シュロの神話学的旅日記   作:加藤ブドウ糖液糖

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今回はエッセイ色強めです!お願いします!


16.スカル団と出会った/アローラにて

〇月□日

 

 鼎談を終えてからは、ずっとウラウラじまのモーテルに閉じ籠って原稿を書いている。自堕落な生活と思われるかもしれないが、いやいや皆さん、それはとんでもない勘違いですよ! 冷静に考えてみれば、私にはこのアローラ旅行というものがそれほどありがたくないのである。先ほど書いた通り、ホクラニ天文台での鼎談やキングラー星雲の天体写真は非常に感動したが、鼎談のチェック作業や付録、序文に普段の原稿の執筆や講義資料の取りまとめなどすべきことが山ほどあるのだ。そうは見えないかもしれないが、まあまあ多忙なのである。しばらくアローラに滞在できるといっても仕事量はほとんど変わらない。というか、正直今の方がつらいですよ。せっかくアローラにいるのに、カンヅメで仕事をしなきゃいけないなんて!

 

 その他、気分を変えようとこっそりモーテルを出ても、どくろバンダナを巻いた素行のよろしくない集団が地から湧き出したようにうじゃうじゃと群れを成して跋扈しており、変な気分になるだけだ。彼らは何なのですかと聞こうにも、それを知っていそうな旧友と直接会う暇さえないのだから、息苦しいことこの上ない。花畑まで足を伸ばせばまた違った感想も出てくるかもしれないが、残念なことにそこまでの暇はないのである。いやになるね。

 そういえば、ふと覗いたPoketterの画面の中で若いジムトレーナーが目を輝かせて「長い間我慢していたスイーツを食べることができて幸せ」と呟いていた。なんとなく、正反対のことも言えるのではないかと思った。すなわち「長い間食べてきたスイーツを我慢することができて幸せ」というように。問題は、こういうとなんだか冗談っぽくなってしまうことである。我慢しない喜びがあるように、我慢できたという喜びもあるのではないか。これはリッシ湖伝承解釈の少々突飛なワン・パターンでもあり、これを作業仮説とすれば従来とは少々違った角度から『いし』とは何かについて迫ることができるように思われる……というところから思索を展開していこうと思ったのだが、タイミング悪くリンリンと着信音が鳴り、備え付けの受話器を取ると来客の報せだった。

 はてと思いながら表に出てみれば、どくろバンダナ(似合ってない)を巻いたモモン色の髪をした若い女性と、同じくどくろバンダナ(こっちも似合ってない)を巻きオレン色の髪をした若い男性の二人組。先ほどの不良グループの一味かと思ったが、私の素性を知っているということは関係者だろうと思いなおし、最近の編集者って変わったファッションだなあ、と考えながら普段通りの応対をする。ところがどうも違うらしく、結局、本当にスカル団なるちょい悪グループのメンバーらしい。カツアゲかもしれないと震えていたら相手も気の毒に思ったのか、ボスが呼んでいるだけだから悪いようにはしない、と宥めるように話してくれた。不良にまで気を使われるとは情けないことである。あるいは、彼らは根っからの不良ではないのか。

 原稿も進まないことだし行ってみようか、とも思ったが、ボスがホクラニ岳麓のポータウンにいると聞かされ、ほんとにもうその気が失せてしまった。ナッシーバスを降りた時点で話しかけてくれれば手間も省けたし、「不良に絡まれた」と言えば国際警察に連行された時のように締め切りにも幾分猶予が出ただろうに、いやはやタイミングの悪いことである。正直うんざりするが、とはいえ、ここまできて断ることもできそうにないので、しぶしぶボスの顔を見に行くことにした。モーテルの管理人に部屋はそのままにするように伝え(帰ってきて資料の場所を把握できないと困る)、レンタルのライドギアでムーランドの背にしがみつく。腰を最大限いたわる姿勢だ。当然前を見ている余裕もないため、スカル団の二人に先導してもらう。その間、雑談なんかしつつロトムフォンでせっせと原稿を書かせてもらった。ちょくちょく二人から質問が飛んできて原稿が中断されたりもしたのだが、その甲斐あってか打ち解けてきたようにも思う。彼らとはせっかく仲良くなれたことだし、そのバンダナ似合ってないよと教えてあげるべきだったかもしれない。

 

 さあ、そろそろ到着という頃に、近くにニャースだらけの交番が見えた。高い塀に囲まれたポータウンの目と鼻の先である。気になって君らアレは大丈夫なの、と聞くと、『理解あるオッサンだから大丈夫』とのこと。不良に理解ある警察のオッサン、いい響きだ。不良にもバンギラスにもサザンドラにも"こころ"があるのには違いない。警察官としては不良の部類だが、"こころ"がつながっているのはよいことだと思いたい。アローラの見知らぬ警察官よ、誰に何と言われようと、それでいいのだ。その交番を過ぎたあたりからは、話に聞いていた通りどんよりした雨模様。ここでムーランドに礼を言い、ライドギアに戻す。濡らさないための気遣いというのもそうだが、この年でのポケリフレは色々ときついものがある、というのも理由の一つである。ともかく固く閉ざされた門が開き、中に入るよう言われる。一層凄まじい雷雨だ。スカル団はカプ神に嫌われているのか、それとも別の原因なのかは分からないが、このように生きた伝説の現象が見られるというのは羨ましい限りである。もう夕方ということもあり辺りは薄暗く、寂しい家々の扉とかすれたスプレーアートが独特の雰囲気を放っている。

 濡れた石畳をかつかつと踏みつけながらバリケードの脇を潜り抜け、中心に構えるぼろぼろの屋敷へ向かう途中、少し汚くはあったがポケモンセンターが見えた。二人に入ってもいいか尋ねたところ許可がもらえたので、喜び勇んで中へ入る。今回アローラに来てからというもの、一度もロズレイティーを飲めていなかった。こんな雨模様の中いただくロズレイティーはどんな味だろうと少し期待しながら中へ入ると、カフェースペースは惨憺たる有様。薄々気付いてはいたが、カフェースペースがないなんて!全ておんぼろなら納得もしたが、回復装置が無事な分、余計にショックである。センターの中で寝転がっていたスカル団の一人にどれだけ楽しみにしていたかを力説し、豆も残ってないの、と聞くと、顔を背けられた。こういう時の私はしつこいので、何度も聞く。結局、どこからか現れた趣味でコーヒーを淹れているというスカル団の青年に手伝ってもらい、なんとかロズレイティーを飲むことができた。当然他のカフェーには劣るが、とてもありがたいことである。

 ポケモンセンターでごねたせい(おかげ?)で、空はすっかり濡れたドンカラスの翼に覆われたかのような黒に染まっている。月は見えない。ちょい悪グループのボスに会うには丁度いい時間だが、モーテルから案内してくれた女性スカル団に聞いてみると、「今日はもういい」そうだ。奥の屋敷の一部屋をお借りして寝ることにしようと思ったのだが、屋敷の右上当たりの部屋から壁を蹴る音や物を叩きつけるような音が聞こえ、なかなか寝付けない。あの部屋に『ボス』がいるとしたら、大変なことである。今日の情けなくも優しいスカル団の様子を見る限り、そんなことはなさそうだけど。




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