、第1のみ親指&人差し指)ー
ギミック1:どこぞの第二位もビックリな、素粒子つまみとりピンセット(ただし、正確には指先からのエネルギービームで粒子をはさみその運動を制限してつまんでいる)。
ギミック2:カーボンナノチューブの極細針(地平線まで届く強度)を瞬時錬成。管の中からポロニウムなど毒物を毛細管現象で注入し即死させる。細すぎるので細胞膜と細胞膜の間に入り込める(塗り薬が皮膚にしみこむのと一緒)ため、一切の装甲は無意味。
ギミック3:遠距離ポリ窒素錬成。空気伝いに遠距離にある窒素を瞬時に最強の爆発物(化学性。核変化性や量子性は別)であるポリ窒素へ転換。
ギミック4:宝物庫爆弾。マトリョーシカ式に詰め込まれた宝物庫を一気に開放する。相手を取り込んだ後無秩序に収納しなおされるので誰にも取り込まれたものを取り出せない。