シュロの神話学的旅日記   作:加藤ブドウ糖液糖

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27.鳳凰を見た男/エンジュにて

〇月△日

 

 キキョウシティで講演の後、マダツボミの塔で静かに瞑想に耽る。キキョウシティはエンジュと並び称される古都であり、エンジュシティを"幽玄"の美だとするなら、こちらは"侘び"の美しさということになるだろう。

 講演の題は『心は消滅しうるか』。瞑想の目的とシンオウ神話における「こころ」の関係について述べたものであり概ね好評のようであったが、儂としては本当に話したいところまで行けなかったのが心残りである。本当に話したかったところというのは「こころ」と「行動」の対応関係についてなのだが、書く気力がない。体力の衰えを感じ、寂しくなる。まあ、えーと、その内講義録が出る予定なので興味がある方はご購入下さい。

 儂にはもうそれぐらいしか書くことがないような気がする。一世一代の大仕事を成し遂げ、燃え尽きてしまったような心地である。書くことが尽きたわけではない。むしろその逆であり、シンオウ神話には言及しようと思えばいくらでも言及できる奥深さがあるのだが、儂の側に言及する体力がないのである。家に帰り、寝る。その他にどうしようもない。

 

 

 

〇月☆日

 

 ひどい病気ではないが、何か月かの入院が決定した。案の定か、という気持ちなので別段悲しくはなかった。これの執筆は続けるが、旅日記ではなく単なる日記になってしまうね、と編集者の方と談笑する。時々生徒が見舞いに来てくれるらしく、ありがたいことである。

 

 

 

〇月▽日

 

 近頃眠くて仕方がない。そういえば、シンオウ神話の"時間が回る"という表現は、時間を線形に考えると始まりがあろうと始まりがなかろうと論理的に矛盾してしまうということに対する解決策ではないか、とふと思った。しかし、原稿の分量が規定枚数に達しそうもない。『追求と点検』で没にした分でも載せてもらおうか。

 

 

 

〇月◇日

 

 体が重い。儂の計画では、これをつらつらと書きながら悠々自適に過ごし、退院したら古代シンオウに思いを馳せつつ静かに旅をしようと考えていたのだが、どうやらそんな悠長な話ではなさそうだ。もしものことがあったら、万事スマホロトムとフーディンに任せたい。まあ、悪くない最期だと思う。死んだら地獄で研究でもするかな。

 

 

 

〇月×日

 

 見た。病室の窓からホウオウを見た。ホウオウを見たのだ。儂は確かにこの目でホウオウを見た。自分でも訳の分からぬままものを書き散らし、ようやく冷静になった今、震える手で日記を書いている。体が軽くなっている。病気も治っているそうである。治ったとはいえ儂にできることがあるかと言われるとなんだか疑わしいが、とはいえ、もうしばらく生きてみるほかなさそうだ。

 

 

 

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  • 今まで通りの旅日記形式!
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