第二回ですが、始める前にちょっとした雑談をします。みんな最近まで受験勉強してたでしょう。受験勉強っていうのは例えば歴史の用語を5,000語くらいかな、覚えるわけですね。あと外国語だったり、携帯獣学とかの単語を3,000語位覚えて、ポケモンも800種類ぐらい覚えて、そのほかの所でもやっぱり現代文とか、小説を読む習慣がない方だと意識的に単語を覚えたりするわけだよね。有名大学は数学、特にダメ計の問題が難しい。他にも覚えなきゃいけないことはあるんだけど、その合計が9,000単語。5,000と3,000と800でね、大体9,000 、9,000単語覚える。これはいつからこうなったんだろう、って思った方もいると思います。暗記は苦手だとか、苦手じゃないけどめんどくさい。知識っていうのが重んじられるようになったよね。
私の時代も似たような感じでした。でも大学に入ってね、漠然と講義を受けてたんだけど、ある時エンジュの人口とその近辺にいるポケモンの数を確認する機会があったのね。そこにどれだけいたかっていうとね、当時でも全然30,000匹以上ポケモンとかがいたんですよ。でさ、エンジュっていう小さい地域の中に30,000のポケモンがいる。恥ずかしい話、私はタマムシ大に入って9,000語で鼻高々だった訳ですよ。でも30,000の命がそこにあるんだって実感した時に、知識ってなんなんだろうって思った。考えてみたらオドシシが角からどうやってサイコパワーを放出するかとか、何も知らないんですよ。オドシシのちょっとしたことでさえ知らないんだから生態系も何も知らない。複雑系とは何でしょう。世界のすべて、ポケモンのすべてを勉強したぞと思ってた矢先にこれです。私は今まで何を勉強してたんだろう? 今までの勉強は無駄ではないですね。でもなんで"この"科目を勉強する必要があったのか。得意だから? それもあるね。でも得意って言っても既にあるものの中で得意ってことでしょ。じゃあなんでかっていうと、これが重要だからだよね。ではなぜ重要なの? 一体いつから重要になったのか。現状の社会制度が成立したときにです。
生命に対する驚き、とでも言えるような感覚がシンオウ神話にはありました。現代社会とは違った感覚の下に古代社会は流動します。しかしシンオウ神話には同時に、その驚きを抑え込むような制度、即ち現代社会に通じるシステムの萌芽もまた、既に含まれていた。今回はこの霊性と両義性でも呼べるようなものを考えていきますが、真面目にこれをやったら八年は授業をやらないと終わらない。でもちょっと見てみましょう。
まず私が古代の霊性と言ったときに、皆さんは多分古都の風景を、あるいは古代遺跡とかを思い浮かべましたよね。シント遺跡、やりのはしら、海底遺跡とエトセトラ。ここで立ち止まって考えたいのは、我々が言っている古代というのは本当に同じ古代なのかという点です。古代遺跡とエンジュの寺院の年代がかけ離れているのは分かると思います。さらに言えば、古代イッシュと古代ジョウトは本当にひとくくりにできる概念なんだろうか。そして同じ古代シンオウの中でも色々ある。アヤシシ信仰が始まったのとやりのはしらの建立はどちらが先か、皆さんはご存じですか? 一息に古代と言っても差があるんですね。
試験勉強を通ってきた人たちなんかは、時折暗記だけしてこの大学に来た、と言われることがある。何年何月何日にこういうことが、このポケモンの特性は云々でどの地方に生息していて……と一問一答形式で覚えた方も中にはいるかもしれない。しかし、現実には数字や単語がその辺を歩いているはずがない。問題が翼をつけて空を飛んでいたり、答えが足を生やして草むらを駆けているなんて馬鹿な話はない。現実にはみんな一人の人間、一匹のポケモンなんだから、色んな文化、色んな環境の中で生きているわけです。でもまあ、みんな違ってみんないいで話を終わらせたら研究にならないからね(笑い)。独特の生物や文化が、お互いにどう関わりあって時代を作っていたのか。これの研究が必要なんだね。
お互いの影響関係というのはテキストを読んでいるだけではわからない。遺跡の中から発掘された陶器の造りに似通ったところがあるかもしれない。あるいは植物の種子を分析すると遺伝子が繋がっているかもしれない、そこは人間でもポケモンでも同様ですね。地方別に考えてしまいがちですが、時代の大きな流れや雰囲気は共通している。その上でやっぱり違っているというのを考えてみる。共通の前提があった上で、別々の対処をしたと考えるのがいい。そうすることで一つの地方だけを研究していたのでは得られない発見があります。
一番とっつき易いのは、年表と地図を作って書き込んでいきつつ比べること。非常にお勧めです。
さて本題に入ります。シンオウ神話に注目しましょう。シンオウ神話は多面的かつ総合的な体系であり、哲学、宇宙論、そして自然科学の源流としての側面を持っている。当然ヒスイ信仰の直系の祖先でもあります。ただ一枚岩というわけではない。なぜ古代について語ったかと言うと、シンオウ神話も初めから体系があったわけでは全くなく、通時的に徐々に形成されていったものだからです。『シンオウしんわ』『シンオウちほうのしんわ』『シンオウのしんわ』『シンオウむかしばなし』……挙げていけばたくさんありますね。掘り下げていけばどれも興味深い内容を含んではいるのですが、上手く時間内に収まるか分からない為今回は省略したい。ただ知っておくべきことには、これらの話は単体で見ると全然歴史が違うんですよ。キクコを持ってきて「最近のポケモンリーグはねぇ……」と言っても的外れな論評になります。ヒスイの歴史と比べてもシンオウの歴史は非常に長いです。リーグの話をするならモモナリやキリュー等の世代の話をすべきなのと同様に、シンオウ神話体系の話をするならば、核心を考えねばならない。
その一方で留意すべきことは、そもそも我々は研究対象たる神話がそれ以前のどの神話の影響のもとにあるか、が知りたいのではないということ。それはあくまで手段であり、目的ではない。知りたいのは、それがいかなる構造のもとに創造された神話であるかであり、どのような理念を示すに至ったかです。以上の通時的な思考法は、歴史影響論という呼び名があります。ですがそれは有用であると同時にリスクが大きい。この講義ではある一定の範囲内に限定して考えていきます。以上のことを踏まえて聞いてください。課題に関してはエンジュ大学のシステムであるHo-ohを通じて提出をお願いします。
では、今からシンオウ神話体系の全体構造と、考え得るその発展過程を話していきます。重要なのは、"シンオウ神話体系の核にあたるものとは何か?"ということです。……(中編に続く)
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