ありふれていなければならない物理法則で世界最強 ※完結   作:十二の子

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 どうも、大事なシーンを「その間考え事してました」で飛ばすことで定評がある2次創作者です。…原作をお読みください。ただ実は私自身今手元に書籍版がないのですが。


7 「ヒカリ・ヒトツイシの思考実験その1」

―*―

 

 「神代魔法というのは、理解不能ね…」

 

 私は、呟いた。

 

―*―

 

 「あ、あなた、何してるの!」

 

 「何って…食事?」

 

 「しょ、食事って…」

 

 香織とユエがお互いに視線で牽制しながら穏やかに会話する中で、後ろにいた一石光は、「DNA検査したいわね。吸血鬼…」と、ユエの鋭い犬歯を見つめていた。

 

 パンパン。

 

 「はいはい2人。いったん落ち着く!

 

 じゃあ南雲君借りていくから!」

 

 「「ゑ!?」」

 

 バタン。

 

 「ちょっと!抜け駆けするの!?」

 

 「光ちゃん!光ちゃんはハジメくんのこと好きなわけじゃないと思ってたのに!」

 

―*―

 

 「…うすうす、気づいてなかったわけじゃないわよね?」

 

 「まあ…な。

 

 って言うか一石さん、よくわかるな、俺が南雲ハジメだって。」

 

 「いろいろ落としていってくれたからね。クマの毛皮に始まり、助けられたわ。」

 

 一石は、破れた部分にパッチ状に毛皮を当てているうちに革製にすり替わってしまった自分のブレザースカートをひらひらさせて見せた。

 

 「…見栄え悪くない?」

 

 「…今までそんなに明るくなかったんだから、贅沢言わないの。それより、そう思うなら白崎さんに服を作ってあげなさい。私じゃカボチャの馬車のおばあちゃんは身に余るわ。」

 

 「…いや、ここまで連れてきてくれただけでも。死んだものと思っていたからな…」

 

 「あなたがそう思って1層の探索を打ち切ったころ、私たちは神水の鉱脈をたどってあなたが生きている希望を得たわ。」

 

 「そんな入れ違いをしてたのか…

 

 …大変だったか?」

 

 「私は、何もしてないわ。あなたがねぎらうべきは私じゃない。

 

 それに、私は、別にあなたに求めるところがある。」

 

 「お、おう、なんだ?」

 

 「…私の、友達に、なってくれる?」

 

 え?と、変わり果てていたハジメは首をかしげた。

 

 「友達じゃないのか?」

 

―*―

 

 「…話は付いたわ。白崎さん、後は2人でゆっくりじっくりしっぽり」

 

 「良かったね光ちゃん、友達が増えて。それと、疑ってごめん…そうだよね、光ちゃんはそんなずるくないよね。」

 

 「ん。脳みそが恋人の女。」

 

 キリリ、一石は顔をしかめさせた。確かに真理の探究のあまり枯れていると自分でも思う彼女だが、オシャレはすることからわかるように、そこまで言われる筋合いもない。

 

 「で、ユエさん、あなたにはお話が」

 

 「ダメ。香織が抜け駆けしないか見張る。」

 

 「後から現れたあなたが何を。」

 

 「…どうしても邪魔すると言うなら容赦はしない。『蒼天』」

 

 「『熱対流』」

 

 魔法陣とともに生み出された青い炎の塊は、その熱量を持つ空気が軽いことによって、天井までまたたく間に上昇して消えた。

 

 (上昇速度から察するに熱量は数千度…白崎さんと同レベルか、それ以上?)

 

 「…気遣いはうれしいんだけど、光ちゃん、私も、ユエちゃんもいっしょがいいと思う。」

 

 「え?なぜ?」

 

 「…だって、ハジメくん、きっと、ユエちゃんがいなくなったら、悲しむから。」

 

 「なんだ。

 

 あなた、ただのヤンデレじゃなかったのね。」

 

 「…悪口?かな?かな?」

 

 「まさか。」

 

 (行ってらっしゃい)

 

 (行ってくるね。ありがとう)

 

 やっと、ハジメと香織を、引き合わせることができたーきっとこれが、最初のハッピーエンドだと、一石は涙をこぼしながらも、今いる穏やかな空間を調査するため歩き出した。

 

―*―

 

 「南雲くん…ううん、ハジメくん。

 

 守れなくて、ごめんね。」

 

 香織は、思い切りハジメを、抱きしめた。

 

 「し、白崎さ…」

 

 ハジメが、どうするべきか、両腕を泳がせる。

 

 「もう、絶対、離さないから…っ!

 

 私は、ハジメくんを、失いたくないっ!

 

 ずっと、じんぱい、しでっ…」

 

 グスッ。

 

 常に、香織はハジメの足跡をトレースしてきた。だからこそ、「まだ生きている」と「次の足跡の奥で、死んでいるかもしれない」という心理のはざまで、彼女は揺さぶられ続け。

 

 後はもう、言葉にならない。

 

 ひとしきり泣いてから、香織は、顔を上げ、ハジメの顔を見つめた。

 

 「…ん。」

 

 ユエが、うなずきを香織に送る。なんだかんだ言って、認めたのだろう。

 

 「ハジメくん。

 

 私は、あなたが好きです。あの日出会ってから、ずっと…

 

 お互い変わってしまったけど、でも、私の気持ちは変わらなかった。ううん、むしろ…

 

 だから、私と、私と付き合ってください。」

 

 「…俺は、奈落に落ちて、地球に帰ること以外、全部、捨てたつもりだった。

 

 だけどずっと、一緒に落ちた2人はどうなったか、そればかりが頭から離れなかった。

 

 香織…こんな俺で、いいのか?」

 

 「ハジメくんだから、いいんだよ?」

 

 「…ん、私も。

 

 私も、ハジメに助けてもらった。だから…

 

 私も、ハジメのことが好き。香織よりも遅かったかもしれないけど、気持ちなら絶対負けない。」

 

 「…香織、ユエ、優柔不断で、ごめん。」

 

 (どっちも好きじゃ、ダメですか?)

 

 ((いい)よ)

 

―*―

 

 「で?3日3晩出てこないって言うのはどういうつもり?」

 

 一石光は、さすがに呆れかえった。

 

 「いや、その、うん、大人になっちゃった。」

 

 「仲間外れ。」

 

 「…やっぱり、魔法がどうこうに関わらず、ユエは私の敵ね。」

 

 「受けて立つ。」

 

 「いい加減にしろ2人とも。

 

 それで一石、そのアーティファクトの山は?」

 

 「神代の『解放者』オスカー・オルクスが作った、宝の山よ。」

 

 まあ私には持ち腐れの宝だけど、と一石は自嘲した。

 

 「…解放者?」

 

 「詳しくは、本人に聞いてごらんなさい。3階の書斎にいるから。ついでに神代魔法がもらえるわよ。…私は弾いちゃったけど。」

 

 「神代魔法が!?」

 

 「そう。

 

 さあ、百聞は一見に如かず。行った行った!」

 

―*―

 

 生成魔法ーあらゆる物質を、意のままに操る魔法。

 

 原子組成すら変成している節があるが、南雲君に依頼したガイガーカウンターでは放射線を検知できなかったーつまり、原子核変化は起きていないか、起きていたとしても高度に制御され素粒子やエネルギーを放射していない。

 

 少なくとも、質量保存の法則が破られた様子はない。破られていたらエネルギーの流入を心配する必要が…というよりは私が触れた瞬間にE=mc^2でトータスが消滅する可能性を心配しなくてはならなかった。良かった良かった。

 

 魔法の正体も、謎のままだ。

 

 故オスカー・オルクス氏(危うく資源利用されるところだった。「脳みそを持ち歩いてるヒカリは人のこと言えない」には傷つい…ユエ!)によれば、やはりエヒトは邪悪な存在だった。しかし、「天職:無神論者」などという、一歩一歩ごとに神様の存在を冒涜し否定する人物の存在を許容し、あまつさえ魔法によって動くアーティファクトであるステータスプレートに表示させているところを見るに、エヒトは創世神と言えるほどの、少なくともあまねく世界のすべてを統べるほどの存在ではない。

 

 仮に赤方偏移を発見してトータスもビッグバンにより生まれた世界であることを証明しても、それは神様の否定にはならない。それどころか、あらゆる無神論は「そう見えるように超越的な神様が創世した」という有神論を否定できない。…真にこの世界を創った者については議論できる段階ではない。

 

 いずれにせよエヒトは、トータスの法則を理解し、それを飛び超え、私たちの世界の法則をも掌握して召喚に成功したと考えるのが妥当だ。いくつもの平行宇宙マルチバースが同じ法則で動いている必要性は必ずしもないーが仮にそのようないくつもの宇宙をまたがって存在する法則があるとして、エヒトはそれを知っているから召喚に成功したとし、これを「超統一理論」と呼ぶことにしよう。

 

 超統一理論を知れば、私たちの世界の物理法則の源である大統一理論のすべてと、その来歴の手掛かりを得ることができる。エヒトは、ニュートンが指す「知識の巨人」を大きくしてくれる存在だ。

 

 そして、探求すべき目先の謎は2つ。「魔法の法則的原理」「なぜ、私は魔法を無効化できるのか」。

 

 2つ目の謎については、表面的には理解できた。

 

 私の技能「法則準拠」は、おそらく、「ある一定の空間に、物理法則を押し付ける技能」、「異法則排除」は、「ある一定の空間から、物理法則と反する事象(=魔法)を排除する技能」だ。「全否定」は、おそらく2つの総称。

 

 これ以上は、魔法の原理を問わなければならない、か。

 

 情報が、足りない。

 

 …残る迷宮の攻略も、ヒントを得るには必要、か。神代魔法を得られるわけでもないのに。

 

 「参ったわね…」

 

―*―

 

 時間を、数週間さかのぼらせてみよう。

 

 「オルクス大迷宮にて、勇者と騎士団の部隊がトラップ事故により下層に落とされ、3名が行方不明」という報は、またたく間にハイリヒ王国を駆け巡った。

 

 軍部は愕然とした。メルドら軍官は目の前で3人も失ったことにショックを受けていたし、文官は「これでは先が思いやられる」と嘆いた。

 

 一方で、報告を聞いた畑山愛子教諭は、卒倒した。

 

 3日後、やっと目が覚めた畑山先生は、机の上に置かれていた2枚の紙の内容に、再び卒倒することになる。

 

 〈仮に南雲ハジメが何らかの事故に巻き込まれるとしたら、それは高い確率で檜山大輔によるものでしょう。彼は男女トラブルで南雲君を逆恨みしています。

 

 錬成師を軽んじているこの国の兵站に私は憂いを禁じ得ません。この国が「勇者」や「英雄」を求めるのは、ひとえに軍事力の不足であり、突き詰めれば兵站、防衛計画の致命的な失敗によって奇跡に頼っているだけのことです。

 

 武器を研究し、誰もが戦うことのできるような武器を開発し、それによって国民皆兵を成す。疑似戦時下にある国でありながら銃後の備えを行わないこの国には、それだけの覚悟が必要です。

 

 ですが、一方で軍拡、総力戦体制への突入は、国全体を、あらゆる国民を戦争に引きずり込むかもしれません。

 

 私はフリッツ・ハーバーにはなれない臆病者です。ですから、このメモは先生に託します。

 

 社会科教諭ですから、火縄銃の構造は御存じでしょう。

 

 ヒカリ・ヒトツイシ〉

 

 そして、2枚目の内容は「ハーバー・ボッシュ法を用いた窒素固定による火薬の製造法、及び魔法によりこれを行う方法」だった…

 

―*―

 

 オルクス大迷宮の底、解放者の住処で4人が合流してから2か月。

 

 彼ら彼女らは、人工太陽まばゆい地下にて鍛錬に注力した。

 

 ハジメの失くなってしまっていた片目片腕は、義眼義手が取り付けられた。とりわけ義手には一石が協力し、さまざまなギミックが組み込まれた(光ちゃんってマッドサイエンティスト?と香織は呟いたし、ハジメすら時々ひいた)。

 

 現状、パーティーは1つの配置に至りつつある。近接アタッカーでありメカニックのハジメ、魔法アタッカー(でありハジメの側室)であるユエ、汎用サブアタッカー兼ヒーラー(であるハジメの正室)である香織、そして知恵袋でありハジメの技術顧問の一石光。

 

 わけても、万単位のステータスを誇るハジメたち3人と比べて、食べた魔物肉の恩恵を受けることも直接戦うこともなかった一石は、桁単位でしょぼい。今さらどうにもなるまいとすっぱりあきらめた一石は、あきらめて頭脳労働に特化することにしたが、それでも最低限の自衛能力は求めた。

 

 2か月が終了した時点での一石のステータスは以下。

 

 一石 光 17歳 女 レベル35

 

 天職:無神論者

 

 筋力:50

 

 体力:120

 

 耐性:100

 

 敏捷:650

 

 魔力:ー

 

 魔耐:∞

 

 技能:法則準拠(+視界内制限標的)・魔法法則排除(+発動停止・+視界内制限標的)・全否定・並列思考処理・瞬考(+火事場のバカ力)・設計・超速演算・測量・精密照準・見切り・言語理解

 

 …未だ、人外に至らず。自分が開けられないフタをハジメや香織が壊してしまうのを見ては陰で寂しく思うことしばし。

 

 服も制服のままに思われたが、スカートの裏、太ももには無粋な銃「ゴク」「マゴク」が隠されている。この銃はもとはと言えば世界の壁を崩して攻め込む悪魔の名前で、トータスを構成する魔法法則を否定しつつ世界の法則の源に迫ろうとしている彼女らしいが、銃床についた鎖鎌を勘案するに実際はハジメが「特命戦隊ゴーバスターズ」から命名したらしい。

 

 また、代わり映えがしないように思われたブレザーとスカートも、実際には鉛糸、鉄糸で編まれて、たいていの攻撃を弾くくさりかたびらとなっていた。左手には折り畳み式光学測距儀(!)、右手にはオルクスの部屋で見つけた収納魔法のアーティファクトの中に無数の機材。さらに、水戸黄門のような仕込み杖のてっぺんにも同じような「宝物庫」を備え付けるーそれでもなお、ハジメのような威圧感、危険人物感は、とうてい出せなかったか。

 

 「さて、と、そろそろ行くか。」

 

 「久しぶりの外だよね。雫ちゃんも待ってる…ユエちゃんは300年ぶり?」

 

 「ん。楽しみ。」

 

 「ちょっと待って3人。」

 

 オルクスの住処を照らす人工太陽に、杖にてっぺんの宝物庫を外すと現れるもう一つの宝物庫を近づけ、スッと吸い込み、一石は「これでいいわ。実験室は迷宮から野外へ移転ね。」と呟いた。それで、空間は闇に包まれる。

 

 「……俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう…兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい。」

 

 (大きいどころか100%。けれど、私たちは屈することはならないわ。この世界にアルフレッド・ノーベルは要らないからこそ、独立し、あらゆることを背負って、すべてをはねのける、そうでなければならない。)

 

 「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

 

 「知ってしまったことは、なかったことにはできないわ。いずれ、何らかのカタチで、私たちと奴らは、交錯せざるを得ないでしょう。

 

 例え偽りの神と言えども、絶大な力には変わりなく。それでも、理屈が及ぶ存在である限り、超えられないことはありえない。」

 

 「一石の言う通り。世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りない、神様だって打ち破らなきゃならないくらいな。」

 

 「とりわけ私は、守ってもらうことになる。…ごめんなさい。」

 

 「光ちゃんのぶんまで、私が強くなってみんなを守るよ。」

 

 「ん、私も、ハジメと、ついでに香織と脳みそ女守る。」

 

 「ああ。俺が香織とユエと一石を守って、一石が俺たちを助けて、道筋を考える。

 

 それで俺たちは、最強だ。」

 

 「必ず、世界だって、超えられるわ。理論を知り尽くし事象の地平面を超え真理に至り、そしてなんとしても、私たちの世界へ帰るわよ!」

 

 「ああ、そうだ。俺たちは負けない。負けられない。

 

 あらゆる困難をはねのけて、帰るぞ!」

 

 「うん!」「ん!」 

 

 闇の中で、外への転移魔法陣が、輝き始めたー




 一石光はハジメのメインヒロインは香織だと思っている人です。当方の思考実験の結果によりますが、オリ主がハジメハーレムに加わらないように最大限努力します(だってただでさえ人数多くて気を配り切れない…他の皆さん、原作にないハーレム要員とカップリングを増やして、良くフェードアウトキャラ出しませんね…今からシアとティオが心配なのに…)

 なお、「全否定」を難しく分離して説明していますが、簡潔に言うと、「魔法とか理屈の通らないこと言ってないでおとなしく物理法則に従えそこの空間」です。ただし、「魔法によって発生している事象」はなくなっても「魔法によって発生し終わった事象による物理的事象」はなくなりません(例:ミレディ氏の重力でモノを引き寄せたとする。「全否定」で「重力球が魔法で成長すること」は消えるが、「すでに発生した相対論的空間のゆがみによる重力」「それによっての物体進行」は消えない)。

 (+視界内制限標的)=視界の中の限られた部分にのみ技能を発動すること。これがないと自分の技能で治癒が消えるので。

 (+火事場のバカ力)=ピンチの時ほど頭が回ります。皆さんも使えるはずです。私は入試の時に使って「最後の10分でこれだけ解けるなら最初の10分何してたの…」と思いましたw

 実験室が移転:アインシュタインは郵便局員時代に「大学の実験室にいないのは才能がもったいない」的なことを言われ、「考えるだけならどこでもできる。郵便局が僕の実験室だ」と言ったそうです。

 ※21,2,10付けで、行方不明者数を2→3に訂正。
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