シュロの神話学的旅日記   作:加藤ブドウ糖液糖

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3.偉い人に会った/ガラルにて

〇月☆日

 

 ローズタワーという場所に呼ばれた。空飛ぶタクシーに揺られてシュートシティへ向かっている途中に吐きそうになってしまったが、考えることによって気持ち悪さを忘れることができた。人間、年をとっても考えていればこの程度のことはできるものなのだなあ、と驚く。儂は天才なのかもしれない。

 モノレールから降りると、ずいぶんと凝ったデザインの塔と、二人の社員が出迎えた。ミアレのとはどちらが高いだろうか。少なくとも外見はこちらのほうが凝っている気がする……と思ったら内装も凝っていた!このようなエレベータがあるのか、とさらに驚く。驚いてばかりの一日。コガネのエレベータとは訳が違うんだなあ。このようなテックが使われているとは、知らなかった。見ると社員の二人は誇らしげにしている。まるで儂一人だけが古代に取り残されたように感じた。自分が原始人になったようだ。どうせなら本当に神話が書かれたときに取り残してほしい。そうすれば思う存分研究ができるのに。

 屋上にてローズ委員長と話した。何枚か写真も撮られたらしいが、気付かなかった。彼の未来構想に神話の解釈を引き合いに出し、ごくごく平凡な感想を語っていただけであるが、えらく気に入られてしまったようで困惑する。千年という話が出てきたため、時間についてその成立過程に対する考察を軽く語った時に、これだ、というような閃きがあった。それは感謝したい。ブラックナイトの話などは興味深かったが、それぐらいである。凄い人だなあ、とは思った。帰り際に握手を求められたので快く応じた。ふくよかで包み込むような手のひらだった。

 帰りにイイものをもらったが、さすがにこれを土産にするわけにはいかない。しかし大事に持っておくことにする。これを貰う途中に秘書がすさまじい目で睨みつけてきた気がしたが、おそらく気のせいであろう。気のせいだと思いたい。気のせいだったのだろうか。とにかく、モノレールに乗り、フレンドリィショップに寄る。今日はスタジアムにも行ってみることにした。

 スタジアムではキバナ君とカブ君のエキシビションをやっていた。儂はポケモンバトルの方はあまりできずケーシィと共にテレポートで逃げ回ってばかりいたから、バトルの見方は全くと言ってよいほど分からない。勿論、一念発起して強くなるぞ、と思ったこともある。イツキ君に頭を下げ、ナツメさんに頼み込み、ゴジカ氏に縋りついた。結局、全てうまくいかなかったので、こちらも筋金入りなのだろう、と思っている。そういえば勝負の行方に周りが白熱しているのに、得体の知れない老人が一人棒立ちというのは気味が悪いかもしれない。まぁ、それでも良いかと思う。ガラルにおいてグループの優待を受けられるというこのカード。儂は本当にいいものをもらったなぁと、ローズ氏からもらったカードを眺めながら思索に移った。

 

 ローズタワーでの閃きを思い出す。シンオウ神話の「はじまりのはなし」に書き出された空間と時間は、以後の文との関係性の中に置いて考えられる限り、おそらく事物の側にあるのではなく、私たちの認識の形式として元から備わっている、という解釈が可能である。しかしその文が、当たり前だがポケモンとも関連する――ブラックナイトの話を聞いて思い出したことだ――ならば、まさに事物、表象であるディアルガとパルキアの側からもたらされたのであれば、それは驚くべきことではないか。森羅万象の表象が、表象化されるそれ以前の存在とでも呼ぶべきものから与えられているならば、それほど愉快なことはない。ポケモンの力の基礎付けは、偶然このような形で行われたのかもしれない。頭が痺れるような感覚を味わった。フィールドを見ると激しい砂嵐が吹き荒れている。鋼鉄の巨塔から咆哮が響き、儂はそれに合わせて腕を振り上げた。

 しかし、先の対談は原稿のゲラ等も送られてくるという話ではあるが、あともう少しすれば雑誌が出て、儂は腰の曲がった白髪の老人ではなくローズ委員長と対談したこともある偉い先生という目で見られてしまうかもしれない。それは嫌なことであって、なるべく避けたい。ほとぼりが冷めたころにまた来ようと思う。次は冬ごろかなあ。多分、鎧の孤島にでも訪れることになるだろうか。中々に楽しみである。土産を買うのを忘れたことに気づいたので、マツバ君にはこの得体の知れないカードでも渡そうかと思う。ガラルで贅沢ができるぞ。よかったなマツバくん。

 

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