シュロの神話学的旅日記   作:加藤ブドウ糖液糖

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今回は特別編です。
ラフィングドッグ:主人公以外では初めてのオリジナルキャラクターです。Poketterと呼ばれるSNSの管理人であり、年齢は30歳後半をイメージしていただければ、と思います。

鼎談は後日全編掲載する予定ですが、書きなおすたびに新たな発見があり、いつになるやら……


シュロ・トクジ さんのつぶやきを見てみましょう

シュロ・トクジ @tokujishu6

 

こんばんは、シュロ・トクジです。今回、ラフィングドッグさんがPoketter フォローアー限定特別公開という機能を予定しているそうで、そのテスター?になりました。それに伴い、今回は鼎談の"はじめに"と本文の前編を少しだけ公開します。もちろん、各社には了解を得ております!ご興味のある方は、ぜひ儂のアカウントをフオローしていただければと思います。


はじめに

 

 この 鼎談(ていだん)のきっかけは、今年の〇月、ある週刊誌のレヴュー欄に掲載された、拙作『アルセウスの見た宇宙』(トクサネ学芸出版)についてのラフィングドッグ氏の書評を読んだミアレ出版社の人からもたらされた意向であった。現代人における神話や、ゲームにおける物語の制約についてラフィングドッグ氏と忌憚なく話し合ってほしいと言うのである。

 ラフィングドッグ氏は――言うまでもないと思うが――遊びに関する鋭い視点を以って数多くの作品を世に送り出し、世界に多くの支持者を持つPoketterの創業者である。ただ、これまでは主として小説やゲームのストーリーに対する評論はあれど、今回のように神話や現実の出来事を基にした新書に立ち入って論じることはなかったらしい。無論、これは適当な機会がなかっただけのことであって、ラフィングドッグ氏の無関心のせいではない。それどころか、このような新書や学術書には親しんでいるに違いない。

 ところがミアレ出版の編集者の人が、「オッ、この食いつきは……」と、謎の手ごたえを感じてしまったらしいのである。はじめこの話を聞いたのはお気に入りのレストランだったが、儂はオールド・ヴィンテージのアサメ産ワインを飲みながら、「こいつバカじゃなかろか」と思った。もしかしたら口に出してしまっていたかもしれない。さらに、元キャプテンでありながら天文学にも深い造詣を持つ麒麟児、マーレイン氏にも対談を打診している、と伝えられ、「ああ、ミアレ出版の人は働きすぎでおかしくなっちゃったんだ」と思った覚えがある。こちらも、もしかすると口に出ていたかもしれない。

 そんなぐちゃぐちゃな成り行きではあったが、結果的に両氏が承諾され、まさかの鼎談という形でホクラニ天文台に集い、あのように刺激的でエキサイティングな議論ができたということは、本当に奇跡としか言いようがないであろう。トクサネ学芸出版の皆様、ミアレ出版の編集者様、ラフィングドッグ、マーレイン両氏に今一度感謝を申し上げたい。

 さて、本鼎談は非常に内容が濃く、じっさい本誌には三週間に渡って掲載される予定である。最先端の宇宙論とゲーム開発の最前線、そして古代シンオウ神話研究の今、という食い合わせが悪そうなテーマではあるが、ラフィングドッグ氏の鋭い観察眼やマーレイン氏の細やかな気配りに終始助けられ、結果としてはとても面白いものになった。少なくとも儂はそう感じている。

 最近のPoketterにはさまざまな機能が追加され、儂のような機械音痴でも相当に扱いやすいものになっているようである。ご本人もそれに力を注いでいるという自負があるらしく、対談の中で、「自分は世界をより親しみやすいものにするために開発を続けてきたが、観念的なレベルではいつの間にか天文学や神話学のような話になっている」と語っている。しかしながら、氏はまだ人間・ポケモン原理や超越論的ポケモン論の内部には入っていないから(儂も前者には詳しくない)、そこは儂やマーレイン氏に尋ね、こちらもラフィングドッグ氏にいくつかのことを尋ねるという形になった。そうは言っても、単なるしつもんコーナーで満足しようとしたわけではない。

 世界についての伝統的な説明は今日でも携帯獣学や、何よりポケモンバトルという仕方で盛んになされている。それももちろん大事ではあるが、そこに輝いていた意志が沈着して、いつしか事柄のレッテルのようなものになって空回りしていることが多い。自分もそこにいたはずなのに、概念としてはわかっていても――リーグの試合等を除けば――もはや一々心震わせることはないというのは最大多数ではないにせよ、今日の一般的状況ではないだろうか。このような現状を、携帯獣学やポケモンバトルに比べればいまだ未知であるものを持ち込むことによって破り、再びあらゆるものへの驚き、θαυμάζεινを取り戻すことは、人間とポケモンのコミュニケーションに必要なものだと信じている。

 対談の中での両氏の鋭敏な感覚と挑戦は、たびたび儂をパルシェンの殻の中での微睡から覚醒させる縁となったように思う。不穏な動きを見せる世の中で、本鼎談が何か人々への刺激となれば幸いである。では、素晴らしきこの世界に、乾杯。

 

 〇△□×年〇月 シュロ・トクジ

 

 

 

 

シュロ・トクジ×ラフィングドッグ×マーレイン鼎談(前編試し読み)

 

シュロ・トクジ(以下、シュロ):今回はお忙しい中お集まりいただき、感謝の念に堪えません。確か、皆さんとお会いするのはこれが初めてではないんですよね。旧知の編集者からの紹介で、マーレインさんには何度か、ラフィングドッグさんからはPoketter社を通じたお仕事で何か書かせていただいたように記憶しています。もっとも、お二方が覚えておられるかはわかりませんが。

 

マーレイン:こちらこそ、お声掛けいただき恐縮です。精一杯務めさせていただきます。

 

ラフィングドッグ:ありがとうございます。シュロ先生とお会いすると安心しますね。例えば、私が冗談だとか、突飛なことを言っても、中々通じないことが多いんですけど、シュロさんには、ああ、この方なら通じるなっていう種類の安心感があるんです。そういう意味では、マーレイン君には初めて会いましたが、彼もなんというか安心感がありますね。なにせ島神に選ばれている訳ですから。しかも金髪だし。

 

シュロ:金髪は関係ないんじゃないの。

 

マーレイン:はじめまして。ぼくはごく初期からPoketterを使っているので、創設者の方にそう言っていただけて非常に光栄ですね。

 

シュロ:ラフィングドッグさんのギャグ、フーディンやメタグロスには大ウケするんですけどね。私なんかはついていくので精一杯なので、こちらとしては味方がいるだけで安心感が違いますよ。というわけで、マーレインさん。ラフィングドッグさんはどうか分かりませんが、儂に対しては対等な口調で話していただいて結構ですよ。

 

ラフィングドッグ:私も、ぜひ砕けた口調で話していただければ嬉しいですね。それでなくとも、議論が白熱すれば必然的にそうなると思いますが。では、そろそろ議題に入りましょうか。今回は我々がそれぞれの立場から「この世界」という広大無辺なテーマについて自由に話してよいそうです。多分にノイズの混じった、しかし未だ人間はここで暮らす他にない、行き詰りつつある巨大な箱庭の創造的アルゴリズムについて。

 

シュロ:その言い回しはどうにかならないんですかね?

 

ラフィングドッグ:こっちのほうがウケがいいんですよ。

 

シュロ:うーん、世の中分からん。

 

マーレイン:あの、世界についてというテーマなんですが、正直何から言っていいのか……。早速ですみません、こういうのは初めてでして。

 

ラフィングドッグ:じゃあ手近なところから入っていきますか。例えばここ最近は、各地方でいろいろな組織が世間を賑わわせているという印象がある。最近だとロケット団が復活したり、ギンガ団、あとはマグマ団やアクア団が出てきた。マーレインさんに伺いますけど、まずアローラにそういった組織はありますか?

 

マーレイン:一番近いのはスカル団でしょうか。でも島巡りに落ちた若い子が集まっている地元の不良集団みたいなものだし……先ほど仰ったグループと比べるほどではないかな。すみません、知り合いもいるので。

 

シュロ:スカル団。島巡りというとカプ神が絡んできますよね。カプ神に復讐しよう、という方向性ではない?

 

マーレイン:どちらかというと、島の因習を嫌ってますね。アローラは島国で土地もあまり広くないので、地域のネットワーク……島単位でのかかわりが強いんですよ。その空気が苦手みたいで。

 

シュロ:スカル団にとってカプ神はお神輿で、神輿に罪はないと。担いでる側が悪い。

 

ラフィングドッグ:アローラは観光客向けにロトムフォンを積極的に導入してるから、グローバル化が進んだことはスカル団の発生と関係あるかもしれないね。

 

シュロ:というと。

 

ラフィングドッグ:今まで彼らの世界はアローラだけだった訳ですよ。だから外の地方に出ない場合はそこに帰属するしかない。つるむとしてもアローラの中でつるむでしょ。今SNSって世界中でやってるからさ、外の世界が見えるわけだよね。だからアローラが絶対じゃないんだって、そういう意識が芽生えたんじゃないの。

 

シュロ:それは前の時代にスカル団みたいなグループがあったかと、あとは環境によりますよね。たまたま時期が重なっただけで原因は別のところにあるかもしれないし。

 

ラフィングドッグ:それはそうですよ。ただ、観光客が外の世界の人だったのがさ。今だとその人が何やってるかとかも分かるじゃない。境界線が曖昧になったことは一因だと思う。スーパーメガやすもあるんでしたっけ?

 

シュロ:ここに来る途中見てきたけど、廃墟みたいになってません?あそこ。

 

マーレイン:二つありましたけど、一つ潰れましたね。

 

ラフィングドッグ:あ、潰れてたんですね……。

 

シュロ:マーレインさんの実感としてはどうなんでしょう。今ラフィングドッグさんが好き勝手言ってますけど。

 

マーレイン:確かに他地方に行くって言いだしやすい環境にはなったと思います。前に友人がキャプテンに任命されたことがあって、それを蹴って島を飛び出したときはかなり焦りましたね。今はそういうことが減ってきてます。スカル団との相違点を見ると、彼は島巡りを完了している一方でスカル団は完了してないという所が挙げられるでしょうか。

 

シュロ:そうなると、なぜスカル団は出ていかないのか。島が嫌で、出ていきやすい環境になった。じゃあ出ていくとならない理由は何なんだろうか。

 

ラフィングドッグ:単純にさ。島巡りに失敗して他地方に行くのは逃げだよね、って言う人はいるでしょう。個人的には逃げて何が悪いのか知らないけど。島巡りに失敗したのに他地方に行ってうまくいくはずない、みたいな意識も本人の中にある。

 

マーレイン:たしかに。僕はみんなが見栄を張っているように見えます。

 

ラフィングドッグ:なぜ島から離れないのかって聞いたら、本人はこの島を変えるためとか、そういう趣旨のことを言うと思いますけど、やっぱり怖いというのが一番言いやすい。

 

シュロ:まあ、スカル団の中にも色んな人がいますから、全員そうだってわけじゃないと思いますけどね。

 

ラフィングドッグ:あとは境界線がないって言ったけど、それによって拘束される部分もあるよ。アローラの中に他地方が入るのと同じように、他地方の中にもアローラが入る。この相互浸食をどう捉えるのかだよね。

 

シュロ:私としては、スカル団がカプ神を憎む方向に向かわなかったのが面白いですね。この状態で存続しているのはそう悪い結果でもないでしょう。

 

ラフィングドッグ:それはどういう意味で?

 

シュロ:まず緩い組織があるとします。そこに圧力が掛かると、ふつう緩い組織が採れる道は二つに絞られる。崩れるか、過激化するか。私は、過激化した組織が他地方のそれじゃないかと思うんです。

 

ラフィングドッグ:グローバル化によって緩い組織を続けることができたと。だから緩いのは過激にならないだけマシ……

 

シュロ:私はそう思います。カプ神をぶっ倒すぜ!とならないだけマシじゃないですか?

 

ラフィングドッグ:スカル団があるのはいいことだと?

 

シュロ:断言はできないですよ、それは。トップの意向が変わったら悪い組織になりうるでしょう。でも、アローラに緩いつながりを保てる場所が生まれた影響は悪いことではないんじゃないかな。珍しいと思う、そういう場所は。

 

マーレイン:(笑)ホクラニ天文台は結構ゆるいですよ。

 

ラフィングドッグ:前にポケモンリーグの設立計画に協賛したけど、あれも山頂に作る予定だよね。やはり各地方でもポケモンリーグはアクセスしにくい場所にある。崇高で厳格なイメージとか、物理的な距離が精神的な距離になる。ゆるさでも近づきがたさでも。

 

シュロ:距離をとるのは大事ですね。伝統や慣習にはとりわけ強い引力があります。そこから離れたいとき、外の世界を知らない場合は伝統や他者を排除する方向に向かってしまう。世界の広さを知らないと、まずは。

 

ラフィングドッグ:一回空とか見ればいいのにね。

 

マーレイン:それが難しくて、ポータウンってずっと雨が降ってるんですよ。カプ神が関わってるんだったかな。

 

ラフィングドッグ:さっきシュロさんが緩い組織がある分にはいいと言ってましたけど、ずっとモラトリアムっていうのはどうなのか。そこはアローラの人が態度を変えないと。

 

シュロ:態度を変えるなら変えるでいいけど、スカル団の側から自発的に行為させるっていうことが大事でしょう。相手からはっきり除け者にされると過激化する可能性がある。ここはマーレインさんを含むアローラの皆さんが決めることだと思います。

 

マーレイン:わざわざここまで話してくださってありがとうございます。僕からすると、スカル団は迷った若者の集まりなんです。離れるか、戻るか。それは僕たちアローラの大人が何とかしなきゃいけない。離れるなら離れるでいいし、アローラに戻るなら受け入れる。迷っていて、闘ってそれが終わるならとことん闘う。彼らの糧にならないと。

 

シュロ:それが一番良さそうですね。

 

ラフィングドッグ:だから、ある意味では第二の島巡りだよね。

 

マーレイン:少し規模の大きい反抗期みたいに思えます。親がアローラで、子がスカル団。反抗期の子供をどう導くかでその子の将来が決まりますから、僕らがしっかりしないと。

 

シュロ:マーレインさんのような考えの人が増えればスカル団はそのうち無くなるでしょうね。さて、これで区切りがついたかな。

 

マーレイン:じゃあ、僕からいいですか。スカル団は迷いが根底にあるけど、他の組織には迷いがないですよね。トップの違いでしょうか。アローラは観光がメインなので他地方の人と話すこともあるんですが、結構価値観が違うことがあります。その原因の一つというか、帰結に各組織があるのかなと。

 

ラフィングドッグ:組織として捉えると置かれている環境の違いということになるよね。

 

マーレイン:他地方の組織は凄いものが多いですよね。宇宙開発関係でたまにギンガ団の噂を耳にするけど、何と言ったらいいか……

 

シュロ:トップの性質が違いますね、そこは。

 

ラフィングドッグ:スカル団に比べると、ギンガ団はなりふり構わない。スカル団は島から出るという選択肢もあるにはあったけど、ギンガ団のトップは世界が憎いから。環境に適応するということを考えると、自分に合った環境に行くか環境を変えてしまうか。

 

シュロ:そういった組織にある論理を限界まで先鋭化したのがギンガ団だと思います。先ほど逃げるってことについて言いましたけど、世界に外側はない。世界から逃げるのは無理なんですよ。普遍的にあるもの、基礎にあるものが嫌になると、逃げようがない。だからアカギ君……ギンガ団のボスですね。彼は、だから壊すしかない、と思っている。何をかっていうと世界をです。これは結構驚くべきことで……

(試し読みはここまでとなります。続きは〇月△日発売予定の『週刊ミアラー』でお楽しみください。なお、一部地域ではお取り扱いがない場合がございますので、同日発売の電子書籍をご購入ください。)

 




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