ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 落下。



4 「ニュートンの万有引力の法則」

―*―

 

 オルクス大迷宮。

 

 一石光は、さすがにいつものように読書しながらではないけれども、戦いもせず、ただただ歩き続けていた。

 

 前方では天之河らのパーティーが、魔物を一網打尽十把一絡げに掃討し。

 

 近くでは、騎士団が弱らせた魔物を、ハジメが錬成で固定しながら短剣で仕留めている。そんなハジメを、ちょくちょく香織が振り返って、熱いまなざしを向けていた。

 

 騎士団もクラスメイトも、「やる気のない奴」「怪しい奴」と思っているが、これでも当の一石としては協力しているつもりである…あまり戦闘要員に近づくと魔法を消してしまうかもと恐れたのだった。

 

 「魔法と共に発される光は?

 

 チェレンコフ光?

 

 光子が放出されている?

 

 …早くハジメが錬成師として成長してくれれば、もっといい観測機器と、もしかしたら加速器が…」

 

 ぶつぶつと呟いている間に、一同は20階層にまで到達した。

 

 そして。

 

 チュドーンッ!

 

 「けほけほ、何…?」

 

 騎士団もクラスメイトも、「コイツ、今までの騒ぎを把握していないのか?」と、嘘だろうと一石を見つめる。

 

 輝く鉱石が、洞窟の壁面に露出していた。

 

 「…グランツ鉱石?確か宝飾品だったかしら?」

 

 「お、おお良く知っているなイチイシ…」

 

 宝飾品と聞いて、香織はハジメをチラチラ見る。

 

 「だったら、俺等で回収しようぜ!」

 

 そう言って檜山たち4人が動き出し。

 

 メルド団長がむやみに触れるなと警告するのを聞き流し、檜山は鉱石に触れようと…

 

 「団長、トラップです!」

 

 -もし、一瞬でも早く、騎士アランが叫んでいれば、トラップは一石光の技能により無効化されていただろう。しかし、今回に限っては、遅すぎた。

 

 強い光が、一同を包み…

 

―*―

 

 …次の瞬間、騎士団もクラスメイトも、見覚えのないところにいた。

 

 ただひとり光を直視していた一石は、しばらく、見えなくなった目をつむり。

 

 その間に、メルド団長は周囲を確認した。

 

 橋の上。

 

 向こうには上層につながりそうな階段、こっちには下層につながりそうな階段。

 

 上層への階段の手前が、魔法陣に包まれ、大量のガイコツの魔物が出現する。

 

 そして下層への階段の手前には、巨大な一帯の魔物。

 

 「あれは………ベヒモス…なのか?」

 

―*―

 

 よく見えないけど、のっぴきならない事態みたいね。

 

 「全否定」

 

 法則名を捜すのもためらわれた…筋肉もなしにホネホネが動くなんて、ありとあらゆる自然の摂理に反している。

 

 ガラガラガッシャ―ン。

 

 「あ、ありがとう、一石さん。」

 

 「礼は要らないわ園部さん。それより落ち着いて。見たところ若干2名以外のステータスならこいつらにも勝てるから冷静に!早く!」

 

 さてと南雲君は…なんで前線にいるのよっ!

 

―*―

 

 ハジメによって連れ戻された天之河のカリスマ性は目を見張るものがあった。

 

 天翔閃はトラウムソルジャーたちを吹き飛ばしていき、さらに仕方なく天之河パーティーに近づいた一石の「全否定」によりトラウムソルジャーは手を出すことができなかった。

 

 しかし。

 

 一方では錬成を使って必死にベヒモスの足止めをしていたハジメは、ピンチに陥っていた。

 

 土の塊にベヒモスの頭を固定しながら顔をしかめるハジメを見て、一石は「このままではじり貧だ」と駆けだした。

 

 「メルド団長っ、私が一瞬、アレの突進力を失くします。その間に撤退で!」

 

 「ああっ!」

 

 悲しいかな敏捷力最下位でも、なんとかたどり着いた一石は、ベヒモスの背中をにらみつけ。

 

 「…こんな大型動物が、これだけの突進力と防御力を両立させることはできないし、生物であるからには体温を赤熱するほど上げるなんてできない。

 

 魔物、ベヒモス。私はあなたを、全否定する。」

 

 -法則準拠ー

 

 -魔法法則排除ー

 

 地球の法則に従い、岩で固定された頭を抜こうと角を赤熱させていたベヒモスは頭部全体、脳まで達する大やけどを負った。

 

 「戻るわよ南雲君っ!」

 

 「うん!」

 

 走り出す2人。

 

 後ろで、もがき苦しむベヒモスが、ドタドタとバタつく。

 

 とどめを刺すため、騎士団とクラスメイトが、魔法の一斉攻撃を放った。色とりどりの光の帯が、2人を超えてベヒモスへー

 

 -一つの火球が、針路をクイッと曲げ、落下した。

 

 ハジメの足元で、爆発が起きる。

 

 「がはっ!」

 

 「まったく!」

 

 一石は、吹っ飛ばされたハジメを助け起こそうとかがみ、そして嫌な予感と共に振り向き、青ざめた。

 

 橋が、崩落を始めていた…死の間際にもだえ苦しむベヒモスの蹴りと魔法攻撃の着弾が、石橋をたたきすぎてしまったのだ。

 

 「ちっ!」

 

 ヒビが、ハジメの足元の爆発穴へと伸び。

 

 「ハジメくん!光ちゃん!」

 

 香織が、手を伸ばし。

 

 (私の敏捷力、そして負傷した南雲君じゃ崩落を逃れられない。この手をつかんだら、白崎さんまで巻き込んで…)

 

 一石光は、本能的につかんでしまった手を、離そうとした。

 

 「離さないでっ!」

 

 香織は、その手をギュッと握り。

 

 直後に、橋は、粉々に砕け散った。

 

 (ああ、死ぬのね、私。

 

 アインシュタイン、パパ、ママ、遺志を継げなくて、ごめんなさい…

 

 ニュートン…私と私の両親は墜ちて死ぬけれど、あなたがリンゴを落としたことは恨みません。

 

 白崎さん、なんとかあなただけは…)

 

 一石は、香織を内側に抱きしめ、そして、プレパラートを握りしめた。




 でも、リンゴは砕けなかった。ニュートンがリンゴをとちって落っことしてしまった時に、我々は重力から逃れられなくなり、お盆三刀流は千夜にしかできなくなり、隕石は糸守町に落っこちるようになりました。しかしながら同時に、リンゴがリンゴと判別できる状態で落下してきたことが、「もしかしたら物体が落下しても無事かもしれない」という希望を与えたのですSoGreat!

 ※アホを言うのもたいがいにしましょう。なぜピサの斜塔から物が落ちたのかは、物理法則が人間の営みに左右などされないことを教えてくれます。

 転移の時の放射光を直視したのは、魔法に伴う光の様子を知りたかったからです。

 そして、オリ主の技能の正体がほぼほぼ判明しましたー今回行ったのは、「魔物から一時的に魔法の身体強化を取り除く。すると魔法の効果で加熱していたり加速していたり血液をむりやり末端に送ったりしていた魔物はどうなる?」です(かのイマジンブレーカーが強いのは、相手の異能を消した場合に殴り勝ちできるからです。太宰治の「人間失格」も、彼がめったなことでは死なないから、無効化すると有利なのです。オリ主はそんなことできないししないので、ハジメたちも最初から「異能無効最強」路線はあきらめています)。
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